例会速報 2018/05/20 県立麻生総合高等学校


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授業研究:慣性力 小沢さんの発表
 高校「物理」の慣性力の単元の展開を小沢さんがレポートしてくれた。
 電車の中で小球を落とすと同時に、電車が右向きに等加速度運動しはじめると、小球の軌跡は電車の中からどう見えるか、という問い。生徒は、左下に落ちることは予想できるが、直線か曲線か意見が分かれる。それを、写真左のようなプリントで考えさせる。右の「枠」が電車のつもりで、それを、小球が自由落下する様子を示す左の図に重ねる。「枠」を電車のように、等加速度運動させながら、透けて見える小球を上から順番にトレースしていくと、斜め下に直線を描いて落下することがわかる。
 写真右は電車の中のつり革にはたらく慣性力を説明するときに使う、本物のつり革。生徒に興味を持たせる小道具だ。鉄道廃品市みたいなイベントで購入した。
 

 簡易加速度計の製作実習。工作用紙に糸の上端を固定し、下端にはおもりとしてナットを取り付け、ふりこを作る。これを持って電車に乗れば、ふりこの振れる角度から加速度を求められる。あらかじめ計算して、糸がどこまで振れたら何m/s2か目盛りを書いておく。生徒には、実際に電車に乗って加速度を測ってくる宿題を課す。
 

 左は古い番組だが、東海テレビ:「てれび博物館」No.1048「無重力大実験」(2000年9月10日放送)のパラボリックフライト実験のシーン。川津祐介の司会で、レポーターの中野珠子が楽しい無重力実験を次々に繰り出す。これを見せて興味を喚起し、無重量(無重力)の意味を考えさせる。
 続いて、右の図はターンテーブルに載せたロウソクの炎がどちらに傾くかという問い。
 

 上の問は演示実験で演示実験で決着する。ロウソクを3本束ねて炎を大きくすると、生徒が観察しやすい。風よけにはOHPシートを使った。回転させると炎は内側に傾き、OHPシートは炎にあぶられ、とけて変形する。一方、とけたロウは外側に付着する。おもちゃの電動ろくろをターンテーブルに改造している。動画(movファイル1.1MB)はここ
 

 最後に、電車が加速するとヘリウム風船はどちらに傾くかという問い。生徒に予想させ、結果はEテレの「考えるカラス(第3回)」の蒼井優の実験映像で示した。
 以上のような授業の流れについて例会参加者で討論した。そもそも「慣性力」をなぜ学ばなければいけないのかについても議論があった。
 

考えるカラス「水槽と風船」 西村さんの発表
 小沢さんの授業研究の発表に関連して、西村さんは自身が実践している慣性力実験を紹介してくれた。
 写真は、昨年度の教育実習生が考えるカラス「水槽と風船」をテーマに行った授業の演示実験。教育実習生は目で見えない空気にも慣性があることを生徒に伝えるために、「ヘリウム風船と空気」「空気風船と水」「ドライアイス(二酸化炭素)と空気」など様々な組み合わせで実験を実施し、その映像を見ながら議論することで結論を導く授業を行ったそうである。
 例会ではその動画の紹介があった。授業を作る上では、教師こそが興味を持ったことをあれこれと試行錯誤しながら探究していくことが重要であると再確認した。

円運動する水面の画像処理から角速度を求める 西村さんの発表
 西村さんは勤務校の前任者が実践していた実験を追試した。
 レコード・プレーヤーのターンテーブル上に、水を入れたミルソー(薄型観察用水槽)を乗せて等速円運動させる。回転中のミルソー内の水は重力と回転軸からの距離に比例した遠心力を受けるので、水面は回転放物面となり、その関数はフリーソフト「math98」で画像処理することで求めることができる。(math98のダウンロード先はこちら
 その後、関数を微分して求めた傾きが重力と遠心力の合力が鉛直線に対してなす角と同じ角度になることを利用して角速度と周期を求める。このようにして求めた周期が妥当な値であるかどうかは、実際にターンテーブル回転周期をストップウォッチで測り、比較すればよい。授業では円運動と慣性力を一通り学習し終えたところで、まとめの課題として提示した。
 生徒自身のスマホでミルソーを撮影させ、校内wifiでメール等を使ってデータをPCに取り込み、画像処理・解析をさせた。教師が詳しく説明しなくとも生徒同士でよく議論し、最終的には自力で正しい結論にまで至っていたという。生徒にとって議論しがいのある課題だったのだろう。
 

慣性力の動画紹介 武捨さんの発表
 関連して武捨さんからも慣性力関連の実験動画の紹介があった。武捨さんは、マジックペンが倒れる様子を背景が見えないようにして撮った映像を見せて、何が起こったか考えさせる課題を、慣性力の導入としている。 そのほか、スターツアーズのしくみ、エレベーター内のはかり(写真左)、斜面を下る台車に棒を立てる(写真右)、無重量フライト、人工重力など、YPCで教わった実験や映像をプランに取り入れている。
 

IoT電子工作キット 齋藤さんの発表
 2020年から小学校で「プログラミングの授業」が始まる。齋藤さんは小・中学生が、家庭で実使用できるようなIoT(Internet of Things)デバイスを自分でハンダ付けをし、自分でプログラミングする事を目的にした製品を製作した。例会では、この電子工作キットの発表と、実習等で使用できるであろう、Arduinoやセンサーについての紹介があった。
 

 Arduinoは、マイコン(小さなパソコン)を安価かつ簡単に使用できるようにしたものだ。無線LAN対応製品もあり、センサーをつなぐ事でIoT機器を製作することが可能である。サンプルプログラムがインターネット上に数多く存在していることで簡単に使用することができる。例会では、HC-SR04 超音波距離センサーと小型液晶ディスプレイ(LCD)をArduinoにつなげた実験が披露されたが、齋藤さんはこのプログラムを10分かからずに作っておりセンサーと、LCDはセットで300円程度と安価だ。(参考価格:HC-SR04 87円、LCD1602+I2C 194 円)
 低価格ゆえに精度が不安という見方もあろうが、今回のデモでは金額以上の精度だと感じた。なおセンサー自身は、一般に市販されているものと類似の物を使用しており、使用条件の違いで、精度が補償されていないだけだとのこと。
 

重力レンズの等価レンズの試作 西川さんの発表
 西川さんは、大阪教育大学のグループによる「手作り重力レンズのすすめ」という論文に触発され、重力レンズの等価レンズを試作した。
 例会ではブラックホールによる重力レンズ現象の解説と重力レンズの等価レンズの作り方の説明があった。
 

 写真は実際に西川さんがCNC(コンピュータ数値制御)加工機を用いて試作した等価レンズ。ワイングラスの台座のような形をしている。星に見立てた黒い点の前にかざすと、ゆがんで奇妙な多重像などが見える。ちょうど中心に来るように位置を選ぶと、いわゆる「アインシュタインリング」も再現できる。右の写真の黒い輪が、背景の黒い点が引き伸ばされて見えるリング型の像である。
 

CDコマ新記録達成!! 古谷さんの発表
 CDコマの改良に取り組んでいた古谷さんは、野呂茂樹氏を通して次のような情報を入手した。「CDのセンターにペットボトル蓋を貼り付けそのセンターの上から画鋲を差し込んで作ったコマが5分間回転を続け、野呂氏も早速作成したところ、3分間回り続けた」とのこと。
 そこで、手持ちの「パチンコ玉入り独楽」の回転は3分に近い記録。これに工夫を加えれば結構記録は伸びるのでは、と確信。特に、開発者の「コマの重心を下げた事が回転時間を長くしたことの要因」との点に注目した。
 

 一方、YPCのメンバーのひとりの助言を受けて改良を行った(パチンコ玉CDコマの下面にさらに五円玉を貼り付け、更に心棒の材料とはめ込むビー玉の大型化)。その結果4分25秒の結果となり、更に例会の場では、参加者の見ている前で何気なく回した実演が、なんと5分30秒を達成した。記念すべき記録動画(movファイル47.7MB)はここ。これは「手回しCDコマ」の部門では暫定世界1位かも?
 

ホバークラフト 天野さんの発表
 セリアやキャンドゥなどの百均で販売されている「発泡ビーズ入バルーン」。膨らませて振ると静電気でビーズが風船の内面に貼りついて膨張宇宙モデルみたいになる。天野さんはこの風船の別の使い道を思いついた。まずは小手調べに、風船に口を当てて大声を出すと、ビーズがふるえる。
 

 風船には同じく百均で売っている空気ポンプに適合する、逆流防止弁付きのノズルがついている。風船の先にPETボトルの口金をとりつけ、CDまたはDVDに小さな穴を開けたPETボトルキャップを接着すると、「慣性の法則」実験用のホバークラフト(いわゆるエアーパック)のできあがり。逆流防止弁付きのノズルがなかなか便利だ。このパーツだけ安く売ってくれるとありがたいのだが。
 

小型高圧電源 山本の発表
 もう20年近く前のことになるが、YPCで「小型高圧電源」が流行したことがあった。石川県の竹中功さんが発掘し、右近修治さんがYPCに紹介した小型高圧電源モジュールを組み込んだ簡易静電高圧電源(下の写真)を山本がキット化し、YPC関係者に100セット以上実費配布した。出力電圧は推定1万Vを越え、各種静電気実験真空放電の実験の電源としても使える。注射器を使ったミニ真空放電管も当時開発した。
 ただ、この中心パーツの電源モジュールはジャンク品だったため、その後品切れとなり安価に入手できなくなって供給が途絶えていた。
 

 最近YPCメンバーのひとりから、この高圧電源について問い合わせがあったのを機会に、あらためてネット検索を試みたところ、公称出力7kVで定価398円の製品(写真左)と、公称出力400kVで定価451円の製品(写真右)がヒットした。後者の出力電圧は多分桁まちがいで、せいぜい40kV程度(多分もっと低い)だと思われるが、ともかく安いので、試しに購入してみた。なお、両者とも3Vの直流電源(乾電池2本)で動作する。写真の電池ボックス(スイッチ付きの黒い箱)やミノムシクリップは付属しない。注文して1週間から10日ほどで中国から封書で直送されてくる。説明書などは一切付属していない。モジュールが裸のまま封筒に入って届く。コードの接続情報もないが、色で見当をつけ、出力の正負ははく検電器で実験して判断した。
 

 おそらくスタンガンまたは空気清浄機などの電源に使用されるモジュールと思われ、なにぶん高電圧なので感電の危険がある。動作中の出力端子に誤って触れると強烈な電撃を食らうので、使用は自己責任十分に注意して行うこと。
 両者とも静電気実験にも使える十分な出力で、直接はく検電器に触れると箔が吹き飛ぶ恐れがあるほど。実験には電荷輸送用に導体球を使うのが安全だ(写真左)。フランクリンモーターも元気よく回転する(写真右)。
 

 こちらは20年前に開発した実験だが、50mLのディスポーザブル注射器に電極を取りつけ(写真左)、高圧電源につないでピストンを引くと、管内の気圧が低下するにつれ、火花放電からグロー放電(写真右)に移行する様子が連続的に観察できる。まだ実施していないが、複数の注射器を組み合わせ、注射器用の三方活栓をうまく使えば、管内の気体を置換してスペクトルの観察もできる見込みがある。アイデアとして紹介しておく。
 

平沼橋の熱膨張 喜多さんの発表
 温度変化による橋の伸縮を考えて、橋の継ぎ目には隙間がある。喜多さんは、暑いときと、寒いときでどれだけの隙間の間隔が変化するのか、測定してみたいと考えていた。
 横浜駅から徒歩数分のところにある陸橋「平沼橋」はJRと相鉄線の上に設置されている。歩道の部分と車道の部分がつながっているので、歩道のところで安全に実測できる。
 

 この冬0℃のときと、5月初旬28℃のときの隙間の間隔を測定した。全長270mの橋に4箇所継ぎ目がある。この4箇所の隙間の合計の差異は8.8cmであった。計算すると線膨張率は1.2×10^5となった。コンクリートの線膨張率が7~13×10^6と言われている。測定結果は、この値の範囲に入った!

二次会鶴川駅前「鳥貴族」にて
 16名が参加して「カンパーイ!」。今回は初参加の方の発表もあって、話題が新鮮で内容充実の例会だった。二次会もご覧の賑わい。二次会後、金井宇宙飛行士が搭乗するISS(国際宇宙ステーション)通過観察も期待されていたが、残念ながら曇っていて実現しなかった。金井さんは6/3に無事帰還した。


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