例会速報 2021/08/21 Zoomによるオンラインミーティング


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは月末発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

授業研究:1学期の授業 市原さんの発表
 市原さんは、中学1年生の「分割実験」という授業で扱った実験を紹介してくれた。普通の理科1分野(物理・化学)の授業週2回の外に、クラスを二分割して実験を行う、少人数制のコマが週1回ある。分割するので、クラス全員が授業を受けるのに2週間かかる。時には試験をまたぐことも。そのため、基礎体験重視で一話完結の実験が主となる。ストーリー的に長くなる、つながりがある授業は、2単位の理科1の方で行う。たとえば、4月例会の授業開きで紹介のあった輪ゴムの伸びの測定実験は、理科1の授業で行っていた。
 一学期中に「分割実験」行った内容は「パスタの変形量と荷重の関係」、「“お茶”を立てる」、「金属の材質を当ててみよう」、「浮力の特徴を探る」の4種類。
 「パスタの変形量と荷重の関係」は、小沢さんが本年1月例会で紹介したものと同じ。「ばねを用いてフックの法則を調べてもおもしろくない」と思っていたので、輪ゴムで非線形的な関係を見た後に、パスタで線形関係を体験し、「世の中にはどちらもあるんだ」ということを経験させるために扱った。
 「“お茶”を立てる」は、重心の位置をさぐる、バランスを取る、という経験をして欲しかった。ただ、バランスを取って終わり、ではなく、数値データを取る癖をつけてほしいので水の量を量り取る、という課題になっている。
 

 「金属の材質を当ててみよう」は、目的が「ノギスを使えるようになる」なので、ノギスの使い方を10分ほどの動画で見せて、色々な形状の金属の長さを測定させた。体積と質量から密度を求めさせて、密度の表から金属を同定させる。
 「浮力の特徴を探る」は、内容物を変えて密度を変えた試験管を、メスシリンダーに入れた水に沈めていき、ばねばかりを使って浮力の大きさを測っていく。ねらいは浮力うんぬんではなく、「実験方法をまとめられるようになる」ことで、配布プリントにも「実験方法」は書かれておらず、提出プリントも空欄が大きい。

 以下は、市原さん本人から寄せられたコメント。
 ワークシート的な穴埋めプリントは、教員も生徒も「やった気になる」が、レシピ実験のように操作手順に意識が集中し、あまり内容について思考できていない生徒もいる。自分が何を調べたくて、何のために何を測定するのか、を能動的に捉えられるようにしないといけないと感じている。そのため、なるだけ「実験プリント」っぽくないプリントにしたいと思っている。データを記録する表なども、枠を用意して「埋めなさい」はしたくない。もちろん初めから生徒に丸投げしても、データ整理の表を自作できるわけではないが、「(現状では)できないからやらない」のではなく「できるようにしていく」必要があると思っている。少しずつギアを上げるように、色々なことを「考えて」実験できるようにさせたい。 

自転車をこぐという力学~まさつ力、熱、仕事の関係 夏目さんの発表
 夏目さんは、APEJから「今年の夏期大会では、ちょいと気軽に発表できるポスターセッション枠、『ちょいワク』を用意しています。」とあったので初めて応募してみた。ところが、事前掲示への質問もあり、当日夕方の議論セッションでも取り上げられ、濃厚な討論を経験した。例会でもその概要を紹介してくれた。
 自転車をこぐと前に進むエネルギーは人間が筋肉から発していることに異を唱える方はいないであろう。しかし、それが足の先→ペダル→チェーン→車軸→スポーク→タイヤ→地面-----と伝わってくる過程を「力」で表現するとなると極めて微妙な問題であって、今までも多くの論争があった。さらには、力とその力によって動いた距離が仕事になるという事情が事態を複雑にしている。人間は機械的な部分には剛体概念を持ち込んで理想化したいという欲求があるため、かえって不自然になる。車輪と地面が一点で接するという奇妙な仮定となってパラドクスを生んでしまう。
 ここでは、スポークの付いた車輪を粘弾性体とみなして、その収縮とその反発による膨張を取り込む。必然的に車輪と地面の接点は複数(あるいは面)となる。そうすると人間の為していることは、結果的にその粘弾性に働くと言える。即ち筋肉の粘弾性が車輪の粘弾性を助けているというソフトマター科学からの統一的な描像になる。
 自転車をこぐというのは車輪を完全な円と考えるとパラドクスにはまってしまう。そこで、まずは下の図のように、車輪を五角形にする。左端の図では車輪の重心が地面に対して上がっていくので、このままでは回転運動に対して制動(つまり進行する回転を弱めるモーメント)が働いてしまう。その制動は五角形の頂点と地面との交点に働いているとも言える。そこで人間はペダルを一所懸命にこいでいる。そして中央の図で重心は最高点に達する。その後、右端の図では重心が下がっている。回転運動に対しては駆動(つまり進行する回転を強めるモーメント)になっている。その駆動は五角形の頂点と地面に交点で働いているとも言える。ただし、人間がペダルを踏むという意味ではむしろ楽になっている。
 

 この明解な説明は車輪が五角形だからである。これを正N角形と考え、Nを無限大に持っていったのが左の図に描いたような円であるが、重心の上下運動もゼロになるので、解釈は難しい。それは、車輪を剛体と考えているからである。そこで、右の図のように、弾性体として扱って地面との接点を複数にすべきである。そうすると、前方では車輪(スポーク付き)の収縮が起こって弾性エネルギーが蓄えられ、後方ではその反発による膨張によってエネルギーが放出されることになる。前方を制動過程、後方を駆動過程と呼ぶにふさわしい。これは、必然的に粘性を持っていて、摩擦の過程によって熱エネルギーとしてのエネルギーの損失がある。つまり、粘弾性体と考えるとうまく説明ができる。
 

 そこで、左図のように自転車に乗った人間はその損失を補うために、筋肉を使ってペダルを踏み、エネルギーを供給し続けるわけである。さらに、全体(自転車と人間を合わせた系)が加速されるためには、単に摩擦によるエネルギー損失を補う以上のエネルギーを車輪へ与えないといけないので大変である。その場合、車輪の前方部分はかなり収縮している。その大きな収縮が後方部分になった際に大きな駆動になるわけである。
 ここで、車輪のころがり摩擦も議論しておこう。上記の説明からころがり摩擦は動摩擦に関係するものではない。むしろ、一点一点では、地面とのピン止めという「静止まさつ」の状況に近い。これは歯車の動きとも密接に関係しており、奥の深い問題である。このあたり教育の場で「摩擦力が仕事をした」と表現する場合、それが「教え方」として妥当かどうかの議論とは別に、ともかく何が起こっているかを教育者の意図としてしっかり伝えてほしい、と夏目さんは呼びかけている。
■夏目さんからの謝辞;APEJポスターでの議論が反映されている。図1は宮本孝一の作である。図4はhttps://www.qbei.jp/info/bicycle-maintenance/358に夏目が追記した。


DAISOで見つけたスムーズロートとスクリューパック900 天野さんの発表
 2019年6月例会で慶應義塾高校の小河原さんが反比例曲線で作られたアメリカの貯金箱を紹介してくれた。科学博物館でよく見かける1/r重力ポテンシャルモデルのミニチュアである。天野さんはこの貯金箱と似た形のロートをDAISOで見かけ、試してみたところそれなりの動きをした。
 スムーズロート110円。鉄球などがない時は、手芸コーナーでマットビーズφ8~12㎜を購入するとよい(ミックス10個入り110円)。しめて220円でお手軽に実験できる。
 

 もう一つも、ダイソーネタ。真空実験で爆縮の危険性を考えて、減圧に耐えられる110円のプラスチック製品の紹介があった。スクリューパック900は、耐減圧力は高いが、本体とふたの密閉度が弱くパッキングが必要だ。レジ袋やポリ袋を本体の上に平らに置き、中央に穴をあけてしっかり蓋をするだけで密閉度は増した。ふたの部分の弁には、衝撃吸収ゲルを使ってみた。気密性や耐圧性はジャムビンの方が優れているという参加者からのアドバイスもあった。
 

はんだ付け標準環境(おすすめ工具一挙紹介) 櫻井さんの発表
 櫻井さんは、現在使用しているはんだ付け環境を披露してくれた。様々なタイプのはんだごてが販売されている昨今、はんだ付けを難しく感じたり、苦手意識を持つ人が多くいる主な要因は、安価だから、もともとあったものがそれだからと言う理由で、古いニクロムヒーター式はんだごてを使用しているせいではないか。やや高価だが、3000円〜4000円程度で販売されている、サーモスタットが搭載されたセラミックヒーター式温度調節はんだごてを使って欲しいと櫻井さんは主張している。最近の温調ごては、温度の回復が早く、一定の温度を維持してくれるため、初心者でも失敗が少なく、熟練者でも質の良いはんだづけが可能であるためだ。
 櫻井さんは、はんだごて以外に必要な道具についても一通り軽く触れ、自身のはんだづけ環境について紹介してくれた。
はんだづけの極意についての櫻井さんの詳細な説明資料は、こちら
 

単位の扱い(『理科教室』9月号特集の主張) 鈴木さんの発表
 『理科教室』2021年9月号特集は「理科における単位の扱い」で、鈴木さんが企画・担当した。以下が鈴木さんの「主張」の内容である。
 学習指導要領を見ると、小学校算数で単位の学習を位置づけ、長さや面積などを計算も含めて学習していく扱いになっていますが、実際の算数の計算では単位なしで学習していくのが実態。理科ではほとんど単位の扱いが位置づけられていない。それは中学・高校でも同様で、数学では全く単位は意識されず、理科でも新たに登場する「ニュートン」「ワット」「ジュール」などの扱いを指示するのみでそれ以上の記述はない。つまり学習指導要領では単位をきちんと学ぶ扱いがまったくない。それに対し、理科の授業の中で単位を意識的に位置づけ、単位付きの計算を原則としてそのルールを徹底していくことを呼びかける。
 この主張をもとに、例会では参加者が意見交換をした。
 まず、例会参加者がテストの採点基準で、途中式の単位なしを減点するかどうかをアンケート。結果は採点時に減点している人はいない。単位を書くように呼びかけはしても、減点するまでの強要はしていないということだ。以下、例会で出た意見のメモである。
◯単位は最初のうちは必ず書くこと、理解したら省略可という教え方をしている。混合はバツにすると言っている。
◯dLはその後ほとんど使わないのに小学校ではわざわさ学ぶ。 実生活と一致していない。
◯日本ではmLが主流だが、欧米ではcLもよく使われる。お国柄がありそうだ。
◯小学校の四則演算に単位付きで学習するのは、かなりハードルが高い。そこにどう単位を入れていくのか、外野の我々がどうこういうのはでしゃばり過ぎなのかもしれない。
◯グラフの軸の数値の書き方も悩ましい。教科書はたとえば速度なら、v〔m/s〕として数値だけにしている。正式には v/m/s として無次元化すべきである。※vは速度を表すイタリック。

河川敷ビオトープとジュンサイを残そう市民の会 堀さんの発表
 堀さんは、科学教育研究協議会福島Web全国大会「自然と社会」分科会のレポートを報告した。テーマ「河川敷ビオトープとジュンサイを残そう市民の会」で、主な内容は、①フジバカマの里ネットワークの活動 ②ジュンサイを残そう市民の会活動 ③中学1年生フィルドワークと中学3年生の出前授業とその感想。中学1年生では、ジュンサイ池までの往復で、台地と低地からなる地形を学び、池ではカモを中心として越冬する生き物観察をする。中学3年生では、市民の会の方から出前授業を受けまとめる。地域に出て、生徒たちは、何を学び成長したか。そして、2つの会の自然環境保全の様取り組みを伝えた。
 ジュンサイ池には、豊かな生物相が残されている。ジュンサイ池に生育する生き物が豊富である理由は、 ①縄文海進の時期もジュンサイ池とその周り(標高10m)の崖(台地は標高20m)は海の底にならなかったため、縄文時代から続くこの地域で生き残ってきた生物の歴史があることと、②地理的には、江戸川をはさんで東京方面の低地に緑が少なく、生き物は、必ず河川敷や、ジュンサイ池周辺斜面林などを通過することから。
 鈴木健夫さんから「崖は、河岸段丘ですか?」の質問があったが、台地は下総海面(6~5万年前)と 下総上位面(10万年前頃)で、崖は段丘崖・谷壁斜面。ジュンサイ池も里見公園も崖面は下総上位面に接する段丘崖。絶滅危惧種が紹介されている。かろうじて生存している河川敷や、ジュンサイ池周辺に、生き物が多様に生存していることともいえる。
 ジュンサイを残そう市民の会では、コロナ禍で行事を開催できないが、会員とつながりのメンバーでザリガニ釣り、トンボ調査、クモの観察会を行っている。参加する子供たちが体験を次の世代に伝えていってくれることを期待したい。
 

 河川敷では、2016年にワンド(河川敷のビオトープ)が造成され、県立国府台高校理科研究部員が2017年池の生物調査を行った。東邦大学学生サークルの里山の応援隊、生命圏環境科学科西廣淳准教授(保全生態学)、植物の専門家、元国府台高校教諭岩瀬徹さん、緑のフォーラム事務局県立高校佐野郷美教諭、フジバカマの里ネット会員により2017年にオギ・ノカラマツ再生実験が行われた。以下の写真の撮影者は、田中幸子さん。
 

 堀さんの同僚の坂本玲子教諭との雑談で、「すでに私たちの世代(教員も)が、自然環境と慣れ親しむこともなく育ってしまっている、 その子供の世代はさらに自然環境から離れて成長してきている。」と。 ジュンサイを残そう市民の会やフジバカマの里ネットが果たす役割は大きい。
 

空き缶つぶし用の簡単ツール 黒柳さんの発表
 空き缶の中に少量の水を入れ、火にかけて沸騰させたら、急いでひっくり返して水槽の水に逆さに入れると、缶内が水蒸気の凝縮で減圧し、空き缶が一瞬でつぶれる、という実験がある。この時空き缶を保持する簡易トングとして、割る前の割り箸2膳に30cmほどの針金をからげただけの簡単ツールの紹介があった。黒柳さんは中学生にこのツールで実験させているという。お手軽だが滑ることもなく、片手で安全に操作できる。
 

UNISTELLAR eVscope 越さんの紹介
 今年6月「UNISTELLAR eVscope」が発売された。これは、水平な場所に設置するだけで自律フィールド検出、自動導入が可能な天体望遠鏡デジタルカメラだ。接眼レンズは無しで、すべてスマホ、タブレットで操作、観察する。最大10台の端末と同時接続が可能。口径11.5cm反射式、光学倍率50倍(固定)、デジタル倍率最大400倍(最大150倍が推奨されている)。光蓄積により100倍の感度が得られ、ソフト的に光害による影響を軽減できる。月、惑星の観察には不向き、星団、星雲、銀河の観察に向いていて、普通の光学望遠鏡とは、使い分ける必要がある。
定価379,800 円、本体(電動経緯台と一体)、専用三脚を含む。

詳しくはこちら→https://unistellaroptics.com/evscope-jp/

大阪市立科学館の「超高感度望遠鏡eVscope活用ハンドブック」が参考になる。

二次会Zoomによるオンライン二次会
 例会本体には25名、二次会には12名の参加があった。ドリンク持参で気軽に話し合う集いで、例会には出なくてもこちらには来るという人もいる。
 二次会ではまず、YPCメーリングリストでのリクエストに応えて、3Dプリンターで「教訓茶碗」を作った上橋さんの作品が話題になった。これは非常によい教材なので、ぜひ例会本体で発表してもらうことを期待して、ここには詳しく載せないことにする。どうしても先に知りたい人は、上橋さんのWebページ「智恵の楽しい実験」の「3Dプリンターで作った教訓茶碗」をご覧いただきたい。
 さらに、単位の話や夏休み中の学会報告の話題から、力の測定データがセンサーの種類に依存するかや、作用反作用の同時性に話題が膨らんだ。さらに力センサーが温度変化の影響を受けやすいという話
https://twitter.com/oro_grande/status/1422938316190543876
も共有され、最後には地球温暖化の話まで、話題が広がった。


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