大気圧による10m水柱実験

 大気圧の大きさを水柱の高さで示す実験です。水銀柱を用いる「トリチェリーの実験」の水バージョンになります。水銀は水の13.6倍の密度があるので、水銀柱なら76cmで大気圧とつり合いますが、水だとその13.6倍の10.3mの柱を用意しなければなりません。10m分の水圧が約1気圧に相当するというわけです。

 実験に先立って水をみたしたコップを水面に逆さに伏せる実験、さらに1000mlメスシリンダーでの同様の実験を見せて、イメージづくりをさせます。水柱の高さがどこまでのびるかを想像させてから以下の実験を開始します。
 実験に使う透明ビニルチューブは内径8mm、外径14mmの肉厚で、真空に引いてもつぶれません。中村理科工業株式会社で取り扱っています。これを22m分用意します。中に水を満たした後、両端をバケツの水につっこんで、チューブの中央をつり上げるわけです。
 チューブの端にとりつけてあるのは真空ポンプと接続するためのホースコネクタです。
 ビニルチューブの一端から50cmのところを基点として、1mごとに10mまでテプラテープでこのようにマーカーをつけておきます。
 つり上げる部分にはホースが折れないようにハンガーとして滑車を使用します。適当なものでよいのですが、ここではHHH製「シンプルスナッチSS50」を使用しました。写真のように着脱が容易で便利です。
 0mのマーカーを水面に合わせ、ビニルチューブの一端を水に沈めます。ガムテープで固定するか、助手におさえてもらうとよいでしょう。この時点で食紅などで水に色を付けておくと見やすくなります。
 他端にハンドポンプなどをつけてゆっくりと水を吸います。水は静かにチューブを満たしていきます。空気の泡を入れないようにするのがポイントです。口で吸っても構いませんが、22mもあるので結構大変です。
 チューブ内がすべて水で満たされたら、空気が入らないように注意しながら他端も水中に入れて固定します。これで準備完了。あとはハンガーをとりつけた中央部をひもでつり上げるだけです。

 水柱のようすを観察しながらゆっくりと引き上げていきます。途中までは両側の水柱は確かにつながっていて、空気は入っていないのが確認できます。建物の3階の窓のあたりまでつり上げると、上部に真空部が現れます。

 3階の窓から見た水柱上端付近です。両方とも9.8mのところに水面がきています。ここより上の空間は「トリチェリーの真空」です。厳密には水蒸気が空間を満たしています。実験時の気温28℃での水蒸気圧は水柱約38cm分に相当します。溶存気体の分も考えると水面の位置はおおむね妥当です。水面付近では盛んに泡が立ち上って、水が沸騰しているのが観察できます。チューブを下ろしていくときにはこの泡と真空部はしだいに消えていきます。
 水柱の下部。実験中は両端を水につけたままにしますが、うまくやると一端をそっと持ち上げても水は落ちてきません。水圧と大気圧がつりあっているのですから理屈の上では理解できるのですが、ちょっと意外な感じがします。内径8mmなので、水の表面張力で下端の水面が維持されるため、空気が入りにくいのです。
 水を追い出してから一端をハンドポンプまたは真空ポンプで吸引し、水柱がどこまで上がるかを観察します。ハンドポンプでは9.2mぐらいが限界です。油回転真空ポンプだと10mまで上がります。この実験により、先ほどの中央の空間が真空だったことをあらためて確認します。
 真空ポンプを使うときは、ポンプ内に水を吸い込むといけないので、このように吸引漏斗のフラスコを使ってトラップをはさむようにします。

BACK一つ前のページへ

天神のページ・メニューへ戻る

To HOMEホームページに戻る