例会速報 2005/10/15 県立新城高校


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授業研究:到達目標・学習課題方式で行った理科総合A 小沢さんの発表
 小沢さんから、「到達目標・学習課題方式」での理科総合Aの授業実践報告があった。学ぶところの多い発表だった。以下、小沢さん自身によるコメントを掲載する。

 従来の授業では、教師による説明が多く、実験も説明の「潤滑油」の位置づけだったような気がします。要点を記したプリントも配布していたので、生徒の思考する機会を知らず知らずのうちに奪っていたのでした。そこで、授業への姿勢を大転換して、玉田泰太郎さんの授業ビデオに学び、到達目標・学習課題方式での展開を始めました。まだまだ荒削りな授業ですが、十分な手応えを感じています。「生徒をよく見ること、信じること」「教師がしゃべり過ぎないこと」の大切さを、この授業を行うたびに学んでいます。
 

授業研究:摩擦力をどう教えるか 堀内さんの発表
 例会の前日に堀内さんが行った研究授業の内容が報告された。テーマは摩擦力。授業の展開や構成、実験を行う上での問題点などに関して議論が交わされた。主な論点は下記の通り。
・実験における再現性の問題。
・物体に働く外力と摩擦力の関係を示したグラフの妥当性と教育的効果。
・最大摩擦力の大きさが、F=μNで表現され、Nが垂直抗力であり、物体に働く重力でないことをどのようにして理解させるか。

合成抵抗の測定実験 鈴木健夫さんの紹介
 YPC草創期に喜多さんが例会で紹介していた実験だが、時がたちメンバーも入れ替わったので、あらためて紹介した。オリジナルは、90年7月に喜多さんが例会で紹介している。当時の喜多さんの紹介原稿は、次号YPCニュースに再掲載される予定。
 鈴木さんは、授業で班ごとにやらせてみた。デジタルテスターが班の数だけあったので、写真のような導体紙のセットを配り、基本形(左写真の左端のもの)の抵抗を測った後で、それ以外の形の紙の場合の抵抗値を予想させてから、実測させる。また、クリップに2枚並列に置いた場合なども予想させてから測定する。右写真の形のものは、抵抗の直列で計算するが、予測値と実測値が良く一致する。R=ρl/Sと抵抗の接続について確認するよい実験だ。
 ちなみに、この導体紙はダイソーの色画用紙の黒である。黒い画用紙やラシャ紙は顔料として炭素が練り込んであり、わずかだが導電性のあるものが多い。デジタルテスターならば測れる程度の抵抗値を示す。
 

音叉の共鳴 水野さんの発表
 水野さんは、この夏の私学研修会で紹介があった開管音叉を作ってみた。振動数が等しい2本の音叉を、それと共鳴する長さの等しい自作共鳴箱に取り付ける。一方の音叉をたたけば、当然もう一方の音叉が共鳴する。では、一方の共鳴箱を開管にしたらどうか。この共鳴箱はバックルをはずすと閉端に当たる扉が開いて開管になるのである。この場合は共鳴は起こらない。
 
 では、長さ2倍の閉管共鳴箱ではどうか。これも共鳴しない。では、長さ2倍の共鳴箱を開管にしたらどうか。これは共鳴する。基本振動での共鳴を説明するのに使える教材だ。

音叉は通常共鳴箱の真ん中の穴にとりつけてあるが、共鳴箱の端に音叉を取り付けたらどうなるだろうかと思って、やってみた。結果は・・・注目の中で実験が行われた、音の大きさは真ん中に取り付けた場合とほとんど変わらなかった。

電気抵抗の式導出の説明 水上さんの発表
 水上さんのパワーポイント教材シリーズ、今回は「電気抵抗の式R=ρ・L/S」の導出だ。抵抗率ρの定義と抵抗の合成公式(並列・直列)から導くというユニークなアプローチだ。教科書ではいきなりこの式が登場し、生徒は鵜呑みにするだけだが、「暗記はさせたくない」というのが水上さんのポリシー。「基本公式を組み合わせることで,より高度な知識を獲得できる」という物理の醍醐味を生徒に伝え続けたいと語る。
 

化学反応式学習用「物質カード」 大谷さんの発表
 大谷さんは、中学2年で学ぶ物質の化学式を、それぞれカードとした切り抜きシートを作成した。使い方は、画用紙に拡大コピーして、生徒1人に1枚ずつ配布。生徒は、各原子ごとに色をぬり、小さなカードに切り分ける。化学反応式の通りにこれを並べてみるわけだ。

 大谷さんがこの教材を作った動機は、生徒が化学反応式をノートに書くと、化合物や気体分子を、原子にバラして、左辺、右辺の係数を合わせてしまうからだという。そこで、1つの物質の化学式を、1枚のカードにして、原子にバラせないようにしたのが工夫だ。手元で作業すれば、黒板の式を書き写すよりだんぜんわかりやすい。

文化祭で「傾きの部屋」〜建築Girls〜 越さんの発表
 越さんは、10月に行われた文化祭のクラス発表で、生徒と一緒に「傾きの部屋」製作した。床や壁をすべて15°程傾けた部屋の中に入ると、視覚情報による鉛直方向と、実際の鉛直方向が異なるため、奇妙な感覚に襲われる。広さ6畳ほどの部屋の中では、「座ると立ち上がれないイス」、「不思議な斜面」(一見、高いほうに物が転がっていくように見える)、「不公平なコタツ」(不思議な斜面と同様に、コタツの天板が傾いている)、「のぼれない踏み段」、などが設置され、来場者を喜ばせた。同様な部屋は、横浜こども科学館や、日光江戸村などにもある。
 床面と下側の壁は充分な強度が必要なため、床の骨組みは住宅用2×4角材を使用し、床面は12mm厚の合板2枚重ねとした。天井はできるだけ軽くするため、角材の梁の上に日除け用のよしずを載せただけ。予算は廃材も使用し、3万円以内に抑えられた。実質、準備日の2日間で完成させなければならなかったため、事前に骨組みなど作っておき、準備日はそれらの組み立てから始められるようにした。
 女子高ということもあり、「傾きの部屋」をやりたいと生徒が決めたときには、少々不安があったそうだが、いざ作り始めると皆大工仕事に精を出し、見事完成させることができたという。女子でもここまでやるか、と例会参加の一同もびっくり。若者のパワーに改めて感心した。
 
写真は解像度を落としてある。

ふわふわトトロ  越さんの発表
 同じ文化祭のマスコットとなった「実物大トトロ」と昨年製作のネコバス。これも越さんの指導による生徒の手作りである。すばらしいできばえだ。

 トトロはぬいぐるみ生地でくるまれ、中綿が入っているので、普通のぬいぐるみのようにふわふわ、文化祭当日は、来場者や生徒の人気を集めた。

 越さんが語る作り方の手順はこうだ。角材で骨組みを作る→配線カバーで丸い輪郭を作る→エアークッションでくるむ→フェイクファー(ぬいぐるみ生地、協力:松山パイル)でくるむ→縫い合わせる→中綿をつめる→目、口、耳、手、傘ホルダーなど取り付けて完成!

☆注意点 ・ぬいぐるみは、縫って、中綿を詰めながら整形。縫う前に中綿を詰めると、形が崩れる。

キャンドゥの光るハイパーヨーヨー 平松さんの発表
 平松さんが百円ショップキャンドゥで買い占めてきたクラッチつきヨーヨー。電池とLEDが仕込んであり、遠心スイッチで回転時に光る。右の写真はクラッチ部の拡大。スチールボールにはたらく遠心力で、高速回転時は軸との結合か解かれ「スリープ」する。この間にトリックと呼ばれるいろいろな技を行うわけだ。かつてバンダイのハイパーヨーヨーが一世を風靡したことがあった。当時数千円もしたヨーヨーと変わらない性能を持つ製品が100円で手に入る時代になった。
 

米国のお菓子 小河原さんの発表
 米国でのおつとめを終えて帰国したばかりの小河原さん。YPCへのお土産が入っている、船便で送った引越し荷物はまだ届かないものの、帰国直前に買った面白い米国製のお菓子を手荷物に入れて例会に持参してくれた。
 外箱を切り取ると赤青セロファンの3D眼鏡になり、板状キャラメルのようなグミの包装紙を立体視することができる。遊び心あふれるお菓子なのだが、とても甘くて派手な着色の米国製菓子からは、若年糖尿病という国家的な問題も憂慮される。
 日本人の感覚では食欲がわかないシロモノだが、この旺盛な遊び心は見習いたいものだ。

 

本の紹介(進化しすぎた脳) 小河原さんの発表
 小河原さんは慶應ニューヨーク学院在任中、コロンビア大学に留学中だった東京大学の池谷裕二さんによる講演を引き受け、それが朝日出版社から出版された。気鋭の若手研究者による、4回にわたる計8時間の講義はとても興味深い内容で、先着順で選ばれた8人の生徒たちも大満足の様子だった。本のほうは、アマゾンなどで総合1位の売上を記録しているらしい。巻末の行列を使った記憶のシミュレーションが小河原さんのおすすめ。

米国流を取り入れた授業実践 小河原さんの発表
 海外校の様子と、米国の教育の特徴、さらにそれを取り入れた授業実践について、概略を紹介してくれた。米国では基本的に少人数クラスで、個々の生徒に対応できるせいか、どの校種でも宿題がよく出され、プレゼンテーション、グループワーク、授業中の発言など、生徒が能動的に取り組む場面が非常に多い。地域格差や、レベル分けによる弊害など、根深い問題も抱えてはいるが、参考にできる部分も少なからずあるはずだ。詳細は、次号のYPCニュースに掲載の予定。

セリアの実験キット 鈴木健夫さんの発表
 100円ショップ「セリア」でこの夏の前頃から販売されている実験キット。全部で10種類くらいあるが例会で紹介されたのはそのうち5種。季節商品として(つまり夏休みの自由研究ネタとしての需要を見込んで)売り出したものだと思われるが、まだ大量に売れ残っているようだ。おそらく売り切れたら入手困難になるのかもしれない。どれも我々にはおなじみのものばかりだが、値段が安いのは魅力だ。

二次会 武蔵新城駅前「笑笑」にて
 17名が参加してカンパーイ!二次会は人数が読めないため、予約確保がむずかしい。幹事泣かせなのだ。このごろはチェーンの居酒屋も増えてきたので、当日飛び込みで会場探しをすることも多い。例会が終わるとすぐに先遣隊が駅前に走って、手分けして会場探しをする。携帯電話で後続の本体を誘導して・・・・飲み会ならYPCに任せろ(^^)v


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