例会速報 2026/09/27 世田谷学園中学校・高等学校・Zoomハイブリッド
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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは来月発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムはここ。
授業研究:情報の時間の物理 金子さんの発表
金子さんは高校で情報の授業を担当している。情報の時間のプログラミングにおいて、歴史的な背景への言及を意識している。例えば、モンテカルロ法を扱う際に、Roger
Eckhard:STAN ULAM, JOHN VON NEUMANN, and the MONTE CARLO METHODを読むことなどを教材としている。

確率的なアルゴリズムはAI(大規模言語モデル:LLM)の仕組みを知る上でも重要である。ミニLLMを使用して、LLMが陰で何をやっているかを理解するための教材を与える。

生徒の授業アンケートからは、「覚えるのではなく思考して求めることが大切」とか「まず自分で考えること」などの好ましい反応が読み取れる。

マリオットの瓶 長舩さんの発表
長舩さんは、先月8月例会の山本さんの発表に刺激され、理科教室8、9月号を参考にして中1の大気圧、水圧の授業を組み立てて実施した内容を報告した。以下、長舩さん自身のレポートである。
工作については、ペットボトルの穴あけはボール盤と半田ごてを使用。ストローの隙間を埋めるのにスポンジ(写真右)、グロメット(下の段の写真)、バスボンドを利用し、ゴム管の隙間にはグロメット、L字パーツを利用した。

展開した授業プリントはこちら。前半を実験αとして理科教室8月号の内容を実施。ストローの上げ下げをする代わりに、PETボトルに3箇所の穴を開けてストローを固定した。最下の穴Dだけ水が出続けるので驚く生徒の様子もあったが、疑問が大き過ぎて感動が薄れているような反応だった。観察の観点を投げかけながら気づきを引き出し、二度、三度と観察できるように時間をとった。その後に穴Dの水圧がしばらく一定になることを解説をして後半の実験βに進んだ。

実験βではゴム管の水位が不思議な動きをするので余計に疑問が大きくなった様子で、生徒の反応もいまいちだったのは反省である。

レポートの点検はこれからだが、少しめくった範囲では「空気が入るから水が出る」という表現がちらほらあった。実験αで説明した水圧と大気圧を踏まえるような記述がとても少なく反省した。欲張った内容なので生徒にはしんどいだろうと覚悟していたが、こちらも考えさせられた。しっかりレポートを読んで今後に生かしたい。

ドップラー効果 天野さんの発表
天野さんが提案したのは、ブザーを仕込んだ滑走体をガイドロープに沿って滑らせて、ドップラー効果を観察しようという試み。発音体を投げるのは危ないので、戸車を利用した滑車でロープに沿って運動させることにした。同様のコンセプトの「ドップラーロケット」(ナリカ)なる製品も市販されているが、安さを追求した。

ロープに沿って手で押し出すように滑走させると経路の近くでドップラー効果による音の高さの変化を聞くことができるが、音の強弱も伴うので、なかなか生徒に理解してもらうのは難しそうだ。

マグデブルグ半球用のパッキン 天野さんの発表
天野さんはマグデブルグ半球風の真空実験の容器改良にこだわって試行錯誤を続けている。今回紹介してくれたのは、ダイソーの「シリコーンカバー」3個入り110円。これが、伸縮自在で気密性もよく、真空容器のパッキンに最適とのことだ。
なお、セリアの「手動ポンプ」は、このところ品薄だったが、また店頭で見かけるようになったという情報もあった。

私物スマホが使えない教室で物理実験をする 植田さんの発表
物理教育研究会(APEJ)の「物理教員のための基礎実験講習会」には熱・力学・波などの班に加えて「スマホ実験班」があり、YPCのメンバーと植田さんはそこで若い先生方にphyphoxの使い方を伝えてきた。ところが昨今の盗撮事件を受け、教員が私物のスマホを教室へ持ち込むことは難しくなっている。都立高校では校内専用のスマホを配布するという情報も入ってきている。私物が使えなければ学校の教員用端末にphyphox
を入れるしかないが、情報セキュリティ責任者の許可が要り、ハードルは高い。
そこで植田さんは、インストールせずにホームページを開くだけで使えるWeb アプリ、「タブレット物理実験ラボ」(左図)を作成し、β版を公開した。phyphoxライクな「加速度計」や「音響ストップウォッチ」(手を叩くと計時が始まってもう一度叩くと止まる)の機能がある。例会では対面参加者、オンライン参加者にも体験してもらいった。ただし用意したチュートリアルがうまく機能せず、そこは要改修とのことである。

スマホやタブレットを使った物理実験は、電車やエレベーターの中など、どこでも生徒が簡単にできるため、価値が大きい。phyphoxほどの精度は出ないかもしれないが、phyphox
を入れられない環境ではぜひこちらを使ってほしい、と植田さんは締めくくった。

ダイソーの三球儀 越さんの発表
越さんは、同僚の先生から教えてもらったダイソーの三球儀を紹介した。太陽、地球、月の動きを表す木製の組み立てキットだ。レーザーカッターで作られているようで部品の精度も良く、組み立ても簡単、モーター付きで330円は安い。残念ながら、現在ほぼ在庫切れ、ネットで探すと同じものが1000円程度で販売されている。太陽の位置に小さいLEDライト、地球の位置に超小型カメラを取り付けると、月の満ち欠けや月食、日食の様子を観察できそうだ。

書籍紹介・北村さんの新刊 宮﨑さんの発表
「Web VPythonとAIで創る3D動画物理シミュレーション-中高生と先生のための3D物理の実験室-」聖光学院中学校高等学校 北村俊樹著・2026年9月10日(株)カットシステム発行・3000円+税(左図)、の紹介。以下、宮﨑さん自身のコメント。
9月1日に久しぶりに新宿の紀伊國屋書店をのぞくと、上記の書籍がすでに平積みされていた。早速購入。「Web VPython」 とは、 Pythonベースの3Dグラフィックやアニメーションに特化した、ブラウザのみでできる開発環境のようだ。書籍の内容は、Pythonの文法、Web
VPythonの文法などが書かれ、次に物理シミュレーションの作例が続く。文法などが続くと、私は息切れしてしまうのだが、生徒とともに作成作業をするには必要な章だろう。

私が興味を持ったのは「第8章 AIを利用したプログラミング」。『8.4 実践:AIと対話を繰り返しながら「斜方投射のプログラム」を作ってもらう』は、AIを使ってプログラムをつくる実践例である。入力したプロンプトと作成されたプログラムを見て、不具合を一つ一つ潰していくステップが9回にわたって、シミュレーションの図と問題点を挙げた文章とともに載っている。実践的で得るものが多かった。
8.5にはAIを使ってプログラムを作るコツが書かれている。勤務していたとき、「情報」も持ったことがあったが、その時これがあればな、と思いながら読み進めた。
VPythonのシミュレーション関係の別の本では「VPythonで見て学ぶ物理シミュレーション入門」 國仲寛人著・2024年11月11日技術評論社発行・2970円
税込、などがある。

なるべく安く岩石密度の測定 宮本さんの発表
宮本さんは、100円ショップで購入できる深底の保存容器や、アマゾンで700円程度で購入できるデジタルスケールを使って、河川敷で拾ってきた岩石(たぶんチャート)や、釣り用の鉛のおもりの密度を測定する実験をおこなった。

岩石を紐で縛って水中に沈め、アルキメデスの原理を用いて岩石の密度を測定するわけだが、岩石の密度を求めるだけで終わってしまってはつまらない。そこで沈める液体として、水道水だけではなく、飽和食塩水と消毒用エタノールも用意して、岩石密度と浮力の値から、沈めた溶液側の液体の密度を計算させた。

例会では消毒用エタノールを用いて演示をおこなったところ、確かに水道水の時と比べて浮力の値が小さくなり、エタノールの方が密度が小さいということが実感できる。合わせて、「とてつもなく塩分が濃い死海では、浮力がかなり大きくはたらくんだね」という小噺も有効である、という報告だった。
開口端補正など 前川さんの発表
前川さんは、一般の会員で、物理教育が専門というわけではないが、なかなかの勉強家で本をよく読んでいる。最近例会で取り上げられた話題について、本の記事を探し出して情報提供してくれた。
崔博坤著 「身近な音と音波」(コロナ社)には、開口端補正がなぜ生じるかの理由が詳しく紹介されている。

トレヴァー・コックス著「世界の不思議な音」(白揚社)には、博物館の「エコーチューブ」が生じる不思議な響きについての詳しい解説が載っている(左図)。
また、川村浩著「脳とリズム」(朝倉書店)には、人間の感覚が対数スケールになっていることが解説されている。どれも興味深い内容だ。

IOPの誤概念リスト 西尾さんの発表
英国物理学会(Institute of Physics:IOP)が物理教師向けに教材などを提供するウェブサイト IOPSpark (左図)の中に、Misconceptions という充実した誤概念リストがある(右図:自動翻訳)。分野(力と運動、光・音・波、エネルギーと熱、電磁気など)と対象年齢(5-11、11-14、14-16、16-19)で絞り込み検索ができ、その誤概念の診断テスト、対処するための教材、根拠となる文献リストがあり、授業の指導案や課題の作成に利用できる。

例会では、ブラウザの翻訳機能で日本語表示したウェブページを参照して、「Many students can use the word 'force'
(to mean a push or a pull) and understand that a force is needed to get
a stationary object moving」を例として紹介した。これは一見すると誤概念ではなく正しい物理概念のようだが、診断テストは加速・等速・減速するクルマにはたらく合力の向きを問うものである。つまり、「生徒は力を“止まっている物体を動かすのに必要なもの”としか捉えていない」ということを言いたいのだろう。

この教材には「Let's talk forces」という読み物があり、その中の「Keeping it simple: modelling」では、
free body diagramを描くステップ(物体を特定し、環境から隔離し、環境との相互作用について考えて力を特定する)の説明がある。

水中の物体の像の位置の入試問題 鈴木さんの発表
YPC例会で過去度々話題となっている、「水中の物体の像の位置は物体の真上にはいないのではないのか?」という問題について、鈴木さんは、昨年度の京都府立医科大学の入試問題で、像の位置を導出する問題が出題されていたのでその紹介をした。YPC例会では2024年5月に峯岸さんが、また、2026年7月に阿部さんが過去に発表している(左図)。
入試問題のURLはここ。物理の大問3p.11以降の部分。鈴木さんが作成した解説付き模範解答(PDFファイル:1.8MB)はここ。
像の位置(q1,q2)の式は、右図のようになり、像(虚像)は赤の丸で示されいてる位置になり、確かに水中の物体の像の位置は物体の真上にないことが分かった。そして、見る角度を低く(水中に近づけて見る)ほど、位置はよりずれることも分かった。

さらにdesmosでグラフ化したもの(鈴木さん提供)は、ここ(左図)。ちなみに、当然ではあるが、真上から見たときは像の位置は物体の真上にある(右図)。教科書の記述でも「物体のほぼ真上から見たときは」との記載があり、教科書の問題でよく出てくる像の位置の問題は、「ほぼ真上から見たとき」という条件のときのみ成り立つことに、鈴木さんは改めて気づいたという。
また、「対話からの物理学(高校物理学研究会編・白石書店)」という本の中でも、水中の物体の像の位置の導出があることを発表後のコメントでいただいた(書籍のp.14〜17部分)。こちらの本は、さらにアステロイドや火面の話に繋げていたりしており、こちらの本もおすすめとのこと。

ディズニーシーのおすすめスポット実験教えて 鈴木さんの発表
鈴木さんは近々、学校の遠足の引率でディズニーシーに行くことになっている。そこで、せっかく仕事で行くので物理的(または理科的)なスポットに行ったり、そこで実験をしてみようと思った。
そこで、YPCメンバーに、ディズニーシーに行く前におすすめスポットがないか情報を聞いた。発表時間が少なく、その場では特に意見は集まらなかったが、Zoomのチャット+後日YPCのメーリスを通じて4名もの方からアイデアの提供があった。中には、実験の測定データを提供してくれた方もいた。
鈴木さんは後日、「YPCの方は非常に豊富な知識をお持ちの方が多いことを再認識したと同時に、YPC例会発表は、実践事例の発表(=行った後)のみでなく、行く前にアイデアを集めるために発表をするというのも有効であることに気づいた。」と語っている。
遠足の成果は今後、続報として例会で発表する予定とのこと。お楽しみに。
音波の反射・オシロの波形 峯岸さんの発表
ひもやウエーブマシンの反射の演示では、自由端では山を送れば山がかえってくる。つまり位相変化がない。固定端では山を送ると谷がかえってきて、位相が反転する。しかし。気柱で反射する音波をオシロスコープで観察すると、反射波の波形はその逆になる。前の発表の前川さん提供の資料にもあるとおり、マイクでひろっているのは媒質の変位ではなく、圧力変化だからだ。峯岸さんもそれで納得できた。会場からは、「開端では圧力が1気圧に固定されているから固定端、閉端では圧力が自由に変化できるから自由端、と教えている」というアドバイスもあった。他の参加者からも「いいね!」の声が・・・。

三次元の干渉 峯岸さんの発表
峯岸さんは音波の干渉を三次元的にイメージさせたいと考え、体育館で二つのスピーカーから同位相で音を出して、両音源から等距離にある平面上で、上下にマイクを移動させて観察してみた。理論的にはこの平面上では常に音は強め合うはずだが、予想に反してマイクの移動に伴って強弱が現れた。
今のところ原因は不明だが、「等距離の平面に正確に乗っていなかったのでは」「波長が短すぎて、細かな干渉を見ているのでは」「反射音のせいでは」など会場からさまざまな意見が出た。峯岸さんは引き続き研究して、結果をレポートしてくれるという。
二次会 三軒茶屋駅前 「満点酒場三軒茶屋店」にて
13名が参加してカンパーイ!例会本体には対面で18名、遠隔で9名、計27名の参加があった。都心方面からもアクセスのよい会場なので、久しぶりの顔ぶれも集まった。会場持ち回りとZoomによるハイブリッド形式の例会はすっかり定着し、YPCメンバーの層の厚さを支えている。コロナの影響からもやっと抜け出せて、会場を提供してくれる学校も増えてきた。実にありがたいことだ。
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