例会速報 2026/08/22 大学セミナーハウス・Zoomハイブリッド


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは来月発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

夏休みの研修報告 夏休み中の活動や学会で得た成果を報告し合う
 8月の合宿例会では、いつもの授業研究に代えて、夏休み中に体験したことや各地で取材した情報を交換・共有することになっている。
 鈴木さんは科教協全国大会(近畿・羽曳が丘大会)の物理分科会で発表したレポートを報告した。テーマは「一歩一歩のつまずきを拾う~質問書方式の質問から~」。YPC例会で2024年6月2026年6月に報告しているものをまとめ直している。
 その中で、例会で2度議論しているが、全国大会の場でも改めて議論になったことが、この例会でもまた話題になった。それは重力加速度gの筆記体での書き方である。gの最後の払い線を交差させていいのかどうか。鈴木さんは全く気にしておらず、交差してもしなくても良いと考えているが、交差させてはいけないというルールがある、という意見も複数あった。どこにも明文化されていない「見えないルール」というものがあるのだと鈴木さんは感じている。明文化されているものがあるならどなたか教えてほしい。
 

 科教協全国大会(近畿・羽曳が丘大会)には、YPCからも多数が参加し、現地で合流して、お楽しみ広場や講座(旧称:ナイター)を開いている。そうした現地交流の中で情報が飛び交ったのがこの、「Impossible Pyramid」。セリアのおもちゃコーナーで販売されていたという。神谷さんが早速調達してきて例会の会場で分けてくれ、ジャンケン争奪戦の上、あっという間に完売した。
 

 不思議なねじれた円錐形の物体が2個重なっているが(左図)、持ち上げるとするりと抜ける。さかさに組んでもほぼ抵抗なく互いをすり抜ける(右図)。六重らせんの構造になっているらしく、ボルト・ナットのように回転しながらすれ違う仕組みだ。3Dプリンターで製造しているらしい。互いに接着している部分はないので、1回の3Dプリントで2個まとめてつくれるのではなかろうか。
 

 市江さんも科教協全国大会の物理分科会で「ドップラー効果で何を教えるか」というレポートを行った。その報告である。
 ドップラー効果の単元では、とかく公式の使い方ばかりに気を取られてしまいがちだが、V=fλの関係式を基軸にして、明示的に変化する量と変化しない量に分けて注目させた方が、実際に音波がどのように振る舞っているのかを生徒がイメージしやすくなる。音源が動くときは、音速Vが一定のもとで音源の前後で波長が変化し、その結果観測者が聞く音波の振動数に変化が生じる。一方、観測者が動くときは、観測者にとっての音速が変化し、音源が動かなければ音波の波長は変化しない。つまり波長λが一定のもとで、観測者にとっての見かけの音速が変化し、その結果観測者が聞く音波の振動数が変化する。音源と観測者が動くときでは振動数が変化する原理が異なるという見方ができる。音源や観測者の運動の仕方が変わって、観測する音の高さが変化しても観測者にとってのV=fλの関係は崩れないという視点こそ、この単元で最も大切にするべき学習内容だと市江さんは考えている。また、そうした見方ができるようになるには、音源と観測者の動きだけでなく、それ以上に音波の波面そのものの動きについて、「波面は音源や観測者の運動に関係なく、それが生じた位置を中心に同心円状に広がっていく。」という事実をかなり早い段階で生徒にしっかりと意識させる必要がある。
 

 車田さんの報告は、7月の「科学の祭典全国大会」に応募したものの、惜しくも不採用になったという作品の紹介。電磁石を棹の先にとりつけ、ゼネコン(手回し発電機)を回して電流を送りながら魚釣りゲームをするという企画だ。
 

 ゼネコンのハンドルを回しながら、棹から垂らした電磁石をターゲットに近づけるのはなかなかコツがいる。釣り上げた後も休みなくハンドルを回し続けないと獲物は落ちてしまう。「こんなに面白いのになぜ不採用なんだ?」とは例会参加者の声。イベントで子どもたちにウケそうなアイテムだ。
 

プリンカップのマグデブルグ半球もどき 天野さんの発表
 天野さんは、簡易真空ポンプによる「マグデブルグの半球実験」の簡易版を追求していて、これまでにもいくつものアイディアを発表してきた。左図はYPCではもうおなじみの、百均のユリア樹脂製茶碗を2つ合わせたマグデブルグ半球実験器。丈夫でよいが、ある程度の工作が必要で、材料の入手も困難になっている。今回の提案は、プリンの空きカップ2個を向かい合わせ、パッキングとしてゴム手袋の手首部分を使った真空容器(右図)。カップの底に穴をあけ、ビニルテープをはるだけの簡単工作で作れる。
 

 会場の参加者から提供のあった「にぎにぎチーズネズミ」(キャンドゥ、セリアで110円)というおもちゃを入れるとちょうどよいサイズだ(左図)。容器の空気をぬいていくと、かわいらしいネズミが穴から顔を出す(右図)。これは子どもウケしそうだ。
 

3Dプリンターで作る手作り無線通信機 市江さんの発表
 市江さんが今年7月末に開催された「青少年のための科学の祭典全国大会」に出展した「3Dプリンターでつくる手作り無線通信機」の工作会が行われた。鎌倉学園科学部の生徒が3Dプリンターでデザインしたもの。
・市江さん提供の資料(PDFファイル1.2MB)はここ
・元ネタはこちら。【電子工作】コヒーラ電信機を作ってモールス通信実験!【自由研究】/コヒーラ検波器
 材料にアルミホイルやアルミテープを用いてイベント用に作業工程を簡略化し、3Dプリンターで部品を自作するなどコスト削減を図った(左図)。右は発信機。3Dプリンターで印刷したオレンジ色の躯体に圧電素子(黒い部品)を取り付け、躯体の左端から裏側にかけて細いアルミテープを貼り付け、右端の正方形のアルミホイルに接続している。元ネタで用いられている1円玉を折りたたんだアルミホイルで代用している。アルミホイル同士のギャップで火花放電を起こすことで発信している。板状の金属があることで発信効率が上がるようだ。
 

 こちらは受信機(左図)。円筒の側面にボタン電池収納用のポケットをつけた容器を3Dプリンターで印刷している。こちらも躯体裏側にアルミテープを貼り付け、回路をつないでいる。ボタン電池と前面のアルミテープの間にLEDを取り付けると完成。詳しい作り方は上の資料を参照のこと。円筒内のアルミ玉により、意図的に接触点を増やし、接触不良を起こしやすくしている。接触不良でギリギリLEDが光らない状態にしておき、そこに発振器からの電波が届くと、アルミ玉表面の酸化膜がやぶれて通電し、LEDが光る仕組みだ(右図)。
 

 LEDが光ったあとは(左図)容器に軽く振動を与えるだけで再び接触不良になりLEDが消える。これらの操作は何度でも繰り返すことができ、スイッチや通信手段として使える。昔は実際の使われていたのだ。
 市江さんは電波を遠くまで届かせる方法も模索中だ。試みにスタンガンの放電を試してみたが(右図)、強力な放電にもかかわらず、コヒーラはほとんど反応しない。どんな要素がコヒーラの感度を上げるのか、探究してみるとおもしろそうだ。
 

マニキュアで薄膜干渉 山本の発表
 少年写真新聞社の「理科教育ニュース」No.1308(9月18日号)に掲載されている実験の紹介。
 用意するのはラメや顔料を含んでいない透明なマニキュア液(左図)。百均で手に入る。ベースコートでもトップコートでもよい。つまようじやスポイトがあると便利。耐水性の紙皿を用意し、黒画用紙を底に敷く。上から水を注ぎ黒画用紙を沈める(右図)。
 

 画用紙の上の水面にマニキュア液を一滴、はねないようにそっと垂らす(左図)。つまようじの先につけて量を調節するのもよい。滴が垂れないときは、マニキュア液をつけたつまようじの先を水面に触れてもよい。これは例会発表の最中に、鈴木健夫さんが発見した手法だ。マニキュア液が水面に一瞬で広がり、すぐに溶剤が揮発して、水面に薄い固体膜ができる。この時点で薄膜干渉の美しい虹色が観察できるので、歓声が上がる(右図)。
 

 マニキュア液を塗ったつまようじを投げ込んでも面白い模様ができる(左図)。水面の薄膜を崩さないように、水中の黒画用紙をそっと引き上げ、薄膜をすき取る(右図)。次の実験に移るときは皿の水を替えた方がよい。この固体の薄膜は不溶性なので、水面に残った膜の切れ端を、つまようじで引き上げてから水を捨てること。
 

 水から引き上げた黒画用紙を新聞紙などの上に置いて水を切り乾かす。急ぐときはドライヤーをあててもよい。画用紙の黒をバックに、薄膜干渉の美しい虹色模様が観察できる。シャボン玉の虹色と同じ原理だが、この方法なら固体膜なのでしっかりと固定でき、時間をかけて観察することができる。理科教育ニュースでは、これを色紙として使った工作が紹介されている。
 

第2部開始 20:00より 交友館・研修室Aにて 
 第1部は対面17名、遠隔8名、計25名、第2部は対面11名(宿泊)、遠隔4名、計15名の参加があった。合宿例会では例会発表は夕食や入浴を挟んで夜も続くので、「二次会」と呼ばずに第2部と呼んでいる。第2部はアルコール解禁で、テーブルを囲んで宴会の余興風に進める。遠隔参加の皆さんと共に「カンパーイ!」。

断熱変化と等温変化 峯岸さんの発表
 断熱変化と等温変化の違いが分からない、という生徒の困難点はさまざまな先行研究や研究会で報告されている。生徒が実際に実験しながらその違いを実感してほしいという思いで、峯岸さんは簡単な実験道具を制作した。100mLメスシリンダーに二穴ゴム栓をさして、一方の穴にはデジタル温度計、もう一方の穴にはゴム管を通して120mLシリンジに接続する。素早くピストンを引くと、温度計の値が25.8℃から25.3℃になった。ゆっーーーくりピストンを引くと、温度計の値は変らない(変わったとしても-0.2℃くらい)。実験のポイントは、シリンジを手で包み込まないこと。握ると手からシリンジ内部の空気に熱が移動してしまう。
 

 断熱変化をさせたときに温度が-0.5℃しか変わらなかったが、例会参加者からは「空気に比べて、温度計の金属の鞘の熱容量が大きいから、温度変化は小さくなる」「温度計のセンサーをむき出しにしたら、本来の温度変化を測定できるかも」とアドバイスがあった。
 峯岸さんは実験道具とともに、授業案も報告してくれた(右図)。「どちらも同じことをしているから、同じ温度である」という誤解を想定していたのだが、授業では多くの生徒が正しく「②素早くの方<ゆっくりの方」を回答できていたので、疑問に思いアドリブで追質問をしたという。
 

 素早くとゆっくりでは熱の流入出はあるか、という問に対して生徒は「どっちも高温物体に触れていないから、熱の流入出はない」という誤解を多くの生徒がしていることが分かった(左図)。素早くとゆっくりでは空気は仕事をしているか、という問に対して生徒は「どちらも空気は膨張しているのだから、正の仕事をピストンにしている」とこちらは多くの生徒が正しく回答できていることが分かった。そこで、その正の仕事はどちらの方が大きいか、という問に対して生徒はさまざまな誤解をしていることが分かった(右図)。授業中の問に対して、偽正答になっていないか、正しく理解しているかどうか。生徒の様子を見ながらアドリブで追質問をするのは正しく聞けるかどうかドキドキしたが楽しかった、と峯岸さんは報告している。
 

プラスチックの「M」 市原史博さんの発表
 市原史博さんは中学生。中学校の夏休みの課題で、プラスチックについて調べる課題が出た。いくつかのプラスチック製品のリサイクルマーク(識別表示マーク)を探してみたら、「M」と表示されているものがあった。どうもメタルのMらしい。だが、ポテトチップスの袋のように、金属が蒸着されていると思われるものには、Mの文字は書かれていない。Mの表示がある製品は、ある程度分厚くしっかりした手触りで、金属蒸着ではなくアルミシートのように素材として金属を使っているのだと推測できる。
 写真の入浴剤(きき湯)などのように、光で分解しそうなものを保管するための、遮光や遮熱の意味合いがあるのだろうか。
 

 しかし、似たような商品でも、Mの有る無しで違いがあった。どちらもマツモトキヨシで売られていた「むき栗」と「焼きいも」だが、むき栗のパッケージはM(メタル)表示がされているが、焼きいもにはMが書かれてはいない。
 

 封を開けてみると、たしかにむき栗の袋の方が金属光沢が強いように見えなくもないが、油分の量が影響していたりするのだろうか。お客様相談室に電話もしてみたが、「詳しい者が不在です」との返答だった。調べられた範囲では、特に「こういうときにはMを表示しなくてはならない」というルールは見つけられなかった。
 

理科教室の水圧実験 山本の発表
 「理科教室」2026年5月号78ページの飯田洋治さんの記事で取り上げられている実験を追試した。PETボトルのふたに穴をあけて、ビニルチューブを「引きばめ」し、PETボトルの側面には高さを変えて2箇所に穴をあけ、丸箸の先を切ったもので栓をする。(飯田さんの記事ではPETボトルの底に近い位置に穴をあけ、接着剤でストローを接着している。)この装置に水を入れて立てる。ビニルチューブがマノメータの役割をして、内部の水圧が読み取れる。マノメータの液面の高さが大気圧と等しい水圧になっている。
 側面に2つある穴のうち、先に下の穴の栓を抜く(右図)。ちょっと水がこぼれるが、すぐにとまり、マノメータの液面は下の穴の位置に一致する。下の穴の位置で水圧が大気圧と等しくなっているということだ。それより上は水圧も容器上部の空気圧も、大気圧より低い。
 

 次に、下の穴をふさいで、上の穴の栓を抜く(左図)。穴から若干気泡が入るのが見えるが、水はこぼれない。マノメータの液面は上の穴の位置を指す。ここで、上下2つとも同時に栓を抜くとどうなるだろうか、というのが飯田さんの問いだ。答えは右図。マノメータの液面は上の穴を指し、下の穴から水が流れ出る。
 

 上の穴からは気泡が中に入っていくのが見える。上下の高さの差の分だけ下の水圧は大気圧より大きいので、穴から水が噴出する。上の穴の位置が大気圧に相当するので、ボトルの内部の水面が上の穴より高いうちは、水を押し出す圧力差は一定に保たれ、噴流は同じ距離まで届く(左図)。これは「マリオットの瓶」の原理だ。
 ボトル内の水面が上の穴の位置より下がると、噴流の勢いが次第に弱まっていく(右図)。マノメータの液面も、ボトル内の水面と共に下がっていく。
 

若狭宇宙鯖缶 山本の発表
 この夏、福井県に家族旅行をしたときのお土産。旅館の土産物売り場で800円で入手した。その名も「若狭宇宙鯖缶」。JAXAの「宇宙日本食認証」に合格し、2020年11月に実際に野口聡一宇宙飛行士が国際宇宙ステーションで実食する様子が、Youtubeで中継された。
 この鯖缶を宇宙食とする開発に取り組んだのは、小浜水産高校(現在は福井県立若狭高校に統合)の生徒たちで、14年の歳月をかけて研究を積み重ね、認証をとりつけたというドラマがあった。
 

 例会会場ではさっそく開封して宇宙を味わう儀式が始まった。開封した感じは、普通の鯖缶に比べるとオイル部分がゼリー状でねっとりしており、色が濃い印象。液体やフレークが飛び散らないようにするための、宇宙食としての配慮だろう。
 

 皿にあけて、参加者全員で一口ずつ試食する。「これはいける!」「しっかり味がついていて美味しい」などの歓声が上がる。宇宙食は味が濃いめなのだそうだ。
 この缶詰開発のドキュメントは「サバ缶、宇宙へ行く」と題してドラマ化され、6月までフジテレビ系で放送されていた。開発の経緯は福井県立若狭高校のサイトに詳しく紹介されている。
 

土井不曇 市原光太郎さんの発表
 土井不曇(どいうずみ)という物理学者をご存じだろうか。長岡半太郎の研究室に所属し、理科ハウス館長の森さんの祖父である石原純などと同時期の物理学者で、マックス・ボルンの著書を翻訳していたりする。この夏にSpring-8で行われた物理チャレンジで、理化学研究所が「土井式光波干渉計」の解説をしていた。この仕組みを考えた人物である。
 「土井式光波干渉計」の仕組みの解説はこの動画が詳しい。→ https://youtu.be/fqo_UbgprTQ?si=x8avoyVTz9qhEQEs&t=101
 干渉を使ってガスの種類を同定する手法はその前からあったらしいが、平面鏡の調整などがシビア過ぎて、可搬性が高い装置ではなかった。そこに、プリズムを使って再帰性反射させることで、光軸合わせなどは不要になり、可搬装置にすることができたらしい。これにより、坑道など、現地でガスの種類が同定できるようになったという。
 

 他にも、相対論を否定する書籍を出したりしており、調べてみると色々と特異な人物だったようである。しかし、あまり脚光を浴びたことは少ない人物ではないだろうか。以下の文献が参考になる。
・岡本拓司「仲間はずれ、天才に挑む 土井不曇の反相対論
・吉田省子・高田誠二「反相対論者・土井不曇と大正期物理科学界」科学史研究、Ⅱ,31(1992)
 

電子工作関係のYouTubeチャンネル紹介 櫻井さんの発表
 Zoomで参加した櫻井さんは、授業にも使えそうなYouTubeチャンネルを紹介した。
 一つ目は、電気・電子工学全般を扱う「イチケン / ICHIKEN」さんのチャンネル。電子工作だけでなく、高校物理の電磁気分野につながる内容も多い。櫻井さんのお気に入りは、「残念ながら『プロ』と『ザコ』の設計で回路の性能はここまで変わります!」。同じ回路図でも、プリント基板上の配線によって性能が大きく変わることを示した動画。回路図は接続関係を表す模式図であって、実際の配線そのものではないことを説明するのにもよさそうだ。
 

 二つ目は、JVCケンウッドのバーチャル新入社員VTuber、「黒杜えれん」さんのチャンネル。スピーカーやマイクの構造など、授業ですぐ使えそうな動画もある。おすすめは、さまざまな電子部品を短時間で紹介する「今週の電子部品」。すでに80種類ほどが登場しており、このままいけば、いつか秋月電子で買える部品を全部紹介してしまうのでは、と思わせる勢いだ。
 

音律の紹介動画 櫻井さんの発表
 物理からは少し離れるが、伝え方として面白かったのが、豊穣ミノリさんの「音律解説音楽『Tone Palette』」。言葉による説明を一切使わず、動く絵と音だけでさまざまな音律の成り立ちを見せていく。
 

 何でも言葉で説明するより、あえて説明しないことで好奇心を刺激し、自分で考える学びにつながることもありそうだと感じさせられる。
 櫻井さんは、授業に使える面白い動画についても、YPCで積極的に情報交換していきたいと話している。
 

ChatGPTで類題作成プロジェクトを作りました 櫻井さんの発表
 続いて櫻井さんは、ChatGPTのプロジェクト機能と、それを利用した類題作成用のプロンプトを紹介した。
 ChatGPTなどの生成AIには、あらかじめ与えた指示を踏まえて回答させる機能がある。ここに適切な指示を設定しておけば、その後は問題を入力するだけで、一定の方針に沿って類題を作成させることができる。櫻井さんが作成したプロンプトでは、与えられた演習問題を分析し、類題の作成方針を示した上で、類題と解答、生徒に予想されるつまずきや誤概念まで出力するよう指示している。最後には、作成した問題や解答に矛盾がないかを点検させるようにもしてある。
 

 使い方は簡単で、ChatGPTであれば、新しいプロジェクトを作り、「プロジェクト指示」にプロンプトを登録しておく。その後は、プロジェクト内のチャットに問題文を入力するか、問題の画像を添付して送るだけ。問題ごとに新しいチャットを作ると使いやすい。さらに「もう1問作って」「もう少し発展的な問題にして」といった追加注文にも応じてくれる。類題作成や教材研究の補助として、なかなか便利に使えそうだ。
 櫻井さんが作成したプロンプトのテキストファイルはこちら。適切な範囲で利用してほしいとのことだった。
 

科学者の名言 越さんの発表
 越さんは以前、文化祭で生徒の発案によりおみくじを作ったことがあった。来場者に楽しみながらおみくじを引いてもらうために、おもちゃのクレーンゲーム(左図)を用意し、5角形に折りたたんだおみくじをキャッチしてもらった。
 

 今回、科教協全国大会の「科学お楽しみ広場」用に、科学者の名言みくじを作った。その際にまとめた、アインシュタイン、ガリレオ、ファインマンなど科学者(物理学者)の名言リストを例会参加者に配布した(写真)。名言のエクセルファイル(xlsxファイル:21KB)はここ
「教えるということは、こちらが差し出したものがつらい義務ではなく貴重な贈り物だと感じられるようなことであるべきです」(アインシュタイン)
のように、今の(理科)教育にも通じるような名言もあった。
 

戸隠地質化石博物館の紹介 伊藤さんの発表
 伊藤さんは神奈川県教科研究会理科部会の地学研修会に参加した。この8月に行われた地学研修会の活動の一つ、長野や戸隠地域の地質の観察の様子を報告した。
 戸隠地質化石博物館の建物は旧柵(しがらみ)小学校の校舎を利用している(左図)。そのため地質に関する資料のみではなく、旧柵小学校の資料など文化的なものも含めて展示してある(右図)。
 

 博物館には、ヒスイ、シンシュウゾウの下顎(かがく)化石の展示や日本列島のなりたちに関する説明があった。また、現存する生物の骨など触ることのできる展示も多く、タイマイの甲羅の中に入ることもできる(左図)。
 博物館の近くには化石を観察することができる場所がある。長野市戸隠の裾花川に沿っては新生代第三紀鮮新世から第四期更新世の猿丸層が分布している。その猿丸層の下部には牡蠣(カキ)化石層が認められる場所がある(右図)。かつてこの場所は汽水だったことがわかる。
 

 また,その層の下部には、ホタテガイ類などの化石が確認できる層もある(左図)。
 伊藤さんは、現代では山になっているが、当時この場所が海であった様子を観察して驚いていた。また、日本列島の成り立ちについて考えるよい機会になったそうだ。
 当日案内をしてくださった戸隠地質化石博物館の田辺さんの書いた以下の記事はこの巡検で参考になった,
田辺 智隆「戸隠地域の新第三系?第四系と戸隠地質化石博物館」地質学雑誌, 2015, 121 巻, 8 号, p. 265-278, 公開日 2015/08/29, Online ISSN 1349-9963, Print ISSN 0016-7630, https://doi.org/10.5575/geosoc.2015.0026
 

簡易分光器 長舩さんの発表
 長舩さんは、高2の授業で生徒に簡易分光器を作成と光のスペクトル観察をさせた。余ったLHRの時間をもらって工作をさせ(約25分)、物理の授業でHg、Naランプを光源に観察を行った。グレーチングレプリカシートはナリカ製の500本/1mm、1000本/1mmの2種類を使い、ワークシートでそれぞれのスペクトルの位置から波長を求めさせた。
 分光器の箱は組み立て式にしてセロテープ不要になるように工夫した。レプリカはつけ替えるのが手間なので、最初からずらして2枚とも貼っておけないか思案中である。長舩さん提供の資料(PDFファイル:288KB)はここ
 

まち針で組み合わせレンズ 長舩さんの発表
 長舩さんの勤務校では中3の1学期に幾何光学を学ぶ。鏡を使って反射の観察、台形レンズを使って屈折の観察、凸レンズ・凹レンズの像、組み合わせレンズによる像、球面鏡という順で学習している。組み合わせレンズのところでハードルが高い印象があり、理解を深めるために小野先生の実践報告(物理教育通信186号・まち針ですべての像の位置や焦点距離を求める)を参考に組み立てた。この方法は教室の照明を消さずに光学実験ができるのも魅力である。
 

 長舩さんの授業では、初回の鏡の反射のときから待ち針を使って観察し、光源から出た光の道筋を追い続けることを軸に生徒実験(1人1セット)を実施した。本題のレンズでは、一般的な光学台を使ってスクリーンにできる像の位置を探る実験の前に、待ち針を使って道筋を辿る。組み合わせレンズでも、待ち針を使って2つのレンズで屈折していく光の道筋を辿ってから光学台の実験に移行した。数式と計算で中身がよく分からない感触になりそうなところを少しでも払拭できたのではないかと長舩さんは思っている。いずれ授業研究でも詳細を報告したいとのこと。
 

コアンダーとマグヌス 山本の発表
 本年6月例会で行った発表の追加説明。ドライヤーの気流で発泡スチロール球を空中に浮かばせる現象をどう説明するかだ。マグヌス効果やベルヌーイの定理を適用するためには、球の位置までの空気の流れが層流でなければならないが、ドライヤーが作る気流は噴流であって層流にはなっていない。
 

 球の周辺の気流を調べるために、割りばしの先に軽い糸を1本つけた吹き流しを用意し、これをプローブにして、ドライヤーの口からボール周辺にかけての空気の流れを細かく調べてみる。ドライヤーから出た気流は、周囲の空気を巻き込みながら前進するが、その範囲は限られている。球の付近でもちょっと離れたところでは空気の動きはほとんどない。球はドライヤーの気流を受けて、写真の状況では自然に時計回りの回転をはじめる。球の上側のごく近くでは、空気が回転する球にまとわりつくように流れて下向きに向きを変えているのが観察できる。球の表面の動きが流れと逆になる下側では、流れは弱い。
 つまり、この現象は粘性のある気体の噴流が、球の表面に沿って流れの向きを変えるコアンダー効果で説明するのが適切である。
 

朝食 食堂「やまゆり」にて
 おはようございます。深夜0時に例会会場を閉じた後も、宿舎の一室では午前2時過ぎまで、飲み食いをしながら科学談義が続いた。非公式ながらこれを「第三部」と称する。朝はさすがに眠そうだ。宿泊の11人のうち二人は朝食も食べずに早朝に旅立ち、残る9名は、7時半からの朝食の後、三々五々自家用車に分乗して解散した。


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