例会速報 2011/08/27 ナリカ・交流広場


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手回し交流発電機 車田さんの紹介
 科学の祭典全国大会2011にて、出展者の月僧秀弥さん(福井県坂井市立三国中学校)にご指導いただき作成した教材の紹介。平成22年度の東レ理科教育賞で文部大臣賞受賞作品だという。作成方法など詳しくは下記を参照のこと。発電機の部分は淺井武二さんが考案したものが原型である。動画(3.6MB)はここ
東レ理科教育賞 http://www.toray.co.jp/tsf/rika/rik_022.html
手回し交流発電機解説 http://www.toray.co.jp/tsf/rika/pdf/rik_418.pdf
月僧さんは副賞の賞金を、この教材をキット化し生徒や教員への理科教育普及にあてたそうだ。
 

虫眼鏡カメラ 海後さんの発表
 海後さんは6月例会で田代さんが発表した「凸レンズが作る実像」に興味を持ち、調べてみたら「虫眼鏡カメラ」というものを見つけ、それに田代さんのアイデアを組み合わせたものを試作した。
 紙筒とその内径に合うルーペ、艶消しのアクリル板(透過スクリーン)とスライド式のホルダー、付属の絞り板やフードなどで構成されている。田代さんのアドバイスによって、ルーペからの直接の実像と透過スクリーンに映った実像が半分づつになるようにして、そこに絞り板を当ててルーペの枠を隠して見るようにした。するとルーペを直接見た実像の位置が透過スクリーンの位置と同じことがはっきりと確認できるようになった。
 

 さらに、この状態から絞り板を外して、カメラを固定して目線を移動すると、スクリーンの位置に実像が固定されているように見えて、逆に目線を固定してカメラの角度を変えると、レンズ面に実像が固定されているように見えることを発見した。

ドアスコープ魚眼 海後さんの発表
 虫眼鏡カメラにつて調べていて、住宅用のドアスコープを利用したコンパクトデジカメ用の魚眼アダプターの自作方法を見つけ、海後さんはさっそく試作してみた。取り付け方法はいろいろあるようだが、海後さんはマグネット式を採用。アクリルを加工してネオジムボールを2個埋め込みレンズの前に取り付けた。

 試作品の画角は130度程だが魚眼レンズの特徴であるマクロ撮影もバッチリだ。また、画角が200度のドアスコープも入手したので、さらなる工夫をしているとのこと。後続作品にも期待しよう。

振動で回るナット 海後さんの発表
 2010年5月にNHK「ためしてガッテン」で、垂直にした長いボルトにナットをはめて電動歯ブラシで振動を与えると、ナットが回転して上下するという不思議な現象が紹介されていた。
 海後さんはそれを追試したいと思い、百均で木製のボルトナットを購入して試作した。動画(2.1MB)はここ
 演示しやすさを考慮し2cm厚のスポンジゴムに埋めるようにボルトを立てたところ、思いのほか振動が伝わりやすくて、紙相撲のように指で叩いても回るのでは、というアイデアが出た。例会では回らなかったが、海後さんは後日、指で叩いても簡単に正転・逆転に回せる演示方法を見つけた。
 振動でナットが上昇する仕組みは説明が難しいが、棒を上昇する振り子と同じような現象に螺旋回転が加わった仕組みかもしれない。「振動」の力学も奥が深くて興味深い。
http://www.youtube.com/watch?v=1058XFMdQjo
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002387943

最密充填7×7=50 海後さんの発表
 海後さんは6月例会で紹介した最密充填パズル(10×10=106)の別バージョンを試作してみた。右の状態が50個詰めの唯一の正解パターンのはずだが、何人かに挑戦してもらったところ、枠の寸法がわずか100分の5mmほど大きかったために別なパターンができてしまった。それがかえって程よい難易度のパズルになったようだ。この試作品はその場で希望者に販売された。
 

物理教材あれこれ 田野倉さんの発表
 田野倉さんはおなじみの教材にちょっとした工夫を加えて使いやすくしている。写真左は直流リニアモーター。銅や鉄のレールだと酸化して接触抵抗が大きくなるが、アルミフォイルを角材にかぶせて使えば常にフレッシュな金属面を使える。安いし交換も簡単だ。
 写真右は無重力実験装置。バーベルのような器具を空中に放りあげると、棒に通したフェライトリング磁石が空中でくっつく。手に持って静止しているときには重力がはたらき磁石と棒の間に摩擦を生じるが、放物運動中は無重力状態となるので、磁力が優勢となる。両端のスポンジは脱落防止のストッパーとクッション材を兼ねる。
 

 直方体(右)と台形の3つの透明な升。いずれも底面積がそろえてある。同じ深さまで水を入れると、底面に加わる水圧はどれも等しいので、水が底面を押す力はどれも等しい。したがってこれらの升をはかりにのせると同じ重さを示す。・・・あれ~このロジックはどこがおかしいのかな?
 アクリルの升は特注で作ってもらったそうだ。ちょっとした工夫で、生徒に考えさせる授業ができる。

GPSカメラ 加藤俊さんの発表
 加藤さんは登山目的でGPS機能付きデジタルカメラ、カシオEX-H20Gを買った。モーションセンサーにより、衛星からの電波が受信できない深い谷でもGPSが働くそうである。このカメラは電源OFFの状態でもGPSは時々チェックしている。自宅からナリカまでの今日加藤さんが移動した軌跡が記録されていて、写真のように秋葉原を歩き回った様子が再現できる。
 しかし、加藤さんはこのカメラで滋賀県の御池岳を登ったが見事に道に迷ってしまって、野宿した。後で説明書をみると絶対誤差は数百メートルある場合があると書かれていた。一つ違う谷に下りてしまったようだという。GPSを過信してはいけない。
 

USBファン 加藤俊さんの発表
 おもちゃのようなファンであるが、ファンの翼の1枚に内蔵されたLEDが点滅していくつかパターンを描く。本来は複数のLEDが点滅して同心円状のパターンを描くのだが、翼を黒く塗りつぶすなどの改造をしているうちに1個のLEDしか点かなくなったのだという。USBからも電源を取れるが、例会では乾電池でデモを行った。
 

BOSSのおまけ 加藤俊さんと海後さんの発表
 サントリーの缶コーヒーに時々おまけが付いている。コンビニ限定である。新発売の「ゼロの頂点」にはジェット旅客機形のプルバックカーが付いていた。内部にチョロQエンジンと薄型の円形ネオジム磁石(直径10mm厚さ1mm)が入っていて、スチール缶の円周側面に張り付いて走り回る(写真左)。
 すかさず海後さんが独自に見つけた遊び方・・・いや、力学の演示方法を披露。缶を横倒しにして飛行機を下向きの状態でスタートさせるとフンコロガシのように缶を押して行くのが面白い(写真右)。動画(2.9MB)はここ。また、飛行機を上向きにしたときの缶を引っ張る姿も可愛い。都内や神奈川県ではすでに売れ切れていたが、海後さんは例会後に茨城で見つけたそうだ。
 

マジキャップのしくみ 中村さんの発表
 マジキャップは以前にも例会で紹介されたことのある知育玩具。三角形、正方形、五角形などのタイルはそれぞれの辺を近づけるとくっつき、どんな角度にも組むことができる。もちろん辺には小さな磁石が仕込んであるのだが、なぜどの向きでも反発せずにくっつくのか。例会の場で早速分析が始まった。ビジュアルシート(写真右)を近づけてみると赤い部分に2本ずつ棒状の小磁石が入っていること、磁石は軸方向ではなく直径方向に磁化していることがわかる。
 

 推論を楽しんだ後は、分解して「答え合わせ」。ご覧のように長さ1cm直径1mm強のネオジム磁石が一辺あたり2本ずつ入っている。磁化方向は直径方向、つまり短い方向だ。2本つなげると左右でNSは逆方向になる。このセットで相手側とくっついたときに磁気回路が閉じるようになっている。さらに丸棒になっているのは赤いホルダー内で自由に回転できるようにするためで、相手を裏返しても、丸棒が自ら回転して必ずくっつく向きになるのである。 

宝焼酎JAPANの新しいボトル 鈴木さんの頒布会
 以前から、YPCのメンバーの学校のいくつかでは宝焼酎JAPANのボトルを二つ並べて、片方に水を入れて、空の場合と比較させて屈折の効果を見せるという展示をしていたが、そのボトルのデザインが一新された。以前は、富岳三十六景(有名な「神奈川沖浪裏」)だったが、新しいものは尾形光琳作「風神雷神図」だ。前のものも美しいデザインだったが、今回のものは金色がきれいで、のぞき窓が二つあり、展示にうってつけだ。写真の左が空のボトル、右が水を入れたボトル、左は空のボトルだ。水(商品では焼酎)が入っていると屈折できちんと見える。甲類焼酎を買う時にはぜひこのボトルを買おう。ちなみに鈴木(私)は月に2本は空き瓶を作るよう奮闘している。毎月の例会に1セット2本は持参する予定。

片目立体 竹内さんの発表
 竹内さんはSONYにつとめていた頃3Dカメラの研究をしていた。これらの画像は特殊なカメラで撮られたものではないが、片目で見ると立体感が感じられる。両眼だと視差がないので平面に見えてしまうが、奥行きがはっきりしている画像を片目で見ると、脳内処理で立体感が生まれるのである。
 

音の学習 古谷さんの発表
 古谷さんは小学校の低学年から音の学習をさせるべきで、もの作りも取り入れて展開すべしと主張する。物がふるえて音を出すこと、色々な物が楽器になりうることなどを学ばせる。写真右は八木型テレビアンテナの導波器、反射器のアルミ棒を適当な長さに切ったもの。机や固い床の上に落とすと固有振動により決まった高さの音が出る。長さをうまく調節するとドレミファの音程が作れる。
 

 写真左はペットボトルに空気入れて空気を押し込み、棒で叩く、いわゆる「ペッ琴」。これも圧力を加減することで音程が作れる。写真右は「ばね式マイク&スピーカー」。かき氷カップ2個をつるまきばねで結び、竹棒3本で固定したもの。一方に口を当てて声を出すと、エコーがかかって聞こえる。古谷さんは実験工作教室のために、材料費のコストダウンも追求している。


3D独楽 古谷さんの発表
 CDにホログラムシートをはりつけて独楽にすると、回転させたときに立体感が感じられる。動画(2.2MB)はここ。中心の軸は適当な太さのゴムホースが工作も楽で回しやすい。裏側からビー玉を押し込めばなめらかな軸先となる。製作工程の簡素化、材料費のコストダウンなど、作る生徒の立場に立って最適化するのが古谷さんのこだわりだ。
 

教科書の原子力の記述の比較 鈴木さんの発表
 鈴木さんは8月初めの科教協全国大会(栃木大会)物理分科会で、原子力の扱い方についてレポートした。例会では授業での扱いは別の機会に発表することにして、この日はそのレポートの前半に入れた教科書の原子力についての記述の比較を紹介した。中学校理科3年の5社と高校の物理基礎の小判5社と大判2社の教科書を比較した。
 比較して気づくのは、各社で扱い方がかなり違うということである。ページ数も書かれている項目も違う。しかし、いずれも原発の意義・安全性や放射線の利用を強調する内容になっている。ただ、高校の教科書の多くに、廃棄物の処理などへの懸念が書かれ、中には放射能漏れや制御不能による暴走などの放射能汚染の可能性に触れているものもある。残念ながら我々が授業で扱う際には、今回の事故以前は安全性に対する認識が甘かったという反面教師として使うことになるだろう。そういう点では、文科省が配布していた「わくわく原子力ランド」という副読本(小中学生向けがネットで配布されていた)は、「五重の壁」や地震対策なども記載されていてまさに認識の甘さの実例になる。ただ、今はネット上では削除されている。

放射線測定 舩田さんの発表
 舩田さんは福島県各地を訪れ、空間線量を測定してガリレオ通信6月号と7月号でも紹介している。簡易型GMカウンターを持参しての測定である。新幹線郡山駅ホームで測定すると90.0cpm(以下単位略)。千葉の平常値が17~19なので、およそ5倍だ。このGMカウンターは1000を超えると長時間いることについて考えたほうが良いかなという値だそうだ。公共交通機関でいける範囲では伊達の霊山あたりが180で多かった。福島、いわき、久ノ浜なども50~60くらいで多めだったという。

物理の先生方への講習 舩田さんの発表
 舩田さんは高校理科部会で物理の先生方を対象にした研修会の講師をつとめた。午前は授業の導入に良い簡単な工作であり。電気で「くるくるモーター」音で「松風独楽とカリンバ(写真右)」光で「立方体万華鏡」原子で「スパークチェンバー」をを作った。先生方はほぼ全員完成させていた。
 午後はやや難しい講義など。工作についても1000円では収まらないものを紹介した。YPCでお馴染みの小型高電圧装置を用いての空気GM管、生物系の装置である蝙蝠探知機、蝙蝠探知機の動作チェックのための超音波距離計などです。市販の装置であるペルチェ型霧箱で放射線の観測、ビースピで重力加速度の測定などを紹介しました。
 

理科の素 車田さんの発表
 東京理科大学の中高生向けの理科の案内書。車田さんの評価によれば各大学が発行している学校案内のパンフレットでNo1だとのこと。表紙は6月当初は日本科学未来館で開催されていた、「ドラえもんの科学みらい展」のパンフレットにデザインが似ていた。6月11日に未来館の7Fにて東京理科大学のイベントが行われたときに配布して、その後未来館からクレームがあり表紙を変えた経緯があるが、内容に変更はない。「宇宙兄弟」や「火の鳥」「サマーウォーズ」など漫画、アニメの題材から科学の世界に引き込み、「L25」や「R25」のデザイン風で読みやすく構成されている。
https://picasaweb.google.com/105453469331690305103/eNKDOK#

韓国の科学の祭典と福島原発の扱い 車田さんの発表
 今年の韓国の科学の祭典(2011.8.9~15)は世界陸上の開催都市「大邱(テグ)」で行われた。会場の様子はここ
 会場には企業ブースの展示があり、韓国の原子力発電所の免震構造の展示があった。ボタンを押すと大地が揺れるが、免震構造のため原発は大丈夫とPRしていた。また、韓国の原発は冷却系にナトリウムを使っているので水素爆発はない、とのこと。報告を聞いた例会参加者からは苦笑がもれた。韓国の原発は5基でそのうちの1基だけがナトリウム冷却と説明を受けたそうだ。
 そもそも、福島原発が津波により冷却装置の電源を失い水素爆発に至った経緯が伝わっておらず、地震で爆発したように思われているらしい。下記動画と写真を参照のこと。展示はハングルである。
https://picasaweb.google.com/105453469331690305103/CvBSzE#
http://www.youtube.com/watch?v=ucQo2DfA65E
http://www.youtube.com/watch?v=TIFlONIReAk
 

 続いて、韓国の国立果川(カチョン)科学館でのロボット事情。韓国ではアシモのような大型の二足歩行ロボットは完成していない。転倒防止のために、リフトに両肩からワイヤーで吊るしての演示である。日本では未来館に行けばアシモが走っているが、いずれは韓国のロボット技術は日本を追越すのだろうか。動画は下記を参照。
http://www.youtube.com/watch?v=hu2amFC07xE
http://www.youtube.com/watch?v=HmQoRg8jR5g

福島の小学校でのミニ・エクスプロラトリアム 竹内さんの発表
 竹内さんは全国各地を回って自前のミニ・エクスプロラトリアムを出前している。この夏は福島市の三河台小学校と荒井小学校で開催し、子供達を元気づけた。
 

 展示物には子供でもわかる簡単な説明がついているが、基本的には大人が説明するのではなく、子供が自ら興味を持って遊びながら、科学を体験し、発見ができるように仕組まれている。

SSH生徒研究発表会(神戸) 佐々木さんの紹介
 8月11日(木)・12日(金)神戸国際展示場にてSSHの全国大会が開かれた。例年パシフィコ横浜で開催されているが、今年は東電管内の電力事情により初の関西会場での開催だった。指定3年目の学校による口頭発表と、全校対象のポスター発表がある。以下、視察した佐々木さんのレポート。
 口頭発表は6分科会場に分かれての同時進行後、審査により代表校が全大会で発表する。分科会では、「太陽電池」「火星」「消しゴム」「スキーワックス」など、気になるキーワードの発表に人気があった。全体会では、質問が活発でレベルも高くなり、発表者もタジタジというケースもあった。
 ポスター発表にはYPC関連の西湘高校、YSFHも参加、踏み込みつつもわかりやすい発表であった。被災地からも多くの学校が参加、中でも福島高校は学校周辺の空間線量の測定結果を報告し、注目された(写真右)。
 

他校で印象に残ったのは、大科学実験の「音の速さを見てみよう」を水道ホースでモデル化していた奈良・青翔高校(写真左)、風紋のパターンを数学的モデル化し、トランプでシミュレーションした広島大附属高校(写真右)、送風機と電子天秤によるオリジナル装置で、コアンダ効果による揚力を検証した筑波大附属駒場高校、ポスター発表とはいえ、モデルや動画を活用した総合プレゼン力が重要と感じた。
 来年は指定校がさらに増え、横浜で開催されると思われる。研究内容、プレゼン力、いずれも見る価値あり。当日の一般参加も可能なので、お勧め。 

YPCトートバッグ 成見さんの作品
 今年8月5~7日、栃木県で開かれた科教協全国大会のお楽しみ広場でのYPCの売り物のひとつ。成見さんデザインのトートバッグ。有名なアインシュタインの板書E=mc2の写真をもじったもの。

二次会 御徒町駅前「鼓火」にて
 18人が参加してカンパーイ!今夜の会場はナリカ近くに新装開店した店。ナリカ例会の時は東京方面の方が参加しやすいので、いつもと違う顔ぶれと交流できる。会場を持ち回りにするのが仲間を増やすコツだ。
 


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