例会速報 2026/04/19 鎌倉学園中・高等学校・Zoomハイブリッド


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは来月発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

授業研究:授業開き みんなの発表 
 4月例会では、いつもの授業研究に代えて、それぞれの学校での授業開きを紹介し合うことになっている。
 はじめは阿部さんの授業開き。阿部さんは最初の授業で配るプリントに自分がオススメする授業の受け方以外にも、先輩の生徒たちの意見も載せている。この意見は毎年、1年間の授業の終わりにとっているアンケート(無記名)をまとめたものである。
 アンケートでは、阿部さんの授業の感想だけでなく、「後輩に物理の学習法や授業の構え方などアドバイスをお願いします」「後輩に予備校や塾の使い方のアドバイスをお願いします」など後輩に向けたメッセージもお願いしている。書かれたものは、個人情報は伏せた形で、取捨選択せずに全てを載せている。後輩にとって知っている先輩たちがどのように勉強してきたのか、物理と付き合ってきたのか、塾と学校のバランスをどのようにとっていたのかが参考になる。
 

 一方で阿部さんにとっては、本当に同じ時間に同じ授業を受けたのかと思うほど生徒たちは物理に対して多種多様な見方をしてくれるのがよく分かり、塾や予備校と学校は何が違うのか、学校で何をすることが出来るのか、どんな物理を求められているのか、どのように物理と付き合ってくれているのか見えてくるようになった。生徒にとっても教師にとっても有効なアンケートになっているようだ。
 

 2番手の山本は20年ぶりに高校物理の教壇に立った。かつての教材をさらにチューンナップし、新しい教材も加えて臨もうと思う。生徒には授業開きにあたり、「実験でスマホを使うので、phyphoxをインストールしておくように」と伝えた。幸い勤務校では教室へのスマホ持ち込みを禁じていない。
 さしあたり授業開きは、以前も最初の授業で見せていた「POWERS OF TEN」と、その現代版とも言える「Cosmic Eye」を視聴し、宇宙の果てからクオークの世界までをつらぬく普遍的な法則の存在の可能性をにおわせ、興味喚起した。
 授業はこの後、教科書通り、一次元の運動を扱い、速度・加速度の定義から等加速度運動へと進む予定だ。その中で、生活実感と結びつけるために、「電車の運動」という生徒実験を行う。電車の運転台の速度計を写した動画からv-tグラフを作り、加速度や駅間距離を求める。重力による運動に入る際には、「phyphoxによる重力加速度の測定」の実験を行う予定である。資料(PDFファイル:2.2MB)はここ
 

 櫻井さんは、櫻井は、今年度から通信課程の高校生に物理基礎、物理、化学基礎、科学と人間生活を指導する。勤務校では1回目の授業となる春のスクーリングがゴールデンウィーク明けに行われるため、授業開きは(例会実施時点では)これからということになる。
 通信課程の生徒たちは、これまでの理科学習の中で、必ずしも観察・実験といった、自然現象にふれるような本質的な学びの機会を得てきたわけではない。そういった生徒たちに物理学の面白さを伝えるにはどうすればよいかと考え、あえて真正面からそれを伝える「物理学とは何か」「科学的方法とは何か」を講義する動画教材を作ろうと思い立った。
 

 もちろん「物理学とは何か」という深遠なテーマを、これから物理基礎を学び始める生徒に長々と話すわけにはいかない。そこで、著名な物理学者による物理学の説明をいくつか集め、共通点を見出すことでそれを垣間見てもらおうと考え、よい文章はないかと例会内で意見を求めた。櫻井さんは、原文が公開されている「ファインマン物理学」などを例に挙げた。
 なお、この速報が掲載される時点で、初回授業は既に行われている。櫻井さんからの続報は以下の通り。
 「スクーリングの初回授業では、授業前半に20分程度の短縮バージョンで講義をした。(後半はPhyphoxの導入とエレベータの運動測定)。やや退屈な講義だったかなと不安になったが、生徒のリフレクションからは「きちんと学ぶ意義を教えてもらえてよかった」という言葉が多く、こちらが面食らう結果となった。そうか、そりゃあ学ぶ意義や目的が曖昧なまま、学習に向かうのは苦痛だよなあと妙に納得してしまったのだった。」
 

 市江さんは、1年生の3学期に、波の重ね合わせの原理や定在波、弦の振動、気柱の共鳴を学習した学年を、引き続き2年生でも担当することになった。2年生で理科コースを選択した後、2時間使って水波投影装置の実験と音波の干渉実験を行った。
 例会会場のこの階段教室は、黒板の両脇にBOSSの天吊スピーカーがあり、教室全体を使った音波の干渉実験が行える。弦の振動や気柱の共鳴は、一直線上の波の重ね合わせで説明できるが、これらの実験はいわば平面上の(斜めの)波の重ね合わせを考える必要がある。その音波の干渉条件も水波のときと全く同じ式で説明ができる。かつてJSTの理科ねっとわーくで公開されていた「発音(はつね)」というアプリで、左右のスピーカーの音波の位相を同位相から逆位相に切り替えることができ、部屋いっぱいに広がった音波の双曲線を耳で音の大小で感じることができる。残念ながら理科ねっとわーくはすでに閉鎖されているため、使用したアプリを現在入手することはできないが、今ならAIに同等のアプリをpythonで簡単に生成してもらうことが可能だ。
 

 上下の写真は3時間目のヤングの干渉実験の再現。とかくこの単元では忘れかけた干渉の条件式の復習に時間を割きがちになるが、水波、音波の記憶が冷めないうちにすぐにヤングの干渉実験を行うことで、水波も音波も光も同じ波動性を示すことを強く印象づけたい。むしろこのヤングの干渉実験によって、何が振動しているのか掴みどころのない光の本質を初めて解明することができたといえる。光も水波、音波と同じ波であることを生徒に実感してもらうため、是非ともダブルスリットによる光の双曲線を直接観察させたいと、市江さんはYPC2017年11月例会で紹介された「フォグマシン」を用いて演示を行った。最近ではYPC2026年02月例会で紹介された「小型スモークマシン」の方がもっと手軽にできるようだ。
 この観察を生徒に行わせるときは、レーザー光を生徒が直視しないように十分に注意する必要がある。明瞭な光跡を観察するためには部屋全体を遮光し、プロジェクターの投影はミュートする。光路に沿って煙をまき、脇から観察するとダブルスリットによる光の双曲線(ほぼ直線に近いが…)が少なくとも4、5本は観察できる。
 

今さら「樹氷」でキンコンカン 鈴木健夫さんの発表 
 愛知・岐阜・三重物理サークル編著の「いきいき物理わくわく実験2」(1999年)に「「樹氷」でキンコンカン」という実験がある。「樹氷」とは、今は入手できないサントリーのウイスキーで、この瓶が水を入れて叩くと綺麗な音が鳴り、傾けることで音階を作るのにちょうどよい形だった。鈴木さん自身、退職時に捨ててきてしまって「樹氷」の瓶は手元にない。しかし、最近飲んでいるアイリッシュウイスキー「BUSKER」がほとんど同じ形の瓶だということに飲み終えてから気づいたのだとという。
 

 「いきいき物理わくわく実験2」の記事を真似て、角瓶の首近くまで水を入れ、傾けていくとだんだん音が高くなる。ドレミと叩いていき、最後の方は横にすると1オクターブが完成する。曲の披露には少し練習がいるようだ。「このBUSKERの空き瓶は月に1本くらい供給できる」とは鈴木さんの弁。
 

ストロー紹介 天野さんの発表 
 天野さんが100円ショップ「セリア」で見つけたストローは、蛇腹部分がとても長く、180°以上曲げたり、大きく伸び縮みさせたりできる。端の部分を三角形にカットして「ブーブー笛」にし、一回り太いストローと重ねるようにして、蛇腹部分を伸縮すると音程が変わる。
 

 180°曲げて折り返してもつぶれないので、右図のようにトロンボーンのスライド管のような構造を作ることもできる。こちらはまだ試作段階だが、この素材でいろいろな教材が開発できそうだ。
 

半減期を求める実験の紹介 宮﨑さんの発表 
 宮﨑さんは、横浜雙葉の徳永さんが主宰するSCN神奈川の実験講習会に参加してきた。2026年3月28日(土)逗子開成中学校高等学校 化学実験室にて行われ、同校の岩井先生にお世話になった。
 当日の実験内容は、「霧箱で感じる原子の世界」と題し、講師は松村徹先生(防衛大学校 応用物理学科 准教授)。防衛大学校の1年生に対して教えておられる内容を、参加の理科教員向けにアレンジして実施してくれた。
 

 観察だけに終わりがちな原子分野だけに、実際の現象を使った実験は貴重だ。実験に使用したのは、この分野では有名な戸田先生のRADO社の大型の霧箱。放射線の飛跡がはっきり見える霧箱で、実際の壊変の様子を動画に撮影し、崩壊の回数を数えて崩壊定数を出し、半減期を求める。
 

 ラドン220は半減期55.6秒でアルファ崩壊し、次のポロニウム216は半減期0.145秒でアルファ崩壊するので、ほんのわずか遅れてもう一本飛跡が現れV字型になる。このV字のパターンを探して数を数え、減衰曲線を描いて崩壊定数を出し、式より半減期を求める。
 

 講師の松村先生の線源選定の良さ(半減期がちょうど良い)、計測手順の巧みさなどにより、この映像を用いれば1コマの授業の中で、カウント、グラフ作成から半減期を求めるところまで進めることができそうである。
 松村先生は、スケジュールが合えば出前授業も請けてくださるそうである。
 

慣性力実験機の販売 中川さんの発表 
 中川さんは、これまでの例会でも紹介してきた、自作の「慣性力実験機」の販売を開始した。1台13,000円にて受注販売する。お届けは郵送も可。支払い方法は、現物と交換の現金払い・振込・PayPayの三つの方法が選択できる。
 資料はリンクはこちらのGoogleドライブからダウンロードできる。購入フォームはここ
 耐久性についての問い合わせに関して、中川さんからのコメントは以下の通り。
・台車本体は開発者(100 kg)が乗っても壊れない
・慣性力実験機部分は何十回も落としているが、壊れていない
・実験中の落下がないよう、バンパー付きクランププーリーも同梱
 

 落下装置、投射装置などがセットになっていて、付け替えることでいろいろな実験ができる。写真は加速度運動する車内での落下実験のようす。乗客の視点でスマホで動画を撮影できるようになっている。
 

 附属の水槽をとりつけると、水中浮力観察装置になる。加速度運動している車内では水面が傾き、浮きは前方に傾く。これもスマホを使って乗客の視点で観察できる。
 

潮岬灯台のフレネルレンズ 越さんの発表 
 越さんは、この春訪ねた潮岬灯台のフレネルレンズの写真を紹介した。本州最南端付近に位置する潮岬灯台は実際にのぼることができ、展示室には昭和32年まで使用されていた2代目の巨大なフレネルレンズが展示されていた(左図)。これは固定式で光源が点滅するタイプで、右図は中心付近。
 

 左図は上部の反射レンズの写真である。中心部分は屈折を、周辺部では全反射を利用している。右下の説明の図がわかりやすい。
 その後は1500Wハロゲンランプを光源とし、水銀槽の上に浮かべられたレンズが回転するタイプのものが設置された時期もある。現在ではLED光源が使用されているそうだ。例会では現在国内でのぼれる灯台は16基あるという追加情報も紹介された。
 

放物運動のマルチストロボ写真 越さんの発表 
 左の写真はネット上で公開されていた冬季五輪のフィギュアスケート、リクリュウペアの「スプリットツイストリフト」という演技のストロボ写真。三浦璃来選手が放物運動している間、木原龍一選手は等速直線運動していることがわかり易く、教材として話題にできそうな写真である。また、木原選手から見ると常に真上に三浦選手が位置することもわかる。写真や動画から、移動距離、最高点の高さ、落下までの時間などを読み取ると、写真の左から4番目(①)の像から10番目(⑦)の像までの水平移動距離は約2.8m、投げ上げられた瞬間の高さと最高点の高低差は約0.9m、落下まで(①から⑦まで)の時間は約0.9sであった。このことから、水平速度成分、鉛直速度成分、投げ上げの角度などを計算することができる。それぞれの値は3.2m/s、4.3m/s 、53°であった。写真の出典はここ
 右の写真は、「デススパイラル」という演技で、一見質量が異なる連結物体の共通重心のまわりの回転と考えることができそうである。動画を観察した結果、この場合の回転軸は木原選手の左足(写真の右側、爪先立っている方の足)のつま先、エッジの先端付近だ。実際には、回転軸では抗力を受けるため、回転軸と共通の重心は少しずれた位置にあるようだ。ちなみに二人の体重は非公開だが、質量比は1対2.3程度と推定されている。
 現地撮影のフリー演技のフル動画はここ。35秒から「スプリットツイストリフト」、1分52秒から「デススパイラル」の演技。
 

Webアプリ100日チャレンジ 鈴木駿久さんの発表 
 2月の例会速報で、益田さんが紹介した、Geminiを用いたwebアプリ教材開発の記事を見て、鈴木さんも作ってみた。せっかくなので、「webアプリ100日チャレンジ」と題して、「100日でwebアプリを100個作る!」というチャレンジを2026/03/09からスタートした(2026/06/16が100日目)。以下は鈴木さん自身からの後日メッセージ。
 「4月例会の時点で42日目。本日(2026/05/08)時点で、61日目に到達した。作成した教材の一覧は、こちらにあるので、ぜひ見ていただきたい。また、X(旧Twitter)では、作成したwebアプリを動画付きで紹介している。100日まで続ける原動力になるので、応援も兼ねて是非フォローもお願いします。」
 

 例会当日現在のメニュー画面。すでに42本がアップロードされている。
 

 物理基礎から4単位物理まで高校物理全般をカバーする予定。
 

 「力と運動」のアプリの一画面。向心力を失うと、物体は円の接線方向に飛び出す。右図はX(旧Twitter)のリンク先QRコード。
 

接弦定理 山本の発表 
 高校物理基礎の運動学の単元で、瞬間の速度の説明に左図のような図がよく使われる。x-t図の曲線上に2点P、Qをとると、直線PQの傾きがこの間の平均の速度に対応する。Pを固定し、QをPに限りなく近づけていくと、直線PQは点Pを接点とする接線に限りなく近づいていく。この接線の傾きが「瞬間の速度」である。しかし、この図を見て直線PQの傾きは0に近づいていくと誤解する生徒も少なくない。
 中3の数学で「円周角の定理」を学習する。円の弦PP'を見込む円周角PQP'はQが円周上を移動しても同じ角度を保つ。左図のように、弦PP'を固定して、Qを限りなくPに近づけていくとき、この円周角は最後にどうなるだろうか。弦P'QがP'Pに一致しようとし、点Qが点Pにまさに重なろうとするそのとき、直線PQは点Pにおける円の接線に限りなく近づく。そして円周角PQP'は、つぶれてゼロになるのではなく、この接線と弦P'Pがなす角となって生き残る。これが「接弦定理」である。
 以前は接弦定理は中学で学習し、高校入試に必ず出る証明問題だったので、高校生は誰でも知っていたが、今は高校の「数学A」に移動したようだ。それでも数学好きな生徒にはウケる話題である。
 

本の紹介 山本の書籍紹介 
 YPCでは「タイニー・カフェテラスの支配人」で通っている永田文男さんから、私家本「ミクロの世界を楽しむ」の寄贈を受けたので紹介した。
 永田さんは若い頃、透過型電子顕微鏡で電子線回折の仕事をしていたが、退職後も電子顕微鏡への情熱を持ち続け、テクネックス工房製の卓上走査型電子顕微鏡「Tiny-SEM」を自費で購入し、二十数年間にわたり自宅で電顕観察を続けてきた。広く一般の人たちにもミクロの世界を観察する楽しみを知ってもらおうと、Webサイト「タイニー・カフェテラス」にその成果を公開している。
 このたび、それらの成果をA4サイズの本にまとめ、左のような立派な私家本として形にした。YPCにも1冊寄贈していただいたので、例会のたびに回覧して、参加者に見てもらう予定である。

 関連で紹介したのは、電子顕微鏡によるミクロの世界の不思議を、子ども向けにわかりやすく示した良書。 近藤俊三著「たんけん!発見!ミクロのふしぎ」少年写真新聞社刊(2000円+税)。こちらもSEMの画像集である。ていねいにルビが施してあり、わかりやすい文体で身近な動植物などの驚きの素顔を解説してくれる。

二次会 大船駅前「寿司居酒屋 海福本店」にて 
 16名が参加してカンパーイ!例会本体には対面で22名、遠隔で8名、計30名の参加があった。今回の二次会は電車で一駅の大船駅に移動しての開催となった。老いも若きも楽しく酒を酌み交わす。YPCの二次会では「学生無料」のルールがある。上下で60歳近い年齢差の世代間交流ができるのもYPCならではだ。さて、今年度もガンバロー!


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