例会速報 2008/03/16 県立港北高校


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授業研究:理科総合Aのまとめ 小沢さんの発表
 小沢さんは理科総合Aの実践報告、年間のまとめを発表した。この授業は「ミクロの世界へ」をテーマに、「原子や分子って本当にあるの?」「どうしてそういえるの?」という問いかけからスタートする。課題(発問)についてよく考えさせ、討論させ、実験を見せて確かめさせるという積み重ねをほぼ1年間続け、徐々に粒子モデルを理解させることを目指した。
 例会では「ある実験の事実があるから、原子や分子は実在する。」と結論づけるのではなく、「原子や分子の存在を受け入れると、この実験の事実はきれいに説明がつく。」という論の進め方が大切だということが話し合われた。
 また、原子の構造や放射線について、限られた時間の中でどのように指導するか意見交換し、霧箱を用いた放射線の観察を行った。
 

 小沢さんが生徒にもやらせている霧箱の実験。大きなガラス容器を使うところが工夫されている。線源はランタンマントル。ドライアイスは砕いて細かくすると全体を均一にむらなく冷やすことができ、水平も保ちやすい。

ブラジルの黒豆の色素でpH 渡邊さんの発表
 ブラジル音楽、特にボサノバが好きな渡邊さん(杉並区立科学館館長)は、ブラジル料理に使われる豆を指示薬に使ったpHの実験を披露してくれた。ブラジルでは豆のことをフェジョンといい、豆と、ベーコン、とんこつ、内臓、耳などを塩味で煮たシチューをご飯にかけた料理をフェジョアーダという。豆には二通りあるが、実験に使えるのは黒いフェジョン・プレット(プレット=黒)。ラベルによると黒インゲンだそうだ。杉並区上井草のハナマサという、肉を中心とした業務用食材店で発見したという。1kgで600〜700円。
 黒豆は一晩水につけてふやかせてから煮る。圧力釜を使うと20分ほどで出来る。一晩つけなくても2時間で水は真っ黒になる。また、豆を煮たときの汁も使える。他の色素による実験と同様に、ストローで息を吹き込んでも良いし(CO2で酸性になる)、ビンの中でロウソクを燃やしても良い。例会では100均の重曹とクエン酸で試し、紫キャベツ、紅芋等と同様の酸・アルカリ反応が見られた。
 豆は長期保存がきくし、色水を取った後の豆を実際においしく食べることができ、無駄にならないのがウリ。
 

追試!液晶の偏光板はずし 渡邊さんの発表
 12月、1月の例会で中村理科の渡辺さんが紹介してくれた液晶の偏光板をはずすと見えなくなる実験を渡邉さんは電卓でもやってみた。電卓は大型でも安いものがあるので壊しても惜しくない。

マネージャッジ 小河原さんの発表
 小河原さんが、最近購入したニセ札識別判定器(商品名マネージャッジ)を紹介してくれた。まず、紫外線LEDで蛍光印刷をチェックできるが、こちらは以前販売してくれたポータブルブラックライトのほうが、光量も豊富で良い。加えて、磁気印刷を判別する機能がついており、磁気ヘッドでこすると本物ならブザーが鳴る。こちらは磁気シート(ビジュアルシート)で確認できないほど弱くても判別可能である。お札以外の磁気チェックにも使えるかもしれない。2台入手したうちの1台は、900円で即売にかけられた。
 

ハミルトン・モーター 石井さんの発表
 卍型の金属のクロスした点に軸をつけて、ヴァン・ド・グラーフ起電機の電極に乗せると回転する。「ハミルトン風車」と呼ばれる実験装置だ。このローターの「羽」は放電端子が4極だが、積分記号形の2極でも、三つ巴でもOKだ。金属の表面は電位が同じなので、尖った所では表面電荷密度が大きく、その周辺の空気がイオン化されて反発され、その反作用で回転する。放電端子は尖らせておく。
 石井さんは羽の大きさ・形・材質を変えたり、軸受けの方法や電源電圧を変えたりして遊んでみた。高圧なので、紙の羽でも、ちょっと湿らせたり、鉛筆で塗ったりするだけでよく回る。
 

 電源はYPCでもおなじみの12000V小型高圧電源(現在在庫切れ)。軸の摩擦、羽の慣性モメント、アースなどを工夫すると、回転速度が大きくなる。右の小さな羽根車は目にもとまらぬスピードでプロペラのように勢いよく回る。石井さんが「ハミルトン・モーター」と呼ぶ所以である。

 ネオンランプを先端につけたものはオレンジ色の光を放ちながら回転する。洋傘の骨も先端にトゲをつけ、手に持って絶縁台に乗り、ヴァン・ド・グラーフ起電機で人体を高圧にするとゆっくりと回転する。

 手に持った他のハミルトンモーターももちろん回る。人体を導線代わりと考えればよい。右は、ダブルのハミルトン風車。正負極に接続し、位置関係をうまく調節すると互いに逆方向に回転する。

サーモインク 渡辺さんの発表
 温度変化を色の変化として視覚的にとらえることができる画期的なインクが間もなく発売される。インクを水に溶かせば簡単に使用することができる。約40℃で青→ピンクと色が変化し、熱の伝わり方やもののあたたまり方の実験に活用できる。温度が下がればもとの青に戻るので、数回にわたって実験が可能。

 ビーカーの水にキャップ一杯程度のサーモインクを混ぜ、アルコールランプで熱すると、温められた水が対流する様子や、熱いお湯が上にたまる様子がよくわかる。

 銅板に塗って熱伝導をを観察することもできる。少量の洗剤を混ぜたサーモインクをのばして塗料のように塗って乾かす。分解しない程度の温度までなら冷えれば元に戻り、繰り返し使用できる。
 サーモインクはナリカ(中村理科工業)より5月発売予定。240ml入り3000円だが、1回あたり使用量は10ml程度ですむ。

イチゴの発芽 森さんの発表
 イチゴの表面についている白いつぶつぶは一つひとつがタネだ。森さんは市販のイチゴの実からこのタネをとりだして濡れティッシュの上に撒いてみた。先月2月1日にまいておいたタネが芽をだして双葉になろうとしている。このままうまく育つだろうか。次回例会は森さんの「理科ハウス」で行われる。一月後の姿が楽しみである。

エッグドロップ選手権 越さんの発表
 紙1枚でパラシュートやクッションを作り、高いところから卵を割らずに落下させる「エッグドロップ選手権」だが、以前「タモリ倶楽部」で大学の工学系の学生が行った様子が放送されていた。また、越さんが出演したサイエンスチャンネルの「サイエンスバトル」では、小学6年生がパラシュートタイプ、クッションタイプの2チームに別れ競技した。
 越さんはそれらを参考にし、3年選択物理の授業でも取り上げた。生徒たちは予想以上に一生懸命取り組み、創意を凝らして競技に臨んでいた。その時のルールは以下の通り。
 使用する紙は、B3版厚手模造紙またはB2版薄手上質紙のどちらかを選択。セロテープは紙の固定用として必要最小限使用し、クッションとして用いてはいけない。高さ約14mから落とし、生卵が割れなかったら成功。
 当日は風が強く、予想外の姿勢で落下し多くの卵が割れてしまったが、回転しながら落下するパラシュートタイプを作った1名だけが成功した(7名中)。
 卵を用いる事が難しい場合には、代わりに水風船を使っても良い。学年などに応じてルールを変えれば、どの年齢でも楽しく参加できる面白い競技である。
 

カエルの解剖 平野さんの発表
 ひばりが丘高校の職員を対象とした研修の一環として,アフリカツメガエルの解剖実習を行ったときの様子を紹介した。外国語科など文化系の教員も実際に解剖をしたが,摘出後の心臓が相当長い間動き続けたことには驚いていたようだ。

モンティ・ホール問題 平野さんの発表
 「モンティ・ホール問題」とは,アメリカのテレビのゲームショー番組に由来する次のような問題である。「閉ざされた三つのドアがあり,一つのドアの後ろにだけ当たりの商品がある。プレイヤーが当たりだと思うドアを選んだ後に,当たりのドアを知っているショーのホストが,プレイヤーが選ばなかった二つのドアのうち一つを開け,そのドアがはずれであることを見せる。続いてホストは,プレイヤーに対して,はじめに選んだドアのままにするか,または現時点で閉じているもう一つのドアに変更するかの選択権を与える。このとき,はじめに選んだドアを変更すべきかどうか?」というもので,要は,条件付き確率の問題である。答えは,「変更すべき」である。

二次会 新横浜駅前「華の舞」にて
 17名が参加してカンパーイ!本日はYPC創立20周年にあたる。本日の例会はこれを記念して第一回の例会が行われた発祥の地、港北高校で行われた。20周年を祝って乾杯し、YPCの一層の発展を皆で祈った。

 二次会の席に喜多さんが持ち込んだコマ。台座に仕込まれた駆動コイルの正帰還により回転し続けるところはトップシークレット(永久ゴマ)と同じだが、回転中LEDが明るく光る。はじめは電池内蔵かと思ったが、右の写真のようにLEDをつないだコイルを台座にのせると光る。つまり台座が自発的に変動磁場を生じているのだ。

 コマを分解してみるとはたせるかな、コイルが仕込まれていた。電池は見あたらない。台座から電磁誘導によりエネルギーを得て回路を駆動し、光っているのである。


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