例会速報 2007/07/15 鎌倉学園中・高等学校


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授業研究:数学基礎の授業 車田さんの発表
 新教育課程で新設された「数学基礎」の実践報告である。「数学基礎」は「数学?」と同様選択必修ですが「数学基礎」では大学受験はできないため、ほとんどの学校では実施されていない。車田さんは、数学と人間のかかわりや社会生活における数学が果たしている役割を理解させるために興味・関心を高める手段として実験・実習を多く取り入れている授業を紹介してくれた。

「音で2次関数」(写真下左)
 2mの紐に等間隔にカードリングを付けたものを上方から吊るして落下させる。このときリングが床を打つ音は等間隔にならない。カードリングは小さな可動式の洗濯バサミで固定されている。授業では音が等間隔になるように調整させて、各リングの間隔を計り、規則性を見出し数式を完成させる。教室の天井の高さでは2mくらいが限界で体育館などの吹き抜けの場所を検討中。

「プラトンの正多面体」(写真下右)
 プラトンの正多面体を各自に作らせる。写真は正八面体。頂点はゴムチューブを輪ゴムで止め、辺は爪楊枝。
 

「サッカーボール」(写真下左)
 上記のように正二十面体を作らせた後に頂点を切ると正五角形になることを理解させる。一人に正五角形を12枚(正二十面体の頂点の数)ずつ配り互いの頂点を輪ゴムとホチキスでつなぐ。輪ゴムが正二十面体の辺の数になります。風船を中に入れて膨らますとサッカーボールの出来上がり。これは理科部会物理研修で後藤道夫先生から教えていただいたものだ。

「名刺の正二十面体」(写真下右)
 これも後藤道夫先生から教えていただいたもの。まず展開図を渡して正十二面体を組み立てさせる。次に、あらかじめ名刺に切る線を印刷したものを3枚配り3枚の名刺が各々直交するように組ませる。名刺の角すべてにはさみで切れ込みを入れ、一筆書きの要領で全ての切れ込みに糸をかけると正二十面体の出来上がり。名刺の短い辺と糸が正二十面体の辺になる。

「鶴の折り方の解析」(写真下左)
 授業の最終目的は、三角形・長方形・台形・円等いずれからも鶴が折れるという内容。折り紙で鶴を折る過程は、紙を三角形に分割して内心を折ることに相当する。この後、授業ではコンパスと定規で三角形の五心を作図するが、折り紙や重心コマなど作業を通して学ぶ。

「塩で幾何学」(写真下右)
 この授業は4〜5人のグループで実施する。バットに網を置き、準備で作らせた図形を乗せて焼いてさらさらにした塩を上から降りかける。塩が山盛りになり、積もる限界を超えると最短距離で下に落ちる。写真はそのときの三角形のもの。真上から見ると稜線は三角形の角の二等分線となり、ピラミッドの頂上は内心となる。他に塩を降り積もらせると外心・楕円・双曲線・2次関数が現れる図形を用意した。
 これは、黒田俊郎先生(武蔵工業大学)が考案されたものである。宮本次郎さんのHPが参考になる。 

「積分天秤」
 積分の授業の最初の導入教材。y=x^2(0≦x≦1)のグラフを工作用紙に描かせ、曲線に沿って切り取ったものを3つつくる。天秤につるして一辺が1の正方形と重さが釣合うことで、面積が1/3となることを実感させる教材だ。徹底して作業を通じて「数学を実感させる」のである。


ケプラーの法則の授業 鈴木健夫さんの発表
 6月例会で小河原さんから、ケプラーの第3法則を学習する際に両対数グラフを書かせるという実践紹介があった。鈴木さんは、そのすぐ後に授業で扱う機会があり、さっそくとりいれてみた。小河原さんからの改良点は、以下の2点である。

 対数グラフとして印刷に適するものをネットから探し出した。多少粗いが、プリントの中に入れて書かせるのにちょうどよい。惑星のデータは、地球が(1,1)なので、原点は(0.1,0.1)になるように書き換えておくと、内惑星もプロットできる。

 前回例会時に出た提案を採用し、惑星のデータを入れる前に、y=10x^2のグラフをプロットさせた。係数があるのは、両対数の軸の目盛りの関係である。惑星のデータと同じ目盛りにするには、y=x^2ではうまくいかない。原点から始まる直線にしておいた方が生徒にとってとりつきやすい。これをまず最初に入れさせると、このグラフが直線になり、傾きが正確に2になることがわかる。「1と10の間は1刻み、10と100の間は10刻み」と言うと、ある程度理解できるようだ。その後、惑星のデータを入れると、傾きが0.67つまり2/3になることが理解でき、aの3乗とTの2乗が比例するという関係が見事に現れる。

超能力番組を10倍楽しむ本 高杉さんの書籍紹介
 メーリングリストでたかすぎさんが紹介していた本の現物。
超能力番組を10倍楽しむ本 山本弘 楽光社 \1785.-

 “一見もっともらしい超能力番組が、どれもこれも嘘ばかりであることが次々に暴露される。・・・特に超能力に限らず、夏の定番である心霊オカルト系のバラエティーにハマりやすい中高生は必読であろう。” 図書室に入れておいてもいいかも。

縮む容器 高杉さんの発表
 圧力をかけて、ミニチュアのようにかわいく縮んだカップヌードルの容器はYPCの参加者にはよく知られている。横須賀の海洋研究開発機構へ行って、お土産にもらって来た人も多いだろう。この場合、容器が縮むのは、微小な気体の“泡”を閉じ込めた発泡ポリスチレンが高圧で破裂してしまうので、常圧に戻っても圧縮されたままになるからだ。

 ところで今回たかすぎさんが持ち込んだのはこれと似て非なる「PETボトル版」。PETボトルの素材は圧をかけても発泡ポリスチレンのようにはならない。これは一体どのようにして作られたか?
 手順はこうだ。よく沸いた湯(IHヒータ等で過熱されたものが最適だとのこと)を空のボトルに注ぐ。あふれてもかまわずかけ流す。様々な形状のPETボトルが流通しているが、試したうちでは「ジョージア カフェラテ」が縮み具合が割と均等で、きれいな形のミニチュアができる。ラベルも同様に縮むが、口栓のところはほとんど縮まない。他の容器では部位に縮み方のムラがあり、元と違ったプロポーションのボトルになってしまう。化学の合成樹脂を扱う単元で興味を喚起するデモとして使えそうだ。

 

膨らむ容器 高杉さんの発表
 一方こちらは小型のバケツ(?)ほどに膨張したヌードルカップ。これはどう作る? ミニチュアカップの反対に、圧を下げれば…というわけには行かない。
 圧力鍋に少量の水と空容器を入れ、数十秒沸騰させた後ふたを開けると、あっという間にユーモラスに巨大化したカップができる。コントを見ているようで、見学していた全員が間の抜けた笑い顔になってしまう。
 ポリスチレンの軟化点は、110℃を少し越えたところにあるのだそうだ。また、食品梱包材として使用されている発泡ポリスチレンは、100%膨らみきったものでなく、うまく条件を整えてやればもう少し膨張するものらしい。オリジナルは椚田一文さん(化学と教育 誌1993年・41巻4号)とのこと。モリさんのHPにも関連記事がある。

 

 うどん容器は外装素材のせいで、熱のかかり方の違いで葉巻型(タカラ貝のような形?)になったり灰皿型になったりする。いろいろ試すとおもしろそうだ。

光束を見る 水野さんの発表
 先月(6月)の例会で、「スモークマシンを使って光線を見せる」という実験をしたところ、参加者から「子どもたちに光を立体的にイメージさせるために光線ではなく光束で実験した方がいいのではないか」という指摘があったので、水野さんはさっそく学校の光源装置で試してみた。下の写真のように、光束が円錐となって見事に焦点に集まる様子が立体的に観察できる。

 まだ生徒の前ではこの実験はやっていないというが、光線と光束と、生徒はどちらの方がわかるという反応をするか、興味があるところだ。

 参加者からは「夕焼け実験にも使える」という声が上がった。確かに光源から遠いところの光束が赤く見えていた。




水波投影器の撮影 益田さんの発表
 益田さんは、生徒実験で水波投影機の観察に失敗した後に、水深を調整し、デジタルカメラで撮影してみた。ストロボを用いて撮影したところ、波面の様子がとてもよく確認できる画像が得られた。下は深さにより波の速さが異なるため、屈折を生じる様子。
 

 波の回折もはっきりと現れる。(写真左)
 なお、放物面での反射の様子も撮影したが、こちらはパルス波の方がよりよく現象を観察できそうだ。その撮影方法は今後の課題である。

石原家のお宝公開 森さんの発表
 石原純(いしわら あつし)は、大正〜昭和初期を代表する理論物理学者でありアララギ派の歌人でもある。科学啓蒙家としての活動でも著名だ。森さんは石原純のご親類で、現在その書簡を整理している。今回、例会の席にその実物のいくつかを持参して披露してくれた。

当日披露されたもの
◎石原純の自筆手紙 (ドイツ留学中に仙台の妻に宛てた手紙 1912年大正1年のもの)
◎寺田寅彦から石原純に宛てた手紙と葉書(1919年大正8年のもの)→下の写真
◎本多幸太郎から石原純に宛てた葉書(1921年大正10年のもの)
 

 どれも日本の物理学史を飾るそうそうたるメンバーの肉筆で、貴重な科学史・文学史の研究資料である。下は、よだれを抑えながら「お宝」に見入る例会参加者たち。

 他にもアララギの歌人らからの手紙など多数が発見されたが、これらは来年5月オープン予定のリカハウス(森さんが逗子市内にて建設中)で公開される予定。私設科学館リカハウスには、サイエンスライブラリー、ミュージアムショップを備え、科学あそびワークショップ、サイエンスカフェ、企画展などを行う計画。

アポロ13号・月への旅etc. 越さんのDVD紹介
 越さんは、ドキュメンタリー「宇宙の世紀・アポロ月への旅」を見たのをきっかけに、宇宙開発関係の映画など、最近見直したものを紹介した。

●「宇宙の世紀・アポロ月への旅」 (NHKエンタプライズ)
 ジュールベルヌの月世界旅行から、リリエンタール、ライト兄弟、ソユーズ、マーキュリー計画〜アポロ、スカイラブ、惑星探査、スペースシャトル、国際宇宙ステーションまで、20世紀の宇宙開発をまとめたドキュメンタリー。
●「ライトスタッフ」 (優れた資質)
 超音速に挑む命知らずのテストパイロット、イエーガーと、マーキュリー計画のために選び抜かれたジョングレンら7人の宇宙飛行士の人間ドラマ。ロケット打ち上げ成功、失敗などの貴重な資料映像が数多く取り入れられている。如何に人々は命がけで、宇宙への挑戦を続けてきたことか!
●「アポロ13 10thアニバーサリースペシャルエディション」
 宇宙空間での爆発事故から奇跡の生還を果たしたアポロ13号の物語。オールCGの発射シーンは圧巻、Disc2に収められた映画のメイキング映像、宇宙開発ドキュメンタリー「月と遥か宇宙への挑戦」(日本語字幕)も「アポロ 月への旅」と同様に、大変興味深い。
●「ハッブル宇宙望遠鏡」(NHKエンタプライズ)
 ハッブル宇宙望遠鏡による天体の鮮明な映像の他に、望遠鏡修理時の船外活動の様子も収められている。
●「不都合な真実」
 アル・ゴア アメリカ元副大統領が多数行ってきた地球温暖化についての講演会の内容をまとめたドキュメンタリー映画、「不都合な真実」。そのDVDが7月に発売された。映像特典の「映画完成後に判明した新事実と新たな出来事や新発見」では、氷河地震、永久凍土に含まれるメタンガス、などの映画では触れられなかった新事実について、ゴア氏自身が解説している。また、書籍「不都合な真実 ECO入門編」(廉価版)ランダムハウス講談社1200円、も出版された。ISBN978-4-270-00226-1

二次会 大船駅前「あじたろう大船店」にて
 10名が集まって、カンパーイ。台風の直撃が心配されたが、案ずるより産むが易し。雨もたいしたことはなく、帰りにはすっかり風もやんで無事に二次会まで決行できた。久しぶりの森さんを囲んで、科学談義に花が咲く。


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