例会速報 2000/10/25 県立城郷高等学校
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今回の報告のうち、はじめの3テーマは鈴木健夫さんによるコメント、写真もはじめの2テーマは鈴木さん撮影です。
卵落下大実験 右近さんの発表(ビデオ)
3年の物理選択授業で、生徒に「3階から落とした卵を割らないように工夫せよ」と課題を出し、実際にそれを実験させるというもの。事前に運動量と力積を説明し、その後、工作で約1時間、実際に落とす実験で1時間使っているという。新聞紙でくるんで大きな球にしたり、画用紙で衝撃を吸収する工夫をしたり、パラシュートにしたり。ビデオで実際に落とすところまで見せていただいたが、生徒も盛り上がり、さまざまな工夫が考えられている様子が見られた。
バードコール 鈴木健夫さんの発表
沖縄に修学旅行に行った同僚から、「ホールアース」という体験学習コースで入手した「バードコール」というものをいただいた。木にネジが刺さっていて、回すと「ピーピー」と本物の鳥のような声が出る。簡単にできそうなので試作してみた。木材は、カシの木がよいようだ。ネジはアイボルトという、持つところのついたものがよい。ネジ径にあわせ、ドリルで穴をあけてタップを立てればよい。堅い木のネジ山とネジの金属との摩擦で音を出すだけのようだ。オリジナルは3種類の音が出るというが、自作したものは2種類くらいの音しか出ない。張力をかけて回す場合は、高い音が出る(WAVファイル75KB:bird_1.wav)。ゆるく回るところで力を入れずに回すと、さえずるような音が出る(WAVファイル62KB:bird_2.wav)。写真は、右がオリジナルで左が自作品。
パラボラ面で音・赤外線・電波を集める 右近さんの発表
1個1万円のパラボラを購入し、音波や電磁波の反射実験に凝っている右近さん。実験室の前と後ろにセットし、時計の音を聞いたりアルコールランプの熱放射を集めたり・・・あらゆる波動が同じ反射法則に従うことを示せる。
上は既製品のパラボラを購入する前に使用していた、中華鍋にアルミテープを貼った代用品。「コヒーラー」を電波検知器にして、チャッカマンの圧電素子の電波ノイズを検知する実験。間に板を置いても電波は通るが、アルミを貼った板だと通らない。アルミの板を鏡の代わりにして、反射も実験できる。電波の授業で有効だろう。
これが購入した放物面鏡。アルコールランプの炎を焦点に置くと、教室の反対側に対面して置かれたパラボラ面の焦点で、温度が上がるのがサーミスタ温度計で確認できる。アルコールランプでは赤外放射が弱いので、鉄球やニクロム線がよいのではないかという話になった。
ゾウリムシは電気好き? 河野さんの発表
ゾウリムシの走性を利用して、他の微生物と分離する実験。まず、培養容器を首の細いものにしておくと、ゾウリムシは上に上がってくるので捕集しやすい。河野さんは、ふたがなくなったメスフラスコを使っている(写真左)。
次にコの字型にしたガラス菅に培養液を入れ、70Vあまりの電圧を加えると、ゾウリムシは負の電極のまわりに集まってくる。ミドリムシなどは逆に動くので分離できる。
デジカメの活用・力学編 河野さんの発表
便利で手軽なデジカメがブームだ。従来の銀塩カメラを追い抜く勢いだが、一部の機種ではこんな使い方もできる。
普及品のデジカメでも数秒〜十数秒の長時間露光が可能なものがある。暗室でストロボスコープを発光させながら撮影するとご覧のように見事なマルチストロボ写真が得られる。その場で結果が見られるのがうれしい。
クロコダイル実験室 アスキーさんからの紹介
アスキーからこのほど発売になったコンピュータシミュレーションソフト「クロコダイル実験室」。CrocodilePhysicsの日本語版である。YPCでは以前にβ版をご紹介したことがある。
用意されているさまざまな部品を画面上にドラッグ&ドロップで配置するだけで、回路の作成や運動、光学現象をシミュレートできる。もちろんパラメータは自由に変更可能だ。種々の物理量を選んでその変化をグラフ表示することもできる。
電気・電子、光学、運動と新教育課程の高校物理に準拠したカテゴライズになっているのもうれしい。お値段は¥19800。Windows95/98/2000/NT4.0に対応。
回る浮沈子 市江さんの発表
前回、前々回の例会でもご紹介している、ドイツのスピンする浮沈子をなんとか自作できないかと、鎌倉学園の科学部の生徒たちが熱心に取り組んでいる。太めのガラス菅を引いて、先端を微妙にねじり、切断する。まだ試作段階だが、どうにか回転するものができた。
究極の簡易無接触電流計 山本の発表
これ以上簡単な原理と構造の電流計はないだろうと思われる究極の簡易無接触電流計を開発した。
構造は一目瞭然。エナメル線を折り曲げて作った指針兼回転軸に小型のネオジム磁石を瞬間接着剤ではりつけただけのもの。シャーシ兼目盛板にはオーディオカセットのケースを使っている。
直線電流が作る磁界を直接測定するわけである。写真の状態で導線には約1Aの電流が流れている。無接触電流計なので、回路の接続変更をすることなく異なる場所の電流が測定できる。
センサーのネオジム磁石部分の拡大。この電流計には欠点が一つだけある。それは、あまりに感度がよすぎて地磁気に感じてしまうことだ。向きを変えると針が大きく振れる。零点調整は逆にこの地磁気を利用して行う。調整後は電流計の向きを変えないようにし、回路の方を動かして使うのがポイントである。
ロシアのラトルバック 奥野さんの発表
左回りに回転すると普通に回るのに、右回りに回転するといやいやをしてやがて勝手に逆回りに回り始めるという不思議な回転体、ラトルバック。そのロシア版の木製品だ。
中村理科から発売されているプラスチック製の米国版は形状が非対称だが、これは下の写真の通り対象で回転楕円体の一部を切り落としたような形だ。上に乗っているカメが質量分布を非対称にして同じ効果をもたらしている。カメの向きを変えられるので、いろいろ実験ができる。
同じタイプのものが仮説社で販売されているらしい。
ドライアイスの相変化(危険!) 平松さんの発表
この実験は大変危険なので、一般の方は絶対にまねをしないでいただきたい。熟練し物性を知り尽くした平松さんだからできる実験である。ドライアイスを炭酸用PETボトルに詰め、密栓すると内部の圧力が高まり、5気圧ほどになるとドライアイスが液化するのが観察できる(写真左)。常圧のもとでは二酸化炭素は液相を持たないので液体二酸化炭素は存在しない。
液体になったのを確認したらすぐさまキャップをゆるめ圧を抜く。タイミングを誤ると爆発してただごとではすまない事故になる。圧力が下がると再び固体の二酸化炭素、つまりドライアイスに戻る(写真右)。
大学で講義をした話 小沢さんの発表
小沢さんは横浜国大で理科を専門としない小学校教員養成系の学生に非常勤講師として物理を教えている。その授業計画や実験道具の紹介があった。
下は電気単元で使った手作りの手回し発電機。タミヤのハイパワーギヤボックスをそのまま使用している。もともと理科が不得意だった学生が多いが、シンプルな実験で、なおかつ予想に反する結果が出る実験が好評だという。
実験には100円ショップ品がふんだんに活用されている。材料入手が容易であることも小学校などでは重要な条件だ。左は「電気パン」の実験道具、右は備長炭、もちろん備長炭電池の実験に使う。いずれも100円ショップで購入。
はじめから結論を教えないで考えさせるのも小沢さんの方針。写真は反射神経測定器の偽物。目盛りが等間隔だから正しい結果を示さないが、そのことには触れず、授業開きで使用する。遊ぶうちにおかしいところに気づかせ、落下運動を調べる動機づけとする。
魚眼万華鏡 金子さんの発表
前回時間切れで持ち越しとなった実験。
ポリカーボネートの鏡板で正三角形の万華鏡を組み、アクリル球をはめこんだ紙筒に入れる。これを反対側から覗くだけという簡単な仕掛けだが、そこには夢のような世界が広がっている。アクリル球を通して外の世界が180度近い視野で倒立して映り込み、それが鏡で次々に反射して幻想的な空間を作り出す。回転させなくても、左右に振るだけでめまぐるしく変化するパターンを楽しむことができる。
アクリル球は、直径30mm、東急ハンズで約550円(同じ径の透明ビー玉は¥50と安いが、透明度と球面精度が落ちる)。ポリカーボネート鏡板は、45×30cm、0.3mm厚で¥1000程度。上野の科博のミュージアムショップに同様のものが¥500のキットで出ているという。
前回の二次会の中華料理店で撮影した画像。
右はテーブルクロス、左下は海老のうま煮の近接撮影、右下はシャンデリアの下で談笑する人を遠景で撮ったもの。身近なものが思いもかけない造形となる。
二次会 新横浜駅前北海道にて
16名が参加。お店の都合で二部屋に分けられてしまった。畳敷き、窓、襖絵つきで明るい部屋の上流階級(左)と、板の間、窓なし、土壁の暗い下層階級(右)に分かれる。YPCは身分制度が厳しいのだ(^^;)。やんごとなき方々は生ビールを召し上がるが、下々にはビンビールと焼酎しか許されていない。これでも会計はワリカンなのだ(^^)。
飲食店でよく見かける静電誘導無線を使った呼び出し装置。内部のしくみはどうなっているのだろう。青いコードはアンテナ、黒い丸はブザーだ。四角い空色のロータリースイッチ2つの組み合わせで、パルスパターンを選択し、どの部屋でコールがあったかを判別しているらしい。お店の人には内緒だが、もちろん観察後は完全に復元しておいた。
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