例会速報 2010/01/16 三浦学苑高校


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授業研究:学校設定選択科目「サイエンス」 車田さんの発表
 車田さんの勤務校では2年生普通科のクラス分けで大学進学希望者は「文理コース」、その他は「普通コース」と分かれ、「普通コース」はさらに「進学系列」と「一般教養系列」に分かれる。その「一般教養系列」では政経、デッサン、書道、サイエンスの中から選択することになっている。車田さんの担当する「サイエンス」は14人が履修している。今年度は、「科学の分野全般(理科・数学・情報)にわたり、実験を中心に科学の楽しみを学びます。」として募集した。
 授業展開は週1日木曜日3・4校時の2時間続きの時間で実験室を確保し、3つのグループに分け、グループ実験を中心とした。各学期でテーマは、1学期 「形」、2学期 「食」、3学期 「環境」である。
 

1学期テーマ「形」の実験:重心コマ、ブーメラン、プラコプター、多面体、名刺正二十面体(写真上左:名刺3枚の組合せパズルから頂点を糸でつなぎ正二十面体を作製)、サッカーボール風船(写真上右:正五角形12枚の頂点同士を輪ゴムで結び、中に風船を入れて膨らませるとサッカーボールになる)、フラーレンボール(写真下左:6色のPPバンドを編んで作る)、パスタブリッジ(写真下右:パスタで橋を作って重りを吊るす)
ビデオ等:Powers of Ten・コズミックボヤージュ、MITAKA・ピタゴラスイッチ
2学期テーマ「食」の実験:カルメ焼き、カルメ焼きリベンジ、液体窒素アラカルト&アイスクリーム、カレーソース焼きそば、綿飴、ヨウ素でんぷん反応(本物プリン偽物プリン)、ビタミンCと濃縮還元、電気パン、紫キャベツでPHグラデーション、粉塵爆発(薄力粉)、発熱・吸熱反応(クエン酸・重曹)、人工イクラ
3学期テーマ「環境」の実験:砂糖の変化とべっこう飴(2学期の続き)、ペットボトルのリサイクル、発泡スチロールのリサイクル、塩の幾何学、はかるくんキット利用
 

作用反作用 石井さんの発表
 作用反作用の法則は力学の基本だが、正しい理解は難しく、誤って教えている教員も少なくない。つりあいとの混同もしばしば見られる。石井さんは、科教協千葉の主張をダイジェストして示してくれた。

作用反作用の法則(科教協千葉の主張):ものとものとは互いに引き合ったり、押し合ったりする。このとき、二つの力は同時にはたらき、同じ作用線上で向きが反対で、大きさが等しい。

力の三要素:大きさと向きと作用点
力がどちらのものにはたらいているかが重要なので、力を図示するときには作用点を明示しよう。(教育的配慮)

ある教科書に載っている「押し返す、引き返す」という表現にはタイムラグがあり正しくない。作用反作用は同時性が重要である。

作用反作用は力学の原理だから、その因果を説明する必要はない。説明してはいけない。

ふわーとハート 車田さんの紹介
 早稲田摂陵中高の塚平恒雄さん考案の実験紹介である。ショート状態が長く続き危険な単極モーターの実験を改善し、「弥次郎兵衛回し」に手を加えたもの。ハート型の銅線の重心が支点の近くに来るようにし、乾電池の下の小型ネオジム磁石に下部が軽く触れるように調節する(写真左)。回転が始まると下部が浮き上がり、かなりの時間、慣性による水平回転をする。塚平さんはこれを「ふわーと状態」とよぶ。このときは電流は流れないので電池の加熱が避けられ安全だ。塚平さんはこのアイデアを特許出願中だという。動画(20.1MB)はここ
 

ウラカエセル?(Reversible?) 越さんの発表
 千葉の大村さんの教えていただいたという、元々は牛乳パックで作るパズル。作り方は、まず底とふたの部分を切り取り、幅7cmに切る。それぞれの面(ちょうど正方形になる)の対角線に折れ線を入れ、完成。
 遊び方は、折れ線に沿って折るだけで全体を裏返す。単純だが、途中変わった折り方があり、意外と難しい。写真は、厚紙に印刷し、自作したもの。あなたは、自力で「ウラカエセル?」
 結構面白く、できるまでの過程を楽しんでほしいので、動画は最後まで見ないこと。動画(19.8MB)はここ

 

ジュノズ・スピナー 越さんの発表
 各関節を回転させていくと、正12面体から正20面体に変形する面白い多面体。実は日本人の発明である。作者のホームページにアニメーション付きで詳しい解説がある。
 

凸レンズによる像 水上さんの発表
 水上さんの授業用のパワーポイントファイル・レンズ編の紹介があった。実際に実験して撮影した実写写真と、丁寧に描かれた図が併置されていてわかりやすい。そのまま図録として出版できそうな完成度だ。構成は以下の通り。
@実像を映す→実像ができる様子を作図する。
Aスクリーンの位置がずれると像がボケる
B実像と物体は,凸レンズの中心に関して点対称。
 

Cスクリーンに映さなくても実像が見える。
D物体の各点から出た光がそれぞれ像を結ぶから,像がはっきり映る
Eレンズの一部を紙で覆うと像はどうなる?
F写像公式を導くための作図(作図のみ)

レンズの焦点など 水上さんの発表
 こちらはレンズの性質説明用パワーポイントの習作とのこと。来月の例会で完成版が披露されるというからお楽しみに。
 

W=Fsのsは? 水上さんの発表
 問題:(図(b))静止しているMに弾丸を撃ち込んだ。距離L動きdだけめり込んだときの速さをuとする。弾丸がMから受ける抵抗力の大きさがFのとき,Mがされた仕事とエネルギー変化の関係は?
水上さんの答:Mがされた仕事は FL=0.5Mu^2 

 これに対して、生徒から次のような質問があったという。
生徒の質問:Mが力を受けた距離はL+dなので、F(L+d)=0.5Mu^2 では?

 この生徒を納得させるにはどうしたらよいだろう?というのが水上さんのレポート内容だ。した仕事とされた仕事が等しくないケース、力学的エネルギーが保存しないケースだ。水上さん自身の説明は、紙版の例会速報に載る予定。


CTビューアー 山本の発表
 X線CTの検査を受けたら、その結果をデジタルデータで入手することができた。数百枚の断層写真とビューアーがセットで一枚のCDに収録されている。もはや大判フィルムを持ち歩く時代ではないのだ。ビューアーは拡大、縮小、ネガポジ反転、鏡映、回転など画像の加工がボタンをクリックするだけででき、コマ送りの他ムービーのように連続再生もできる。
 写真は胸部みぞおち付近の断面。白い部分は背骨や肋骨、黒い部分は肺の空洞、左上の灰色部分は肝臓である。CT画像は医師の視点で患者を足もとの方から見たように描かれているので、患者自身が腹部を見下ろす視点とは左右が逆になる。

大気のゆらぎ 金子さんの発表
 金子さんが元日の夜明け直前、湘南国際村のトンビ公園から、1000mmの望遠レンズで撮影した満月の入りである。この未明に観測された部分月食はわが国初の元日月食だった。かつて太陰暦を用いていた頃は晦日は必ず新月だったのである。
 それはさておき、写真の丹沢塔ノ岳に沈む月はひどくゆがんでいる。大気の屈折によるものだ。フルサイズの写真は金子さんのWebページへ。
 

横須賀高校での取り組み 金子さんの発表
 金子さんの勤務する横須賀高校では、SPPなどを活用して大学などとの連携講座を多数開講してきた。このほど葉山町の総合研究大学院大学と連携した特別講座「横高アカデミア」を新たに開講することとした。第一線の著名な学者が最先端科学の面白さや、科学的なものの見方などを高校生に語り、キャリアパスを示す。「高院連携」は珍しい。金子さんのWebページの関連記事はここ

「物理の散歩道」復刊 山本の紹介
 ロゲルギストの往年の名著「物理の散歩道」シリーズが復刊した。
 ロゲルギストとは近角総信 (C)、磯部孝 (I)、近藤正夫 (K)、木下是雄 (K2)、高橋秀俊 (T)と後から加わった大川章哉 (O)、今井功 (I2)の7名の物理系学者からなる同人名である。
 日常のちょっとした現象を科学の目で分析した小論文や、科学エッセイなどを交替で中央公論社の雑誌「自然」に連載していた。それらをまとめて岩波書店から単行本として出版したのが初代「物理の散歩道」で1963年のことである(写真上段左端)。岩波本は「第五 物理の散歩道」まで5巻を数え、さらに中央公論社から「新・物理の散歩道」シリーズ(写真下段左端)として5集(1983年刊)まで、都合10冊が世に出た。
 科学的センスを磨くのに好適な、一般向け科学書としてはたぐいまれなる名著として、当時その道で知らない人はいなかったが、絶版となって久しかった。このたび、岩波本が岩波書店から「新装版」として(写真上段)、中公本が筑摩書房からちくま学芸文庫として(写真下段)それぞれ旧書名のままであいついで復刊され、10巻が出そろった。歴史に残る名著を一気に買いそろえるチャンスだ。

二次会 衣笠駅前「お太幸 衣笠店」にて
 11人が参加してカンパーイ!。三浦半島の先端近く、地理的にはいささか遠い会場だが、それでもこれだけの人が集まった。東京湾の反対側から来た人、相模湾の対岸から来た人も集い、半月遅れで新年を祝う。あけましておめでと〜、今年もガンバロー。


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