例会速報 2012/09/23 関東学院中学校・高等学校
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授業研究:電場・電位とコンデンサーの授業 小沢さんの発表
今回の授業研究は小沢さんによる静電気分野の授業展開だ。以下、小沢さん自身のコメントで解説する。
電場を可視化する表現の一つに、電場ベクトルをたくさん描くという方法があるが、これを手作業で行うのは現実的ではない。授業のとき、「誰かコンピューターで描くソフトを作ってくれないかな」とつぶやいたら、本当に作ってくれた生徒が今までに2人いた。電荷の大きさを変えたり、位置を変えたりできるようにプログラミングされている。生徒の卒業後も、長い間授業で活用している。
電気力線を学んだあとに、電場の重ね合わせを考えさせる課題。上下のアルミ板の間に箔検電器を置き、上から帯電棒を近づけると箔は開く。つまり、アルミ板は、帯電棒がつくる電場を遮蔽しない。ところが、導線で2枚のアルミ板をつないでから同様の実験を行うと、箔は開かない。その理由を考えさせる。帯電棒が作る電場と、静電誘導したアルミ板が作る電場を、それぞれ電気力線で表示すると、アルミ板に挟まれている空間では、電場が打ち消し合っていることに気付く。
コンデンサーの導入として、身近なところではストロボに使われているという話をする。やや危険だが、レンズ付きフィルムを分解して取り出したストロボユニットをスタンドに取り付けて演示している。写真の上部の灰色の円筒形の素子がコンデンサー。充電して、絶縁された棒の先でスイッチを押すとストロボが光る。なお昇圧回路によってコンデンサー周辺は高電圧になっているので、取り扱いを誤ると感電してたいへん危険である。
コンデンサーは2枚の電極で絶縁体を挟んだ構造である。1枚のアルミ板をカードケースの中に入れ、もう1枚のアルミ板をカードケースの上にのせ、全体を絶縁台の上に置く。こんなものでも電気を確かにためられることを示す実験。このコンデンサーに、かつてYPCで製作した小型高圧電源装置(http://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/labo/hvoltage.pdf)で充電する。このあと2枚のアルミ板をショートさせると、パシッという音とともに火花が飛ぶ。これも感電の危険がある実験なので、取り扱いには注意を要する。
1Fのコンデンサーの放電実験。3Vで充電したのち、30Ωの可変抵抗器で放電させる。電流計の指す値が0.1Aを保つように、可変抵抗器のつまみを調節しながら、放電時間を測定する。およそ30秒間流れることがわかる(0.1A×30s=3C)。この実験で、Q=CVや、Q=∫Idtの関係をおおまかに確かめられる。なお、この実験では、内部抵抗の小さなコンデンサー(ナリカP70-0575)を用いる必要がある。
イージーセンスを用いると、コンデンサーの充放電曲線が簡単に描ける。写真の青いグラフは3Vで、赤いグラフは1.5Vで充電したのちに30Ωの抵抗で放電させたときのもの。
ダミーヘッド SFH3年K君の発表
K君は、人間の頭の形をした模型の両耳にマイクロフォンを埋め込んだ、ダミーヘッドを自作した。これを用いて録音し、ヘッドホンで再生すると、 実際に自分の耳で聞いているような臨場感が得られる。人間は音の両耳間の時間差や音量差、また耳介や体の影響で変化する周波数スペクトル形状を手がかりにして、音の方向を判断している。このダミーヘッドマイクを使うとその手がかりを畳み込んで録音できるのだ。
しかし聞く人によって音の方向を異なって認知することがある。例えば、ダミーヘッドの前方で鳴っている音を録音し、再生すると後方で鳴っているように聞こえることがある。聞く人の耳や頭の形が、ダミーヘッドと異なるからだ。
研究では、できるだけ多くの人が正しい方向を認知できるような方法を考えるため、手がかりを探している。 耳の形状、脳の適応力、骨振動などを視野に入れて実験・考察していく必要があるとK君は考えている。
ロケットガール&ボーイ SFH3年H君の発表
H君はこの夏、ロケットガール&ボーイ養成講座(ロケガ)2011に参加し、東京チームで作成した2mほどのハイブリットロケットの外部に取り付けられたカメラから、打ち上げの一連のロケットの挙動映像を取得することができた。これは、東京チームでは初の成功である。H君は企画の宣伝も兼ねて、この映像を例会で上映してくれた。右は搭載した外部カメラで発射地点を見下ろした映像。
写真左は内部カメラがとらえたインジケータLEDの画像。右は加速度の記録と映像の考察画面。以下、H君からのコメントを紹介する。
今まで外部に向けた発表を経験したことがなかったので、どのような質問が来るか楽しみであった。今回、「機体そのものについて」の質問が多く、機体設計を指導者に頼ってしまっていたので、的確な回答ができないことがあった。自分たちの作ったロケットについて、今まで以上の考察や、基本の理解が早急に必要だと感じ、これからの学習に役立てたいと思った。
新UIの開発 SFH2年N君の発表
学校のサイエンスリテラシーⅡという授業(課題研究)での、研究の発表である。最近のユーザーインターフェース(UI)と言えばタッチパネルが主流となっているが、それよりもさらに直感的な操作を可能にしたいと考え、「手の動きでPCを動かすUIの開発」を目的として研究活動を行ってきた。
カメラを用いて手の動きを認識して、その動きからPCを操作するプログラムを作成した。カメラの映像から、色をRGBで読み取り、その値が変化することで動きを認識している。読み取り方法の検討や、最適な閾値を追求することで、より精度よく操作できるようになるだろう。
電磁誘導・その2 石井さんの発表
100円ショップ「ダイソー」で1mmφの「アルミ自在ワイヤー」を入手し、そのまま3巻直列につないでコイルとし、LEDで閉じる。同店の「強力マグネット」(20mmφ25個入)のうち6個を重ねてブンブンゴマとし、コイルの近くで回転させるとLEDがともる(左)。スローモーション動画(movファイル8.6MB)はここ。10セット購入して班実験させても3300円の材料費だ。
一方、0.1mmφの銅線で巻いたコイルの方をブンブンゴマにして大きめのフェライト磁石の上で回してもLEDをともすことができる。こちらのスローモーション動画(movファイル9.0MB)はここ。
今や時代遅れとなったブラウン管テレビから取り出したコイルの導線をまき直して直径25cmのコイルにした。そのそばで磁石のブンブンゴマを回す。コイルの中央だとLEDは光らないが、導線のそばだと光る。この現象はどう説明すればよいのだろう。
イージーセンスで交流 武捨さんの発表
武捨さんは、大電力低周波発振器とイージーセンス(デジタルセンサ)を交流の授業に使ってみた。
電流センサ、電圧センサを用いることで、グラフとして直感的に交流波形を見ることができる。右のグラフはコイルの場合で、赤が電圧、青が電流である。電流の位相が90度遅れているのがわかる。
カーソルで選択した時刻の電流値、電圧値を表示することもできるし、前もって設定しておけば電流と電圧の積を求めて、リアルタイムで、電力のグラフも表示することができる。左は抵抗、右はコンデンサーの場合で、緑が電力のグラフである。抵抗では常に消費電力が正だが、コンデンサーの電力は平均すると0になる。このようにイージーセンスを使うと、各素子の交流での性質は一目瞭然だ。
交流での抵抗、コンデンサ、コイルの性質を学んだ後、実際にRLC回路を題材とした実験を行う。机上の空論ではなく、徹頭徹尾実物を示しながらの授業展開はすばらしい。
消えるのではない 田代さんの発表
紙切れの入った試験管を水の入った紙コップに鉛直に立てて入れると試験管内の紙切れが見えなくなる。
試験管の代わりに小型ポリ袋に模様のある厚紙を入れ、鉛直に立てながら水の入った紙コップに入れていくと水面下では厚紙が見えなくなり、その代わりにポリ袋が鏡のようになる。 物が消えたのではない。ポリ袋の中からの光は水との境界面で屈折し、目に届かなくなる。一方、コップの底からの光は同じ境界面で全反射し、その光が目に届いたのである。この実験は「パスカルの部屋」http://homepage2.nifty.com/pascal/jtool35.htmlの記事を参考にさせていただいた。なお、どこまでが全反射か、透過率はどうかなどが、例会の席で議論になり宿題とされた。
コップの底が無地だと全反射と気付きにくい。全反射の事実をわかりやすく示すには、底に文字の書いてあるコップで同じことをやるとよい。ポリ袋の面に底の文字が映るので、底からの光がポリ袋の面で反射して目に達しているとわかる(左)。さらにポリ袋の前に空の試験管を入れるとポリ袋内の厚紙が見えるようになることが例会の時に発見された(右)。これは発表者の田代さんも当初意図していなかった興味深い現象だ。
ストローでバランストンボ 加藤さんの発表
加藤さんは、9/9の「科学の祭典東京大会in小金井」に、市ヶ谷なんでも実験クラブのブースで参加した。その時の工作がこれ。ストロー2本とゼムクリップで簡単に作れるバランストンボだ。一本のストローの先端を斜めにカットして下に折り曲げ支点とする。その後部の切り込みに、真ん中で90度に折り曲げたストローをさし込んで羽根にする。胴体の前後と両翼の先端にゼムクリップをさし込んでバランスを調節すればできあがり。
会場に看板として展示していた大型バランストンボは会場校の関東学院に寄贈された。バルサ材で作られており、なかなかの出来映え。
LEDの冷却 市原さんの発表
市原さんは文化祭で液体窒素が入手できたので、LEDを通電させながら冷却してみた。黄色LED(左)は冷却することで緑色にシフトした(右)。
他の色(青,赤,緑,白)では光が消えた。写真は赤色LEDの場合。
LEDのバンドギャップは、混ぜた不純物の材質によっては温度に敏感らしく、低温にすることでバンドギャップが広がり、エネルギーの大きい方にシフトしたと思われる。
電流・電圧・温度の変化をイージセンスロガーで記録してみると(右)、温度の低下にしたがって、電気抵抗に相当するV/Iが大きくなることがわかる。
※参考にしたHP:http://optpelec.blog.fc2.com/blog-date-20120501.htm
二次会 黄金町駅前華の舞にて
8人が参加してカンパーイ!今日の例会にはSFH(横浜市立サイエンスフロンティア高校)の高校生が参加してくれた。それぞれ本職の教員顔負けの立派な研究内容と、堂々たる発表態度だった。もちろん未成年なので二次会には参加してもらえないが、二次会の席でも「将来が楽しみだ」と賞賛する声しきり。いずれ最先端の科学・技術に貢献することになる若者たちだろう。期待したい。
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