神奈川県立教育センター・理科テーマ別研修講座受講報告
楽しくわかる化学実験 講師:左巻健男先生 (98/06/26)
東京大学付属中・高等学校教諭の左巻健男先生のご指導で、盛りだくさんの実験実習を行った。
ぷよぷよ玉子
生の鶏卵を食酢などの酸に一晩つけておくと殻がきれいに溶けて薄皮だけの玉子ができる。この日の研修では短時間に処理するためかなり濃い塩酸につけたところ、変色して白くなってしまったが、「ぷよぷよ」感はご覧の通り。黄色い部分は変色を免れたところで、中の黄身が透けて見えている。数時間後(右)、元の玉子と比較すると浸透圧で水がしみこんでひとまわり大きくなっているのがわかる。一晩水につけるとさらに膨らむ。溶けたかどうかがわかりやすいので茶色の玉子を使うとよいとのこと。
かんたん熱気球
黒いゴミ袋の下にメタノールをしみこませた脱脂綿をエナメル線で釣って点火すると、たちまち袋が膨らんで空中浮遊する。上に火災報知器のセンサーがないことを確かめて実験すること。濡れ雑巾を用意しておき、降下してきたところで、脱脂綿の部分を雑巾で挟み込むようにして回収するとよい。ビニール袋は薄手(0.015mm厚)の高密度ポリエチレンのものを使用すること。
アルコール風船
ゴム風船にメタノール5mlを入れ、口を縛って80℃以上のお湯(向こう側)につけると大きく膨らむ。冷水(手前側)につけると元に戻る。気体←→液体の状態変化が一目瞭然だ。もとの風船には空気を入れないようにしたのに、冷やした風船が完全にしぼまないのが不思議に思った。
食塩の融解
食塩の融点は約800℃だ。溶かすにはマッフル炉などの用意が必要かと思いきや、普通のガスバーナーで強熱すればこの通り融解する。コツはバーナーの炎の高温部を見つけることだ。内炎の直上部がよいらしい。根気よく熱すると食塩の粉末が下の方からじわじわと融けてくる。板の上に流すと一瞬にして板が炭化する。マッチを触れればたちまち燃え上がる。板の上に流してもまだかなりの高温なのだ。
十分に冷えてから試験管内にこびりついた薄皮のような食塩を取り出してみた。かじると確かに食塩の味がする。試験管は熱で変形していた。
液体窒素の実験アラカルト
液体窒素の実験は生徒に最もウケる実験の一つ。まずは机の上にぶちまけてみる。かたっぱしからものを凍らせてみる。右の写真は試験管に入れた水銀を凍らせているところ。
気体はボンベからビニール袋にとって冷却するとよい。酸素は水色のきれいな液体に変わる。二酸化炭素は雪のようなドライアイスに。
二酸化炭素の雪は握り固めればりっぱなドライアイスになる。右はエタノール入りのビーカーに直接液体窒素を流し込んで凍らせたところ。水飴状のねっとりとした状態になる。
ブタンを試験管にとって火をつける。この試験管を液体窒素で冷やすと気化しなくなるので火が消える。最後は液体窒素に直接手を突っ込むパフォーマンス。「はい、一人一人やってみましょう。できた人からお昼休みにします。」皮膚に触れた窒素が一瞬に気化してできた気体の膜が断熱してくれるが、約1秒が限界だ。
カルメ焼き
ザラメや上白糖で濃厚溶液を作っておき、おたまに半分ぐらいとって飴状になるまで熱する。温度計で監視して125℃になったら火から下ろす。重曹に若干の砂糖を加えて卵白で練ったタネを用意し、棒の先につけてタイミングをはかる。泡が収まってきたらタネを入れる。
タネを入れて激しくかき混ぜるとしばらくして白く泡立ってくる。タイミング良く棒を引き抜くと、フワーッと膨らんで固まる。メロンパンのようにひび割れて固まれば最高。みんな成功したのに私の班だけはなぜかうまく膨らまなかった(/_;)。原因は不明。
スチールウールの燃焼
左巻先生から与えられた「スチールウール(ボンスター)1玉を空気中でマッチ1本で燃やす」という課題に挑戦。受講生の多くは、こうしてほぐして火をつけた。これも正解のひとつ。
もう一つの方法は、ほぐさずにそのまま火をつけ強く息を吹きかける方法。ちょっと肺活量が必要。放射熱で顔が熱くなる。高温でアルミフォイルも融けた。
燃焼と酸素消費
針金で適当な高さのスタンドをつくり、水槽内に固定してスチールウールをのせておく。集気瓶に水上置換で捕集した酸素を満たしておき、スチールウールに火をつけてすばやくかぶせる。半分に折ったマッチを刺しておくと点火しやすい。酸素が消費された分だけ水が上がってくる。
二酸化炭素中でのマグネシウムの燃焼
集気瓶に捕集した二酸化炭素の中でマグネシウムリボンを燃やす。
2Mg+CO2→2MgO+C
の反応が起き、あとには白い酸化マグネシウムの表面に付着した炭素が残る。集気瓶の壁のほうにこびりつく黒い粉は炭素ではなくマグネシウムの微粒子らしいので注意が必要だという。
水の中でマグネシウムを燃やす
燃焼中のマグネシウムリボンを水につっこむ、水の表面にふれるあたりで激しく燃焼する。水の中というより、表面付近で水蒸気と反応しているようだ。水にあらかじめフェノールフタレインを滴下しておくと水酸化マグネシウムができてたちまち赤くなる。当日はやらなかったが、この燃焼の結果生じる水素を捕集して示す方法もあるそうだ。
安全な水素爆発
小型の洗浄瓶を加工して作った簡易水素発生器。亜鉛と硫酸の反応で生じる水素を水上置換で捕集する。水素で膨らませたシャボン玉に酸素を混ぜ、火をつけて爆発させたりした。音は結構派手だがシャボン玉なら安全だ。
右はポリ瓶の底を抜き、口にゴム栓をしてガラス管をさしたもの。捕集した水素がガラス管から出てくるところに火をつける。はじめはろうそくのように静かに燃えているが、下から空気が補給されるので、やがて適当な混合比に達したところで突然大音響とともに爆発が起きる。びんの底が抜いてあり、弾力性のあるポリ瓶だから安全だ。「水素の三徳実験器」というのだそうだ。
簡易トリチェリーの実験
試験管に活性炭をつめ、液体窒素やメタドラ寒剤で冷却すると、ほとんどの空気を吸着してしまい管内は真空になる。これを真空ポンプ代わりに利用してトリチェリーの水銀柱の実験を見せようというもの。水銀柱は77cmまで上がってきた(左)。当日の気圧はやや高かったようだ。活性炭を温めると再び空気が放出されて水銀柱は元に戻る(右)。