神奈川県立教育センター・理科テーマ別研修講座受講報告

空の色と光 講師:武田康男先生 (98/07/03)

 武田康男先生は千葉県立野田高等学校で地学の教鞭をとられるかたわら、虹や雷などの大気光象や天体の写真家としても活躍されている。「空の色と光」(草思社)などの著書や「天文ガイド」(誠文堂新光社)の常連としても知られる。
 当日午前中は、先生自身が撮影され、一部は上記の本にも収録されている、200点にもおよぶ膨大なフォトコレクションをスライドで拝見し、大気光象のさまざまな姿を概観した。その一部は武田先生自身のホームページで見ることができる。
 午後は地学実験室で皆既日食やダイヤモンドダストのVTRを拝見した後、先生ご自身が教壇で実践しておられる地学実験をご披露いただいた。以下にその内容を報告する。

夕焼けの実験

 イオウのコロイドを水中に分散させ、レイリー散乱による透過・散乱光を観察する。直接反射してくる散乱光はやや青みがかっている。メスシリンダー上部は赤みがかった色に見える。上に白い紙をかざして透過光が赤いことを見せる。


皆既日食のビデオ

 先生自身が取材された皆既日食の映像をいくつか拝見した。日食はビデオや写真ではその雰囲気を表現しきれず、一度見れば病みつきになるという。写真はダイヤモンドリングの瞬間の画面を見る武田康男先生。


転向力説明装置

 回転台の実験はよく行われるが、転向力のはたらきを演示するには遠心力をうち消さないとわかりにくい。そこで、回転放物面の回転台を作り、その面上のどの点でも遠心力が重力と垂直抗力の合力とつり合うようにする。ビー玉は面上のどこでも回転系に対して静止する(左)。この面上で墨汁を塗ったビー玉を転がすと、転向力のみがはたらくのでビー玉はきれいに円を描く(右)。



簡易赤道儀

 天体写真の撮影は高価なモータードライブの赤道儀を使わなくてもできる。これは塩ビ板で自作した写真撮影専用の赤道儀。二枚の板をベアリングで結合してあるだけ。時計を見ながら時間に合わせてねじを回すと日周運動の角速度に合わせて上のプレートが回転する。左は極軸望遠鏡をとりつけて回転軸を天の北極に合わせているところ。


虹スクリーンの製作

黒いラシャ紙にスプレー糊をまんべんなく吹き付ける。

別の新聞紙の上に移し、一辺に沿って虹ビーズを盛る。

端をつかんでビーズを転がすように送り、残りをはたき落として完成。

ハロゲン灯を光源にまずは出来映えをチェック。

中庭の日なたに全員分のスクリーンを並べた。きれいな虹が見える。

暗い部屋でローソクやペンライトをスクリーンの前にかざすと立体虹が。


回折格子簡易分光器

 回折格子を使った簡易分光器の製作実習。仕上がり寸法だけが示され、「展開図から自分で考えて作ってごらん。」授業でも生徒自身に作らせるそうだ。わかっているようでものりしろの配置など意外とむずかしかったりする。

 できあがった分光器(左)。さっそく太陽をのぞいてみる。きれいなスペクトルが現れた(下)。


武田康男先生のホームページへ


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