例会速報 2008/04/26 理科ハウス


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LiCa・HOUSe(理科ハウス)オープン間近 森さんの科学館
 今回の例会会場は、5/16にオープンを控えたLiCa・HOUSe(理科ハウス)をお借りした。逗子市の京急神武寺から徒歩6分のロケーション、池子十字路の交差点の角にある。
 館長の森さんが私財を投じて建設した、自称「世界一小さな科学館」。科学読みものライブラリー、科学あそびワークショップ、専門家によるサイエンスカフェなど、小さくてもおもしろさは世界一。大人も子どもも楽しめる街角の科学館をめざす。

授業研究:授業開き みんなの発表
 年度始めにあたり、それぞれが授業開きのネタを披露した。デモンストレーションをやったり、アンケートをとったり個性が出る。以下、各発表者からのコメント。
車田さん(左):持参したのは、「授業ノート」です。理科総合AとB,生物、化学を受け持ち、6クラス授業ノートを作りました。最初の授業は、国際宇宙ステーションでのブーメランの話と、デモンストレーション(4枚のものと土井さんが持ち込んだ3枚のブーメラン)授業ノートの取り方です。
益田さん(右):光速は?一円玉の重さは?などを問う「プリテスト」をやっています。今年度、注目したことは「乾電池の電圧」「家庭用コンセントの電圧」で、1.5V、100Vと答えられた生徒が本当に少なかったこと。一つには、充電池などの普及で日常での乾電池の登場が少なくなったことがあるようです。家庭用コンセントも意識して使っていないことがよく分かりました。他の方からも、この件に関して意見を頂きました。
 

水野さん(左):久しぶりの高2物理Tの授業を、運動の本質から入ろうと考え、慣性の法則から始めました。参考にしたのは「物理学入門」(板倉聖宣、江沢洋共著)です。CDエアトラックをはじめ、様々な実験をして生徒の中に納得をつくろうとしました。
右近さん(右):高校物理で学ぶ力学は、摩擦がなかったり、空気抵抗がなかったり、と様々な理想化が施されているもので、しょせん現実離れしたものではないか、という批判がよくなされている。授業初めには、こうした点を踏まえ、いかに高校で学ぶ物理が有用であるかを紹介している。
 

平松さん(左):高一にあたる4年生は「化学」のintroductionというプリントで授業開き。まず福沢諭吉の「訓蒙・窮理図解」の一節を引いて科学を学ぶ意義を語る。自己紹介カード+ヒアリングシートを記入して提出してもらう。「マグネシウムリボンの燃焼」を見たことがあるか、の問いには90%の生徒が「見た」と回答する。しかし、「一円玉の直径」の正答者は10%だった。
越さん(右):まず、プリントを配り、身のまわりの現象や理科的なことで、不思議に思う事、身の周りの道具や工具・家電製品・機械などで便利だと思うものその仕組みを知りたいもの、今までに分解や修理したことがあるもの、などについて生徒に書かせ、その内容に関係する話をしている。その後で「パワーズオブテン」と「コスモス」のオープニングの部分を見せる。さらに、時間があれば、リングキャッチャーなどをやって見せ、生徒にもやってもらい、「実験なども、良く観察すれば、なぜそうなるかわかるよ」とつなげている。手に持っているのはジャンボかみつきヘビ
 

ウオータードラムの謎 渡辺さんの発表
 渡辺さんが持ち込んだのは、アフリカの民族打楽器、ウォータードラム。大きなひょうたんを半割りにした大小さまざまのボウルのようなものを組み合わせて使う。大きい方に水を張り、小さい方を水面に伏せて浮かべる。上からたたくと驚くほど低い音が出る。中の空気の量で音程が変わる。
 

 空気中でたたくと、高い乾いた音がするのに、水に伏せるとなぜこんなに低い音が出るのか、それが課題である。大小二つを重ねて伏せると、和音のように音が厚みを増す。渡辺さんは浮力による単振動の振動数を計算してみたがオーダー違いだった。空気の膨張収縮による体積振動だろうか。ひょうたんの固有振動の低いモードだけが水を入れたことで取り出されているのだろうか。真相はまだ不明で解明は次回以降への宿題となった。 

ネクタイ自慢 平松さんと益田さんの紹介
平松さんと益田さんが理科っぽいネクタイをしていたので披露してもらった。e-necktaiというサイトで面白いネクタイを扱っているという。いろいろなジャンルがあるが、「科学」には周期表、実験器具、アインシュタインの式・顔など特徴のあるものがある。日常つけるにはやや抵抗があるが、授業でのアクセントにいかが?
 

ニュージーランドのお土産 小沢さんの発表
 小沢さんは春休みにニュージーランドを旅行した。土産物屋で、100ニュージーランドドル紙幣デザインのメモ帳を見つけ、お土産として参加者に分けてくれた。写真はその1枚(裏がメモ面)。 肖像画はラザフォード。彼はニュージーランド生まれなのだ。1908年に元素の崩壊の研究で受賞したノーベル化学賞のメダルと、「トリウム」の回復曲線、「トリウムX」の減衰曲線のグラフも描かれている。

テレビ石 笹尾さんの発表
 日光のおみやげ屋さんで一個180円で買ったというテレビ石。下面の絵や字がが上面に浮き上がって見える。ファイバー上の結晶がきれいに整列しているために起こる。
 表面は着色してあるが、教材としては色はない方がよい。欠陥がなく形も整っているので人工の結晶かもしれない。天然物はウレキサイトというホウ酸塩鉱物である。

CASIOのEXILIM PRO EX-F1 益田さんの発表
3月の終わりに発売になったマルチストロボ不要の超高速連写カメラ。秒間60コマの静止画、動画では最大秒間1200コマで撮影ができる。実売13万円ぐらい。ミルククラウンが連続動画で生取りできるという。まだ買ったばかりで研究中だが、いずれ興味深い高速度撮影映像が見られることだろう。授業での実践例など、今後紹介していきたいとのこと。
 詳しい情報はhttp://www.casio.co.jp/release/2008/ex_f1.htmlhttp://dc.casio.jp/product/exilim/ex_f1/へ。
 

声変わりガス 越さんの発表
 越さんは、声変わりガスの原理について、小学生にもわかるような説明を試みた。これは、現象としてはとても面白いが、原理を簡単に説明するのが難しい実験の1つだ。

 越さんの説明はこうだ。「音は波の性質があり、(同じ時間内に)たくさん振動する音は高い音、少ししか振動しない音は低い音として聞こえる。人がしゃべる時、のどの奥の声帯からは、色々なふるえが混ざった音が発せられる。そのなかで、のど、口、鼻などの空洞で、条件に合った音が強められ、ある高さの声に聞こえる。声変わりガスを吸うと、ヘリウムは空気より軽く、音が速く伝わるので、波の長さ(波長)が長くなり、空気を吸っている場合に強められた音が条件に合わなくなる。かわりに、(波の長さが同じで) (同じ時間内に)よりたくさん振動する音が強められる。つまり 声が高く聞こえる。」

 昨年、高校現場でヘリウムガスによる窒息の事故もあったので、この実験を行う際には、必ず酸素20%入りの声変わり用のヘリウムガスを用いることなど、充分に注意をすべきだ。

生物ネタへのコメント 伊藤さんの発表
 生物が専門の伊藤さんは、生物ネタの誤りを指摘してくれた。
 前回例会の速報で、イチゴの外側のツブツブをタネと呼んだが、じつはこのツブツブこそがイチゴの「子房」であり果実にあたるのだそうだ。各ツブの中にそれぞれ1個ずつ「胚珠」つまり種がある。では、われわれが食べるあの赤い部分は何かというと、「花托」または「花床」と呼ばれ、花の付け根の台にあたる部分が変化したものだそうだ。YPCは層が厚い。

ふしぎなえんぴつ 加藤俊さんの発表
 加藤さんが取り出したのは芯のない鉛筆。実は竹箸の先を鉛筆けずりで削っただけのもの。しかし、白い紙に黒い字が現れる(左)。種明かしは「感熱紙」で摩擦熱で発色したもの。次に紙を裏返してボールペンで字を書く(右)。ここまではごく普通のボールペンに見えるが・・・・
 

 先程の竹箸でこすると消しゴムのように字が消える(下左)。パイロットの「フリクション・ボールペン」は摩擦熱で黒い色が白色になって消えたように見える。フリクションインキはマイクロカプセルにロイコ染料と顕色剤と変色温度調整剤が入っており、常温ではロイコ染料と顕色剤の結合で発色しているが、設定温度(約60℃)を超えるとその結合が解離して色が消える(白色になる)とのこと。
 一度消したものも、冷凍庫で−10℃以下に冷やしてやるとふたたび文字があらわれる。手品のような実用品だ。

12kg磁石 竹内さんの発表
 12kgまでつるせるというマグネットフック。強力な磁石が裏側についている。はずすときは右の写真のようにレバーを起こし、テコの原理により磁石を浮かせる。
 

LiCaHOUSeの紹介 森さんの発表
 理科ハウスのオーナーで館長の森さんが、開館前の館内を案内してくれた。建物は特殊ブロックを積んだ「ERM外断熱工法」を採用しており、300年の耐久性があるという。それ自体が実験的である。数々のユニークな展示品は、5/16の開館まではナイショなのでここではあえて写真を載せない。興味のある人はぜひ自分の足で理科ハウスをたずねよう。
 

二次会 理科ハウスにて
 23名が参加してカンパーイ!床に車座になって理科ハウスの開店前祝いだ。森さんがここを拠点に展開するユニークな科学普及活動に大いに期待し声援を送ろう。今日集まったYPC一同も協力を約束した。


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