2018年7月21日(土)明和高校での例会の記録です。

 この日は、名古屋陽子線治療センターの見学会があり、その後に例会となったため、短めの会となりました。

   

 物質の磁性 (奥村さん)  
 「いきいき物理マンガで実験」に記載した実験の1つである磁性を調べる実験の紹介です。

 100円ショップで購入した、回転する台座の上で実験しましたが、回転方向が不安定。

 なぜだと疑問に感じていたところ、よくよく観察すると、軸に使われている金属(鉄かな?)がネオジム磁石に引きつけられていることが判明!
 回転台で試してみましたが、回転方向が定まりません。
 奥村さんが通常使う、試験管を発泡スチロールに刺し、発泡スチロールに試料を固定し、試験管を回転させる方式がベターなようです。
 装置の概略図です。


 近視の治療(臼井さん)  

 なんとか近視を改善し視力が良くならないのかと「自分の力で近視はよくなる!」という著書のある佐々 美代子医師の勤める佐々眼科で治療器具を借りた臼井さん。

 佐々医師の著書『自分の力で近視が良くなる』です。   レンタルした器具。Cの記号が移動していきます。
   佐々医師が製作を依頼したという器具は、視力検査で使うCのマークが一定速度で遠ざかり、折り返してまた戻ってくるというもの。業者に依頼し、製作費は数十万円とも。

 臼井さんは「これならステッピングモーターを使って製作できるのでは」と考え、製作に取りかかりました。
 L字アングル上に、L字の木片を紐で引っ張り、アングル上をそわせて動かす方法を採用しました。  
 Cの記号が遠ざかっていく様子です。  L字アングルを用いて製作した臼井さんの器具。
 Cの板を記号を書いた紙を木片に接着されたクリップで挟むようにしてあり、細かな所では、直接引っ張ると動きをスムースにするため、紐と木片の間にばねを入れてあります。
 何十万円の装置を大切な機能は残しつつ、手持ちのもので作ってしまう臼井さんでした。  
 アングルをガイドに使うアイデアは他にも応用できそうですね。  整合部にはばねを用い、動きをスムースにしています。


 ステッピングモーターの原理 (臼井さん  

 ステッピングモーターの原理をいつも通り分かりやすく、説明してくれました。
ステッピングモーターは、N、S極がある磁石の回転を、電磁石で制御するという仕組みです。
最も単純な1相励磁という方式では、コイルL1〜L4の4つを1つずつ順番に電磁石にすることでモーターを回転させます。

左の写真での磁石の向きを位相0とし、時計回りを正の向きとし、右の写真の磁石の位相を90°とします。
時計回りにモーターに初速度を与え位相が0のとき、L1をN極、位相が90°のときにL2をN極というように変化させていくことでモーターを回転させ続けることができます。
 マグネットシートを使い、黒板に貼り付けます。  1相励磁の図。。
 次に1−2相励磁と言われる励磁方式です。

 これは1つのコイル、2つのコイル、1つのコイルと交互に、1−2個のコイルを電磁石にする方式で、左の写真にように位相が225°のときは、L3、L4を使い、コイルが磁極の正面になる位相が90°の倍数のときには1つのコイルのみを使用します。
 1−2相励磁の図です。  配線の工夫で1−2相励磁はコイルを2つにできます。
 1−2相励磁ではコイル、L1とL3、L2とL4をそれぞれ1つのコイルの中央に配線を入れ、電流の向きを調節できるようにすることで、コイルの数を4個から2個にすることができ、コストダウンが図られているそうです。

 コイルを減らす工夫です。

 α線とβ線の軌跡 (林さん  
 ランタンに含まれるトリウムを用いて、α崩壊とβ崩壊を観察しました。
 林さん特製の高感度霧箱のすぐ横に磁石を置くと、α線は飛跡が太くほぼ直進することから、β線は細い飛跡で鋭く曲がるっていることから区別できます。α線はヘリウム原子核なので正の電荷をもちますが、質量が大きいため、曲がりにくい一方、β線は、電子であるため、負の電荷をもち、大変軽いのでよく曲がるという理論通りの結果が観察できます。
 トリウムをエネメル線の先端につけています。  材料により問題も出てきます。トリウムを包むのに使用しているのはCOOPのラップです。

 ネオジム磁石とコイルによる振動するオブジェ (前田さん  
 川田さんが作ったという装置に興味を持ち、前田さんは自作の2300回巻のコイル、くまどりコイルを使い、リング型ネオジム磁石(φ7mm程度)が、銅線やアルミ線(φ2mm程度)を行ったり来たりするおもちゃを作りました。

 川田さんが紹介した原型。  磁石は5個数百円程度でネット通販で入手できるそう。。
  60Hzの交流を加え、コイルの位置を調節すると、ネオジム磁石の振動が回転に変わって移動し始めます。

コイルの位置をしっかり調節すると磁石はかなり長い距離を上り下りするようになります。  
 六角ボルトM16にポリウレタン銅線を2300回巻きました。

 黒画用紙とテスターで抵抗の測定 (佐野さん  
 YPC(横浜物理サークル)に以前紹介されていた黒画用紙とテスターを使った抵抗値の測定の実験を長い間利用し続けています。

 画用紙の長さを変えることがLに相当し、幅を変えることが、断面積Sを変えることに相当します。
 幅、長さそれぞれ、5cm×10pで60kΩ、長さを2倍の5cm×20cmで、110kΩ、幅が2倍の10cm×10cmで29kΩと抵抗の式R=ρL/Sが簡単に確認できます。

 授業の対象者次第ですが、並列接続が断面積が増え抵抗が減ること、直列接続が長さが長くなり抵抗が増えることを示せるなど、使い方がいろいろあります。      
 画用紙です。
 測定時の注意としては、画用紙の両端に十分な幅のあるクリップを使うことです。
 みのむしクリップでは、点電荷間の電場のようになり、画用紙の4つ端に電流が流れません。クリップで平行板コンデンサーをつくり、ほぼ一様な電場をつくることがポイントです。
 この辺りの話は、発展的な課題としても効果的です。

  例会では、その後、市販の他の黒画用紙でも上手くいくのかやってみましたが、どうも上手くいきません。炭素が使われていないのでしょうか?
 同様に、ダイソーのものだと上手くいくが他の店の商品はだめだったとか、その逆だったとか、過去の経験が四方八方から声があがっていました。
 この画用紙については、四つ切り8枚を100円で手に入るのは何ともありがたい話です。売り切れない程度に少しずつ実験室に備蓄しておいとよいでしょう。  
 クリップで平行板コンデンサーを作るのがポイントです。

 昔の教科書 (鈴木さん  
 鈴木さんは、最近、教科書の内容の変遷について調べられているそうです。

 愛知県立図書館には古い教科書が保存されており、今見ても興味をそそられる本もあります。
 本の山から見つけ出しました。  流体力学の記述があります。
 興味深いのは、錬金術とともに迷信の話が載っていることや、流体力学まで取り扱っているところなどです。
 錬金術や迷信に関する記述もあります。