例会速報 2026/07/12 千葉県立千葉高等学校・Zoomハイブリッド


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YPC例会のもようを写真構成で速報します。写真で紹介できない発表内容もありますので、詳しくは来月発行のYPCニュースで。例会ごとに更新します。過去の例会のアルバムここ

授業研究:3年の波動 阿部さんの発表
 高校の物理の中でも波動の分野は目で見たり聞いたりすることができるものが多く、五感を使って授業をすることができ、生徒たちにも好評だ。阿部さんは、なるべくハンズオンでできるように、毎回ほぼ人数分の観察用の道具を準備して授業に臨んでいる。例会では、光学関連の実験ネタがたくさん紹介された。
 左図は同じ深さの水と食用油に沈めた10円玉。屈折率の違いで、浮き上がり方や見える大きさが異なる。右図は食用油に沈めたビーカー。ガラスと食用油の屈折率が近いので、ガラスの部分が見えなくなり、白い線や文字だけが見えている。
 

  おなじみの全反射の実験。チャック付ポリ袋に入れたサザエさんの顔に、カツオの顔がポリ袋の表に重ねて描いてある(左図)。水に沈めて上からのぞくと、全反射でサザエさんの絵が見えなくなり、カツオが現れる(右図)。
 

  コンパクト型の鏡(左図)。開くと内側に平面鏡と凹面鏡がセットでとりつけられており、二種類の鏡のはたらきを比較するのにちょうどよい。右図は家庭用のカーブミラー。凸面鏡の応用例として示す。
 

  カラフルに色分けした紙を黒板に貼り(左図)、ナトリウム灯で照らす。オレンジ色の単色光なので、色味が消えて白黒模様のように見える(右図)。
 

 回折格子もインパクトのある演示のためにできるだけ大きなものを(左図)。 傘袋に、水に床用ワックスを少量分散させた乳濁液を入れ、ミー散乱を見せると共に、生徒には一人ひとりに偏光板を持たせ、散乱光が偏光していることを観察させる。あまり濃すぎると多重散乱の結果、偏光が見られなくなる。
 

  チオ硫酸ナトリウムを入れた水槽の水に、塩酸を加えると硫黄の沈殿が3分ぐらいかけてゆっくりと生じ、次第に縣濁液となる。OHPの光を通すと向こうのスクリーンに映った円形像(太陽のモデル)が次第に赤っぽい色に変わる。「夕焼けの実験」である。このとき水槽内の光路を横から偏光板を通して観察すると偏光していることもわかる。
 

 レインボーカラーのビニール傘も教材になる。反射光で見る場合、透過光で見る場合の違いも観察しやすい(左図)。くさび形薄膜・平行薄膜の干渉実験も、スライドグラス2枚で生徒全員にそれぞれ観察させる(右図)。
 物理は論理的なものだと思われがちだが、意外と感情に突き動かされている部分があるのではないのかと阿部さんは感じている。「YPCのメンバーも論理的な話をしているように見えて、その根底にあるのは「楽しい」や「面白い」といった感情のように見える」と阿部さんは語る。だからこそ物理の論理的な部分を知るためには、まず自分の感情を知ることが大事、自分で見たものや経験して感じたこと、思ったことをあるがままに捉え、五感で物理を学んで欲しいと阿部さんは思っている。
 

針金録音機 岡安さんの発表
 岡安さんは、テープレコーダーのように音声を磁気記録/再生する実験を実演してくれた。ただし、録音する媒体は磁気テープではなくピアノ線なので「針金録音機」と称する。左図はアンプと再生用のスピーカー。スピーカーは録音時のマイクも兼ねている。紙コップをホーンにしている。右図はアンプの内部。録音用と再生用のアンプを兼ねていて、入力用ジャックと、出力用ジャックがある。録音時は入力用にマイク(兼スピーカー)を出力用に磁気ヘッドを接続し、再生時は、入力用に磁気ヘッドを出力用にスピーカーを接続して使う。
 

 左図は記録/再生用の磁気ヘッド。テープレコーダー用の本物である。洗濯ばさみにとりつけ、洗濯ばさみの先に切り込みを入れて、ピアノ線が正確にヘッド位置に当たるようにしている。右図は手前の実験机から隣の実験机まで、白いポール間にピアノ線を張り渡している様子。たるみのないようにピンと張る。
 

 ピアノ線はあらかじめフェライト磁石などで全体をこすって直流消磁しておく。そののち、磁気ヘッドをピアノ線にあてがいながら、等速で移動しつつマイクに向かって声を出し、音声を録音する。再生時は同様に磁気ヘッドをピアノ線にあてがいながら録音時と同じ速さで移動し、スピーカーから再生音を出す。再生スピードを上げれば音のピッチが上がり、逆向きに移動すれば逆再生ができる。
 岡安さんは、この実験器具セットを工作する工作教室を開いて、この実験を広めてくれる後継の教員を育てたいと考えている。材料は提供する用意があるとのこと。神奈川県高等学校理科部会でも岡安さんを講師に招いて工作教室を実施する予定だという。
 

ジェルを板の間に挟んでから開いて作る粘性突起模様 夏目さんの発表
 夏目さんは、会場に実験道具を持ち込んで、「粘性突起」という現象の説明をしてくれた。以下、夏目さん自身による解説を掲載する。
 化粧品に用いられるジェルのようなソフトマターは、近年ますます身近な存在になっている。静かにそっと置けば形を保つが、指などでこすると容易に(液体のように)変形して広がるという性質も持っている。本例会では、このようなジェルを用いて、流体力学で知られる「粘性突起(ViscousFingering)」と呼ばれる現象を演示した。
 左図のように、男性用シェービングジェルを2枚の透明アクリル板で挟んだ実験である。観察しやすいように、ジェルには(食用)赤色色素を混ぜてある。右図は例会で実験を行っている様子である。
 

 上図の段階から、2枚の板を水平に保ちながらゆっくり引き離すと、左図のような美しい枝分かれ模様が現れる。この模様は「粘性突起」と呼ばれる。右図は実験で用いる器具である。上下とも透明アクリル板を用いてもよいが、下面を金属板にすると、アクリル板の場合とは少し異なる模様が現れる。
 

 左図は上下ともA4サイズのアクリル板を使った例であり、上面側と下面側の模様を比較している。両者は鏡像的にほぼ同じ形を示すが、最後に板が離れる付近では、わずかな違いが現れている。
 右図はA5サイズの板を引き離している途中の様子である。この写真から、枝分かれ模様はジェル自身が枝を伸ばしているのではなく、周辺部から侵入した空気がジェルの内部へ進入していることがわかる。この点は、従来よく知られているヘレ・ショー(Hele–Shaw)実験とは本質的に異なる。ヘレ・ショー実験では、2枚の板の中央に開けた孔から注射器で粘性流体を圧力をかけて注入して枝分かれを作っていた。この従来の実験は、松下貢らによって研究され同氏の著書「フラクタルの物理(Ⅰ)基礎編」(裳華房)7章 および「フラクタルの物理(Ⅱ)応用編」(裳華房)9章に詳しく議論されている。
 

 つまり、本実験では、板を引き離すことによって周辺部から空気を侵入させ、その結果として枝分かれ模様を形成させている。そこで、左図に今回の実験の仕組みを模式的に示した。板を引き離すと、ジェルは板間隔が広がった空間を埋めようとして流動する。しかし、シェービングジェルは粘性が大きいため、すぐには流れることができない。その結果、ジェル内部は周囲の大気圧よりも一時的に低い圧力となる。この状態は「負圧」と考えることができ、そのため周辺部から空気が急速に流入する。
 右図に説明したように、空気は最初に円周状のジェルの境界から侵入し、その後、丸みを帯びたジェルの周囲を回り込むように進んでいく。界面には必ず微小な凹凸が存在するため、空気はわずかに凹んだ部分へ集中して流れ込む。その結果、そのくぼみはさらに深くなり、逆に凸部は細長い半島状のジェルとして残される。さらに、その半島の両側にも新たな小さな凹凸が存在するため、同じ現象が繰り返され、枝分かれが次々に進行していく。
 

 この過程を力学的に考えたのが左図である。界面の各瞬間では、ジェル側の圧力と空気側の圧力との差は、界面張力を曲率半径で割った値(ラプラス圧)と局所的につり合っている。すなわち、
   (両者の圧力差)=(界面張力)/(曲率半径)
で表されるラプラスのつり合いが成立している(厳密には板面に平行な方向と垂直な方向の二つの曲率半径が関係するが、ここでは現象の本質のみを示している)。曲率半径の大きい太い部分ではラプラス圧は小さく、界面は比較的安定である。一方、細くくびれた部分では曲率半径が小さくなるためラプラス圧は大きくなる。空気はその部分へさらに回り込みやすくなり、くびれはいっそう深くなる。
 このように、わずかな界面の乱れが自らを増幅していく。その議論をまとめたものが右図である。空気の流入によって枝分かれを促進する正帰還(positive feedback)と、界面張力が細かすぎる凹凸を滑らかにして成長を抑える負帰還(negative feedback)との競争によって、最終的な樹枝状模様が形成されると考えられる。ただし、未だわかっていない点も多い。
 この実験は、身近なシェービングジェルとアクリル板だけで、流体力学や界面科学における最先端のパターン形成現象を観察できる点に大きな魅力がある。現在、数値計算との比較も進めており、枝分かれ模様が形成される条件や、板間隔のゆらぎ、表面張力、負圧との関係についてさらに研究を進めていきたい。
 

光学小ネタ5選 阿部さんの発表
 阿部さんは、授業でも使える光学関連の小ネタをまとめて紹介してくれた。
(1)最近話題の白黒パッケージのポテト(左図)。普通のポテトでもナトリウム光源では白黒になるのでは?という光学オチ。
(2)トレーシングペーパーに赤と緑のマッキーで描いた絵(右図)を、マルチバイブレーター回路を使って赤色LEDと緑色LEDを交互に照らす。(下段に続く)
 

 マッキーと色とLEDの色が同じものは見えにくくなるので、電子パラパラ2コマ漫画を作ることができる。2026年1月例会でも阿部さんから紹介があったが、最近は自作基板を安く作ることができる。今年は部活に電子回路が得意な生徒がおり、科学の祭典千葉大会のために生徒が設計し発注してくれたとのこと。来場者には大変好評だったそうだ。
 

(3)凸レンズは平行光線を集め、凹レンズは平行光線を拡散するが、これらは屈折による現象である。では、ガラス中を進む光線に凸レンズ(凹レンズ)型の穴があったら、「逆レンズ」のように振る舞うのか?という実験(左図)。レンズメーカーの公式を考えれば当然の結果だが、凸レンズと凹レンズの性質は逆になる。
(4)2024年5月例会では水中の物体を水上の観測者が見たとき、どの位置に像ができるのかということについて議論した。ここでは片目で見るのか、両目で見るのかという疑問だったが、そもそも目と物体を通り、水面に垂直な面で集まる光と、その面と垂直に交わる方向で集まる光の位置が違うはずだ。阿部さんは、片目で見た場合に相当する実験器具を作ってそれを検証した(右図)。(下段に続く)
 

 つまり、水面に垂直な面内と、水面に平行な面内で、光束が集まる位置が違い、1点にならないので、片目で見ても、問題集などにある、コップの底にある物体をほぼ真上からみる場合を除いて、どこの位置に像ができるのかユニークには決まらないというわけだ。
 

(5)授業でシャボン玉を扱うときは、薄膜の干渉の例として用いる事が多いが、シャボン玉は球面鏡としての性質も持つ。シャボン玉に映る像は、上下逆さまに映るものと、周りの景色が魚眼レンズのように映るものがある。前者はシャボン玉の奥にある内側の面での反射、後者は手前側の表面での反射だ(左図)。普段は両方同時に見えるわけだが、煙入りシャボン玉(右図)を作るとシャボン玉の奥の凹面での反射が見えなくなるので、魚眼レンズのように見えるシャボン玉を簡単に作ることができる。
 

シャトルケースを使った共鳴の追試 伊藤さんの発表
 伊藤さんは、湯口さんが報告したシャトルケースとphyphoxによる音の実験の追試を授業で行った。授業では閉管の基本振動に焦点を絞ってそ測定を行った。phyphoxの「オーディオスペクトル」のFFTピーク強度のグラフから測定することもできるが(右図)、より容易には「履歴」のタブからピーク周波数のみを読み取ることもできる。
 

 ピーク周波数の「履歴」を使えば、筒をポンポンと複数回叩いてデータを蓄積することができ(左図)、測定をちょうど良いタイミングで止めなくてもよいため、タイミングを習熟する必要がない。伊藤さんは授業ではこのピーク周波数の方法があることも生徒に指示した。「履歴」画面を二本指でピンチアウトして拡大すると、基本周波数のあたりにドットの集中が見られる(右図)。授業ではほとんどの生徒が基本振動の固有振動数を読み取ることができていたという。
 

断熱膨張 小澤さんの発表
 おなじみの断熱膨張の実験。小沢さんは、多くの生徒が直接体験できるように20セット用意した。容器はホームセンターで購入した450mLのガラス保存瓶(JANコード4982014005614)。ふたに、ビニルチューブの外径よりも若干小さめの孔をドリルであけ、先を斜めに切ったビニルチューブをラジオペンチで無理やり引っぱって通す。このように「引きばめ」すれば、コーキング材や接着剤を使う必要はない。たくさん作っても、たいして手間はかからない(左図)。
 

 授業では、瓶の中が濡れている状態で生徒に渡す。マッチを擦ってそのまま瓶の中に落とせば、凝結核となる煙を瓶の中につくることができる(上段右図)。すぐにふたをして注射器を急激に引けば、瓶の中は雲のように白くなる(右図)。
 

開口端反射を"聞く" 鈴木駿久さんの発表
 鈴木さんは、気柱にの開口端反射を「聞く」実験を行った。きっかけは、気柱で開口端反射について教えておきながら自分で聞いたことがないと思ったからだ。オシロスコープで測定する方法もあるが、シンプルに「耳で聞けば良いのでは?」と思った。
 

 そこで、2mの塩ビパイプを7本用意して繋げ、2mから14mまでだんだん長くしながら、音を鳴らしてみた鈴木さん撮影のYoutube動画のリンクはここ
 

 14mのときに音が聞こえる時間から距離を計算すると概ねパイプの往復に近い距離となった(左図)。生徒は開口端で音が反射することをにわかに受け入れられないものだが、この実験は説得力がある。
 

電車でGo 越さんの発表
 山本さん、宮崎さんの発表に刺激された越さんは、総武線各駅停車市川駅-本八幡駅の運転席の動画を撮影してみた(左図)。2駅間はほぼ直線で高低差もほとんどない。動画から速さを読み取りv-tグラフを描いた(右図)。惰性走行中も25.5から24.4m/sと多少減速している。
 

 また、0〜45s、82〜120sは等加速度、45〜82sは等速と単純化したのが次のグラフである(左図)。最高速度は約25m/s、加速時の加速度は、約0.55m/s2、減速時は、約-0.71m/s2単純化したv-tグラフの面積から求めた2駅間の距離は、約1960mと実際の距離とほぼ一致した。
 越さん撮影の、各駅停車本八幡駅~市川駅間の車窓からのYoutube動画はここ。並走する快速電車との相対速度、各駅と快速の加速度の違いもわかる面白い例だ。
 また、初代「電車でGO!」の無料アプリ(右図)はここ。等加速度運動の学習を元に運転計画を立ててみてはどうだろう。
 

二次会 千葉駅前 「まな板の上のサカナ」にて 
 9名が参加してカンパーイ!例会本体には対面で14名、遠隔で10名、計24名の参加があった。千葉高での開催は今年2回目、千葉県では3回目の例会開催になる。なぜ「横浜物理サークル」が千葉県まで「出開帳」するのかというと、千葉県から毎回のように参加してくれる熱心な参加者がいるからである。東京都はもとより、埼玉県や、過去には山梨県での開催実績もある。コロナ以来Zoomによるハイブリッド開催を続けているので、実はYPCの例会参加者は全国に分布している。


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