例会速報 2024/05/19 関東学院中学高等学校・Zoomハイブリッド


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは月末発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

授業研究:中学校の幾何光学 峯岸さんの発表 
 峯岸さんは、例会翌日の授業案を紹介してくれた。中学2年生1学期のテーマは「幾何光学」。凸レンズを通ったあと、光はどのような経路をたどるのか、どのように像を作図するのか、どのような像が見えるのか、が授業目標である。先行研究によると、「凸レンズを通る光は、作図する際に用いる代表的な3本の光しかない」という凸レンズの誤概念がある。加えて、1/3の生徒は「焦点においた光源の光は、再び焦点に集まる」という誤解をしていることも分かった。
 

 これらを払拭するために峯岸さんは、伏せた水槽内に線香の煙を満たした実験装置で、光の経路を観察させた。これは、APEJの第16回基本実験講習会「光の干渉」で、回折格子を通ったあとの光の経路をスモークボックスを用いて観察する教材から着想を得ている。水槽の壁に虫眼鏡を貼り付け、水槽の外から懐中電灯やLEDで照らすと・・・凸レンズを通ったあとの光の経路をじっくりと観察することができる。左図は焦点に点光源(LED)を置いたときの様子、レンズ通過後は平行光線になる。焦点より外側に点光源を置いたときには、レンズを通った光は一点に収束する様子が見られる(右図)。
 

 一点から出てレンズを通ったあらゆる光が、一点に集まることが大切で、その集束点に「像」ができているわけだ。作図に用いている3本の光線はその中に含まれる代表的な3本にすぎない。
 像がどのようにできるかを観察した後に、像がどのように見えるかを問いかけ、生徒に「像ができる」ことと「像を見ること」の違いを意識させた授業案であった(下図)。例会参加者からは、「その選択肢だと、②もありえるのでは?水槽の壁に光が当たっているし」と指摘があった。そこから、峯岸さんは授業案を大きく修正し、翌日の授業を行ったと後日報告があった。峯岸さんは「とてもいい授業ができた。機会があったら発表したい。」と意気込んでいた。
 

ボイスメモで自由落下時間判定 鈴木さんの発表
 以前にも紹介したスマホのボイスメモでの自由落下時間測定実験の改善案である。元は、石川の米田雅人さんの発案の実験で、ボイスメモを用いて、物体が落ち始める時刻と落ちて床に落下する時刻を記録し、その差から落下時間を測定する、というものだ。2019年10月例会2020年8月例会に2回発表している。落ち始める時刻にどう音を出すかが課題だったが、今回はその改良及び簡単に用意できるものとして、ペットボトルを思いついた。空のペットボトルを(炭酸飲料よりもお茶のようにへこみやすいもののほうが良い)生徒数分用意し、蓋をした状態で下を向けて、蓋の下端が床から1mになるように持ち、ペットボトルをギュッと押して、離すことで音を出す。実際にやってみると、予備実験では0.44sが2回連続というような結果だったが(理論値0.45s)、例会会場ではあまりいいデータは取れなかった。はじまりの「ポコっ」という音と同時に落下が始まるかどうかなど、かなり誤差の大きい実験ではあるが、手軽に実験できるというのを生徒の活動として行うのは、10分ほどの実験として良いのではないだろうか。なお多人数で行うと、周りの音でわからなくなるが、言葉で「せーの」や「はい」などと声をかけてその直後に落とすと、他との区別がつきやすい。このことは生徒の感想から指摘されたことだ。
 

虹ビーズの人工虹 山本の発表
 「虹ビーズ」という透明プラスチックビーズを、スプレー糊(3Mの77がよい)で黒画用紙や黒ラシャ紙の表面に固定したものを「虹スクリーン」と呼ぶ。空中の水滴の代わりに微小なプラスチック球で光を屈折・分光させる。虹スクリーンを用いると室内で簡単に虹を観察できる。
 左は例会参加者が虹スクリーンの前で観察している様子。太陽の代わりの光源は100Wクリヤー電球(あればOHPや液晶プロジェクターの白色光が好適)。黒い壁には虹スクリーンが貼ってあるが、虹は観察者自身にしか見えない。自分の頭の影の周りにだけ虹の輪があるように見える。写真を撮るとカメラの影のレンズの位置を中心に丸い虹が写る(写真右)。プラスチックの屈折率が水より大きいため、虹の視半径は約17度と小さくなる。赤が外側で、虹の輪の内部が明るいことに注目しておこう。
 例会配付資料:作り方など虹スクリーンに関する情報源のまとめ(PDFファイル108KB)はこちら
 

 天然の虹では太陽を動かすことはできないが、虹スクリーンでは光源と視点を自由に配置することができる。小さな明るい光源を観察者の目と虹スクリーンの間に置くと、光源を取り囲むように小さな虹の「球」が浮んで見える(写真右)。右目と左目で見ている虹が違うため視差を生んで、虹の球が立体的に浮かび上がっているような錯覚を覚えるのである。光源は明るい点光源がよい。例会で使用したのはクリプトン電球のクリヤー球。この場合も赤が外で、虹輪の内部は明るい。
 

 次に目の前の光源を自分の顔の横に持ってくる。目と光源(写真を撮る場合はカメラレンズと光源)の距離が20cmぐらいで、虹スクリーンに平行になるように配置すると、光源を取り囲んでいた虹が連続的に変形して裏返って行くのが観察できる。右の写真は光源を移動中、虹の輪が開き始めている様子。
 

 光源を目の横に近づけるにつれ、開いた虹の輪はぐるっと反転して、赤の方を内側にして楕円形になる。楕円の内部は暗い。この状態を「裏虹」と呼んでいる。虹が裏返る様子の動画(movファイル10.5MB)はここ。天然の虹では決して見られない現象である。これらの人工虹のふるまいは「虹トーラス理論」によって説明できる。詳しくは以下の文献を参照されたい。
「 虹を追いかけて」⼭本明利・物理教育 Vol.48、No.3(2000) https://www2.hamajima.co.jp/~tenjin/labo/niji.pdf
 

セリアの「ぐるぐるトルネード」 天野さんの発表
 ペットボトル2個を向かい合わせに結合して、一方に水を入れて立てると、トルネードのような渦流が観察できる。この際、PETボトルの結合に使うジョイントが「トルネードアダプター」である。市販品は意外と高かったので天野さんは安く自作する方法を追求してきたが、このほどセリアで「ぐるぐるトルネード」の商品名で110円で販売されているのを発見した。
 

紙コップロケット 天野さんの発表
 エタノール蒸気を爆発的に燃焼させて紙コップを飛ばす実験。500mLのアルミ缶を発射台に使うとして、中の酸素は0.1Lだから、それを全部消費するとしてもエタノールの量は計算上0.95g、1.3mL程度となる。実際にはこれより少なめ(0.5g程度)にして完全燃焼させるのがよい。
 

 アルミ缶には底に近い側面に直径5mmほどの穴を開けておく。スポイトでエタノールを入れたら、紙コップを缶の上からきつくかぶせ、缶ごとよく振って蒸気を充満させた後、下の穴にライターの火を近づける。ポンという爆発音がして、紙コップが天井に当たるほどの勢いで飛び出す。上からのぞき込まないように注意する。燃焼後のアルミ缶はかなり熱くなっているのでやけどにも注意が必要。連続して実験する場合はアルミ缶は別のものを使うこと。打ち上げの動画(movファイル9.7MB)はここ
 

銀黒マジックネット 喜多さんの発表
 喜多さんは自宅の網戸を自分で張り替えることにした。ホームセンター「オリンピック」で網戸用のネットを物色していたら、「銀黒マジックネット」が目に入った。『昼間 家の中が見えにくく外の景色がスッキリ プライバシー保護 外から見えにくい銀 裏面からは外の景色がすっきり! 中からスッキリの黒』というキャッチフレーズにひかれて購入した。通常のものより少し割高だそうだ。少し余ったが、捨てるのはもったいない、YPCで報告する価値があるのではと、例会に持参してサンプルも分けてくれた。
 喜多さんが見せてくれたのは、A4サイズに切ってダイソーのパネルの枠に入れたもの。それぞれの写真の左側は黒の面が、右側は銀の面が見えている。教室内の照明で、右の銀の面の方が反射光が多く喜多さんの服の色が薄く見える。右の写真は正面から投光器で光を当てて反射率を比較しているところ。ちなみに、夜は外からの光がないので効果がない。
 「銀黒マジックネット」で検索すると簡単にヒットする。その仕組みについても簡単な説明が掲載されている。
 

オーバーハングゲーム 越さんの発表
 厚さ5㎜の「カラーボード」 (ダイソー、ポリスチレン製)を20㎝×4㎝程度の大きさに切った物を10枚1セットとして用意する。短い辺を机の端に一致するように置き、その上に板を少しずつずらして重ねていき、机の端から板1枚分、せり出させる。このせり出しの事を「オーバーハング」という。
 最小で何枚重ねれば可能だろうか?授業では生徒実験で枚数の少なさと時間を競い合った。計算上は4枚で可能だが、実際にやってみると5枚は必要であった(右図)。重心の位置が机の端に一致した状態までせり出せるので1枚だと最大で10㎝はみ出させることができる。2枚重ねた場合には共通の重心の位置が机の端に一致するまでなので15㎝、という具合だ。下からではなく、上の方からはみ出しを決めていくのがコツだ。詳しくはこちら
 

 次に2人一組で20枚1セットとして、どのような積み方をしてもいいから、最大で何㎝までせり出せるかを競い合ってみた。生徒たちは考えながら試行錯誤していたが、比較的短時間で実施できる楽しい実験であった。
 関連して写真下右は、成見さんが以前YPC例会で紹介されていたスカイツリーの絵が描かれたケース入りの「乗り出す板」。「乗り出す板プロジェクト」のページも参考になる。
 

水平投射・斜方投射のパワーポイント 鈴木さんの発表
 水平投射・斜方投射の授業での生徒への説明のパワーポイントの紹介である。以下、鈴木さん自身のコメント。
 25年くらい(?)前から山本明利さんがYPCで配布した授業プリントをかなり拝借して授業プリントに使っている。その中で、水平投射・斜方投射を、生徒に図のような方眼に作図させて、1秒ごとの点をプロットさせ、されにその時点での速度のx成分y成分を計算した上で作図させる課題を行なっている。単に現象を見るだけでなく、作図という手作業をさせることの効果は大きいし、それぞれの点での速度が、軌道の接線になっていることもよく理解できる。
 

 生徒自身に作業させた後、数年前からパワーポイントで解説しているが、今年はそれにさらにアニメーションを追加してみた。それぞれの(1秒ごとの)速度ベクトルを、同じ点から始まるように移動するアニメーションである。すると、みごとに矢印の先が縦一線に並びしかも(この例の場合1目盛りごとに)同じだけの速度ベクトルの変化になっている。まさにこれが重力加速度による速度変化である、ということが見て理解できる。生徒の反応も、「おー」という声が上がり、良好だった。苦労話だが、パワーポーンとのアニメーションの図の移動は、移動先がはっきりと固定できず、移動を指示するのを試行錯誤で(目分量で)何度も行い作った力作(自賛)である。
 このパワーポイントをご入用の方は、鈴木健夫(sutaypc14あっとまーくgmail.com)に連絡を。山本さん作成の元のプリントの作業課題もついている。
 

濃硫酸と氷水 市原さんの発表
 硫酸を希釈するときは、水に硫酸を入れるように注意しなくてはいけない。逆だと突沸した硫酸が飛び散るからだ。このときの発熱量はかなり大きく、約20℃程度の水が、70〜80℃くらいにはなる(左図)。
 ところで、氷の融解熱もそこそこ大きいのだが、氷水に硫酸を入れたらどうなるのだろうか(右図)。
 

 3℃弱の氷水(氷多め)に硫酸を入れてよくかき混ぜると、一時的に温度は上がるのだが、最終的にはマイナス2℃くらいになった(右端写真)。これはどういうことだろうか。
 氷が全部溶け切らなかったとすると、希硫酸に氷を浮かべた状態になっている。これはつまり、水に不揮発性の硫酸が溶けているため凝固点降下が起こり、0℃以下が凝固点になるのである。少し考えれば気付けることなのだが、直感的に予想しづらい結果ではないだろうか。
 ちなみに、市原さんが見かけたページ(https://www.kansai-u.ac.jp/presiweb/news/column/detail.php?i=2100)にはマイナス10℃位になると書いてあった。市原さんは、まだワンテイクしか実験をしていないが、演示に向く(見栄えのする)氷と水の量を追求しても面白いかもしれない。
 

「素粒子論の発展」より 宮﨑さんの資料提供
 辻浩二氏の「のぼりおり集」の中にあった参考文献のうち、
南部陽一郎著「素粒子論の発展」(岩波書店) の『三つの段階, 三つのモード, そしてその彼方』
の三段階認識について記述された部分(2頁)のコピーが配付され紹介された。
 「素粒子論の発展」は高い(¥5,940 )が、これ以外の部分も面白い。

屈折によってできる「像」? 峯岸さんの発表
 峯岸さんは中学校で幾何光学を教えていて、屈折によって見える像の位置の図が教科書によって違うことに気が付いた。水中の物体を水上の観測者が斜めに見下ろすとき、像は物体の真上に見えるのか、真上よりも手前にあるように見えるのか、真上よりも奥にあるように見えるのか。
 峯岸さんは両目で見たときの像の位置と、片目で見たときの像の位置は作図上では異なることに気付き、今回発表に至ったという。両目で見るときは、右目に入った光と左目に入った光の交点に像があるように見えるので、物体の真上に像が見えると考えられる(左図)。一方で、片目で見るときは、目に入ってくる2本の光線の延長した先に像があるように見えるので、真上よりも手前に像が見えると考えられる(右図)。また、屈折によって見える像は定義に基づくと虚像ではないか、と峯岸さんは主張した。
 例会参加者からは「両目で見たときと、利き目じゃない片目で見たときとではたしかに像の位置は違う。」「両目は立体視をするためであり、像の位置を決定するわけではない。像の位置を考えるときは両目ではなく、片目で行うべきである。」と像の見える位置に関しては議論があった。一方で、屈折によって見える像は虚像、という点ではおおむね見解が一致していた。
 本件に関しては、「中川のビジュアル物理教室・屈折による像の浮き上がり」のシミュレーションがわかりやすい。同サイトの「概要」にはさらに詳しい解説がある。
 

二次会 黄金町駅前「中華料理 松林」にて 
 8名が参加してカンパーイ!例会本体には対面で17名、オンラインで6名、計23名の参加があった。今回は益田さんのお骨折りで、学校会場が確保できた。学校の実験室だと火や水を使った実験も自由にできるので例会には大変都合がよい。学校会場の立候補を期待している。


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