神奈川県教育センター・理科テーマ別研修講座受講報告
宇宙科学研究所を訪ねて 99/10/07 講師:小山孝一郎先生
教育センターの研修講座で、宇宙科学研究所を訪ね、小山先生の講義をうかがうと共に、所内施設を見学させていただいた。
午前中は「これまでの惑星探査の成果および将来計画」と題する小山先生の講義だった。軽妙な語り口で受講者をひきつけ、質問にも気さくに応じてくださった。
昼食後、小山先生の案内で所内見学。1階展示室のM−Vロケットの模型の前で、宇宙研のロケット開発の歴史をうかがう。右は、屋外にあるM−3SIIの実物大模型。
クリーンルームで組み立て中のX線天文衛星ASTRO−Eの実機。ここで組み立てられて間もなく内之浦に送られる。
取り付けを待つ装置群が作業台に所狭しと並べてあった。組み込みはすべて手作業で行われる。人工衛星は手作りのハイテクなのだ。
ASTRO−EのX線望遠鏡の鏡筒部分。銀色の耐熱シートで覆われている。
再利用可能な垂直離着陸型ロケットの開発モデル。先日、能代の実験場で実際に飛翔、着陸の実験に成功した実物だ。改良のためここで一時解体されている。
燃料圧出用のヘリウムタンク(左)と、ノズル部(右)。液体水素に触れても液化せずに燃料圧出気体として使えるのはヘリウムだけなのだそうだ。
電波無響室。電波の反射が全くないこの部屋で、アンテナの指向性や、各種計器の動作チェックをする。
磁気シールド室。地球磁場などの時期的外乱を遮蔽して、人工衛星の宇宙空間での磁気的特性を調べる。下左はその入り口。二重の金属球殻になっていて、内部には三軸方向に三対のヘルムホルツコイルが設置されている(下右)。これで任意の方向に任意の強さの磁場を作り出せる。
めったに見られない施設の内部に入れてもらえてラッキーだった。
機械環境試験室。振動、衝撃、動釣合などの試験をするための振動台、回転台がいくつも並んでいる。
構造機能試験棟。大きな体育館のような高さと容積がある建物内部では、各部の剛性試験、ロケット各段の間の継ぎ手の分離試験、ノーズフェアリング開頭試験などが行われる。左はロケット各部のパーツをおさめるコンテナ。右は作業用の特殊なクレーン。
試験棟の隅に並ぶロケットのパーツ群。
M−Vロケットの1−2段間継ぎ手部分。中央の爆発ボルトが電気信号で破壊すると、左右のシリンダにおさめられたばねにより上段が押し上げられて分離する。
運用管制室のコンソール。飛翔中の人工衛星・人工惑星の追跡管制を行っている。
コンソールの上に置かれたダルマとお札。ロケット関係者はかなり験をかつぐ。おはらいを受けたり、「四」の数字を避けたりするのだ。超ハイテクとのミスマッチがなかなか人間的で面白いと思った。
わが国初の火星探査機PLANET−B「のぞみ」の管制端末。地球離脱時のパワードスイングバイをしくじったため、今年12月の到着が不可能となり、新軌道計画により2003年末の火星周回軌道投入に変更されている。このコンソールはあと4年以上の間「のぞみ」を追い続ける。