例会速報 2003/06/14 県立港北高校
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巨大放電球 宮崎さんの発表
県民の反対にもかかわらず、県立青少年センターのプラネタリウムや展示部が廃止になった。これに伴い、数多くの貴重な展示品や実験器具が「廃棄」になった。引き取り手がなくて本当にゴミになったものも多い中、宮崎さんに「救い出された」のがこの巨大放電球。プラズマライト、プラズマボールなどの商品名で、小型の市販品は手にはいるが、これほど巨大なものは当然特注品だろう。
そもそも、放電球というのはどういうしくみなのだろう。おそらく内部は低圧で、テスラ電流のような高周波高圧が使われているのだろうと想像されるが、博識のYPCの面々でも、正確な知識を持っている人はいなかった。バラすのももったいないしね・・・(^^)。
授業研究 宮崎さんの発表
港北高校のカリキュラムでは、現2・3年生(旧カリ)は2年で物理・化学ともにIA、またはIB2単位が必修である。これらの生徒は1年では生物・地学各2単位ずつを必修で学習してきている。減単しながらも、理科4科目をすべて学ばせるというスタンスだった。ちなみに物理IA選択者は2クラス分、IBは5クラス分だという。
新課程では、1年で理科総合A必修、2年で生物3単位必修、物化地各3単位のいずれかの選択となる。
宮崎さんは、今年度赴任したばかりだが、2年生の物理IB2単位の学習計画は、1学期運動学、2学期運動の法則とエネルギー、3学期波動(光を除く)という予定。IAもIBも学習内容をそろえ、進度も担当者間で調整してあわせるのだという。
モーター発電機 山本の発表
「モーター転じて発電機」をストレートに演示する実験器具。演示・展示用に開発した。二つの同じマブチモーターを直接ユニバーサルジョイントで結合し、一方を電池で回転させて、他方の出力で豆電球を光らせる。原理をむき出しで見せるのが目的。
ゼネコンで100Wの電球をつける 山本の紹介(河野さんのアイディア)
手回し発電機「ゼネコン」を複数使って100Wの電球を光らせようという実験器具。 YPCの会員でもある浅草中学の河野さんが開発したものを、以前見せていただいた記憶を頼りにまねして作ってみた。
ゼネコンの出力は脈流であり、ハンドルを逆に回すと極性も逆転するのでそのまま直列接続しても、電圧がうまく加算されない。そこで、ゼネコンからの入力をそれぞれ四端子ダイオードブリッジに通してから直列つなぎにする。これだと極性を気にしないで接続してよく、確実に加算される。
ひとつのゼネコンでは全く光る気配もないが、次第に人数を増やし、4人が必死にハンドルを回すと、フィラメントが輝きはじめる。
右下の写真は、オシロスコープで電圧波形が加算される様子を観察しているところ。
起電ポンプ 右近さんの発表
2つの物体がそれぞれ絶縁してあるとき、一方から他方へと電荷をすくい取って移動させるたびに、一方は負に、他方は正に帯電していく。こうしたイメージをそのまま実験に移し替えたものがファラデーの氷桶(Faraday's
ice pail)と検電器を用いた実験である。電荷をすくい取る電荷スプーンは,直径3cmほどの発泡スチロール球をアルミホイールでくるみ、柄としてプラスチック棒を取り付けたもの。これを2つ用意する。また、はく検電器の上皿に空き缶(これがファラデーの氷桶になる)を乗せたものを2組用意し、缶の間隔が8cmほどになるようにして配置する。 一方の検電器をわずかばかり正あるいは負に帯電させた後、以下の(1)から(3)の手順を繰り返す。
(1)両手でそれぞれの電荷スプーンの柄を持ち、両空き缶の中間で接触させる。
(2)二つの帯電スプーンを空き缶の間に保ったまま、引き離す。
(3)それぞれの電荷スプーンを反対側の空き缶の内側に接触させる。
仮に一方の缶が正に帯電していれば、(1)静電誘導により、その缶に近い側の電荷スプーンaには負、遠い側bには正の電荷が集まる。(2)帯電スプーンを引き離すとa、bはそれぞれ負、正に帯電する。(3)缶―検電器が帯電スプーンと同種電荷に帯電していても、ガウスの法則により缶内の電場はほぼゼロになるので、電荷スプーンの電荷はすべて缶に移動する。 (1)―(3)の手順を繰り返す度に、二つの検電器の箔は、始めのうちは少しずつ、やがてはっきり見えるように開いていくのが観察される。それぞれの缶が異符号に帯電していることは、開ききったところで、両缶を接触させれば、ただちにもとの状態に復帰することから確認できる。
梅雨時でも、最初に一方をわずかだけ帯電させておけば、70回ほどの操作で、二つの検電器をいっぱいに開かせることができる。部屋が十分乾燥していれば、最初に一方の検電器を帯電させなくとも、実験が可能である。「自然な」状態でも、実はそれぞれの缶は常にわずかだけ帯電しているからである。
次に右近さんが取り出したのは、この操作を自動的に行う筒型の「起電ポンプ」である。筒の中には軽い導体球が2個入っていて、それぞれ中央と両端の間を往復する。導体球の電荷は、それぞれ両端のアルミホイルの部分に移って蓄えられ、同時に相手方の球を静電誘導で逆符号に帯電させる。左右両端で二つの箔検電器に交互にタッチする動作を繰り返すだけで、箔検電器の箔が見る見る開いていく。
これはさらにコンパクト化したタイプ。上記の起電ポンプを中央で二つ折りにしたものと思えばよい。振るだけで電気が生じる。
詳しいしくみや作り方は、右近さん自身の報告を待とう。APEJの夏の大会でさっそく製作会をやろうという話になった。
フィボナッチ数列 車田さんの発表
ひまわりの種やサボテン・カリフラワーなどに左右逆回りの螺旋が重なっているのが観察される。時計回り、反時計回りのそれぞれの螺旋の本数がフィボナッチ数になっている。隣り合うフィボナッチ数の比を、5/8, 8/13, 13/21, 21/34,・・・と、順に計算していくと、しだいに (√5-1)/2(=0.618034・・・)の値に近づいていく。この値が有名な「黄金比」である。
東工大の学生さんが作ったシミュレーションで実験してみると、時計回り、反時計回りの螺旋が同時に見えるとき、
5/8=0.62500 黄金比より大
8/13=0.6153 黄金比より小
13/21=0.6190 黄金比より大
21/34=0.6176 黄金比より小
34/55=0.6181 黄金比より大
55/89=0.6179 黄金比より小
・・・
そして、螺旋の本数がいくつであれ、黄金比に近づくほど、左右両まわりの螺旋がきれいに現れる。
このシミュレーションのように、ひまわりは花の中心から原始細胞が広がっていくと二つの連続したフィボナッチ数の螺旋が右巻きと左巻きそれぞれ一つずつ現れる。サボテンやカリフラワーでは螺旋は頂点から広がる。これに対しパイナップルや松ぼっくりは底の方から広がっていく。それぞれの側からのぞくとフィボナッチ数の螺旋がちゃんと二本見える。
自然は数学が好きなのだ。身近な植物や野菜を観察してみてはいかがだろう。
偏光をさがそう 科学の祭典千葉大会より、越さんの紹介
所変れば出し物も違う。6月の7、8日に行われた科学の祭典千葉大会では一味違った新ネタがあった。越さんの報告だ。
元県立千葉高校の石井信也先生のブース「偏光をさがそう」では、写真のような「偏光発見器」の工作教室を開いていました。これは、塩ビパイプの穴を1枚の偏光板で覆い、セロファンシートを細かく切った物をその上に置き、セロテープで貼り付けただけもの。これで、ガラスやプラスチックシートなどでの反射光を見ると、その光が偏光であれば、(セロファンシートが)色づいて見える。身近なところに偏光した光があることに気づき、ブリュースター角の存在に気がつくという教材だ。
このほか越さん自身のブースでは、例のスターリングエンジンカー「ジャンピングミニ」(土浦工業高校、小林先生考案)を3〜5台いっせいに走らせ、レースを行った。子供たちにはレースの予想をしてもらい、当たった子には、ホロスペックスフィルム付の認定証をあげた。5台いっせいにピョコピョコ走る姿は「子豚のレース」を思わせ、とてもユーモラスだった。
市川西高校の石島秋彦先生のブース「昔なつかしのシジミ釣り」では、砂に埋まったシジミの釣りをやっていた。貝殻の間に細い草のつるを入れると貝殻を閉じるので、釣り上げることができる。つり上げたシジミはお土産の標本としてお土産となる。用意されていたのはもちろん在来種の「ヤマトシジミ」だ。
ポケットオシロスコープ 渡辺さんの発表
まるでテスターのような、ポケットタイプのコンパクトなオシロスコープである。液晶の画面に波形を表示し、簡単に手元で結果を確認できる。また、画面をワンタッチでHOLDできるので、結果をあとで確認できる。ストレージオシロにもなるというわけだ。音声波形などを見るのにも、手軽で便利。
ドレミパイプ 渡辺さんの発表
パイプをたたいて1曲!ドレミパイプはそんな楽しい新しい楽器だ。長さと色の違うパイプをたたくと、パイプのもつきまった音階の音がなる。練習次第で曲の演奏もできる。原理はもちろん気柱共鳴。一端を閉じて閉管にするためのキャップもあるのだそうで、約1オクターブ低い音にすることもできる。音の学習にうってつけの教材だ。
もとはBoomWhackersという商品名の海外製品だが、中村理科工業が扱っている(カタログ番号:S77-1850 ドレミパイプ)。
おもしろシート 神谷さんの発表
神谷さんが仕入れてきたのはさまざまなビニルシート。テーブルクロスのような材質で、装飾用に使うもののようだ。ラメのような虹色が現れるもの(左)、立体的なハート形が浮かび上がり、見る角度によって微妙に形が変わるもの(下左)、水玉模様が色の帯ごとに段違いに見えるもの(下右)など。
下の二つは、左右両眼の立体視による錯視らしく、デジカメで写すと立体感が消えてしまう。下右のシートは、コインをのせると、コインまで浮き上がったり沈んだりして見えて面白いのだが、写真ではその様子は再現不能である。
二次会 大倉山駅前「養老乃瀧」にて
13名の参加で、カンパーイ。二次会でもあちこちで妖しげな動きをするYPC。
右近さんはいきなりフランクリンモーターの実験をはじめた。かたわらでは越さんがジャンピングスターリングエンジンの実演・・・。例会がいつも時間切れになるから、発表しきれないネタは酒の肴になるのである。それにしても、みんな好きねえ。
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