例会速報 2020/11/15 Zoomによるオンラインミーティング


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授業研究:高3電気の実践小沢さんの発表
 8月例会で、小沢さんは休校期間中に行った音声配信の授業(3年「物理」力学単元)を報告したが、今回はその続きで、分散登校(登校とオンライン併用)になってからの電気単元の授業について報告した。オンラインと登校が交互に行われるので、それぞれの特性に合う学習活動にしながら、概念形成に必要な学習の順序を崩さないようにしなければならない苦労があった。また、登校して行う実験では、感染予防の観点から生徒の人数分の実験セット(25セット)を準備する必要があった。

 まず、登校授業で、左の回路について電位差(BC間をつないだときとつながないときの、AB、BC、CD、DF、EF間)を予想させる問いを出した。つながないときのBC間を0 Vと答える生徒が必ずいる。各生徒が実際に自分で測定することで「答え合わせ」をする。

 次に、オンライン動画で、前回の実験を解説したあと、左の問題(A、B、Cの豆電球は点くか点かないか?)を考えさせる。電位の考え方を理解しているかが試される。

 さらに次の登校授業で、メートルブリッジの実験を行った。1 mの抵抗線の代わりに、放電式記録タイマーの導電テープを利用し、40cmに短縮して行った。これも1人1セット25人分用意した。

 その次のオンライン授業では、「ジャガイモ電池(ジャガイモに銅板と亜鉛板を挿したものを2個直列、約1.9V)で電卓は動作するけれど、豆電球は点くか?」「乾電池に豆電球を並列に8個つないだら、1個のときと比べて明るさはどうなるか?」という問題を出した。Googleフォームで解答させたところ、どちらの問題も70%以上が誤答だった。電圧が足りているからジャガイモ電池で豆電球は点くと考える生徒、乾電池に豆電球を並列にたくさんつないでも明るさは変わらないと考える生徒が多いことがわかる。


 そういう生徒にとって意外性のある結果を動画で見せてから、その「種明かし」として内部抵抗の学習に進む。豆電球を増やしていくときの電流計と電圧計(どちらもデジタルテスター)の値を動画中の実験で示し、生徒はその動画を見てグラフを書いて、乾電池の起電力と内部抵抗を求める提出課題に取り組んだ。


表面張力の多重円環分布構造を示す同心円模様 夏目さんの発表
 墨汁は本来疎水的である墨をニカワによって親水性のコロイドにしたものである(保護コロイド)。そのため水の表面の中心に垂らすと水面上を広がっていく。これには中心部で(水分子集団が持つ強いネットワークによる)表面張力を弱めるため、それが強いまま残っている周辺部へ引き寄せられる現象である。これを「マランゴニ流」と言う。
 これは洗剤(界面活性剤)を使っても実験できるが1回だけの現象である。夏目さんは、油を使うことによって左の写真のように繰り返すことができるようにした。実験には身近なサラダ油を使った。皿は円形で直径268mmである。墨汁および油の注入は楊枝の先(根本の方)を使って常に中心で行う。
 左の写真は墨汁、油、墨汁と3層作ったところである。さらに繰り返した例が右の写真で、15層目である。このようにその前の偶数層(14層)の油の中心に墨汁を置くとパッと広がる。その際、一つ前の油の層ほぼ完全な円になる。その円はその後、崩れていく。
 

 この現象の模式図を左の図に示す。例として5、6、7層目を描いた。偶数層では油が表面に浮かんではっ水性領域を作っている。次に垂らす奇数層の墨汁がその新たに作られた「表面張力」を弱めて、「マランゴニ流」を再現しているとみることもできる。このような液体と液体の相分離系は化学と物理の境界領域において興味深い課題を提供している。

【参考文献】夏目雄平「やさしい化学物理~化学と物理の境界をめぐる」(朝倉書店)

工作会で作成したスターリングエンジン 喜多さんの発表
 喜多さんは、今年の三月にビー玉スターリングエンジンの工作会を予定していたが、コロナ禍のため開催することができず、時間が経過してしまった。そこで8月に、既に購入済みであった材料を申込者に郵送し、オンラインで工作会を行った。実際に何人もの方が作成し、動かすことで、新しい発見があった。
 工作会を立ち上げたときは、アルコールランプを点けて,20~30回くらい動けば十分だと思っていたが、試験管を支える位置、アルコールランプの炎の大きさなどを適切に設定すると、ランプを点けてから何も手出しをすることなく、100回以上連続的に稼働するができるようになった。


 左はスターリングエンジンの本体部分。5mlガラスシリンジと試験管をシリコンチューブで結合しただけのシンプル構造である。
 運転中の動画(movファイル43MB)はここ


合成抵抗の公式 天野さんの発表
 天野さんは、今、中学校で電気分野を理科を教えている。
 中学では抵抗の並列・直列接続は学ぶが、実験を主体に扱い、並列ではそれぞれの抵抗に加わる電圧が等しく、全体の電流は各電流の和になること、直列ではそれぞれの抵抗に流れる電流が等しく、電圧の和が全体の電圧に等しいことを学ぶ。
 そこでは原則、並列合成抵抗の公式は導かないことになっているが、天下りの公式を見た中2の生徒がどうしてこうなるのかと疑問を持っていた。天野さん自身、導いたことがなかったので、チャレンジしてみたという報告である。
 高校レベルなら、各抵抗に加わる電圧がVで等しいと置いて、オームの法則からそれぞれの抵抗を流れる電流を求め、その和が全電流Iになるという式を作れば、もっとすっきりと証明できるところだ。
 あるいはRの逆数が「電気の通りやすさ」を表す量(電気伝導度)だと考えれば、並列合成抵抗の式の意味が直観的につかめるかもしれない。

みんなでアサギマダラ観察記録 寺田さんの発表
 寺田さんは、地元の山口市高嶺城跡展望所(高度200m)で参加型のアサギマダラの記録板を昨年から始めた。山歩きの方のみんなの協力で楽しい2ヶ月の観察記録が取れたという報告である。
 アサギマダラ初確認は10月8日、最終確認は11月12日、確認のべ数162頭、記録に協力してくれたのべ人数63人だった。
 

 「すごいね!」「はじめて会った!感動。」などの感想をお互いに書いたり読んだりする掲示板は数字だけでない温かい活動記録になった。こんな市民啓発活動も面白いのではと寺田さんは思っている。見知らぬ人たちが自然観察でつながって、楽しくみんなで自由研究、素晴らしい取り組みだ。寺田さんは、次は春に北上するアサギマダラの観察をめざしている。
 寺田さん撮影の動画はこちら→(1)https://youtu.be/d48t83xPy40 (2)https://youtu.be/uHMzrykNut4 (3)https://youtu.be/n3xKNt2o0rI
 

■アサギマダラについて(ネット情報などから)
・ふわふわと飛び、人をあまり恐れず、人気がある。
・寿命は半年間。だから来年は違う個体が来る。
・フジバカマ、ヒヨドリバナ、アザミなどのキク科植物の花によく集まり蜜を取る。
・これらの花にはオスがよく集まる。これらの花の蜜のピロリジジンアルカロイド(PA)を取り込み、オスは性フェロモンを作りメスを誘う。
・アルカロイドは毒性もありこの毒性を取り込むことにより敵から食べられなくしている。
*水平移動と垂直移動*
・大好きな気温20度を求めて長距離を移動していく。
・長年のマーキング調査で台湾あたりまで移動する場合もあることがわかった。
・上空から花を見つける方法はまず視覚で、そして臭覚と味覚でさがすらしい。

理科授業法の講義(YouTube) 門倉さんの発表
 門倉さんは、玉川大学で、農学部の理科指導法Ⅰ・Ⅱを担当している。通常であれば、5回ほ どの理科授業作りの講義を行った後、模擬授業を実施するのだが、今年は COVID-19の影響で、対面授業が全くできずにZoomによる講義を行っている。 Zoomには、録画機能があるため、15回全ての講義を録画していたが、学生 から復習をしたいという声があり、YouTubeに限定公開することとした。学生には、大学のWebにある授業システムからYouTubeのページに飛ぶように設定 し、視聴することができるようにしている。限定公開なので、URL指定でないと見ることができない。講義の内容は以下の通り。
教育実習事前指導①「ガイダンス・模擬授業体験」
理科指導法Ⅰ①「ガイダンス・日本の理科教育の変遷」
理科指導法Ⅰ②「理科教育の目標」
理科指導法Ⅰ③「学習指導要領」
理科指導法Ⅰ④「授業作り~導入」
理科指導法Ⅰ⑥「学習指導案」
理科指導法Ⅰ⑦「主体的・対話的で深い学び」
理科指導法Ⅰ⑨「探求的な学習」
理科指導法Ⅱ①「授業事例紹介」
理科指導法Ⅱ②「授業の進め方」
理科指導法Ⅱ③「学習評価と評定」
理科指導法Ⅱ④「安全指導」
理科指導法Ⅱ⑤「Web模擬授業と単元計画」

科学フェスタの出展報告 舩田さんの発表
 舩田さんは、千葉市科学フェスタに今年も出展した。コロナ禍のさなかなので、会場は厳戒態勢で消毒や入場制限で対応した。舩田さんは工作ブースで、おなじみの「ウラカエセル」や「立方体万華鏡」の工作指導に当たったが、ここでも10分間の時間制限、フェイスシールド着用などの対応を求められた。フェイスシールドや非接触体温計などは自前で用意した。
 いろいろ神経を使ったイベントだったが、幸い大過なく終了し、10/10には1891人、10/11には2190人の来場者があり好評だったという。
 同フェスタのオンラインコンテンツは、1月まで公開されている。

光速度Cを使ってわかること 市原さんの発表
 水素原子の電子を例にとって、ボーアの量子条件を考えることはよく扱われる。市原さんはこれを拡張し、存在しうる原子番号の最大値を考えてみた。すると、電子の軌道速度の上限を光速とすると、Z=137となった。原子番号137は仮名がUntriseptium(ウントリセプチウム)とされ、理論上存在可能な最後の元素である可能性を、同様の議論からファインマンが指摘している。それにちなんで、非公式ではあるがファインマニウム (Feynmanium, Fy)とも呼ばれる。もちろん、他の電子同士の相互作用や極限状態における未知の物理現象によって、137番以降の元素の存在が許される可能性もある。 なお、このZ=137.035の逆数は微細構造定数と呼ばれ、電磁相互作用の強さを表す物理定数である。


 もう一つ、市原さんは、温度の最高条件をさぐってみた。こちらは、光速に近づくと質量が大きくなるという、相対論の効果を考えて計算し直してみる必要はありそうだ。もし完全に光速度に達すると、エネルギーは無限大になってしまうからである。超弦理論で考えれば(プランク質量)×(光速度の二乗)÷(ボルツマン定数)  が温度の上限である、という説もあるようだが、どちらにせよ高校で扱うには難しそうだ。  
(出典;http://irobutsu.a.la9.jp/PhysTips/maxtemp2.html )


電磁気の実験(続) 森谷さんの発表
 森谷さんが制作・公開しているWebサイト「電磁気の実験(続)」のサイトのコンテンツの一部を紹介していただいた。

1) モータースピーカー、PETボトルスピーカー
 スピーカーは、磁石と音声電流の相互作用を基本原理としているが、実験用のモーターがそのままでスピーカーとなることを実験で示した。また、ペットボトルの口にコイルを巻きこれに音声電流を流しそばに磁石を近づけてもスピーカーとなる。このような簡単な構造で音楽が聴ける意外性がデモ実験として効果的である。
動画はこちら:https://www.tmoritani.com/Science/Movies/6429_MotorSpeaker.mp4


2)2個のコイルによるワイヤレス通信
 2個のコイルの間の相互作用を利用して音声電流を受け渡すことができることを実験で示した。簡単な構成でワイヤレス通信ができる意外性とともに相互作用を視覚・聴覚的に理解できる好実験である。
動画はこちら:https://www.tmoritani.com/Science/images/3414_MutualInduction.mp4


3)コイルの自己誘導による放電とガソリンエンジンのイグニッション系
 コイルに流れる電流を切ると自己誘導で高電圧が生じて回路に接続した放電管を放電させることができるが、これをネオン管の実験で示した。この実験は、グロー球式の蛍光灯、ガソリンエンジンのイグニッション系、誘導コイルなど高圧放電を起こす技術の原理を学ぶ上で重要である。
動画はこちら:https://www.tmoritani.com/Science/images/3506_GariGariNeon.mp4


DJI Mini 2 速報! 越さんの発表
 越さんは、Mavic Miniの後継機で、DJIの最新ミニドローンDJI Mini 2(写真左)を入手した。質量199gと、おもちゃ扱いなので、飛ばせる地域も広い。3軸ジンバル(スタビライザー)4Kカメラ、2倍(デジタル4倍)ズーム、軽量の割に風にも強く動画も安定していて空撮が手軽にできる。このサイズでは最高の性能だ。越さんは早速、利根川の河原でテスト飛行・撮影を行い速報してくれた。右の写真はドローンが上空から撮影した動画の1コマ。
 障害物センサーはついていないので、プロペラガードはあった方がよい。越さんは現在、鳥かご実験(密閉容器の中で鳥が飛ぶ前と飛んだ時の全体の重さの変化を比較する実験)に使えないか試行中。本体のみ6万円弱だが、少なくとも予備バッテリー(別売)はあった方がよい。
 製品について詳しくはこちら→https://www.dji.com/jp/mini-2?site=brandsite&from=homepage


二次会Zoomによるオンライン二次会
 例会本体には30名、20時からの二次会にも12名が参加した。例会の最後に紹介のあったミニドローンを、越さんが自宅の部屋の中で実際に飛ばして見せてくれた(写真)。その高性能ぶりに、二次会参加者からは感嘆の声。越さんからはさらに、例会で時間切れとなった、映画「プラスチックの海」の紹介があった。
 この映画は、海洋プラスチック汚染問題のドキュメンタリー映画で、渋谷、吉祥寺アップリンクなどで上映中。現在プラスチックごみは、埋め立て、または焼却処分されている。埋め立て処分されたものの一部が海に流れ出て、蓄積されている。プラスチックごみは紫外線による劣化、波による細分化により微粒子となって海を漂い、生物に取り込まれる。生態系への影響は深刻で、映像の力を感じる映画だ。観終わってから、身の周りのプラスチック製品の多さに愕然とする。詳しくはこちら。https://unitedpeople.jp/plasticocean/ 


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