2015年9月27日(日)愛知工業高校での例会の記録です。


 v-tグラフのリアルタイム表示 (植田さん)  

 

 物理教員としての経験もある植田さん。物理嫌いの生徒の気持ちが分かるプログラマーさんです。

 等加速度運動は物理の初期の段階で扱われますが、生徒の理解がいまいちです。
 この理由を等加速度運動を実感することが困難であるからではないかと考え、頭で等加速度運動をイメージしやすいように、実際に起こる現象をv-tグラフとヴィジュアル的に結び付け理解させようと、ソフトを開発しました。

 植田さんが特許を申請する可能性があるため、現在これ以上の情報を公開いたしません。


 コップのぶつかり音に魅せられて (藤田さん)  

 グラスなどを手で持ちぶつけると、連続的に衝突が起きます。この時、音を聞くと、最初に比べ、最後には音が高くなっていくように聞こえます。

 藤田さんはこの現象を音が小さくなると人の耳には音程が上がっているように感じるという錯覚ではなく、本当に音の高さが変化しているのではと考え、音程の変化を視覚化すべくソノグラフを取ってみました。

 すると、やはり0.5s後頃から音程が上がっていることが確認できました。
 身近な所にある不思議を追求してみました。
 藤田さんは、この現象を2つの振り子の衝突と見なし、理論的な考察を行いました。

 振り子の衝突を考えると、衝突時に、水平方向に力積がかかるようなときには周期は変わりません。
 しかし、藤田さんは、下の図のように振り子の紐を同じ位置で持つと、衝突の角度に球の大きさが効いてきて、徐々に周期が減っていくことを突き止めました。

 シュミレーションによると、強制振動の振動数は指数関数的に増加することが分かります。

 以上のことから、初めは振り子の固有振動が聞こえるが、その内、強制振動の振動数が固有振動数を超えるため、強制振動によって音の高さが指数的に増していくのではないかと結論付けました。
 今年の秋の叙勲で藤田さんは「瑞宝中綬章」賞を受賞されました。おめでとうございます。
 

 さらに、ビー玉を固定された板に落とした時の音についても、シュミレーションを行い、同じ結果を得ました。

 藤田さんは木琴などいろいろな現象にも適用できると説明してくれました。


Stray Cats at ICPE 2015, Beijing (佐野さん)  

 愛知物理サークルに加えて、岐阜・三重物理サークルのメンバーはこれまでも物理教育国際会議に参加をしてきました。  今年はお盆開催、開催地が中国の北京ということで、都合のついた3人で参加をしてきました。

 90分間のワークショップの場を与えていただき、大がかりな器材が当日組み立てられるか不安もありましたが、議長である東京学芸大学の新田教授の力添えもあり、現地の中国人スタッフに材料等を調達していただき、最小限のトラブルで実験の準備ができました。
 会場は広大なホテルで移動は敷地内で済み、便利でした。


 発表した内容は、はじめに、佐野が私たちサークルの歴史と想いと生徒間で議論が起こるような本質的で意外性のある演示実験を紹介しました。2番手の林さんは霧箱と現代版フィゾーの光速度測定装置を、そして最後は藤田さんのご存じロウソクの炎のプラズマ実験でした。
 Stray Catsの発表は、概ね、好評だったようです。


非接触電力伝送の実験 (前田さん)  

 MITは距離2m、16MHz、出力60Wで送電したとの情報があり、実験を試みました。
 前田さんの装置は780kHzでは70pで共振しました。共振する周波数の山がが2こぶになってしまいました。

 この理由がさっぱり分からないということでした。
 大電流を流すため、パイプでコイルを作っています。


 意見が出ないため、専門の近い藤田さんに意見を求めましたが、藤田さんからはいきなり演示のための装置で調べるのではなく、まずシンプルな装置で実験することで原因を追及するという実験のあり方に言及がありました。  最先端の実験物理で活躍されたその言葉には、普段私達が軽視しがちな盲点を指摘するものでした。

 その後、川田さんが理論計算を行い、2次コイルが共振するのは
@ 1次コイルが共振周波数になった時:ω1=1/√L1C1
A 2次コイルが共振周波数になった時:ω2=1/√L2C2 の2か所で2次コイルの電流I2が極大(共振)になります。


 交流の周波数決定 (前田さん  

 なぜ、交流の周波数は50や60Hzなのか。その理屈を実験で示してくれました。

 電源装置から電流を送ると、確かに60Hz付近でもっとも明るくなりましたが、1次側の電流が変化しているのではとの声が出ました。

 調べてみると、指摘通り1次側の電流が増えていました。
 これでは60Hz程度が効率が良いということを断定できそうにありません。  
 。


 高校物理・化学の状態方程式の単位の差異 (山岡さん  

 山岡さんは物理の授業で状態方程式を教えた際、生徒から化学では気体定数が異なることを指摘されました。物理と化学で単位が異なり、科学ではSI単位系を使われていない現状についての、情報共有と意見交換を行いました。
 
 川勝さんからは、日本の理科教育を受けた生徒は国際的に突出して、式の暗記のみで単位への意識が低かったこととの情報がありました。


 モーメントの問題 (川田さん  

 川田さんが問題を用意してきました。

 棒の一端を回転できるようにし、おもりを回転の中心からa離れたところにおもりをつるします。もう一端にばねを取り付けます。このとき、aの長さが短いときと長い時で、ばねの伸びはどちらが大きくなるかという問題です。
 ただし、棒が受ける重力は無視できるものとします。  
 川田さんの解説を聞くと、簡潔な説明に感心するばかりですが、仮想変位の定理の考え方を使うため高校生には難易度が高すぎるという声や、この問題で何を伝えたいのかとの声もありました。

 棒をつるした場合を考えると、左右に引っ張り合いをしたとき、うでの長さ×力が一定という単純な話ですが、向きを変えるだけで難しく感じてしまいますね。    
 実験で結果が明示できることは魅力的ですが...


 パスカルの原理  (川田さん  

 物理基礎の授業で、授業内容とは関係なくとも、毎時間演示実験を行っているという川田さん。

 その中で、生徒受けの良かったパスカルの原理を使った実験を紹介してくれました。
 注射器を押すと、指一本でも水一杯のバケツを持ち上げることができます。
 授業では油圧機の原理にもなっていることも伝えています。

 演示を効果的にするには、いかにもか弱そうな女子生徒にやってもらうことです。
 声掛けをして授業前に協力者を募っておくことで、演出効果を高めます。
 注射器を押すことで、水入りのバケツを持ち上げます。


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