例会速報 2020/10/11 Zoomによるオンラインミーティング


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくはYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

授業研究:「原子」の授業 西村さんの発表

 西村さんが原子分野の授業について発表した。2019年1月慶応例会の授業研究で発表したときに、参加者からいただいたアドバイスを受けて、今回は単元の構成を変えたとのことだった。
 授業の展開は、まずは原子の電荷分布について理解し、原子はそれぞれ固有のスペクトルを持つことを確認する。そして、原子の内部構造を詳しく知る必要があるという問題意識を共有し、そのあと光量子仮説や物質波について学び、最後にそれまでに獲得した知識をすべて使って、水素原子のボーア模型を構築するという展開である。


 西村さんは、以前に比べて単元のストーリーが明確になり、授業しやすくなったという感想を持ったそうだ。今後は、生徒同士で議論する活動をより増やし、相互作用型授業を実現していきたいとのことだった。


蝶の偽瞳孔はなぜ六角斑点に見えるのか? 永田さんの発表
 蝶の複眼をよく見ると、黒い斑点が六角形に見える。これを「偽瞳孔」と呼ぶのだそうだ。カマキリにも見られるが六角形のパターンは見られない。見る角度を変えても、いつもこの黒い六角形の斑点が自分を追っているように見える。永田さんは、この理由を調べた。
 複眼を光学顕微鏡で拡大してよく見ると、蜂の巣(ハニカム)のように並んだ個眼が密集していた。個々の個眼が偽瞳孔の場所で黒く見えていることが分かる。偽瞳孔がある場所の六角形に並んだ個眼の外形をなぞったのが右の図である。黄色は中心の偽瞳孔上であり、赤色は周りの六角形に見える偽瞳孔上の個眼群を示す。


 太陽電池のパネル表面に同じようなハニカムレンズが用いられたので、永田さんはこれを用いて見え方の実験をした。ハニカムレンズの中心に赤点をつけ、1cm下部の基盤に黒点をつけて重ねた。

 ケースを傾けると、7度では見えなかった黒点が15度傾けると見えた。さらに30度傾けると再び現れた。これはレンズの屈折効果である。


 永田さんは、蝶の偽瞳孔の生じる様子をこう説明してくれた。個眼の奥の光受容細胞まで見通せる角度でそのレンズが黒っぽく見えるわけだが、球状の複眼では、二次屈折により隣のレンズからも同じ点が見えるというわけだ。
 例会では屈折光の光路が不自然だという指摘もあった。六角形のパターンが一面に見える理由もさらに追求してみたい。この話題ももうしばらく楽しめそうだ。

 詳しい解説は、永田さんが管理するWebページ「タイニー・カフェテラス」で読むことができる。

葉、花びらにできた水滴の振る舞い 夏目さんの発表
 植物の葉にできる水滴はキラキラ光っていてとても美しい。水が球状になるのは、葉の表面にはっ水性があるためである。その仕組みは顕微鏡でも観察できる。左の模式図のように葉の表面に突起構造があるからだ。これによって、突起の谷間には空気という疎水性のあるものが入り込むため、水が突起に乗っかる形で水滴ができる。
 YPCの2020年6月例会で永田文男さんが「植物の葉に出来た水滴が、葉の種類、葉の状況によって、残りやすかったり落ちやすかったりするのはなぜか?」というテーマの実験研究を報告された。電子顕微鏡(SEM)による詳細な観察によって、葉の表面の細胞が破壊されているところに水滴が残りやすいことが指摘された。つまり、表面にある何らかの「欠陥」が水滴を捉えるというわけである。

 他方、夏目さんは、ある中学1年生から自由研究報告「水滴が紙に残るしくみ」の手紙をもらった。紙の表面にはっ水性によって水滴ができた場合、傾けると落ちてしまうが、紙に切り込み(カッターで付ける)があるそこに留まりやすいことを実験してまとめてあった。
 そこで、夏目さんも早速追試してみた。下左が切り込みの無い場合で、水はほとんど流れ落ちてしまう。下右が水平方向に切り込み(1cm間隔で水平に5本、長さ14cm)がある場合である。水滴が落ちていく際に、うまく切り込みに引っかかるとそこに留まる場合が多い。ただし、その切り込みが大きいとそこに水が入りこんで「染みて」しまう。切り込みで水滴が「安定性」を保っているかどうかは微妙な問題である。


 そこで夏目さんは、このテーマについて、論文を調べてみた。すると、ハスの葉とバラの花びらでの水滴の振る舞いの違いを議論している論文が10年前にあった。
 Bharat Bhushan and Michael Nosonovsky, “The rose petal effect and the modes of superhydrophobicity”, phil. Trans. R. Soc. A (2010), Vol.368, pp.4713~4728という論文である(hydrophobicity:はっ水)。
 その中のバラの花びらに関する写真を左に引用する。

 葉も花びらもはっ水性のある突起構造を持っているが、バラの花びら(i)の場合は、(ii),(iii)のように太さ20マイクロメートル程度の突起の間の谷の部分が広くて平面的になっていることがわかった。しかもその部分は化学的に親水性があった。
 結局、バラの花びらでは、突起部分ではっ水性によって作られた水滴は、谷の部分の親水性によってピン止めされることがわかった。このあたりの状況を夏目さんが模式的に手描きで説明してくれた図が下の図である。

 ところで、葉、花びらの他に、茎をよく観察すると茎の部分はほとんど鉛直なのに、水滴がつくとなかなか落ちない。おそらく、これも「欠陥」というよりは、もっとシステマティックに親水性の部分が構造的にきちんと作られているのではないだろうかと、夏目さんは考えている。身近なテーマではあるが、今後に残された課題は多い。

分光シートでわかる火星のこと! 寺田さんの発表
 寺田さんは山口博物館で天文分野のサポーターをしている。10月末開催の90分の親子火星観察会はコロナ禍での工夫で5つのコーナーを15分ごとにグループ移動してもらう方法で行うことになった。寺田さんは望遠鏡を使わず、最近関心を持っている分光シートから火星に迫れることを、こども達に伝えるコーナーにしたいと構想した。持ち時間15分の内、半分は非接触で分光シートによる街灯の光源スペクトルなど観察してもらい、LED、水銀灯などの違いや街灯の夜の虹スペクトルを楽しんでもらおうと考えている。


 あとの半分の時間は、火星のスペクトルから火星のさまざまな情報がわかることなどを伝えたいと寺田さんは考えた。ネット上で見つけた、ある高校生たちの研究レポート「火星のスペクトルの特徴を探る〜デジタル一眼レフカメラによる分光分析〜」を披露しながら研究の手法を伝えたいと思い、iPhone用の無料アプリ「スペクトラルビューア」で火星や、購入した酸化鉄(ベンガラ)などのスペクトル分析を真似してみた。火星の研究にもつながることを想像しながら、非接触型の分光シートで街灯の観察してもらう予定だという。


メトロノームによる音速測定 米田さんの発表
 米田さんは、以前の例会で聞いたアイデアの、2台の同時に鳴るメトロノームで音速測定を追試した。やってみると手元の音の音量を押さえて、遠くの音とレベルを合わせることで測定しやすいことがわかった。またそうすることで、同期メトロノームの数が増えれば、いくつかのグループ・何人かの生徒で同時に実験が可能とひらめいた。


 今回、米田さんが紹介してくれたのは、Soundbrennerというメトロームアプリ(上右)。肌につけてバイブレーションでビートを知らせる同名の機械(下左)のコントローラーなのだが、バンドのメンバーが同じビートを共有できるようにBluetoothでビートを揃えることができる。このバイブレータ(下左)は有料だが、コントロールアプリは無料だ。確認したところiPad 11台を同時に同期させることができた。BPM400までいけるので、打点間隔は0.15秒、つまり50m強の距離があれば1拍ずれる。
 予備実験では、1台のiPad(Aとする)の音量はMAXで鳴らし、持ち歩くもの(Bとする)は耳元でAと同じ音量になるように調節しながらAから離れていく。実験してみると53mあたりでちょうど1拍ずれた。その時の気温を考えるとかなりいい値になる。米田さんはさらに、運動場の真ん中にAを置き、B~Kの10台は10グループで手分けして、放射状に広がっていくという実験ができないかと検討中だ。続報に期待しよう。
 米田さんのレポート(PDFファイル334KB)はここ


実験手順を教える動画 西村さんの発表
 西村さんは、授業の冒頭でその日に行う生徒実験の手順をコンパクトかつわかりやすく生徒に伝えるために、実験の手順を説明した動画を作成した。今回は音の三要素と、超音波による音速の測定の二つの実験を50分の授業内で行った。動画は3分程度である。
 実際の授業では、これを見ただけで生徒がスムーズに実験の準備に取り掛かれていたので、一定の効果はあったと思われる。臨時休校への対応で今年度初めて挑戦した動画づくりだが、確実の今後の授業の幅を広げることになったと西村さんは語った。
 参加者からは、「起動直後は不安定なので、発振器やオシロスコープの電源は先に入れておくべき。」というコメントがあったが、動画にしたからこそ、このような細かい、しかし、重要なポイントを互いに教え合うことができるのかもしれない。


LEDの危険な壊れ方 市原さんの発表
 豆電球とLEDの電流電圧特性を調べる実験中に、LEDが破裂するという事故が起きた。幸いなことに、ケガなどは一切なかったが、破裂したものが目に当たるなどしたら危険である。市原さんは、これまでLEDを焼き切ったことはあっても、破裂させたことは一度もなかったので、「LEDは過電圧(過電流)で破裂するものである」という意識はなかった。・どの程度の割合で破裂するものなのだろうか、市原さんは気になったので、積極的にLEDを破壊してみた。
 使用したのは、生徒実験でも使った電源装置。生徒実験では保護抵抗を入れているが、今回は破壊が目的のため、直接つないである。破壊効率を上げるために、10個並列で20Vをいきなりかけることにした(20Vは電源装置の最大電圧)。破裂しても大丈夫なように、厚手のチャック袋をかぶせてある。今回破裂させた生徒も、電源装置のダイアルをぐいっとひねった、と述べているので急激に過電圧をかけたと考えられる。
 結果、大半は音もなく焼き切れるか、小さくパチっと音がして光らなくなるかだったのだが、70個目を破壊しているときに、1つが煙を上げて発火した。相当な量のガスが吹き出したが、これが樹脂の内部で一気に起こるとなると、爆発するのも理解できる。


 合計100個ほど破壊したところ、うち1個が炎上した。例会後に追試をしていたところ、通算で120個目に当たるときに、爆発四散が起こった。この時点で実験は終了したが、1%超えの危険度と考えると、生徒実験で扱うには、なんらかの対処は必要になるだろう。炎上の動画(movファイル8.6MB)はここ
 一つには、乾電池を使い電源装置を使わないなど、3V以上がかけられないようにしてしまうこと。もう一つは、今回のチャック袋のように、爆発時の対策をとることである。例会では、一つ一つにテープを巻いてはどうか、という声もあったが、実際に爆発を目の当たりにすると、かなり厚手のものをしっかり巻いておかないと、やや心許ない。保護メガネは、生徒が指示を守らないで外してしまう恐れがあるので、フェイルセーフ としてはあまり対策にならない気がする。もちろん、「保護メガネをかけなさい」という指導はしなくてはならないが、それ以外でも取れる対策は考えておかなければいけない。様々な学校に様々な生徒がいるので、実情に合わせて考えていただければそれで十分だが、「LEDは意外と簡単に爆発する」ということは、教員は知識として持っておいた方がいいと市原さんは感じた。


オンライン授業用アイテム紹介 山本の発表
 学校は夏前は新型コロナ感染症対策に振り回された。後期に入り、小中高ではおおむね対面授業が再開され、日常を取り戻しているが、大学ではまだまだ遠隔授業が大きなウエイトを占めている。
 山本の勤務先では前期はすべて遠隔講義(8月まで自宅からZoomで授業)で対応したが、後期は原則として対面授業の方針で、三密を避け、「新しい生活様式」にしたがって講義が行われている。遠隔授業も併用されているので、4年生以外は週2回ほど登校している学生が多いようだ。
 学生側にもいろいろ事情があって、対面授業・登校を強く望む学生もいる反面、遠隔を希望する者も少なからずいる。結局、山本の教職課程の講義は、対面授業をしながら、教室からZoomで生中継をするサービスを実施することにした。この方法は、学生の要望に幅広く応えられるだけでなく、体調不良者は無理に登校しないように促すこともでき、感染症対策として有効である。昨年は台風休講があったが、全員遠隔に切り替えれば登校禁止でも授業は休講にしないですむ。
 ところで、前期自宅からの遠隔授業で活躍したのが勝田さんオススメの外付けWebカメラ(ディスプレイの縁にはさんで使う)、LOGITUBO webカメラ ¥5,999である。(最近、ブランド名がAngetubeに変わった。)オートフォーカス・マイク内蔵・照明つきで、さっと取り外して手元の資料を写したりもでき、便利な小回りのきくカメラだ。

 一方、後期は教室からの中継となり、学生の模擬授業の様子も生配信しなければならないので、ノートPC内蔵のカメラでは限界がある。そこで以下のような小物をそろえて対応することにした。
 まず、下の写真は「ELP 8MP USBカメラ」¥9,145である。CSマウント工業用カメラ(SONY製CCDセンサ搭載)に2.8-12mm手動ズーム可変焦点レンズが付属している。若干色ムラがあったり、ズーム倍率を変えると、ピントを合わせ直す必要があったりと、安物感は否めないが、画素数は十分で、USBプラグインですぐ使えること、何よりレンズ交換が可能で汎用性が高いことが魅力である(写真右)。授業では、教卓上を俯瞰アングルで拡大して、手元演示実験を中継するのに使用している。


 次にご紹介するのは、HDMI→USBの変換器で、「JHMENG 高解像度HDMIキャプチャーボード」¥2,278(写真左)である。USB2.0で、1080P 60Hzに対応している。HDMI出力のあるビデオカメラ等をがそのままWebカメラにできる。手持ちの家庭用ビデオカメラや、HDMI出力のあるデジカメなら何でも接続できる。家庭用ビデオカメラは、ズームやオートフォーカスの機能が充実しており、カメラ側にモニタも付いているので便利だ。オススメの逸品だが、同種のものはテレビゲームの生配信用に広く使われているようである。授業では、黒板全体と授業者を写すメインカメラとしてSONYのビデオカメラ→エルモのポータブル書画カメラ→HDMIキャプチャ→ノートPCのように接続して、書画カメラと切り替えながら使用している。上のUSBカメラとの切り替えはZoom側のカメラ切替えで行う。都合3台のカメラを使用している。
 このほか、教室での音声収録にはタイピンマイクが必須であるが、これは教室備え付けのものを使用する。教室のAVコンソールのマイクミキサのライン出力をPCの音声入力に入れればよい。その際、ライン出力をマイク端子に直接入れると音が割れるので、右の写真右のようなレベル調節を自動でやってくれるアダプタが必要になる。


階段のカロリー表示 喜多さんの発表
 数年前に東急ハンズ渋谷店の階段に一段毎に -0.105kcal 減るという表示(写真左)があることを見つけた。早速広報課に問い合わせたところ、体重50kgの女性が100段を1分30秒で登るときの消費カロリーとのこと。代謝等量(metabolic equivalents)通称メッツで計算して求めることができる。
 仕事率のところで、階段を上るときの仕事量・仕事率の計算をする。ハンズの階段の段差は17cmである。100段だと17m。位置エネルギーの増加は、50×9.8×17=8,330J である。
 一方、この100段で消費するエネルギーは 0.105×100=10.5kcal≒44,000J だから、重力に逆らってする物理的な仕事量は、その4分の1以下である。

 喜多さんはその後、日吉駅の階段に表示(下左)されているのを見つけた。また最近、田町駅芝浦口の階段に表示(下右)されていることを教えてもらった。


二次会Zoomによるオンライン二次会
 例会本体には33名、20時からの二次会にも13名が参加した。例会本体では時間切れで割愛された話題にも、二次会ではたっぷりと時間がとれる。古谷さんの「動画のデータベース」の話題や、越さんの「映画「TENET」のツッコミどころ」などで盛り上がった。ドリンク持ち込み可で、愚痴や人生相談も何でもありの時間はリアルの飲み会と変わらない、貴重な交流タイムだ。



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