部分日食の観察  (PDF版128KB

神奈川県立湘南台高校・山本明利
藤沢市立天神小学校・山本一登

 1997年3月9日、小学校3年生(当時)の息子に部分日食の観測をさせた。内容は太陽像のスケッチと温度の測定である。
 太陽像の観察はNIFTY-Serve【理科の部屋】での話題をヒントに新たに考案したピンホール式手動シーロスタット「クニャリミラー」(息子の命名)を用いて行なった。その構造は図1,2に示すとおりで、5mmほどの穴をあけた黒紙で覆った小さな鏡を自由に方向を変えられるように固定しただけのものである。ここではたまたま手元にあった、壊れたマイクスタンドのフレキシブルと壊れた光学台の三脚を廃物利用したが、太い針金を地面にさし、先端に鏡を取り付けた程度の装置で十分である。この装置を庭先に置き、反射光線を室内に導いて、ピンホールカメラと同じ原理で太陽像をふすまに投影した。鏡からふすままで約7m、太陽像は直径6cm余りになった。鏡や穴の形状によらず丸い太陽像が得られるのが面白い。太陽像には穴の大きさと同程度の「ボケ」が生じるが、穴を小さくすると像は暗くなるので状況に応じて調節する。太陽像は日周運動によりふすまの上を移動していくので、時折鏡の向きを微調節しなければならない。

クニャリミラー1
図1 ピンホール式シーロスタット「クニャリミラー」 図2 ミラー部拡大写真
(穴あきの黒い紙をセロテープで貼った)

 この太陽像と同じ大きさの円をあらかじめ観察ノートにコンパスで描いておき、同じ大きさに切り抜いたボール紙のゲージを欠けた太陽像に合わせながら欠け方を10分おきにトレースさせた。この方法は望遠鏡などの大がかりな装置を必要とせず、強い太陽光線を見つめることがないので安全であり、しかも子供でも簡単に正確なスケッチが取れるという利点がある。円形のゲージをあてることで、欠けた部分が「丸い何者か」の影であり、それが太陽の前を横切っていくのが日食であることを子供なりに自然に理解するようである。子供がスケッチした日食の経過を図3に示す。

図3

 一方、温度の方は、棒温度計を戸外の日なた、日陰、暖房していない部屋の奥の3カ所に取り付けておき、10分おきにそれぞれの場所の温度を測定させた。測定された温度は気温というよりも設置場所の壁の温度や放射を受けた温度計自身の温度というべきである。安物の温度計で、なにぶん小学生の観測なので信頼性は保証の限りではないが、図4のとおり食の進行に伴って温度計の示度が下がり、復円に向かってまた上昇していくのがわかる。明らかに太陽放射量が減っているのである。室内はやはり影響が少なく、全体としてゆっくりとした上昇を示しただけだった。思いのほか大きな変化が得られて観測者も満足げだった。


図4

【'97物理教育通信第88号、'97/04YPCニュースNo.109掲載】  PDF版128KB

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