例会速報 2004/04/17 県立新城高校
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授業研究:電気の授業報告 市江さんの発表
市江さんが昨年度、3学期に行った高等学校の電気の授業報告をしてくれた。4/25の「神奈川の理科教育を考える集い」でYPC代表としてレポーターに立つリハーサルも兼ねている。いくつもの実験を見せてもらったが、箔検電器のアース操作に指ではなくクーロンメーターを用い、正負どちらの電荷が移動したかを見せる実践は、特に優れていると感じた。以下、市江さん自身によるコメントから。
静電気→静電誘導→電荷保存→電場→電気力線→ガウスの法則→電位差→電場と電位のちがい→等電位面→電場中の導体・不導体→コンデンサーの順に展開しました。静電気と電位のところでは山本さんの電気をスプーンですくう(YPCニュースNo.180)や3次元等電位面と巨大電気振り子(YPCニュースNo.160)を演示で行いました。また、電荷保存を定量的に示す演示として、静電誘導させたはく検電器の金属板の電荷を指で放電させるかわりにクーロンメーターに充電させ、数値を確認して後、検電器にもどし、はくが閉じると同時にメーターの数値が0になるという実験を行いました。とかく定性的な実験になりやすい静電気の単元で電荷を定量的に扱えるクーロンメーター(中村理科\29,000)は必携のアイテムと言えるでしょう。
円運動の演示 鈴木さんの発表
どこで仕入れたネタかは忘れたが、ロートでビー玉を回し、ロートを上に上げるとビー玉はどう転がっていくか、という円運動の導入がある。また、右近さんの工夫で、馬のおもちゃがアルミの円形の柵を歩き、柵がなくなるとそのまま直進する、というものもあった。それを生徒の机でできないかと思い、(ろうとをたくさん用意すれば済むことだが)紙コップを用意した。丁半ばくちの要領で中でビー玉を回した後、コップを上に上げる。するとビー玉はどうなるかという発問だ。円運動を続けるような軌道を通るという予想もかなり出る。円運動の速度は接線方向を向くと言うことを学習してからやってもいいかもしれない。紙コップだと、どちらの方向にビー玉が出てくるかわからないが、それもまた面白い。例会ではどうせなら大きくという意見が出て、丸い水槽でやってみた。この方が確かに迫力がある。生徒の机で生徒の目の前でやらせることにも意義はあるし、演示で大きくすることにも意味はある。簡単にできるので、手軽に取り入れられる。
遠心力と炎 鈴木さんの発表
遠心力を学習したあと、レコードプレーヤーにろうそくを乗せて回転させるというのを昔から取り入れていた。風除けにビーカーの中でろうそくの炎を出させるとよい。もちろん、炎は中心向きに傾く。昨年転勤したとき、レコードプレーヤーを前任校に置いてきてしまった。そこで今年はダイソーで回転台を購入してきて、安価に作った。手回しだが、作ってみるとレコードプレーヤーよりも回転半径を大きく取れて、演示効果が高い。これで105円(あとは適当な木材、ろうそく、ビーカー、ビーカーと木材は両面テープで固定しておく)は安い。
火打ち石による発火 町井さんの発表
種々の火おこし器による古代発火の実験が十八番の町井さんが、手作り火打ち石による発火を披露してくれた。金のこを木の溝に埋め込んで固定したものを、チャートやサヌカイトなどの硬い石で削り落とすようにたたく。金のこの刃が一瞬にしてとけて火の粉が散り、受け皿の綿に燃え移る。
ボンスター(スチールウール)の上に火の粉を散らせばこのとおり。コツはたたき方だが、相手が金のこなので、手元不案内な子供にやらせるのは危険なため、演示にとどめているという。
天動説の絵本 平松さんの紹介
平松さんが紹介してくれた本は、安野光雅「天動説の絵本 −てんがうごいていたころのはなし−」福音館書店、ISBN4-8340-0751-0、\1500+税。
「新しい科学の教科書」(中学検定外)読者MLで話題になっていたので買ってみたという。福音館は非常によく練られた良書を出版すると評価の高い出版社である。本書も、天動説の時代の人間がもっていた世界観から書き起こし当時の視点で描かれた科学絵本だが、知らず知らずのうちに地動説の視点へと読者を導く描写は秀逸である。初版が1979年ということを感じさせない、とても考えさせられる本だ。
なお、平松さんはこの本を「イーエスブックス」http://www.esbooks.co.jp/shelf/all/topで購入してみたそうだ。ネットで注文し、コンビニに届き次第、現金支払いで即受け取り、は便利だ。
ガウス加速器の新しい遊び方 車田さんの発表
右近さんが紹介し、YPCではもうおなじみになった、ガウス加速器だが、車田さんはレールの最後にループをセットして、宙返りに挑戦した。コードカバーのふたをお湯で熱してクロソイド曲線に近づけたループである。ドライヤーでも熱してもよい。見やすいようにかつ迫力を狙い、ネオジムボールと鋼球は径19oにした。(二六製作所で入手可の最大のネオジムボールだったが、現在WEBにはない。)
ガウス加速器1セットでは、ループを回ることができず、3セットを並べて加速に加速を連続させることでループを回すことができた。鋼球1個だけを手で力任せにころがしてループをまわすには意外に力がいるので改めてガウス加速器のすごさがわかる。車田さんは日本科学未来館のイベントでこれを演示した。好評で拍手がわいたという。
人体は真空に耐えられるか・Part2 山本の発表
前回の例会で発表した真空暴露実験の続きである。真空にさらされたとき、血管内の血液や細胞自身がどんな状態になるのかを推測するため、水風船によるモデル実験を試みた。ゴム風船を細胞膜や血管壁に見立て、ラプラス圧が加わった容器内で水がどう振る舞うかを観察した。
周囲が減圧されるにつれ、溶存気体が気泡を作り、それが成長して上に集まってくる(左)。その体積分だけ風船は膨らんだことになる。しかし、周囲の気圧が1mmHgになっても、体積がそれ以上大きくなることはなく、空気を戻すとそれらの泡は再び小さくなり、あとにとけ残りの気泡が少し残る(右)。
体内であればこれらの泡が血栓を生じることになるのかもしれない。しかし、細胞が破裂したり、血管内の血液が沸騰するようなことは起こりそうにないというのが結論だ。細胞膜や血管壁の緊張によって生じる内圧で体液の沸騰はおさえられるからである。
タケコプターつきドラえもんふろっぴー 高杉さんの発表
先月、加藤俊さんが「プカプカふろっぴー」を紹介してくれた。そのとき誰かが「(ガラス人形の浮沈子のように)回らないのか?(笑)」と、冗談を言っていたが、ちゃんと回るのもある。写真の「タケコプターつきドラえもんふろっぴー」だ。後頭部がはずれて、入浴玉をセットできるようになっている。
浮き上がってくるときにタケコプターが回る。ドラえもんシリーズは、全5種+レアバージョン。ほかにパーマンのシリーズも出ているようだ。
キャラクターズアイテムにもなっているようで、初期タイプ(不透明)のものは全12種類をセット販売している。スーパーや玩具店で手に入るが、単品の主流はクリアタイプ(透明素材)。「こちらの方が内部で何が起こっているかわかりやすくてよい。」という意見も。ふろっぴーばかり入った¥200ガチャガチャカプセルもあるようだ。こちらは、初期タイプ(不透明)の本体1個と入浴玉1個入り。割安?割高?
手品の道具の技術 大谷さんの発表
1つの花が、見ている前で2つに増え、3つになる・・・、1本のヒモが、その場で布に早変わりする。大谷さんが見せてくれたのは、10年以上前に東京駅八重洲地下街のマジックショップで¥1000ぐらいで買ったというマジック。大谷さん自身は素人だが、たどたどしい手つきにもかかわらず、始めて見る人にはタネは見抜けない。それほど、道具がよくできているということだ。金を取って売るだけのことがある知恵と工夫がつまっている。
マジック界のルールに従い、種明かしはできないが、以下、大谷さん自身のコメントを添える。
せっかく買ったので、見せたいのが、一番だったのですが、その道具の素材やしくみに、技術を感じて、感心していました。 こういう手品にするための、製品開発の発想が、私には、全くないものだったので、斬新でもありました。こじつけっぽいのですが、物理の中でも、相対性理論や量子などの新しい理論を考えついた人たちを、連想してしまいました。
手品の場合は、占いや念力みたいなものと違い、生徒たちも、最初からしかけがあると考えるので、授業に取り入れる余地もないでしょう。でも、手品の道具の発想の豊かさは、刺激になります(どちらかというと、科学的知識を使った技術開発方面かな)。
二次会 武蔵新城駅前「和民」にて
13名が参加してカンパーイ。飲みながらも、4/25の「神奈川の理科教育を考える集い」の段取りとか、理科部会の研修計画が話し合われる。みんな理科教育そのものを無上の楽しみとしているのだ。ヘンな集団!
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