神奈川県立教育センター・理科テーマ別研修講座

気象の見方 講師:三浦郁夫先生 (99/11/11)

 今回の所外研修の会場は、東京大手町にある気象庁本庁舎。各種アンテナ群が屋上にそびえる独特の外観は、官庁街の中でも異色だ。

 講師は予報部予報課の三浦郁夫先生、NIFTY-SERVEのFSCIやFKYOIKUSでは西園寺秀人のハンドル名でおなじみである。

 情報機器を駆使しての講義はかなり高度な内容だった。受講生は次々に質問を浴びせられ、解答に四苦八苦したが、充実したひとときだった。

 かつてひまわり画像を印画紙に出力していた頃、実際の予報業務に使った本物の雲写真をお土産に分けていただいた。さっそく群がって物色する受講生の方々。

 気象情報端末を操作する三浦先生。コンピュータが引いた等圧線や前線位置を、端末上で手動で修正することができる。こうして人の判断を入れながら天気図は完成されていく。

 画面上に表示する情報の組み合わせは任意に選べる。別の時間の天気図と重ねて時系列の変化を追うことも簡単にできる。素人目にはごちゃごちゃで何がなんだかわからないが・・・

 午後は講義の後、所内見学をさせていただいた。まず案内していただいたのは「予報現業室」。その名のとおり、天気予報の実務を行っている現場だ。

 ウナギの寝床のような長ーい部屋の各所で、それぞれの担当官が当直で仕事をしている。予報は合議制ではなく、当直の一人の判断で出されるのだそうだ。責任重大だ。

 世界中の気象情報を扱うので、標準時は世界時UT。壁の時計には世界時を示す緑の針が余分についていた。

 雷評定データ受信監視装置。東電の雷センサによる雷の実況データがディスプレイ上に時々刻々表示される。落雷地点が時間ごとに色分けして表示される。雷雲の動きがリアルタイムにモニターできるしくみだ。


 庁舎の外にある「露場」。東京管区気象台としての測候はここで行われる。ビルの谷間のこの芝生の空間が東京の気象を代表しているのだ。

 転倒ます型自動雨量計。じょうごで集めた雨水をシーソーになったますで受け、その転倒回数で雨量を測定する。

 感雨器。雨の降り出しを感知する。4本の針金は鳥除けだそうだ。鳥の糞を雨と間違わないための対策だとか。

 右の銀色の筒は通風式温度計湿度計。上部でファンが回っていて、円筒内に常に一定の気流が作られている。中に温度センサと、湿度センサがある。左側は光電式積雪計。上部のレーザー光源からのビームが、神崎さんが指さしている白い台を照らしている。その反射光をとらえて積雪量を測定する。

 直径120cmの大型蒸発計。水の蒸発量をモニターしている。要するに水をはったたらいである。

 露場の一角には百葉箱も立っていた。しかし、今は使われておらず、中はからっぽである。記念にとってあるのではなく、撤去費用がつかないだけだそうだ。

 植物季節観測用標本の「ウメ」。東京でのウメの開花日はこの木が標準となって決められる。ちなみに、サクラの開花状況は九段の靖国神社の境内に標準木が指定されており、季節になると担当官が毎日観察にいくのだそうだ。

 東京管区気象台のレーダー室。庁舎の最上階にある。各地のレーダー画像を居ながらにしてモニターすることができる。各レーダーサイトはほとんど無人で、遠隔操舵によって運用されている。

 先ほど見た露場での測候データはこの端末に表示される。刻々のデータはグラフ化して示され、定時に自動通報される。唯一、天気だけは人間が目視で判断して入力する。

 屋上には各種のアンテナが並ぶ。国内はもとより、全世界からの気象情報がここに集まってくるのだ。パラボラは衛星通信用だろうか。

 ほぼ水平に取り付けられた奥のパラボラアンテナは富士山頂をにらむ。富士山レーダーのマイクロ波中継用のアンテナだ。富士山レーダーは今年10月いっぱいで運用を終了し、その波乱の歴史を閉じた。

 気象庁屋上から見た、皇居と都心のビル群。

三浦先生のホームページへ(講義で使用したパワーポイントファイルがダウンロードできます)

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