例会速報 2000/11/15 慶応義塾高等学校


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静電気の実験 右近さんの発表

 水に浮かべたボトルキャップに帯電棒を近づけると引き寄せられる。これは当たり前?誘電分極で説明される現象だ。

 水に浮かべた一円玉に近づけると・・・あれれ、逃げて行くぞ。「川勝先生の物理授業(下巻)」(海鳴社)P25にも載っているというこの現象。静電誘導では説明がつかないパラドキシカルな現象だ。水に浮かべた塩ビ板も逃げる。川勝先生は「帯電棒に引かれて水面が盛り上がるから」で片づけているが、はたしてそれだけだろうか。


 水に浮かべたパラフィンで試してみる。引かれるものと遠ざかるものとがある。引かれるものを裏返すと遠ざかったりもする。不思議な現象である。詳細はまだ謎だ。表面張力の変化の可能性も検討してみようと言うことで宿題となった。

やっぱり教養の物理は必要!? 志賀さんの発表

 「遠い空の向こうに」(原題October Sky)という映画がYPCの内輪でちょっとしたブームになった。Homer H.Hickam,JrのROCKET BOYSという自伝小説の映画化である。炭坑の街に育った一介の高校生ホーマーがスプートニク打ち上げに刺激され、手作りロケットの製作を手がけ、やがてNASAのロケット技術者として大成する、という感動の物語である。高校生にぜひ見せたい作品だ。

 さて、志賀さんはその1シーンの日本語字幕に注目した。ホーマーが学校長に自作ロケットの飛距離を計算で説明するシーンである。英語のセリフは写真の通りだが、日本語訳は「Sは高度、aは重力定数32・・・」となっている。32はフィート単位の重力加速度(MKS単位では9.8m/s2)で、一見問題なさそうだが、他の部分の字幕はすべてm単位に換算してあるのだ。どうしてここだけフィートのままなのだろう。きっと訳者が重力加速度という最も基本の物理を理解していなかったからなのだろうという結論になった。万人の素養として最低限の物理教育は必要だろう。

伊東家の食卓:タンス移動の裏技 喜多さんの発表

 人気番組「伊東家の食卓」のプロダクションからは、YPCメンバーのもとにもよく問い合わせの電話がかかってくる。「気軽に電話」作戦で安直に解説を構成しているようだ。

 それはさておき、10/24放送分で紹介された、軍手を使ったタンス移動の裏技、確かに便利そうだが「軍手が摩擦の力を分散した」という解説はどう見てもいただけない。しかも某大学工学部教授のコメントとして紹介しているのだ。この手のでたらめサイエンスもどきの蔓延には辟易する。

色の重ね合わせ 喜多さんの紹介

 ニュートンの7色盤という実験器具。パステルカラーに彩られた円盤を回転すると混色により白く見える、という演示を行うものらしい。

 喜多さんは扇風機の羽根に色紙を貼り、ストロボスコープで同期して観察する方法での混色を試みた。原色に近い蛍光色と、パステルカラーのどちらが白に近くなるだろう。

 結果はご覧の通り、パステルカラーの部分がより白に近く見える。デジカメでも肉眼と同様の混色が起こるのも面白い。ちなみに、デジカメのストロボは発光させていない。

お手軽!!見えないインク 高杉さんの発表

 一見無色透明で見えないが、ブラックライトを当てると蛍光で文字が浮かび上がる魔法のインク。ペンが市販されているが、これをお手軽に自作する方法をたかすぎさんが考案した。

 市販の洗濯用洗剤に配合されている増白剤をエタノールで抽出するというものだ。詳しくは来月発売の「子供の科学」2001年1月号(誠文堂新光社)のたかすぎさんの記事を参照されたい。

「円運動」する単振り子 小沢さんの発表

 Scientific American(Match'78)に載っているJ.Walkerの記事をもとにした実験。単振り子を普通に平面運動させておく。これを、片目にだけサングラスをあて、両眼を開いてこれを観察する。すると不思議にも円錐振り子の運動に見える(左)。しかもサングラスの目を交替すると逆回りに見える。暗い方が視覚が画像処理を行う時間がかかるため、サングラスをした目の方が一瞬過去の画像を見ているために起こる疑似立体効果だという。

 いつものようにさっそく応用実験(右)。鉛直に振動するばね振り子でも、首を90度傾けて見るとちゃんと鉛直面内の円運動をして見える。バックの支柱をすり抜けているように見えるのが面白い。


むちゅうごまジャイロボくん 佐藤さんの発表

 学研の佐藤さんが今年度の「一年のかがく」4号のとっておき付録を紹介してくれた。強力磁石を仕込んだ曲ゴマ、名付けて「ジャイロボくん」である。右はスターターだが、よくあるひねりバネ式ではない。引き金を引くようにして任意の速さまでスピンがつけられる。


左は迷路を自走するコマ。右は螺旋形の針金を登っていくようす。このほかにも楽しいオプションがいっぱい。本当によく考えられていて感心する。参加者からもほしいという声しきり。一年生の子供がいる家がうらやましい。


ヨーロッパ土産いろいろ 高杉さんの発表

 博物館研修でヨーロッパ各地を視察してきたたかすぎさんが、博物館のショップなどで買い集めたお土産を参加者に分けてくれた。下はロンドンのサイエンスミュージアムで入手したという紙飛行機。縦に横に旋回飛行してブーメランのように投げた手元に戻ってくる。


 英国ウェールズのテクニクエストで入手した「ロケット」。編み上げのパイプを右のように縮めて放すとよく飛ぶ。


 パリにあるラ・ビレット科学産業都市(Citedes Science et de I'Industie)で仕入れたミニ・ミラージュメーカー。底にあるオブジェが穴の上に浮き上がって見える。日本円にして¥700ぐらいだそうだ。お手頃な値段が魅力である。なぜか英国製らしい。

断熱伸長(ジュール効果) 神谷さんの発表

 ゴム風船を急に膨らませながらほおや手を触れると温かく感じる。逆に急激に空気を抜きながら触れると冷たく感じる。これは気体の断熱圧縮・膨張に相当する現象で、ゴムのジュール効果と呼ばれる。ゴム弾性は分子鎖のミクロブラウン運動によって生じるが、断熱的伸長により、エントロピーが減少すると温度が上がる。逆に張力を一定にして温度を上げれば長さが縮むのである。


立体月の見え方早見盤 宮崎さんの発表

 「楽しい授業」No.230(2000年9月)の難波二郎氏の記事と、名古屋市立科学館のミュージアムショップで入手した「立体月の見え方早見盤」を参考に製作した立体月齢早見盤。日付を合わせてクリップの照門から覗くとその日の月の位相が立体模型で見えるしくみだ。


二次会 日吉駅前浜銀通り龍竹酒家にて

 二次会には16名が参加。日吉でやるときは安くて旨い龍竹酒家の常連となった。開宴20:45、本日も遅くまでご苦労様。カンパーイ!!


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