アメリカ合衆国 (ミシガン州) バトルクリーク補習授業校 発 岩井 真二 先生の The バトルクリーク通信 |
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★第1話 バトルクリーク情報 ★第2話 補習校の子ども達はたいへん!
補習校の子ども達はたいへん!
アメリカで暮らすということは、
「生きた英語が身について、バイリンガルになれる。」、
「日本では味わえない様々なことが体験できる。」
などと、魅力的な面だけがクローズアップされ、その影にある子供たち
の苦労は見えにくいものです。現地校と補習授業校で学ぶ日本の子供た
ちを間近に見ていると、現実はそれほど甘くないということを強く感じ
ます。
アメリカ生活が始まり、子供たちを待っているのは、英語だけの学校
生活です。当たり前のことですが、各教科の勉強はすべて英語です。授
業内容はもちろん、先生の指示も理解できないところからのスタートで
す。現地校の先生はとても親切ですが、日本語を話すわけではありませ
ん。クラスメートも同じです。学校生活は、「英語の洪水」の中で必死
に泳ぐようなものです。半ば溺れた状態に近いかもしれません。
子供たちは、そういう中で少しずつ語彙を増やし、会話力を身に付け
ながら、アメリカの学校生活に馴染んでいくのです。毎日が新しい発見
の連続、毎日の生活そのものが、自らの力で考え、行動する「総合的な
学習の時間」と言えるでしょう。
宿題は、アメリカ人の子供と同様に出されます。(最初のうちは何が
宿題かもわからないようです。)しかも、その宿題は考えを説明したり
論述したりするものが多く、簡単に片付けられるものではありません。
赴任当初、宿題が全く分からず困っていた息子の代わりに、私が挑戦
したことがあります。結果は、「やり直し」でした。(それ以来、息子
が現地校の宿題を私に尋ねることはありませんでした。)
週末は補習校 |
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現地校の宿題でたいへんな毎日なのですが、それとは別に補習授業校
からも宿題が出ます。週末は補習授業校の宿題に追われる子供が多いよ
うです。そして、現地の子供たちが休む土曜日に補習授業校へ通います。
しかも、6時間授業です。子ども達がゆっくりできるのは、日曜日だけ
の週休1日制です。
中学から単位制 |
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アメリカは、中学校から単位制です。進級するために必要な単位を取
得できなければ留年です。成績が悪ければ、特別な課題が出たり、夏休
み中に特別の講座を受けて補習したりしなければなりません。
日本語を忘れる |
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幼稚園や低学年の子供たちは、比較的早く英語を身に付けるようです。
しかし、反対に母国語である日本語があやしくなってきます。滞在が長
くなると、日本語よりも英語で話す方が楽という子も表れます。
「これがバイリンガル?」いいえ、日本語を忘れてしまってはバイリ
ンガルとは言えません。こういったどちらの言語も中途半端な状態を
「セミリンガル ※非教育的な用語」とも言われています。
そこで、母国語をしっかり身に付けさせる補習授業校が重要なのです。
■■ 例1 日本語で説明できない ■■
A君:「リセス(RECESS:休み時間)はもう終わりですか?」
B君:「ライン(LINE:列)になっていたのに、
○○君がショート・カット(SHORT CUT:横入り)をしました。」
日本語で何と言えばよいのか分からなくて、英語が混じってしまいます。
■■ 例2 英語を日本語訳して作文を… ■■
アメリカ生活の長い子が書く作文は、日本で学んだ子供のもの
と論調がまったく違います。叙情的な文章表現は少なく、論理
的な文章を多く書く傾向にあります。
なぜだろうと考えてみて、あることに気づきました。
彼らは、英語で文章を考えた後、それを日本語に訳しているようです。
<小学1年生>
帰国への不安 |
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アメリカ生活に順応できた頃、多くの子ども達には帰国が待っています。
その時、ほとんどの子は、アメリカへ来た時と同様の不安を日本に感じる
ようです。「自分は、日本の学校で受け入れられるだろうか?」、「日本
の勉強についていけるだろうか?」などと・・・。
また、幼い頃に渡米した子は、日本をすっかり忘れていて、日本の生活
にカルチャーショックを受けてしまうこともあります。
日本の風はまだ冷たい |
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様々な苦労の末、英語や異文化を身に付けた子供たちは、日本でどう受
け入れられるのでしょうか?
残念ながら、「帰国生に対し、日本の風はまだ冷たい。」と思います。
一昔前に比べると、いろいろな受け皿が用意され、帰国生が活かされるよ
うになってきたことは事実です。特に大学進学に関しては門が広げられた
ようです。
しかし、高校では、首都圏や近畿地区、一部の私立高校に限られていま
す。地方では、受け皿の用意どころか、その対応を十分に検討されていな
いのが実情です。
また、帰国生を異質なものと捉える風潮も、まだ残っているように感じ
ます。
しかし… |
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しかし、外国生活の苦労が、子供たちを逞しく育てていることは確かで
す。どんな状況に置かれてもへこたれない、そんな強さを多くの子供が身
に付けています。また、日本をアメリカの目で、アメリカを日本の目で見
るグローバルなものの見方をすることもできます。
補習授業校で学んだ子供たちが、将来の日本を支え、国際社会で活躍で
きる人材になることを信じています。
(2006年1月6日)