例会速報 2014/05/18 多摩大学附属中学・高等学校


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授業研究:静電気とコンデンサーの生徒実験 市江さんの発表
 昨年の8月例会で紹介した田中英二さんの静電気メーターを用いた実験。負に帯電した塩化ビニルパイプを近づければ青色LEDが(写真左)、正に帯電したアクリルパイプを近づけると赤色LEDが(写真右)点灯し、帯電体の正負が一目でわかる。生徒にとって、箔検電器での電荷の移動をイメージするのは、なかなか難しい。この装置を補助的に用いることで、それを直感的に把握することが容易になる。
 

 写真左はナリカのクロンメーターで、定量的に電荷保存を確かめているところ。箔を帯電させるとき、アースのかわりにクーロンメーターに電荷を逃がし、その電気量を測定する。それをまた、もとの箔にもどすと箔は閉じ、クーロンメーターの値も0にもどるというもの。
 これとほぼ同じことは田中さんの静電気メーターが2台あればできる。帯電していない紙袋に入ったストローを装置上部の空き缶に固定し引き抜くと、紙袋は正に帯電し、赤色LEDが点灯する。残ったストローをもう一台の静電気メーターに近づけると青色LEDが点灯とする。それをまた、もとの紙袋にもどすと、真ん中の白色LEDが点灯し、帯電していない状態にもどったことが確かめられる(写真右)。
 

 下の写真は、コンデンサーの静電エネルギーと電圧の関係を半定量的に確かめる実験。乾電池2個、あるいは4個で1Fコンデンサーを充電し、電圧を2倍にしたときの静電エネルギーがもとの何倍になるかを確かめる。電流計の値がほぼ0になるまで充電したコンデンサーを手回し発電機に直結する。この場合手回し発電機はモーターとして振る舞い、ハンドルが回り出す。ハンドルの回転数でその仕事量を半定量的に測定するわけだ。その回転数は、電池2個で充電したときは20回+α、電池4個のときは100回前後となり約4倍になる。詳しく測定してみると4倍を下回るより、上回る傾向の方が強い。これはコンデンサーが完全に放電する前に、ハンドルが止まってしまうことに起因していると考えられる。また、さらに工夫するとコンデンサー、電流計、手回し発電機で静電エネルギーが電気量の二乗に比例することも確かめられる。詳しくは次号ニュースの記事で報告する。
 

アーテックのバンデグラーフ 山本の発表
 安価な理科教材を提供しているアーテックという会社がある。そのハンズ・オン・ラボシリーズの「ビリビリ静電気マシーン」を購入してみた。小型のバンデグラーフ起電器である。アマゾン価格で1500円ほど。中国製。内容物は右の写真のとおり。単三電池2本(別売)で駆動する小型モーターでゴムベルトを回転させて電荷を運ぶ。開封した直後、電池を入れても動かなかったのでよく見るとゴムベルトがずれて引っかかっていた。仕組みは単純なのでさっそく分解修理したが、安かろう悪かろうの典型か。
 

 集電球は付属していないので適当なアルミ缶を上部の吸盤にとりつける。運転するとアルミ蒸着テープがふんわりと開く。暗い部屋なら手に持った蛍光管を光らせることもできる。放電球もありあわせのアルミ缶を500mLのPETボトルに乗せて作った。本体のアース線を結んで逆符号の電荷を導くと、間につるした導体球が二つのアルミ缶の間を往復運動する。
 

 同社は「フライスティック」という静電気おもちゃも発売している(アマゾン価格で1300円ほど)。写真左は「マジックウエーブステッキ」というテンヨーの商品だがほぼ同じ仕様である。上記のバンデグラーフと同じパーツを使っているに違いない。並べてみると本体部分はほぼ同じサイズだ。(写真右)
 

マッチ棒ロケット2 車田さんの発表
 写真左はおなじみのマッチ棒ロケット(標準サイズ)。車田さんはダイソーで「長軸マッチ」を手に入れた(写真右)。箱は約2倍。マッチの長さも2倍以上で軸も太い。当然頭薬の量も多い。これで大型マッチ棒ロケットを作れないか試してみた。
 

 従来のマッチと同じ方法で作ってみると、頭薬の量が多いため、アルミホイルで覆った部分は簡単に破裂してしまった。燃焼のガスが漏れないようにアルミホイルの量を増やし、従来どおりの方法で試行すると放物線を描きながら飛翔した。動画(movファイル3.0MB)はここ。車田さんは、今後、頭薬の量、マッチ全体の質量を測り、軸が長い分フィンをつけて姿勢制御をするなど、火薬取締法に抵触しない範囲でマッチ棒ロケットの可能性を追求したいと抱負を語る。
 

科学常識度アンケート 山本の発表
 年度当初の開講アンケートで、大学の理系5学科の1年~3年生の科学の常識度を測定した。すべて記述式。正答率は左のグラフのとおり。質問項目は左から順に
①1円玉の質量は何gか。
②1円玉の直径は何mmか。
③1円玉の素材の物質名は。
④地球の全周は約何kmか。
⑤地球の年齢は約何億年か。
⑥一年は平均何日か。有効数字5桁で。
⑦単三電池の起電力は何Vか。(マンガン電池の実物を示して)
⑧家庭用商用交流の電圧(実効値)は何Vか。
⑨炭素14の中性子数は。
⑩机の上のリンゴにはたらく重力の反作用は何?
 一円玉の質量や素材はさすがに全員正答に近いが、他はなかなか悲惨である。学年による差異がないのも面白い。それでもこの数字は、日本国民の平均レベルよりは高いはずである。さて、あなたは?

情報の物理的考察 西野宮さんの発表
 2013年10月例会での報告の続編である。今回は、生体内の情報の担い手としての物質的実体を物理的に考察した。タンパク質は分子量が非常に大きいので、波動性が無視できる粒子として古典力学が適用可能だと考える。酵素基質のの立体構造的会合があると、求める基質を獲得したという情報が、運動の法則F=maを始動させる。このことが論理的相互作用の物理的実体に他ならないと西野宮さんは主張する。生体内ではマクロな粒子が情報の伝達を行い、酵素タンパク質がミクロな粒子をコントロールしている。前者は古典力学的であり、後者は量子力学的に振る舞う。ちなみに、比較的小さな分子であるミオグロビンというタンパク質(分子量約17000)の場合、ドブロイ波長は分子自身の大きさの百分の一程度になるそうだ。
 

非弾性衝突におけるエネルギー散逸 勝田さんの発表
 非弾性衝突においては、衝突の前後で力学的エネルギーは保存せずに熱となって逃げてしまう。その事実を実験的に示すため、スーパーボールとハネナイトボールをそれぞれ50回床に叩き付けた直後の温度を、PASCO社の温度センサでリアルタイム測定した。スーパーボールは弾性衝突に近いので殆ど温度は上がらないが、ハネナイトボールの温度は大きく上昇している。(グラフの縦軸は温度、横軸は時間)
 

Tutorialsの実践 勝田さんの発表
 勝田さんは勤務校の中学3年生を対象に、ワシントン大学で開発されたアクティブラーニング"Tutorials"を実践している。定性的な議論のみをしたいので、「幾何光学」の分野を選んだ。課題に対して生徒同士で予想・議論し実験で決着をつける。授業では生徒の持つ素朴概念が浮き彫りとなり、生徒達に毎回驚きと葛藤が見られる。今年度からの新しい試みであり、見学・ご意見大歓迎とのこと。
 

日本ガイシの実験・工作集 山本の書籍紹介
 科学雑誌「ニュートン」の巻頭を毎号飾っている日本ガイシの広告企画の実験・工作記事がある。ハイクオリティで評価も高いこの連載記事を再構成してまとめた別冊が昨夏刊行されている。実験編・工作編各巻\952+税。

教室で教えたい放射能と原発 浦辺さんの書籍紹介
 3月の例会でも紹介された「教室で教えたい放射能と原発」の著者、浦辺悦夫さんは今回の会場校に勤務している。本人から改めて案内があった。もちろん著者割引販売つき。

朝日新聞の折り込み周期表 宮崎さんの紹介
 朝日新聞2014/5/17朝刊掲載の東京エレクトロン株式会社の広告企画「元素周期表」は、大判で図柄も面白く、理科室の掲示用にお薦めだ。次のURLにアクセスすると、Web版も見られる。また、入手方法の案内もある。http://www.tel.co.jp/genso/periodic/

虹は丸く見えるか 古谷さんの番組紹介
 虹は普通に地面から見ると半円以上には見えないが、地面に遮られなければ真円をなすはずである。2007年8月12日放送のNTV「世界の果てまでイッテQ!」では、オアフ島に巨大なシャワー装置をしつらえて、太陽を背に上から見下ろすことで見事に虹の全景をカメラにおさめた。ちなみに虹の輪の視直径は84度にもなる。魚眼レンズが必要だ。出演は山本梓さん、解説は武田康男さん。
 

SPPの企画 竹内さんの発表
 竹内さんは、電通大の「特色ある大学教育支援プログラム」での取り組み内容を活かして、ライントレーサーの製作体験を軸にしたSPPを企画した。

二次会 永山駅前「新撰組永山店」にて
 22人が参加してカンパーイ!。やや交通不便で集客を心配したが、今日の例会は多摩大会場としては過去最高の盛会だった。三次会も瞬彩永山店にて9名が参加。遅くまで話は尽きなかった。


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