例会速報 2002/06/15 県立湘南台高校


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ブラウン運動観察器 足立さんの装置の紹介(鈴木)
 YPCの通信会員である宮崎県の足立さんの実験装置を、鈴木健夫さんが紹介してくれた。レーザーポインターを光源とし、レンズで集光した場所にスライドグラスを置き、牛乳や、ポスターカラーをうすく溶いた水を一滴置いて、透過光を壁に投影する。すると、右のような「スペックル」と呼ばれる、不規則な模様が現れる。光がコロイド粒子で散乱し、干渉して作るパターンだ。コロイドのブラウン運動を反映して、スペックルも不規則にうごめく。高松工業高校の矢野淳滋先生が「物理教育No.46-4(1998)」で発表されたものと同じ原理だが、装置がコンパクトで手軽に演示できる。
 
 

ダイソーの磁力ゴマ 山本の発表  
 おなじみの百円ショップ「ダイソー」で販売されている、YPCでは周知の「ミニバランス」。イルカ、土星、ハート、宇宙飛行士の4モデルがあり、イルカが特に人気である。台座に仕込まれた二重コイルとトランジスタからなる回路が運動部分に取り付けられているフェライト磁石と反応して運動を増幅し、振り子運動や回転運動を行う。
 
 

 この回路は、磁力ゴマ「トップ・シークレット」で用いられているのと同じ回路である。ミニバランスで遊び飽きたら、改造して磁力ゴマを作ってみよう。

 磁力ゴマのフェライト磁石は片面左右二極着磁である。下側の面にNSが並んでいる。ミニバランスからはずしたフェライト磁石は、裏表がそれぞれNSとなる着磁だから、まず磁石を改造しなければならない。それにはネオジム磁石を使う。ネオジム磁石の強い磁界はフェライトの抗磁界をおおきく上回るので、ネオジム磁石でフェライトをこすると、簡単に磁極を反転したり、着磁したりできる。

 あとは、BB弾や金属球をフェライトの下に、皿ビスをフェライトの上に、瞬間接着剤ではりつけてコマのできあがり。時計皿を乗せて、こぼれ落ちないよう工夫すると、うまく回せばコマは24時間以上回り続けることもある。

立方体の三分割 工藤さんの発表  
 いつも興味深い折り紙を紹介してくれる工藤さん。今回は「立方体を三分割した立体を作る」のがテーマ。立方体はその正方形の一面を底面とし、これに含まれない1頂点を錐体の頂点とする合同な四角錐によって三分割される。これを図のように折り紙で折って、3つ組み合わせると、なるほど立方体ができるのだ。錐体の体積が角柱の体積の3分の1であることが実感として納得できる。
 
 

パスカルの三角形 工藤さんの発表  
 これも数学のおもしろ教材である。二項分布の係数を累積した「パスカルの三角形」を偶数・奇数で色分けすると、フラクタルな三角形の模様ができる。各部分が適当に拡大したときもとの図形とまったく同じ形になるという自己相似性を示すのだ。これを「シルピンスキー・ガスケット」というのだそうだ。3の剰余で塗り分けると相似比が変わってまた面白いとのこと。

 車田さん情報によると、セルラオートマトン(例:ライフゲーム)の「ルール90」というシュミレーションでも、「シルピンスキー・ガスケット」があらわれるという。

 工藤さんは、この図形を刺繍したブックカバーを使っている。裏返すと拡大図形が現れるという念の入れようだ。

 
 

ビースピ・使い方のコツ 山本の発表  
 ビースピは玩具メーカーのハドソンが開発した、小型の速度測定器である。1997年1月の発売と同時に、YPCは全国に先駈けて、その物理教材としての有効性を紹介してきた。ビースピはその後製造中止となったが、中村理科工業が全在庫を買い取って、理科実験教具として新たに販売を開始したので、安定供給が保証された。単価は¥2000。新課程の教科書にも採用され、海外向けの販売も始まっている。

 この小さな装置で、瞬間の速度やラップタイムが簡単に測定できるが、実験にあたっては、空気抵抗の問題、剛体回転の問題、ビースピの個体差の問題など、意外な注意点やノウハウがある。詳しくは次号YPCニュースを・・・。

交流の実効値 山本の発表  
 新課程の物理Iでは、冒頭が電気の単元となり、身近な電気器具等を扱いつつ、交流にも言及しなければならない。もちろん、従来の物理IIのような踏み込んだ扱いはできない。そんな中で√2を用いることなく、「交流の実効値」も説明しなければならなくなる。いったいどんな風に示せばいいだろう。
 下の実験では、100Wの白熱電球を、直流(右)と、交流(左)でそれぞれともし、電流と電圧を測定し、同時にオシロスコープで交流波形を観察している。二つの電球の明るさが等しくなるように調節すると、電流計・電圧計は直流・交流とも同じ値を示す。これで電力が同じになるように、交流の電圧や電流を測っていることがわかる。そのとき、オシロの交流波形を見ると、ピーク値は電圧計が示す値の約1.4倍になっている。瞬時値と実効値の違いを視覚的に示すのである。
 電球の明るさを等しくするには、右の写真のように透過型スクリーンをかぶせて、境を接するとよい。接している方が、明暗のコントラストがつき、精密に合わせることができる。
 
 

静力学の授業報告 小沢さんの発表  
 小沢さんが先日行ったばかりの中間テストの問題を皆で検討した。静力学をていねいに授業したつもりで、授業の中身もさほど悪くはないと小沢さんは思っていたのに、テストの結果はかんばしくなかったとのこと。原因はどこにあるのか?
 自分一人では解決できないし、解決しようとしても一人よがりになってしまうので、サークルに持って来たという。小沢さんの地道な取り組みのおかげで、YPCでもこうした授業研究が根付いてきたようだ。

 討論では、基礎的なことを問うたつもりでも、その設問の意図は生徒にはわかりづらいこと、基礎概念だけに生徒が何を勉強してよいのか迷うこと、などの指摘があった。
 

 こちらは小沢さんオリジナルの、モーメントの実験器具。ダイソーの百円ホワイトボードに穴をあけ釘を刺しただけのもので、釘を軸に回転する。左右につけたマグネットのおもりでつり合いをとった状態で、一方のマグネットを真下にずらしたらどうなるかを問う。力を作用線上で移動させても、モーメントは変わらないことを示すことができる。わずか数百円の材料費で演示でき、よい工夫だ。

 
 

ムックリ 平松さんの即売会
 アイヌの楽器「ムックリ」。ひもをはじいて竹の板を振動させ、口を共鳴器にして音を響かせる。平松さんはいくつか余分に仕入れてきたムックリを、希望者に分けてくれた。
 

月のひつじ 宮崎さんの発表  
 映画「月のひつじ」は、アポロ11号による人類初の月着陸のおり、アームストロング船長の月面第一歩の生中継をめぐる実話に基づく感動のドラマである。オーストラリアの田舎町パークスにあるパラボラアンテナがこの大役を担うこととなるが、本番を前に、トラブルが続発・・・詳しくは7/6封切りの映画を見よう。

 この映画の前売り券と「月の土地の権利証」をセットにした商品が発売されているというのが宮崎さんの情報だった。さて、この権利証の法的有効性はいかに。夢を売る商売なのか、ちゃっかり抜け駆けのお得な話なのか、はたまた・・・??

@mic GO!GO! 水上さんの紹介
 水上さんの監修の元にJSTが制作した原子と原子核基礎講座DVD。タイトルは「アトミック・ゴーゴー」と読む。スタンダードな実験素材を組み合わせて構成してあり、教科傍用の動画素材集として使えそうだ。
 

「UFOと宇宙人の話」質問集 鈴木さんの発表  
 授業の脱線として「UFOと宇宙人」というプリントを配布し、解説した後、質問書による質問を受け付けたところ、興味深い反応があったという。鈴木さんは、ふだんの授業でもこの「質問書方式」で、生徒の質問に一つ一つ応答し、興味関心を高めようとしている。

 関連して、 「JAPAN SKEPTICS」(『超自然現象』の批判的・科学的に究明する会・会長:安斎育郎教授)が教育分科委員会を設置したことの紹介があった。鈴木さんを含めて10名の委員で活動を始め、小中高などの教育現場に携わる教員でオカルト・非合理の問題に関心のある人たちが、互いに学び合うと共に、社会的に情報を発信しようとしている。今後、会員を募集していくという。 「JAPAN SKEPTICS」の会員以外でも参加できる。

レインボーシート 山本の発表
 東急ハンズ渋谷店で見つけたきれいな虹色が現れるシート(一枚¥1450)。見る角度を変えたり、曲げたりすると、色の分布が変化して面白い。しかし、回折格子で見えるスペクトルとはちょっと色合いが違うようだ。この色の正体は何だろう。(白い筋は天井の蛍光灯が写りこんだもの)
 
 

 シートの一部を切り取り、表面のシリンドリカルレンズの部分を削り取って、顕微鏡で観察した写真。ご覧のように、シリンドリカルレンズのピッチに合わせて、赤青黄の帯が平行に印刷されているだけだ。見る角度により、このどれかの帯が拡大されて見えるわけだ。よくある「動く写真」「立体写真」と同じ原理だった。
 

 どうと言うことはない素材だが、きれいなことはきれいだ。こうやって縦に丸めると虹色の棒になる。これがほんとの「レイン棒」なんちゃって・・・(^^)。ハイ、平野さんに座布団3枚!

3力のつりあい 山本の発表
 「実験で楽しむ物理(1)・ひとりでに回る生卵」Ehrlich著、右近・小野・喜多・広井・山田・湯口共訳(丸善)に載っている、3力のベクトル的つり合いを示す実験。
 Ehrlichはアクリル円盤と長いビス・ナットを用いているが、今なら巷にあふれるCDに太さ15mmの丸棒をさして安く簡単に自作できる。丸棒の下には皿ネジをねじ込んで接触面積を小さくしてある。
 CDの上に円形の紙をのせ、おもりをつるした糸を3本かけて中心に画鋲などでとめる。こうして3本の糸の方向を調節しながら、バランスがとれて自立する位置をさがすのである。
 つりあったところで、糸の方向を円形の紙に記録し、それぞれの方向に、おもりの数に比例した長さの矢印を描くと、3本の矢印はちゃんと「平行四辺形の法則」を満たしている。


二次会 湘南台駅前「つぼ八」にて
 二次会には15名が参加。久々の土曜例会だったが、時間にゆとりがあってよいと評判は上々だった。人の集まりもまずまずだった。2次会のアルコール研究会に続き、3次会の音波研究会にも10名が参加。深夜まで盛り上がった。


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