ビー玉スターリングエンジンの改良
湘南台高校 山本明利
ビー玉式スターリングエンジンは埼玉県立春日部高等学校の土田三郎先生の考案によるもので、「教材用スターリングエンジン技術講習会テキスト」(日本設計工学会)に紹介されている。1997年8月の物理教育研究会(APEJ)夏期大会(都立駒場高校)において、慶応高校の喜多誠先生の指導のもと参加者全員でこのスターリングエンジンの工作会を行った。材料や工作方法については当日の喜多先生の資料やYPCニュースNo.90(95/09/22)、物理教育通信第83号に詳しく紹介されている。
動作原理は下記の通りである。
1.試験管内の空気が膨張して、注射器のピストンを押し出す。
2.試験管が右に傾いてビー玉が管底にころがり、空気が高熱源から遠ざけられる。
3.空気が冷却し収縮すると注射器のピストンが復帰する。
4.試験管が左に傾いてビー玉が管口にころがり、空気が高熱源へ送られる。
1〜4の動作が1秒〜数秒ほどの周期で繰り返され、試験管はかなり活発にシーソー運動する。
さて、このスターリングエンジンを授業で生徒に公開するにあたり、いくつか細かい改良を試みたので写真構成でご報告しておく。安上がりなところがウリである。
金属製の菓子箱のふたを利用してついたて兼スタンドを作った。構造がシンプルで作りやすい。
試験管の管口に近い部分が低熱源(ラジエータ)なので、ここにティッシュペーパーやガーゼを巻き、水で湿らせると動作が活発になる。
注射器のピストンは滑りのよいものを用いるのがポイント。ガラス製がよい。台に固定する部分も楽に動くように目玉クリップで蝶番を作った。台には磁石で固定し、位置の調整がしやすいようにした。
注射器と試験管のジョイント部分はL字管を用い、シリコンチューブでつなぐ。ゴム管などでは熱ですぐ劣化してしまう。
試験管の中央を支える支点部分。鉄釘を磁石にハンダ付けしてハンガーにしている。試験管に巻き付けた細い針金をフック状にしてこれにつるしている。
ハンガーに磁石を用いることで支点位置の調整がしやすくしてあるのが改良ポイントである。耐久性もあり安定性もよい。
横から見た装置全景。調整のポイントは管内の空気量、支点位置(高さ、横位置)、注射器の向きなどである。空気量は初期加熱(アイドリング)したとき注射器に空気が流れ込んでくるぐらいがよいようだ。定常動作中のストロークは3cmぐらいになる。