例会速報 2002/03/06 東京電機大学


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星の折り紙 工藤さんの発表  
 前回の例会で時間がなくて詳しく教えてもらえなかった、「洋紙の縦横比をうまく応用した星形の折り方」を、工藤さんに指南してもらった。

 洋紙の縦横比1:√2と星形の頂角36°のタンジェントの近似をうまく利用している。洋紙の長い方を3%弱切り縮めて、対角線に沿って折ると、星形の頂角が作れるのだ。あとはこの角度をうまく5個作るように折り進めていく。折り紙は論理的なのだ。

12人の怒れる男 市江さんの発表  
 ヘンリー・フォンダ主演のクラシックな「裁判もの」映画の紹介。
 17歳の不良少年が犯したとされる殺人をめぐり、12人の陪審員が評決のための討論を展開する。ヘンリー・フォンダ扮する「8番の男」はただ一人少年の無罪を主張し、地道に論理的に他の11人を説得していく。

 これのどこが理科教育なの、と思われるかもしれないが、市江さんはこれを授業で見せる。科学的・合理的なものの考え方というスタンスを示す教材として提示するのである。

炎のダイオード 山本の紹介と追試
 椚座淳介氏のWebページ「突撃実験室」に紹介されていた実験の追試である。トーチバーナーの火炎に電流を流すと、ダイオードのような整流作用を示すというものだ。
トーチバーナーを用意し、火炎の中に炭素電極(グラファイト棒)を差し込んで、トーチのノズル部との間の抵抗をテスターで測定する。このテスターは赤いリード側が高電位であるが、炭素電極側を赤リードにつないだときのみ、抵抗値が測定できた。つまりノズルから炭素電極に向かって電子が移動するような電流が流れるのだ。逆極性にすると電流は流れない。
 炎はプラズマ状態なので電流が流れること自体はそれほど不思議ではない。問題は電流に方向性があることだ。炎の勢いに乗って電子が移動するという説は、下の写真のように鉄釘と炭素電極を組み合わせた実験で即刻否定された。つまり、電極の位置を入れ替えて、釘の方を下流に持っていってもやはり電流は流れるのである。電子はプラズマ流をさかのぼることもできる。
 おそらく金属は熱電子放出を起こしやすいが、グラファイトは電子を放出しにくい、つまり仕事関数の違いによるのではないかという結論を見たが、電極の種類や組み合わせを変えるなどしてさらに追求してみたい。
 


←突撃実験室へのリンク(興味深い話題が多い)

電気の授業報告 小沢さんの発表

 高2電気の授業の実践報告である。小沢さんは「場」から入ると、どうも授業がうまくいかない実態を踏まえ、直流回路から入ることにして、電位差概念の定着を目指した。小沢さんオリジナルの数々の実験器具と共に、授業のシナリオが紹介された。中学校までに習得しているだろうと我々が思っていることでも、いざ実験をさせると、実はわかっていないということが明らかになってくる。
 写真左は豆電球の回路。並列と直列を組み合わせると、なぜか並列にした方が光らない。まず生徒に「あれっ」と思わせるのがねらいだ。このあと各部の電圧・電流を測定する。写真右は抵抗が電位差分割器としてはたらくことを示す実験器具。

 

 写真左は抵抗、CdSセル、サーミスタをとりつけた基板。抵抗による電位差分割の概念がつかめれば、光センサー、温度センサーとしてのはたらきが理解できる。AdvancingPhysicsと同じような展開だ。右は光が当たったときにブザーが鳴り止む回路を組んだところ。

 


 次は乾電池の内部抵抗の存在に気づかせる授業展開の例。テーブルタップに電球を次々に並列接続していくと、それぞれの電球の光り方がだんだん暗くなってくる。ここでまた「あれっ」と思わせて、コードの途中にはさんだ抵抗器を見せて種明かしをする。電池で起こる内部抵抗による電圧降下を目に見える形で示すのだ。
 今回は発表者が少なかったので、時間を充分使って討論をし、授業のことを語り合いながらの発表となり、有意義だった。

 


理科室燃える 平松さんの発表  
 
 川崎で起きた理科室火災の推定原因について解説があった。亜鉛末を水酸化ナトリウム水溶液に入れ、加熱して銅板にメッキする実験で、使用後の亜鉛末をゴミ箱に捨てたところから出火したらしい。亜鉛末の表面がフレッシュになったため、空気中の酸素と結びついて発熱したものと思われる。
 一部マスコミで水酸化ナトリウムが発熱などと報道されたのは誤りだろうという。新聞記事の「金メッキ」も不適切な表現だろうとの指摘があった。
 何はともあれ、われわれも事故防止のため、こうした事例の研究は重視したい。

燃料電池 渡辺さんの発表  

 渡辺さんは、中村理科の新型燃料電池教材を紹介してくれた。電気分解と燃料電池発電の両方をひとつの装置でおこなうことができる。太陽電池で、水から水素と酸素を作り、その水素と酸素を利用して、燃料電池として電気を作るしくみだ。
 写真の二つの円筒形水槽にはさまれたメッシュの部分が燃料電池の心臓部だ。電極間に電圧を加えると、電気分解で円筒形水槽の上部に酸素と水素がたまる。それらが触媒のはたらきで再結合するとき電流が生み出される。


 この燃料電池に自動車ユニットをつけると、燃料電池をエネルギー源として自動車を走らせる演示できる。2003年登場予定の市販の燃料電池自動車を、教材で先取り体験することができるエネルギー実験セットである。本年4月から発売予定だそうだ。中村理科のカタログでは、B10-2047 燃料電池自動車NIX(二クス)価格39,800円。

 


二次会 神田駅前「白木屋」にて
 年度末で忙しかったからか、今回は発表が少なかったが、その分議論を深められたものもあった。二次会には16名が参加。会場準備でお世話になった高橋先生に感謝しつつ、カンパーイ。


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