例会速報 2009/07/12 鎌倉学園中・高等学校


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授業研究:力学の導入 鈴木さんの発表
 鈴木さんのレポートは、高1理科総合A(必修)2単位の力学の冒頭部分である。教科書は使わずプリントで進める。今年は力学の学習順序は運動学の前に静力学を行うことにした。また、到達目標学習課題方式を意識して予想討論にできるだけ時間をかけ、プリントにも記入欄を広く取った。
 例会では、力学の学習の順序や作用反作用の扱い、弾性力の扱いなどについて意見交換があった。力学の導入をどこからするかについては、教科書どおり運動学から入るという人が多数だった。鈴木さんは「認識の順序として力があってその結果として運動がある、とするほうが合理的だ」、「運動学はあまりに数学的過ぎてつまらない」という思いから、力を先にやるべきだと思っている。
 作用反作用については、「弾性で反作用の存在を説明するという方式は取るべきでない」と鈴木さんは主張し、例会参加者にも異論はなく、実際の授業でもそういう説明をしている人はいなかった。 鈴木さんはこの議論を元に、8月の科教協埼玉大会のレポートを組み立てるという。


オメガのアポロ展 車田さんの発表
 トップブランドの時計メーカー「オメガ」が月面着陸40周年を記念して、東京の銀座のショールームにて「オメガ スピードマスター月着陸40周年記念エキシビション」を7月21日まで開催していた。6月にはオルドリン宇宙飛行士も来日し、月面探検で使用されたムーンウォッチをはじめ、マーキュリー・ジェミニ計画からNASAで採用されたスピードマスターを主役として展示し、宇宙開発史を振り返った。


 取材した車田さんによれば、月着陸の40年前のニューヨークタイムスや日本の新聞も展示されていたという。1Fフロアの入り口には、OMEGAのロゴ入り月面車のも展示され、お土産にオルドリン宇宙飛行士が表紙を飾る非売品の立派な本「LIFETIME」ももらえた。

理研のレインボーキューブ 車田さんの発表
 車田さんは理化学研究所(鶴見)の一般公開で、ショーウインドーに飾ってあったパズル(非売品)を懇願して無理にもらってきた。金銀銅などの結晶構造をモデルとして考案された、ルービックキューブに似た色合わせ回転パズルだ。面心立法最密充填構造をもとにしており、ルービックキューブの3軸回転に対し、これは4軸回転になっているところが面白い。どのような構造になっているのかは今後分解してからのお楽しみ。

ブンブンごま 石井さんの発表
 石井さんの今日のテーマは「ブンブンごま」。まずは普通にCDなどを回す力学的ブンブンごまから。風コマをブンブンごまにすると扇風機みたいになる。写真左は回すとランプが光るおもちゃ。遠心力でスイッチが入る単純な構造。右は自作の回すとブザーが鳴るコマ。同じく遠心力で接点がつながる。


 ネオジム磁石のブンブンごまをコイルのそばで回すと電磁誘導でLEDが点灯する(写真左)。導線のリールをそのままコイルに見立てて糸で吊って回転させると、地磁気で電磁誘導を生じてLEDがともる(写真右)。

 次に渦電流の応用。まず渦電流の威力を示す予備実験。時計皿にのせたアルミのブロックの上でネオジム磁石を回すとブロックがしずしずと回転する。

 磁石を動かしたのではただの電磁誘導と区別がつかないので、ネオジム磁石を鉄心付きコイルの上に固定する(写真左)。その上で一円玉20枚を重ねてブンブンごまのように勢いよく回すとコイルに直付けしたLEDが点灯する。一円玉に渦電流が起こり、それが作る磁場の変化でコイルにも電磁誘導が生じるのだ。非常に巧みな実験である。動画はここ

自作の大気圧缶ホルダー 小河原さんの発表
 小河原さんが、おなじみの大気圧缶ホルダー自作について報告してくれた。仮説社から300円で販売されているが、夏休みの工作としても面白いのではないかというkとで、チャレンジしてみたらしい。ところが、埼玉の石井さん製作のゴムピタくんと同じ素材では厚すぎ、逆に0.5mm厚では加工が容易な半面、缶を持ちあげた際にゴムシートの一部が変形してしまうとのこと。缶コーヒーでは、それなりにうまく機能するものの、穴の大きさを含めてもう少し工夫が必要という現状報告だった。

一本足のトコトコ人形 加藤俊さんの発表
 中国製のぜんまいで歩くおもちゃであるが、一本足で歩くところがおもしろい。足の形状と前傾姿勢をうまく利用している。秋葉原の「ムダヤ」という雑貨屋で入手したもので、”Animal・・・insect”という名前が付けられている。動画はここ

モデルロケット用?カメラ 車田さんの発表
 車田さんがモデルロケットに搭載するカメラを探して、行き着いたのがこのカメラ。秋葉原の千石電子の隣のIOSYSというお店で売っている。20gという軽量、AVI ビデオファイルサイズ:500KB以上/秒で画質も十分。モデルロケットに搭載したときに地上を写すためには本体に対してカメラの角度を90度変えなければならない。ちょっとした改造または鏡の使用が必要になるだろう。実際のモデルロケットからの映像を楽しみに待とう。


EX-F1の開発現場から 森安さんの発表
 YPCでのEX−F1の評判を聞きつけ、カシオ計算機の森安さんらが例会に初参加してくれた。森安さん曰く「物理でのハイスピードカメラの活用事例を聞いて、非常に授業に役立つカメラだと感じました。これからも多くの事例の発掘を楽しみにしています。」
 意外にも開発者の意図しないところでブレイクしたようだ。例会ではハイスピードカメラや関数電卓、電子辞書などの教育現場での活用状況について、活発な意見が交わされた。

びっくり3Dペーパークラフト 越さんの発表
 増田屋コーポレーションから出版されている書籍の紹介。714円(税込)。首振りドラゴンのらねこ物理でも紹介)の牛&犬バージョンのペーパークラフト。逆遠近法により、どこから見ても牛や犬がこちらを見ているように見える。
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へんな立体・すごくへんな立体 越さんの発表
 「へんな立体」 杉原厚吉 著 誠文堂新光社1,680円(税込)  ISBN-13: 978-4416807521。エッシャーのだまし絵にあるような「立体だまし絵」のペーパークラフト。完成した物をある方向から写真に撮ると、ありえない立体に見える。別の方向から見ると種明かしになる。
 「すごくへんな立体」杉原 厚吉 著 誠文堂新光社1,680円(税込)ISBN-13: 978-4416808313。へんな立体の続編。低く見える方にタマが転がっていくように見える「反重力すべり台」など、動きのある「立体だまし絵」もあり、とても面白い。大型の「立体だまし絵」を作ると、文化祭の発表などでも良いものができそうである。

ダイソーのジャンピングバード 越さんの発表
 外側の4本脚がステンレスのバネで、本体の下側に吸盤が付いている。つるまきバネを用いた普通のジャンピングトーイに比べ、黒板に張り付けることもできるので、水平投射の実験にも使える。CDケースなどに張り付け、力学台車に載せ、台車を等速直線運動させると、等速直線運動をしながらの鉛直投げ上げの実験もできる。普通のジャンピンクトーイの入手が難しくなってきたので、生徒実験用にまとめ買いすると良いかもしれない。動画はここ


ネオジム磁石の即売会 喜多さんの即売会
 「ネオジム磁石が4つで100円」の話を聞いた喜多さんは、これまで各地のダイソーをチェックしていたが見つけることができなかった。たまたま例会の当日、途中の横浜のダイソーに寄ってみたら、棚には35コもあり、自分と同様に入手していない会員がいると考えて、全部買い占めた。予想は当たって、例会ではアッというまに完売した。有用な教材を見かけたら直ちに大量購入して例会で分ける。これがYPC魂である。ビースピ、虹ビーズ、オシッコ人形・・・みんなそうやって普及した教材だ。

太陽の写真 益田さんの発表
 日食観測の副産物。カシオのEX-F1で高速シャッターで撮影すると、減光フィルターなしで太陽の写真が撮れてしまう。例会では、カメラをフィルターなしで直接太陽に向けてよいのかということが議論になった。CCD撮像素子の耐久度はどの程度なのだろう。
 まあ、ちゃんとフィルターを装備して撮影すべきなのは言うまでもないのだが・・・。

JAMSTECの夏企画 伊藤さんの発表
 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が7月22日(水)〜24日(金)に開催する2泊3日の高校生向け研修および8月7日(金)の日帰り中学生コースの紹介があった。JAMSTECではこれらの他にも研究施設や観測船などの広報活動を多数行っている。詳しくはJAMSTECのWebページへ。

西條敏美さんの新刊本 山本の書籍紹介
 徳島中央高校の西條敏美さんが、この夏相次いで2冊の本を出版した。

「理系の扉を開いた日本の女性たち」新泉社\2000+税。ISBN978-4-7877-0906-6 C0095
 どこの国でもかつてはそうだったように、日本でも学問の世界は男性中心社会だった。その厚い壁に立ち向かい理系の扉を開いた女性先駆者たち25人の生誕の地やゆかりの地をたずね、その業績を紹介する、西條さんならではのユニークな書だ。

「単位の成り立ち」恒星社厚生閣\2700+税。ISBN978-4-7699-1099-2 C0040
 「理科教室」で好評だった連載を単行本化したもの。1講の『メートル』から24講の『バイト』まで単位ごとにその歴史的な成立から現在の単位標準、そして単位名に名を残した人物の業績やエピソードなど、広く話題をカバーしているので、授業のネタ本に最適。

生徒は日本人ノーベル賞受賞者を知っているか 喜多さんの発表
 表は喜多さんが慶応大学理工学部の理科教育法受講者に対して行ったミニクイズの結果である。2005・2008年は日本人12人の名前を五十音順に並べ、物理学賞・化学賞・生理医学賞を受賞したのは誰かを尋ねた。2009年は16人の名前を挙げ同様に質問した。
 2005年はアインシュタインが有名な3つの理論を発表した1905年から100年を記念した「国際物理年」ということでマスコミで取り上げられていた。アンケート実施は6月である。
 また、翌2006年は朝永振一郎生誕100年、翌2007年が湯川秀樹生誕100年ということで、国内では、朝永・湯川の名がマスコミに何度も登場した年である。
 その効果がどれだけあるか。取る前の喜多さんの予想は「理工学部の物理・化学が主だから湯川・朝永・小柴・田中は80〜90%だろう」であった。しかし結果は、小柴・田中は当たったが湯川・朝永は外れた。さらに2009年をみると、前年に南部・益川・小林・下村が受賞した直後にも関わらず、何と20〜33%であった。

回折格子のパワーポイント教材 水上さんの発表
 水上さんが回折格子の公式dsinθ=mλを導く際に用いているパワーポイント教材の紹介。セールスポイントは次の4点。
@回折格子(500本/10o)+対物ミクロメーターの顕微鏡写真(5d=10μmがわかる)
A教科書の模式図と全く同じ状況の写真(回折光線と輝点が一緒に写っている)
B回折回折光をホイヘンスの原理で説明した。(スリットから出る「素源波」の共通接線の連なりが回折光線)
C水中における回折の写真(λ→λ/n)が分かる。
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 授業では、4人の班ごとにホログラムシート(2000本/10oの縦横型回折格子)とレーザーポインターを渡して現象を観察→このパワーポイント+教科書で原理と公式を学習→巻き尺の測定値から得られるsinθとレーザーポインターに表示されたλからdを求める→ホログラムシートの顕微鏡写真から求めたdと比較する。(前者がおよそ0.48μm,後者が0.51μm)


 水中での実験の写真も水上さんが実際に実験して撮影したもので、説得力がある。ただ問題を解くだけに終始しない姿勢が高く評価できる。

はく検電器のプリントと説明モデル 水上さんの発表
 写真は,はく検電器のふるまいを自由電子の移動で説明するための教具である。教師は説明しやすく,生徒には理解しやすいようだ。
 生徒が1からノートに書き写すには時間がかかりすぎるので,金属板と内部の「+」だけを描いたプリントを渡している。また9組の+−は,負の帯電体による一連の現象を説明する際に必要な最低限の数である。

水に浮く比重1以上の円板 山本の論文紹介
 2002年5月の例会で山本は「一円玉はなぜ浮かぶ?」という発表を行った。一円玉を浮かせているのは大気圧と水圧の差による「浮力」であり、表面張力は補助的な役割を果たしているに過ぎないという主旨の内容だった。2009年4月に日本流体力学会誌「ながれ」第28巻第2号に掲載された防衛大学校名誉教授の五十嵐保氏の論文「水に浮く比重1以上の円盤」では、この現象をより精密な理論と実験により検証している。試料の密度によって決まる、浮かぶ「限界厚さ」の存在も証明されている。日本流体力学会のWebページ論文の全文を読むことができるのでぜひ一読されたい。

二次会 大船駅前「あじたろう」にて
 18人が参加してカンパーイ!。夏休みはYPCメンバーにとっていちばん忙しい季節。科学の祭典や科教協全国大会、その他の学会のスケジュールもいっぱい。その上7/22には日食もある。海外へ遠征する人もいて、情報交換に話が弾む。次回例会での土産話が楽しみだ。


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