例会速報 2019/08/24 八王子セミナーハウス


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは月末発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

大学セミナーハウス 合宿例会の会場
 YPCの8月の例会は、合宿でたっぷり、じっくりやることになっている。ここ7年ほどは八王子にある宿泊研修施設「大学セミナーハウス」を利用している。比較的低料金で宿泊でき、研修室も使える。写真左は独特のデザインの管理棟。右は例会会場となった「さくら館セミナー室A」。冷蔵庫や給湯設備付きなので、飲食を楽しみながらゆっくり討論ができる。東京都内とは思えないほど緑に恵まれた環境で、夏の合宿気分も味わえる。
 

第49回物理合宿研究会報告・石川幸一さんのモーター 鈴木健夫さんの報告
 8月の合宿例会では、いつもの授業研究に代えて、夏休み中に参加した学会や研修会の報告会を行う。一人で全てのイベントに参加はできないので、参加者が報告を持ち寄って、情報共有するわけだ。まず、鈴木さんが東京物理サークルの恒例の「夏合宿」の報告をしてくれた。以下、鈴木さん自身のレポートから。

 東京物理サークルの「物理合宿研究会」に参加した岐阜物理サークルの石川幸一さんが、自作の実験教材をたくさん紹介された。しかもそれを安価(ほとんど材料費以下)で参加者に譲っていただいた。若い人から順に、という形で、素晴らしいものがたくさんある中で、私の番(おそらく私でも参加者の半分よりも前!)に残っていたクリップモーターの原理で回る自作モーター2種をゲットした。こんなものを私の番までに残している若手は遠慮しすぎだ。
 黄銅の軸に熱収縮チューブをかぶせ、それを上半分だけ剥がすことで整流子とし、上から導線を触れて回転させる。
 動画(movファイル3.4MB)はここ
 

 上は普通のクリップモーターと同様のコイル回転型だが、下はコイルを固定し、磁石を回転させる形のモーター。整流子に熱収縮チューブを用いている点は同じ。授業では、(自慢げに)見せるだけになりそうだが、見る価値のある素晴らしい作品だ。
 

第49回物理合宿研究会報告・小林誠さんの講演 鈴木さん・市江さんの報告
 これも、東京物理の夏合宿の報告。「物理合宿研究会」は毎年著名な物理学者を迎えて最先端の物理を講義していただく、という企画がある。今年は、2008年ノーベル賞受賞者の小林誠さんだった!ノーベル賞学者と20人ほどのメンバーとで食事・お風呂・お酒の席も一緒にできるという、素晴らしい時間だった。
 

 講演は「素粒子物理学は自然をどうとらえるか」というテーマ。素粒子物理学の発展の歴史から始まり、ご自身の業績である「小林・益川理論」の詳しい解説や、その確認実験である高エネルギー加速器研究機構(KEK)のBファクトリーの実験の詳細を講義していただいた。
 

 業績の素晴らしさを改めて実感し、色々な質問にも詳しく答えていただいた。小林先生のパワーポイントファイルをいただいているので、鈴木健夫さんにご連絡を、とのことだ。
 

科教協大会レポート・中学理科の電気の授業 市江さんの発表
 市江さんは8/11の科教協福岡大会で、物理分科会のレポーターをつとめた。その発表内容の紹介である。以下は市江さんによるコメント。

 水流モデルについては、これまでもいろいろと議論されてきたが、そうしたやり取りをしたり、聞いたりしていると、高校物理と中学理科の教員の間で認識に大きな隔たりがあるように思う。どちらの言い分も理解でき、板挟みになりながら、中高生両方を相手に工夫をしてきた中学理科の電気、特にオームの法則の授業の流れについて紹介する。この単元で中学生は、実験で確認できる事象を数式で表現し、モデルでイメージをつかむといった難解な科学的手法をはじめて本格的に体験する。生徒の科学観を育てる大変重要な単元だ。一番大切なのは、論拠はモデルではなく、実験におくこと。モデルはあとから補足的に科学的描像を得るために用いるのがよい(写真下段右)。
 

 授業の配列(写真左)や実験内容(写真右)は平成4年、8年の検定教科書に準じている。子供達の理科離れが叫ばれはじめた頃の教科書で、実験中心に組み立てられている。現行の教科書はゆとり教育の反動のためか、ぶつ切り知識の羅列が目立つ。これはこれで大きな問題である。特に直列回路と並列回路の電流電圧の測定は、乾電池と豆電球で行わせ、オームの法則とは完全に切り離されている。内部抵抗のある乾電池と非オーム抵抗の豆電球を使って、どうやって中学生に定量的な理解をさせようというのか?ぶつ切り甚だしく、わかりやすさを履き違えているといわざるを得ない。
 

 論拠を実験におくためには、生徒達が道具を正しく使い、できる限り正確な測定ができるように指導が必要である。学期初めから定期テストまでは、道具の使い方の実習や実験・測定にたっぷり時間をかけてとりくませる(写真中段左)。難しい計算演習はテスト後にまわす。より正確な測定のためのポイントは、電源出力端子の電圧のモニタリングである(写真左)。電源装置の内部抵抗やその他いろいろな要因で、意図した電圧が回路にかかっていないことが多分にある。電圧のモニタリングを行わせることで、中学生でもほぼドンピシャの測定ができるようになる。もちろん、我々教員の後押しあってのことだが・・・。
 

APEJ岡山大会レポート・直流回路の教え方 山本の発表
 山本は、8/4に岡山理科大で行われたAPEJの夏期大会での発表を再現した。題して「直流回路の教え方~なぜ直列が先なのか~」。
 中学校の直流回路の学習では抵抗の接続を扱う。その際、直列接続をまず取り上げるのはなぜだろう。実用的には電源に対する負荷の接続は圧倒的に並列接続が主体で、直列接続は特殊である。高校教科書でもすべて直列→並列の配列となっているが、「公式が簡単だから」という理由で教える順番を決めていないだろうか。これが問題提起である。
 

 高校のコンデンサーの接続では、並列が先に登場する。もし、オームの法則が、オームの時代と同じようにコンダクタンス(抵抗の逆数)で表記されていたなら、公式の形は逆転したはずである。それでも直列を先に教えていただろうか。教える順番が、内容の重要性や生徒の概念形成ではなく、公式の形が先行する形で決められていないだろうか。
 電気回路の実際においては、電源に対して負荷を並列につないでいくのが基本である。直列接続は抵抗でもコンデンサーでも特殊なケースであり、先に教えなければならない重要性は見当たらない。電流保存と電位の概念をつかませたいのだから、まず並列接続から教えたら良いではないか。そもそも、実用性に乏しい「接続公式」を教科書本文にうやうやしく太文字で書く必要はないのではないか。そんな式を使う場面は「パズルのようなテスト問題」以外にはないのだから。APEJ大会での発表資料(パワーポイント)はここ
 

かがくのとものもと 竹部さんの書籍紹介
 「かがくのとも」はアポロ月着陸と同じ1969年に創刊された、世界初の月刊の幼児向け科学絵本だ。このたび50周年を記念して福音館書店から「かがくのとものもと」(2500円+税)が発売された。絵本601作品分のあらすじ等が紹介されている。
 

sphere 竹部さんの発表
 竹部さんが会場に持ち込んだのは、知育玩具「スフィアボールラージ」¥5,400。カラフルなボール型のフレームが伸縮するボール。だいぶ前に神谷さんが紹介していた「ホーベルマンスフィア」と同じもののようだ。空中に放り上げて遊んだりもするが、紐でつるして回転させると、ボールを縮めた時に回転の角速度が増す。アイススケートのスピン増速の原理でもある、「角運動量保存の法則」の説明に使えそう。動画(mp4ファイル8.9MB)はここ
 

簡易加速度計 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんは1992年頃にフロッピーケースを用いて加速度を測る「簡易加速度計」を作り、YPCや『理科教室』や科教協で発表したが、フロッピーケースが入手できなくなった現在での改良案である。CDケースを用いる。ただし、最近のCDケースは薄型で一体型のものが主流になっているが、この工作で用いるのは内側が取り外せる厚手のものである。外枠だけにして、写真のような目盛りを印刷して貼り、中心からワッシャを結んだ糸を垂らすだけである。
 以前は生徒数分作り、いろいろなものの加速度を測ってくるという宿題を課していたが、今は円運動の向心加速度を確認するのに用いているとのこと。

超簡単モーター・改 市江さんの発表
 2003年10月例会で発表したフィルムケースを使った簡単モーターの改良版である。最近はフィルムケースが入手困難となり、なかなか代替品が見つからず困っていたところ、SFCの平松さんから試飲用のプラコップが使えると聞き、早速試してみた。プラコップは100円ショップ、セリアの110ml CLEAER CUP(写真左)がちょうどいい。このコップの底に細く切ったアルミホイルを十文字に重ね、画びょうで固定し、セロテープでも適宜固定する。
 

 別のアルミホイルで包んだ磁石の上に単3乾電池を置き、プラコップを逆さにして、画びょうの先端が電池の端子に接触するように重ねると、勢いよく回転し始める。写真はアルカリ電池だが、マンガン電池でも十分よく回る。ほとんど乾電池をショートさせているに等しく、電池の発熱、液漏れ、発火を防ぐため 、ローターであるコップを電池にのせたまま放置するのは厳禁である。用いた磁石の径が小さかったため、ブラシに相当するアルミホイルが磁石に触れるようにコップの口のところで折り曲げている。かなりラフにつくっても、柔らかいアルミホイルが適度に変形するので大丈夫(写真右)。これ以上作るのも理解するのも簡単な教材用モーターは他にはないと思われる。動画(movファイル3.1MB)はここ
 

北海道自主研・三笠の部 古谷さんの発表
 古谷さんと天野さんは、8月11日科教協福岡大会から羽田に帰着するやいなや、今度は北海道へ、ツーマン自主研修に飛び立った。その一部の報告があった。北海道で立ち寄ったのは、日高山脈博物館、忠類ナウマン象記念館、三笠市立博物館等である。今回の報告は三笠市立博物館の表側の現存する炭坑関連施設と、博物館の周辺と裏側にある石炭の地層(三笠ジオパーク)だった。
 

 さらにこれらの施設を案内してくださったのが、バス停の待合室で偶然に出会ったジオガイドの方。彼は定年退職後に勉強をしてジオパークの「A級案内人」の資格を取得したとのこと。古谷さんと名刺を交換して自然科学教育関係者であることを知ると、非番であるにも関わらず、丁寧な案内をしてくださった。お陰で、古谷さんたちは目から鱗の多くの知識を得た。古谷さんと同じ年齢、団塊ど真ん中世代の案内人のエネルギッシュな生き方からも多くを学ぶことができた、との報告だった。
 

夕食と乾杯 食堂とセミナー室にて
 18時で例会第1部を終了して、夕食と入浴の時間とする。食堂は若い学生やスポーツクラブの子どもたちで賑わっている。なんだかこの一角だけ平均年齢が高いようだけど、気にせず「いただきまーす」。
 20時に第2部を再開。ここからは、テーブルの配置を変えて、飲みながら、食べながらじっくりとやる。残っているのは泊まる人ばかりだから、時間を気にする必要はない。「カンパーイ!」でエンドレスモードに突入。
 

神泡サーバー 越さんの発表
 越さんはサントリープレミアムモルツ12本パックに1個ついている、「神泡サーバー」(数量限定キャンペーン品)を紹介した。これは電動(単4乾電池2本)で超音波振動子(40000Hz)を缶の側面の注ぎ口近くに当てるホルダータイプの物で、簡単にクリーミーな泡が得られる。以前の神泡サーバーは、手動で注ぎ口を通過する際にかき混ぜるタイプで、使用後洗浄する必要があったが、3代目のこのサーバーは、缶の外側から振動させるため、洗浄の必要はない。
 

 アルミ缶の縁に触れる部分に銀色の超音波発振子が見える。写真右は、分解して振動子と回路部分を取り出したもの。意外とすっきりした回路基板だった
 越さんは、このおまけの「神泡サーバー」ほしさに、12個パックを7セットも買い占めた。しかも、例会参加者に「神泡サーバー」を無料で分けてくれるという。何と親切なのだろう。「良いものは買い占めよ」というYPCの掟は今も生きている。
 例会では第2部のはじめに、「神泡サーバー」をめぐる恒例のジャンケン争奪戦で大変盛り上がった。さすが、物理とビールをこよなく愛するメンバーだ。
 

 タカラトミーアーツの「ビールアワー 極泡スマート」(同じホルダータイプ)や「ビール泡立器 ソニックアワー」(写真右。グラスの底面を超音波で振動させるコースタータイプ)などの市販品もあるが、実売価格は1000~3000円程度である。詳しくはこちら
 

物理実験小物紹介 舩田さんの発表
 舩田さんは千葉県のおもしろ物理研究班の研修会で紹介した実験の一部を例会でも披露してくれた。
①リング落とし:慣性の法則を示す実験…ダルマ落とし→タボ落とし→乾電池落とし→リング落とし。多数が成功する実験の方が好まれる。後に逆のリングキャッチャーを試させると盛り上がる。
②思い込みによる錯視いろいろ:人形焼きは凸だと思うと、凹の焼き型を見ても凸に見える(写真右)。光は左上から来ると思うと、右下に影は凸の物体。人の顔は凸なので交差法で見ても平行法で見ても凸に見える。片方ダークにしたメガネで単振動が円運動に見える。屈折で赤色は手前に見える。凹の顔の羊は見守っているように見える。背が低くなっても一人は一人のかくれんぼする子ども。
 

③小型高圧電源装置の使い道いろいろ:小型高圧電源装置は★空気中の放電★オゾンの発生★放電箱の電源★空気GM管の電源として使われている。
④3色LED装置とグレーティングシート:R、G、B3色のLEDの各色に抵抗とスイッチを付けた装置(写真下)。RとGを同時に付けると何色に見えるか。RとBでは何色、GとBでは何色という具合に加法混色の実験ができる。グレーティングシートを用いると加法混色の後、もとの2色に戻す観察ができる。
 

リード笛で「あ・い・う・え・お」 天野さんの発表
 これも8月の科教協福岡大会の報告。リード笛の音(ホワイトノイズ) が口の形で「あ・い・う・え・お」に聞こえる実験は岐阜Cの土肥さんのネタである。リード笛の部分については、天野さんなりに作り方を改良してみた。動画(movファイル2.8MB)はここ
 受け口の改良はさらに進み、次回例会で発表できるという。請うご期待。
 

揚力の発生を生徒にどう説明するか 山本の発表
 揚力の発生を子どもや生徒に説明するのは難しい。物理学の世界では「クッタ・ジューコフスキーの定理」として百年以上前にきちんと説明されているし、実験と整合することも確認されている。ただ、その数学的表現や概念がなかなか難しいのでそのままは生徒に示せない。
 そこで、よく咀嚼しないまま、少し易しい言葉で説明しようとして、いわゆる「同着説」「ベルヌーイの定理説」「コアンダ効果説」そして「衝突説」のような、誤った、あるいは誤解を招きやすい説明が登場し、怪しげな実験と共に示されることになる。困ったことに、これら、より易しい説の方が一人歩きして幅をきかせている現状がある。ウソを教えないように気をつけたい。
 高校生なら加速度による軌道の曲がりや、向心力を理解しているはずだから、「流線曲率の定理」によるのが比較的わかりやすい説明になるだろう。あるいは、流線が全体として翼後方で下に曲がっていることから翼は気流全体から反作用を受けていると言ってもよい。流体の場を全体としてとらえる視点は大切である。 
 高木正平「なぜ翼に揚力が発生するか?・ベルヌーイの定理か流線曲率の定理か」日本機械学会誌201004・Vol.113 No.1097 が参考になる。発表資料のPDF(119KB)はここ

紙飛行機とブーメランの科学 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんの勤務校では、昨年から夏休み中の講習を発展させて、全教員で探究的な講座を開いて実施するようになっている。高3には受験講座を用意するが、中1から高2までは、各教員が得意なことや好きなことを講座として独自に考えたり、外部の講師を呼んだりして工夫している。弁護士を呼んできて模擬裁判をしたり、家庭科と理科の教員がコラボしてプリンを美味しくする条件を探ったり、多岐に渡った講座が用意されている。90分4日間という日程である。鈴木さんは、「紙飛行機とブーメラン」をテーマにした。紙飛行機やブーメランがよく飛ぶ条件をいろいろと工夫する中で探るという活動ができるのではと期待した。
 

 実はこの企画の直前に、先月7月のYPC例会で、全くの偶然で上記の山本の発表のプリントが事前配布されて、鈴木さんはこれを読んだ。7月例会の翌々日が講座の当日で、揚力の説明のパワーポイントもプリントも用意し、山本のいう「怪しげな実験」もまさに用意していた。
 そこで鈴木さんは例会翌日に説明を見直し、スライドや資料を急遽変更して当日のイベントに臨んだ。すばやいレスポンスで、ウソを教えないですんだのは鈴木さんの英断だった。
 

パイソン&ラズベリーパイPC 天野さんの発表
 2017年6月17日(土)学芸大附属高校でカリフォルニアの高校教師Peter Halversonさんを囲む臨時ミニ例会を行ったことがあった。そのときPeterさんが紹介してくれたのが、アメリカの教育現場でよく使われているというプログラミング言語Python(パイソン)だった。
 天野さんは、外部とのやりとりにPython(パイソン)の研修が役立ったので、Raspberry PiというワンボードPCと、標準搭載のPythonが、物理実験に使えると考え、実演を交えて紹介してくれた。
 Pythonは、一般のPC用のものも各種フリーで配布されていて、森巧尚著「Python1年生」(翔泳社)などの超初心者向け入門書も出ている。
 

 一方、Raspberry Pi3(ModelB)は、写真のような小型ワンボードマイコンながら、かつて一世を風靡した往年の名機PC-9800の遥か上を行く性能である。ソフトもインターネットで無償で入手でき、インストールも簡単である。officeソフト・Python(パイソン)・Scratch(スクラッチ)も無償で供給されている。ポートを通じて信号の入出力ができるので、計測や制御のプログラミングも容易である。
 

 モニター、マウス、キーボードを接続するだけで、PCとして機能する。写真左はOfficeのスプレッドシートを開いた画面、右はPythonの画面。描画にカラーが使える。
 

静電気の生徒実験 市江さんの発表
 市江さんは、以前平野さんから教わった紙袋入りストローと楊枝を使った静電気の生徒個人実験を自分なりにアレンジしてみた。紙袋からストローを取り出すところから実験ははじまる。紙袋の上からストローを力いっぱい強くつまみ、密着させながら、ストローを引っ張り出す。これだけでかなり帯電する。ストローはつぶれ、ジャバラはのびてもかまわない。左写真の図のように、曲がるストローのジャバラ部分をうまく利用して、ストローの回転子をつくる。ストローは2つに切り、ジャバラがある方はジャバラ部分が真ん中になるようにする。さらにジャバラ部分の下半分を八の字型にハサミで切り落とし、穴をあける。机の端にセロテープで固定したシャーペンや竹串などの先端にストローの回転子をバランスよくのせて完成(写真右)。この回転子に切り残したもう一つのストローを近づけると反発し、紙袋を近づけると引き合う。ストロー同士は負に帯電し、紙袋は正に帯電しているからである。
 

 紙袋の正電荷は手で触るだけでリークしてしまうので、実際は静電誘導で引き合っているのだが、市江さんは静電誘導を学習するまではあえてこのことに触れないようにしている。写真はそれを静電気メーターで確かめているところ。紙袋入りストローを静電気メーターにセロテープで固定し、ストローを引き抜くと、赤いLEDが点灯し、残った紙袋が正に帯電することが確認できる(写真左)。そのまま紙袋に触れずにストローを元に戻すと±0となり、電荷保存が確認できるのだが(2013年8月例会田中さんの静電気メーターを参照)、ここで紙袋を手で触って正電荷をリークしてから、ストローを戻すと青いLEDが点灯し、ストローの負電荷が打ち消し切れていないことがわかる(写真右)。
 

立体錯視の最前線 越さんの発表
 明治大学博物館にて、特別展「見えているのに見えていない!立体錯視の最前線」が9/8(日)まで開催されていた。タイプ別に最新の様々な立体錯視が展示されていたが、越さんは撮影してきた多数の写真を紹介した。
 

 直接見たものと、同じ物体をそのむこうに鉛直に立てた鏡に映して見たる像が、全く異なって見えるもの。視点を変えると違う形に見えるよう計算して作られている。
 

 同様に、水平に置かれた鏡の上に置かれた物体と、鏡に映った像を一緒に見ると、上下非対称の一つの物のように見える展示もある(写真右)。奥は花だが鏡像は上に開いた葉のように見える。手前は物体と鏡像がつながって、上下非対称なトランプマークに見える。目を疑うような様々な立体錯視が展示されていた。詳しくはこちら
 

ミニ・グループワーク 越さんの発表
 越さんは、10分くらいでできる、小実験を伴うミニ・グループワーク集のプリントを紹介した。
・「ガウス加速器、運動量の保存則は成り立っているか?  いる・いない
・「力学的エネルギー保存則は成り立っているか? いる・いない」、
・「ジャンピングフィッシュ、どうすれば、コインを食べる?」
など、理由も考えて簡潔に説明することを目標にしたグループワークのテーマ集だ。
 

 写真のジャンピングフィッシュは2009年3月例会で紹介したものを改良したものだ。平らにつぶした魚の口元にコインを乗せておくと、しばらくして魚が飛び跳ね、空中でコインを食べる。
 

 例会の席でもいくつかの実験を実際にやってみた。左はデッサン人形(ダイソーで300円+税)を片足で立たせる。右は絶縁台の上での電気振り子。
 

比電荷測定器の代わりに 市江さんの発表
 市江さんは、ローレンツ力を手軽に実感できる演示として、よく問題集や教科書にのっている硫酸銅水溶液をローレンツ力で回転させる実験を再現してみた。
 プラスチックシャーレの内側の側面にそって銅板で作った電極を配置し、硫酸銅水溶液で満たし、シャーレの蓋中央にもう片方の電極を固定し、蓋をかぶせてから、シャーレ全体をドーナツ型の磁石の上にのせて電極に電圧をかける。陰イオン、陽イオンがともに同じ向きにローレンツ力を受けるので、溶液は回転する。液面にチョークの粉を少し振りまいておくと観察しやすい。シャーレの蓋は視界を遮るので、中央の電極を突起のついた銅製のおもりにかえて、蓋をなくした方がよいというアドバイスが参加者からあった。


フリスビーコマ 天野さんの発表
 これも8月の科教協福岡大会報告。岐阜物理サークルで発表していた土肥さんのネタの紹介だが、天野さんも改良を施している。土肥さんは独楽の中心の芯を木ねじにし、その先端を色鉛筆の芯をくりぬいたもので受けていたが、天野さんは芯の部分をボルトとナットにして支点位置を調節しやすくし、受けを竹ぐしの先端とした。うまく重心で支えると、マクスウェルのこまとなり、任意の角度で歳差運動なく回転する。
 

爆鳴気のハイスピード動画 益田さんの発表
 PETボトルの底を抜き、口にガラス管付きゴム栓をする。空気が混じらないように注意して純粋水素を捕集する。ガラス管を塞いでいた指を放し、ガラス管の先から出てくる水素に点火する。水素は空気中に出たところで酸素と化合して細々と燃える。ところがこの時水素が上に抜けた分だけ、底なしPETボトルの下から空気が侵入してくる。水素:酸素比が爆鳴気に近くなると、ガラス管の先の火が一気に飛び火して、PETボトルの底部で爆発が起こる。
 益田さんはこの引火の過程をソニーのデジタルカメラ「Cyber-shot RX100M5A」でハイスピード撮影し、コマ送りで引火・爆発の瞬間を詳しく観察した。写真右は爆発が始まった瞬間。下の方の紫色の部分が爆鳴気に近い混合比になって、爆発が起こり始めた部分。上の炎の色との違いに注目。爆発はボトルの下半分だけで起こっていることもわかる。
 

鈴木亨さんの稿を読んで話し合う会のテキスト 広井さん提供
 鋭い視点からの論考とパワフルな活動でわが国の物理教育界を牽引してきた鈴木亨さんが今年、惜しまれつつ若くして世を去った。YPCでは昨年11月の例会での発表が最後の姿となった。
 鈴木亨さんが残した、たくさんの重要な物理教育論文等の資料を集めてテキストとし、その内容についてもう一度話し合おうという研究会が本日の例会と並行して開かれていた。例会参加者は残念ながらそちらに出席することがかなわなかったが、主催者の広井禎先生がYPCのために資料を前もって送ってくださったので、例会当日に参加者に配布した。
 ページをめくり、論文集の内容の重みを感じつつ、亨さんの冥福を祈った。

朝食 食堂にて
 明けて8時からの朝食。部屋に帰ってからも情報交換や討論は続き、3時頃までがんばったという人たちも。このあと三々五々帰路につく。外はからりと晴れた夏空。食堂のテラスからは遠くに南大沢あたりのビル群が見える。セミナーハウスの周囲は一面の緑に囲まれている。
 


前の月の例会例会アルバム目次次の月の例会


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