例会速報 2026/01/18 千葉県立千葉高校・Zoomハイブリッド
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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは来月発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムはここ。
授業研究:高3の力学 阿部さんの発表
会場校の阿部さんは今回は3年生の力学(円運動、慣性力、単振動、万有引力)の授業の様子を報告してくれた。
円運動のファイヤーダンスは2017年8月の合宿例会で発表したものだ。元々は海外の実験動画(YouTube) を見てやってみたものだという。向心力は糸の張力なので、円運動における力の向きが進行方向に対して垂直なのはイメージが湧くが、円運動から外れた物体が接線方向に飛んでいくのはイメージができない生徒がいるようだ。見応えがある写真をとるまでに20回以上の練習を重ねたが、その甲斐あって、毎年生徒から歓声が上がるのは嬉しいという。

阿部さんにとって、慣性力は毎年きちんと説明ができている気がしない分野の一つだ。「見かけの力」と言うことも多く、間違った解釈をしているような生徒も見受けらる。2年生の加速度の分野でWiiリモコンの加速度センサーを紹介・実演したので、それを用いてパラボリックフライトの加速度の様子を実演している。右のグラフで3方向とも加速度がゼロを示している箇所が、リモコンが放物運動している区間だ。

単振動では、一般によく行われる順序で作図から入って、ばね振り子や単振り子を理論と実験を照合する形で展開する。おなじみの周期の公式(右図)で、ばね振り子を「みかん」、単振り子を「りんご」と語呂合わせを紹介すると生徒は笑ってくれる。暗記用と言うよりは、自分の計算した答えが正しいかどうかの答合わせに使えるよと紹介している。

万有引力について、ケプラーの法則から万有引力を導き出すのはもちろん、オイラー法を用いて楕円軌道を作図させている。元々は先輩の教員から教えていただいた演習だが、ファインマンの「物理法則はいかにして発見されたか」にはこの作図方法が詳しくのっており、面速速度一定の法則の必要十分条件が中心力であることを幾何学的に証明している。「"本当にわかった"と思うのは、物事に二通り以上の説明ができた時だ」とファインマンは語っていた。「授業を通して、数式を使った方法、幾何学を使った方法の2つの側面から万有引力の法則を見ることができ、生徒たちに物理の魅力を伝えることできているのではないかと思っている。」と阿部さんは語る。

最後に、阿部さんの授業では原子物理学で扱う E=mc^2 と E=pcの式を導出するために、相対性理論の力学部分のみを紹介する。幾何学的な要素を含んでおり、私たちが普段考えている、見えている空間(座標)とは何なのかを考えさせられる。私は人間なので、ついつい人間本位の物の見方をしてしまうが、自然は本来どんな形をしているのか、もっと謙虚な姿勢で受け止めたい、と阿部さんは語った。

天気図&気象衛星DVD紹介 藤澤さんの発表
会場校に併設されている中学校に勤める藤澤さんは、tenki.jpの気象衛星雲画像と気象庁が提供している3時間ごとの地上天気図を1年分集約し、パラパラ動画にして毎年提供してくれている。気象衛星のみ/天気図のみ/気象衛星&天気図の3種類のメニューがある。特に、雲画像と天気図が対照できるモードは便利だ(右図)。会場ではオフラインでも使えるDVD(左図)が無料で配布されたが、オンラインでも藤澤さんのWebページ「日本付近の気象衛星画像/天気図 2025年版」から参照/ダウンロードできる。

2つのルーペ/聖護院ダイコン 加藤さんの発表
3倍のルーペの上に2倍のルーペを重ねて見ると約0.7倍の倒立像が見られた。ちょっと不思議なのだがどうしてだろう?…と加藤さんは問題提起した。例会の場では、2つ重ねルーペでは合成焦点距離が短くなり、対象物が焦点距離の外に出たため縮小された倒立像になったと解釈した。加藤さんがChatGPTに尋ねたところケプラー望遠鏡構造になっており、合成倍率はf2/f1=0.67となり約0.7倍に観察されたことに一致しているとの回答だったという。AIの解釈は正しいのだろうか。
また加藤さんはシェア畑で聖護院ダイコンを栽培した。聖護院ダイコンはまるでカブのような丸い球状をしているが、尾張の長首ダイコンが京都聖護院地区に持ち込まれて丸い球になったらしい。加藤さんが食したところ、まるでカブのような食感だったという。ダイコンとカブは同じアブラナ科ではあるが属が異なり、自然に交配することは起きないはずだ。どうしてカブのような丸い球状になって食感もカブに似たのだろうか?これまた加藤さんがCOPILOTで調べたみたところ、聖護院ダイコンは山科ダイコンとの交配が起きて、聖護院地区の土壌との組合せで丸い球になった可能性があるとの回答だった。

無線給電のモバイルバッテリー&感光器の紹介 平野さんの発表
平野さんは、学校で使える教材の開発・情報提供をしている電気学会からいただいた教材のキットの一部を用いて、無線給電のモバイルバッテリーで遊んでみた。15回程度巻いたコイルにLEDをつなげたものをモバイルバッテリーの上に置いてボタンを押すと点滅し、しばらくすると消える(左図)。充電できる端末が置かれなければ、電源はすぐに切れるらしい。会場での「充電中の様子はどうなるか」という質問について、後日追実験をしたところ、バッテリーとスマホの間にコイルを挟むと、一瞬明るく輝いてLEDが切れてしまい、コイルの巻き数を減らしたら点灯し続けたとのこと。
また、視覚特別支援学校に勤務する平野さんは、理科の実験で必須の「感光器」(右図)についても紹介してくれた。受光部から入る光の強度によって、音の高さが変わる仕組みだ。例えば今回のようなLEDの点灯を確かめる実験ならば、5
cm程度(実験による)に切ったストローにLEDをはめ、反対側に感光器の受光部を差し込むと視覚障碍のある生徒でも簡単に実験できる。LEDとの距離が近いと音が高すぎて明るさや点滅が判別できないことがあるので、ちょうどよい距離を取るのにストローが役立つのだそうだ。また液の色が変わる化学実験でも、色はわからないが、液体の色によって試験管を通る光の強度が変わることから、「変化した」ことを確かめられるという。
初参加の平野さんは、発表後、「初めて参加させていただき、名刺代わりの小ネタと思って持ってきたものですが、みなさまと色々なお話ができて大変勉強になりました。みなさまに資格特別支援学校での実験を知っていただいて、これからもたくさんアイディア、アドバイスをいただけたら嬉しいです。」と語った。

10分で作れる直流安定化電源 鈴木駿久さんの発表
鈴木さんは、先月のYPC12月例会での中島さんの発表に関連して、2種類の簡易直流安定化電源の製作について発表した。どちらも、DC-DCコンバータを可変抵抗器で電圧を調整するものである。
1つ目は、栃木県の唯一(?)の電子部品屋さん「正栄デンシ」で実物で紹介されていたもの。お店にはDC-DCコンバータにボリュームが半田付けされた状態でキットとして販売されていて、そこにACアダプターとミノムシクリップを取り付けるのみで作成することができた。

2つ目は、Amazonで購入したDC-DC昇降圧コンバータで作成したものである。こちらは、USB給電で使用できる。AmazonのUSBの延長ケーブルも使用した。ワニグチクリップを取り付けただけで完成し、10分で作成することができた。作成の動画(YouTube9分9秒)はここ。

鈴木さんは発表の最後に「どちらの直流安定化電源についても、プラス(赤)とマイナス(黒)の導線の長さを同じにしてしまったため、ショートする恐れがある。作成する際は、長さに差をつけることを強くおすすめする。また、基板が剥き出しのため、こちらもショートを防ぐためにケースに入れたり、ビニールテープで巻いたりする等の工夫をすることをおすすめする。」とコメントした。
価格的には電子部品屋さんで購入するよりAmazonなどのネットショッピングの方が安いが、電子部品屋さんに行くと実物の展示があってアイデアを仕入れることができたり、お店の方に作り方を教えていただくことができるので、電子部品屋さんの存在も大変貴重である。
ホール素子 阿部さんの発表
阿部さんは、ホール素子の実物を生徒に体験させたくて、秋月電子のGaAsホール素子 HG-166A-2U(左図)を入手し、センサーを自作して生徒実験とした。ホール素子を取り付ける基板(右図)はKiCADを使ってデザインし、PCBgogo <https://www.pcbgogo.jp>という会社に発注した。寸法 71.2×6.8 mm,、枚数50枚、 有鉛はんだ処理のもので3,003円だった。
参考にしたのはYouTubeの紹介動画である。
【ピコの電子工作 <https://www.youtube.com/watch?v=xc_O_ZW-VHw>】
【ELEN Channnel <https://www.youtube.com/watch?v=dIstT4BiICA>】

生徒実験ではホール素子に4.5Vの電圧を加え(単三電池3本)、4mA程度の電流を流しておく。ホール電圧出力はデジタルテスターで測定する。最初にオフセット電位差を測定しておき、ホール素子はものさしに垂直に固定して、磁石との距離rを変えながら、ホール電圧Vを測定、オフセット値を差し引いて校正する。さらにr=0での電位差を1として相対値を求める。磁石の極を入れ替えるとホール電圧の符号が反転することも確かめる。

ニュートンビーズ実験 夏目さんの発表
ニュートンビーズとは、高いところに蓄えた長い鎖をその一端から自由落下させると、噴水のようなアーチがたぐり出し点の高さより上に立ち上がる現象である(左図)。動画(movファイル5.8MB)はここ。テレビでこの現象を紹介したこともある夏目さんは、この現象の力学的全解析を追究してきた。地元の千葉で行われた今回の例会で、その概要を紹介してくれた。
右図はその関連のおもちゃジップストリング(ロープランチャー)の実演。手に持った部分から上方に繰り出される糸が高速で回りながら形状を保つ。動画(movファイル10.9MB)はここ。

さて、鎖の自由落下では加速度は重力加速度gの3分の1である。これは落下の際、非弾性的に加わる質量が落下を妨げるからである。鎖が上昇するのは、連続体となった鎖から非弾性的に鎖の基本パーツが引き上げられる際に、パーツが剛体であって、他端が床(他のパーツ)から抗力を受けるためである。異常抗力と呼ばれている。その分だけ、既につながって連続体となった鎖からうける張力ρu2 (ρ:線密度、u:速さ)に対抗する下向き力が小さくなる。その差分だけ上向きの加速度となるわけである。
右図のように量を定義して、鎖の運動方程式を作ると、
机から頂点までについて h du/dt=-3Uu+U2+αu2-hg
頂点から床までについて (U+v)2 +(h+x) dv/dt=(h+x)g
が得られる。ここで重要なのは、台が鎖に及ぼす「異常抗力」N=αρu2 のパラメータαで、剛体の形によって0から0.5の間の値をとる。
これらの方程式は、非線形連立方程式であって容易には解けないので、夏目さんは等加速度運動の解を想定して議論した。

x=(1/2) at2 、h=(1/2) At2 、v=at、U=At、 dv/dt=a を仮定して前述の式に代入して整理すると、厳密解として
A/g=(-(15-8α)±√(225-108α))/(66-32α) が得られる。
抗力が働かないとき、すなわち α=0 のとき、負でない解は A=0 のみとなって、鎖の頂点の上昇はなく、解は自由落下の場合に一致する。一方、α
が有限の時、A/g の正の根を α の関数としてグラフにすると右図のようになる。これを見ると、現実的な値(α=0.3~0.4)では、自由落下の加速度g/3の十分の一程度であることは興味深い。

次に、実験によると、鎖の先端が床に着いてしまうと、まもなく頂点の上昇が止まり、鎖は上に凸の形を保ったまま落下を続ける。前述の運動方程式をもとに、鎖の先端が床に着いたあとの定常状態を議論する。床からの効力は完全非弾性的で鎖の運動に影響を与えないとする。
床から台までの高さを h1、台から頂点までの高さを h2 とする。定常状態では x=h1、h=h2、かつ dv/dt=0、U=0 である。鎖の速さは v=u となって、この値を v∞ とおいて代入すると、前記の運動方程式は結局、0=αv∞2-h2g、 v∞2=(h1+h2)g となる。これらより、h1に対するh2の比は異常抗力のパラメータ α によって、α=h2/(h1+h2)、 h2/h1=α/(1-α) と与えられる。これは、既にBiggunsとWarnerによって報告されている定常状態の関係式と一致している。
最後に、等加速度運動とみなせる運動が終了した後、定常状態に移行するまでの運動方程式は、(h+h1) dv/dt=(h+h1)g-(U+v)2 となる。これも容易に解けないが、夏目さんは指数関数解を仮定して探索した。ここでは詳しい計算は省略するが、緩和時間をτとして v∞ ⁄τg を無次元の変数とした三次関数が得られる。左図はそのグラフである。
αの値による三次方程式の解のふるまいを吟味すると、αがはじめから厳密にゼロの場合、鎖に頂点が生じて上昇することはなく、α が微小でも有限であればα→0
という極限で v∞ ⁄gτ→1⁄3 となる解が実現する。α=0とα→0は解析的に連続しない。
現象を支配する有限なパラメータが無限に小さくなった極限と、もともとゼロだった場合とが異なる、ということは流体力学問題にはしばしばあるとのこと。そのような特異性がニュートンビーズという鎖系で出現していることが珍しいと夏目さんは強調する。
詳細な計算過程と解説は夏目さんの発表資料(PDFファイル428KB)を参照のこと。

プロジェクター時計 天野さんの発表
天野さんが見せてくれたのは「プロジェクター時計」。一見、数字が大きいだけのデジタル置き時計に見えるが、右側部分がプロジェクターになっており、壁や天井に時刻を投影できる。高輝度の赤色LED表示器の数字をそのまま光学的に投影しているようだ。投影方向は右図のように調節できる。暗い寝室などでわざわざ起き上がって時計を見る必要がないという便利アイテムだ。表示に電流を食うらしく、投影し続けるには外部電源が必要。

共振・共鳴・固有振動数 古谷さんの発表
函館での用事が済み、時間があったため、古谷さんは五稜郭公園内に再建された「箱館奉行所」を見学した。その際、3つの瓶(かめ)が展示されているコーナーが目に留まった(右図)。「見どころ 式台の埋め甕」という解説によると「再建のための発掘調査の中で掘り出されたもの。玄関と内玄関の式台跡から信楽焼の大瓶が発見された」とのこと(下段左図)。そして、瓶は「音の反響のため」であること、「同じような目的としては能舞台がある」と解説は続いていた。

埋めた瓶の目的とした「音の反響」の解説を読み、古谷さんはフッと55年前の記憶がよみがえった。
場所は大学の研究室。4年生だった古谷さんは「一度やってみたい」という思いから、ひとり私物のオーディオ機器を持ち込んだ。そして、ある範囲の正弦波の再生を試みたところ、窓と窓枠が激しい音と共に揺れだした。ちょうど「330Hz」をジェネレーターが示した時である。聴覚のみならず全身で音波が及ぼす凄さを体験した。「共鳴・共振」を深く理解した半世紀以上前の体験だという。右図はその時の場面をできるだけ忠実に再現しようと、古谷さんがAIに指示して作らせたものだ。
さて、報告の本題は、「箱館奉行所の建築にあたり、必要最小限の設備の中に音響効果のための瓶の設置が必要であったのだろうか」ということだ。幕末の頃、当時の海外からの開港圧力を受け、短期間で建築しなければならないという事情が推測される。そんな中、廊下の下の「音響効果」はどのような意味をもつのだろうか、それは大いなる疑問だ、と古谷さんは言う。
古谷さんは手始めに「能舞台の音響効果の実態」調べてみた。その結果、瓶を地面に垂直に埋める方法の他、やや斜めに埋める、ひっくり返して設置する、等々意外な設置方法があることが分かった。しかし、求めている謎に迫るものとは思えない。「あとは『発掘調査報告書』に目を通すことかな、とも思うのだがいまいち気が重い。」と古谷さんは語る。

学校のエレベーターによる慣性力 鈴木駿久さんの発表
鈴木さんは学校にあるエレベーターで、慣性力を利用した実験を行ない、加速度を測定して校舎の1階から2階の高さをざっくりと求めた。「物理の教科書」に、はかりに乗ってもらった。YouTubeの動画はここ。
ちなみに、物理の教科書が490gであることに鈴木さんは感動した!これにより、加速度の計算がちょうど計算しやすい値になる!教科書出版社はそこまで考えていないだろうが…。

上向き加速時は、550gとなり、慣性力を実際に数値で体感することができた。そして、この値を元に加速度を求めると1.2m/s2となった。これより、学校の1階から2階の高さをざっくりと計算したところ、6mとなり、妥当な値を求めることができた。

二次会 千葉駅前「まな板の上のサカナ」にて
10名が参加してカンパーイ!新年初の例会は千葉県での開催。2年前の7月例会以来、二度目の会場だ。例会会場には会場校の校長先生まで足を運んでくださった。こういう自主研修活動に理解を示していただけることはとてもうれしい。
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