葛尾中学訪問記 1998/09/10
YPC(横浜物理サークル)のメンバーと共に、福島県高等学校理科部会の招きで講演に赴いた折、「インターネット100校プロジェクト」で輝かしい成果をあげた、福島県双葉郡の葛尾村立葛尾中学校をたずねた。わが国のインターネット利用教育の原点とも言える学校なので、ぜひ一度訪問したいと考えていたのだ。突然の訪問だったが、校長先生、教頭先生をはじめ、先生方が授業中にもかかわらず快く応対してくださり、校内の施設を丁寧に案内してくださった。当日のお礼を兼ねて、見学内容をご報告する。
葛尾村は阿武隈山系の山懐、双葉郡の最北端にある。葛尾中学は村でただ一つの中学校だ。村の高台に建つ校舎からは、定点カメラで見慣れた村の中心部の風景が見渡せる。
正面の山、日山(天王山(1057m))は富士山が望める日本最北端の山なのだそうだ。
全校生徒約100人が学ぶ校舎。きれいで静かでアットホームな雰囲気が漂う学校だった。
校長先生とのご挨拶のあと、さっそく校内施設を案内していただいた。はじめは職員室。
こぢんまりとした職員室だが、天井から先生方の机上へと垂れ下がったケーブルが目につく。これがうわさに聞いた「葛尾方式」の校内LAN配線だ。先生方とボランティアの方々で、手作りで作り上げたという、信じられないシステムなのだ。
天井をはったケーブルは、HUBで束ねられて廊下の天井裏へと出ていく。ケーブルもNTTなどから余り物を譲り受けてくるのだそうだ。もちろん壁や天井の穴開け工事も自前。赴任した職員はまず天井の板のはずし方を学ぶという(^^)。
廊下側から見たケーブルの始末。これはサーバーが置いてある部屋のもの。
定点カメラがひとときも休まず葛尾村の画像をとらえ、世界に発信している。図書室の窓際に取り付けられたカメラ。校内に眠っていた遊休物品の古いビデオカメラがこんな形でよみがえった。
コンピュータ教室では英語の授業が行われていた。一人一台の割でPowerMacが配置されている。英文E-mailの読み書きの学習をしていた。生徒はとても楽しそうに生き生きと取り組んでいた。指導していらっしゃるのは田代先生。
コンピュータ教室で見かけたテレビ電話。これを使って他校との交流授業の実験をしているのだそうだ。
コンピュータ教室の隣の準備室に設置されたサーバー群。前述のように、システム構築はすべて職員とボランティアの手作りである。マシンも寄せ集めだという。すばらしいの一言に尽きる。
メインサーバー、SONYのNEWSとバックアップ用のディスク装置。 インターネット版【理科の部屋】のファイルもこの中にある。私の初めてのWeb記事も渡部昌邦先生の手でここにアップしていただいた。聖地を訪れた巡礼者の気分だ。校内LANもここにぶら下がっている。
定点カメラ用のサーバーは、旧型のMacだが、これで十分だという。カメラがとらえた画像は1時間ごとに自動処理されファイルとして蓄積されていく。葛尾村の四季を過去の画像で追うこともできる。
葛尾村は雷が多く、落雷による停電がシステムの最大の敵だという。電話の下はバックアップ用の無停電電源装置(UPS)。学校が無人になる夜間のシステムダウンは手出しができないので、翌朝祈るような気持ちで電源を入れるのだそうだ。
プロクシサーバー。葛尾中のホームページにネットワーク環境についての詳しい紹介がある。校内LAN構築のボランティア活動については「あぶネ研」のホームページへ。
気象観測用のウエザーモニター。ここから取り込んだデータが「葛尾の気象データ」として集計されていて随時参照できる。
玄関前で記念撮影。右からご案内いただいた理科の早川先生、教頭の矢内先生、YPC(横浜物理サークル)の花岡、平野、宮崎、理科部会事務局の山本央明先生、水谷先生。左端が天神こと山本明利。
謝辞
お忙しい中、長時間にわたってご説明をいただいた校長先生、教頭先生、早川先生をはじめ葛尾中学の職員の皆様、授業中に突然おじゃまして失礼をいたしました。大変参考になり、刺激を受けました。ありがとうございます。
福島県教育庁総務課の渡部昌邦先生には葛尾中学にアポイントをとっていただくなど、お手数をかけました。
理科部会事務局の山本、水谷両先生には、準備段階から当日の道案内まで、本当にお世話になりました。
この場を借りて、皆様に心から御礼申し上げます。