例会速報 2000/07/12 慶応義塾湘南藤沢中高等学校


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消えるカラー水中シャボン玉 山本の紹介と追試実験

 第4回(1999年度)サイエンス展示・実験ショーアイディアコンテスト実験ショー部門で、財団法人日本科学技術振興財団会長賞を受賞した、広島文教女子大学教授、原田正治氏の実験のVTRを視聴し、みんなで再現実験を行った。

 中性洗剤で薄めの石鹸液を作り、ストローで3cmほど吸い上げた液を、5mmほどの高さから同じ石鹸液中に落とすと、左の写真のような「水中シャボン玉」ができる。うまくいけばこの状態は数十秒間持続する。

 水中シャボン玉は単なる水中の泡ではない。中心は液滴で、そのまわりに空気の薄膜ができている。つまり、空気中に浮遊した普通のシャボン玉と、気体・液体を逆転したような構造になっているのだ。こういうものが安定して存在すること自体大変面白い。

 さて、原田氏のアイデアはこうだ。ストローで落とす方の液体をあらかじめフェノールフタレインなどの指示薬で色づけしておく。もちろん若干アルカリを加えて発色させておく。この液を用いて水中シャボン玉を作ると、色つきビーズのようにきれいな「カラー水中シャボン玉」となる。さらに、ビーカー側の石鹸液をあらかじめ若干酸性にしておくと、シャボン玉が壊れた後の色水はゆっくりと拡散しながら消えていく。なかなか美しい実験だ。


 実験に興じるYPCの面々。水中シャボン玉を作るには少々コツがいるが、手軽で楽しい実験なので、会得しておくべき技術だろう。

光通信 市江さんの発表

 市江さんがこの夏の科学の祭典全国大会に出展を予定している実験の事前公開だ。レーザーポインターを光源として、音声で変調をかけ、太陽電池を受信器として光通信を行うという実験である。同じ装置が2セット用意されていて、同時に双方向通信ができる。参観者がレーザービームをのぞき込まないようにアクリル円筒で光路を保護したり、蛍光灯からの光ノイズを太陽電池二枚を逆接することでキャンセルしたり、さまざまな工夫がほどこされている。


 こちらは発光ダイオードと太陽電池で行う実験。ラジカセの出力を発光ダイオードの電流に加えて変調をかける。太陽電池は直接マイク端子に接続し、ピックアップした信号を増幅している。

CD−PHYSICS Ver.2 右近さんの紹介

 JohnWiley&Sons 社のCD物理教材の紹介。D.Halliday、R.Resnick、J.Walkerの共著で、JearlWalker氏自身が解説者として登場する。デジタルテキストを読みすすめていくスタイルだが、右のような挿し絵がそれぞれ動くようになっていて、理解しやすい。残念ながら邦訳はまだない。


反射率・透過率のある光の干渉 右近さんの発表

 おなじみの薄膜の干渉。教科書では一次反射光しか扱わないが、二次、三次と反射光を加えていったらどうなるのだろうという話。境界面での反射率・透過率をきちんと考慮すると、合成された光線の強度は無限等比級数となり、結局強め合う条件、弱め合う条件は変わらないという結論になる。

 19世紀にストークスが証明しているのだそうだ。

NuclearScienceCourseとCosmicRayProject 関先生の講演

 来日しておられるカリフォルニア州立大学の関教授が例会に出席してくださった。米国で高等学校の教員を対象に行われているNuclearScienceCourseの講義内容と、多数の高等学校にエアシャワーを観測するためのシンチレータを設置して、広域同時観測により高エネルギー宇宙線をとらえるというCosmicRayProjectについてご紹介いただいた。

 後者は最先端の観測研究に高等学校が直接参加するというプロジェクトで、柔軟な発想を予算化し実現できる米国の底力をうらやましく思った。

ブラックライト? 小沢さんの発表

 小沢さんが仕入れてきたのは電球型のブラックライト。たしかにそういう製品はあるが、これはずいぶん安い。普通の電球の数倍程度のお値段である。果たして本当に紫外線が出ているのかな?

 紫外線ビーズ、蛍光ペン、クレジットカード、名刺などに光を当ててみるが、強い蛍光は見られない。電球の中ではフィラメントが光っているだけである。この程度のフィラメントで紫外線が出るとは信じられない。

 蛍光管式の本物のブラックライトで比較してみる。こちらはご覧のとおりよく光る。やはりこの製品はただの「紫色電球」でしかないようだ。よく見たら、箱に書かれたスペリングもおかしいね。


100円ショップで大実験! 小沢さんの紹介

 大山光晴さん監修の標記の本が学研から出版された。¥850とお値段も手頃。100円ショップの100円グッズで徹底的に科学しちゃおうという楽しい本だ。この夏、ぜひGETしたいおすすめの一冊である。

FD・CDドライブの分解 喜多さんの発表

 パソコンのFDドライブを分解してみた。駆動用のブラシレスモーターが現れる。回転子のフェライト磁石の磁化のようすをマグナビュワーで観察すると、16極に着磁していることがわかる。駆動コイルの方は12極だ。どんな位置で止まっていても確実に所定の方向に回転し始めるように工夫されているようだ。


 こちらはCD−ROMドライブの駆動部分。やはりフェライト磁石が回転子に使われている。6極着磁だった。


写ルンですのチャージインジケータ 喜多さんの発表

 おなじみ使い切りカメラの分解。今回注目するのはフラッシュ回路ではなく、フラッシュ用電源の充電完了を告げるチャージインジケータである。左の写真、本体の上に突き出ている透明なキューブがそれ。ネオンランプの点滅が撮影者側からも被写体側からもよく見える。取り出したパーツは全反射を利用して潜望鏡のように光を導く構造になっていた。こんな小さな部品にも一つ一つ科学的な設計がなされているのだ。


溶ける金箔 平松さんの発表

 平松さんが取り出したのは本物の金箔。すかしてみると蛍光灯が青っぽく見える。長波長側に吸収があるためだ。


 うがい用のイソジン液にこの金箔をつける。ちょっと温めながら揺すってやると、金箔はたちまち溶けてしまった。化学の世界では有名な実験らしいが、見たのは初めて。


うがいで色を消す? 平松さんの発表

 これもイソジンうがい薬を使った実験。ビタミンC(アスコルビン酸)との酸化還元反応でヨウ素の色が消えるというポピュラーな実験だが、ちょっと工夫すると化学手品になる。

 あらかじめビタミンCを口に含んで仕込みをしておく。うがい薬を口に含み、うがいをしてビーカーに吐き出すと、あら不思議!色が消えている。


指紋の検出 平松さんの発表

 これもヨウ素の実験。ヨウ素の結晶をフラスコに少量とり、ホットプレートで加熱する。紫色のヨウ素の蒸気が出てきたら、濾紙に指紋をつけて入れてみる。指紋が茶色く浮かび上がってくる。ヨウ素は脂溶性が高く、指紋の油脂にとらえられるためだ。

不思議な球体 鈴木さんの発表

 先月の例会で神谷さんが紹介したホーベルマン・スフィアに刺激されて、鈴木さんはこんな球体を自作した。材料はビニールのファイル表紙とプラスチックのボタン式ペーパークリップ。5角形が12枚、ブーメラン型のパーツ20枚からなる。ゆっくりと広げると二倍以上の半径に膨れ上がる。夏休みの工作にいかが?


二次会 湘南台駅前「八田」にて

 17名が参加。このごろ教育界に対する締め付けがきつくて、いやなことばかりだけど、YPC例会に来るとちょっと気分が晴れる。もうすぐ梅雨明け。

 それではカンパーイ!!


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