2012年12月1日(土)愛知工業高校での例会の記録です。


 ハザードマップ (井階さん  
 東海・南海・東南海地震の発生が危惧されていますが、学校周りのハザードマップとその意味を生徒に伝えるべく、スライド教材を作りました。
 学校周辺の土地が、周りより少し高くなっている理由とその歴史を、わかりやすく説明してあります。
 
 愛知工業高校の周辺は、付近の地域よりやや高くなっています。学校近くの古社(八龍社)が庄内用水の水面より高い位置にあることが写真からもわかります。
 (階段を何段も上らないと社にいくことができません)
 
 右図は愛知工業高校の周辺のハザードマップです。
 左下の「愛工」の周囲は黄色で、浸水予測は0.5m未満です。どうしてこのあたりは周囲より高い位置にあるのでしょう。

 歴史的な変遷を調べてみました。

 江戸時代の地図を見ると、愛工周辺は庄内川と矢田川の中州でした。近くに川中という町名が残っています。

 
 昭和になり、天井川だった矢田川を低いところへ移し、氾濫に悩まされてきた川中など輪中地区を解消するため、 矢田川の流れを変えて、庄内川と併走させるようにする矢田川の改修工事が行われました。古い矢田川の河床を埋め立て、現在のやや高めの地域が出来上がりました。
 この工事は、昭和大恐慌後の雇用対策でもあったようです。

 この結果、愛工付近が、南側と地続きになり今に至っています。
 
 
 この調査は、愛工の理科―中村謙之さんによるもので、「科学と人間生活」の1学期の授業で扱いました。このページの内容は、その一部です。
各学校や生徒の地域でハザードマップなど調べてみたら面白いことが発見できるかもしれませんね。


 愛工は、平成27年に仮称「総合技術高校」として東山工業跡地に開校する予定なので、現在の愛工は平成27年度新入生から募集停止、平成28年度3月に閉校の予定です。

 歴史ある学校が閉校になってしまうのは寂しい限りです。


 磁区を作る (飯田さん  
 フェライト磁石を粉にして、小さな分子磁石が、向きがばらばらであれば磁石にはならず、向きがそろうと磁石になることを説明する実験があります。
 これを、磁区の形成で説明する方法を考えました。

 球型の小型磁石を多数用意します。
 同極を同じ色に塗りわけ、一目で買う磁石の磁界の向きがわかるようにしてあります。
 多数の磁石をケースに入れ、やさしく(?)全体を撫で回してやると、右の写真のように磁区らしきものが現れます。
 磁気シートをつかっても、磁界の向きまでは現れないので、面倒ですが、シートを重ねて手書きで球磁石の向きを書き入れていきます。
 磁気シートでは磁界の向きは見えません。   小型磁石の向きを書き入れると種種のパターンが表れます。
 全体を眺めてみると、各磁区の磁界の向きを連ねると、閉じた線になります。つまり、この磁区の配置では、磁束が外に漏れないということになります。
 この状態では磁石ではないということになります。
 磁区の磁界の向きを連ねると閉曲線が現れる。
  
 容器に磁石を近づけると、磁区の様子が変化します。
 今度は磁束は閉じずに外に漏れ出ているようになります。
 

  小型球磁石の配置により、隙間ができ、そしてそれがパターンごとに変化するので、容器を小枡に仕切り、その中に1つひとつの球磁石を入れれば良いのでは、という意見も出ましたが、容器を作る手間も膨大です。
 定性的な理解には役に立つ教材になるのではないでしょうか。

 鉄原子が磁石なのに、なぜ鉄は磁石ではないのか、鉄を磁石でこすると磁石になるのはなぜか、など目で見て理解できる教材になります。

 アルミ箔で光電効果 (奥村さん  
 光電効果を見る実験として、次のような実験があります。
  (1)箔検電器を負に帯電させ、金属板に亜鉛板をのせる。
  (2)亜鉛板に紫外線を当て、光電効果で電子を飛ばす。
  (3)箔検電器の帯電量が減少する。

 磨いた亜鉛板を使う必要があり、準備がやや手間。

 そこで、アルミ箔を使って同様の実験ができないかと工夫しました。 箔検電器にアルミ箔を載せ、負に帯電させます。

 

          箔をいっぱいに開かせておきます。
 次に、紫外線照射装置で上から紫外線を当てます。徐々に箔が閉じていきます。
 ただ、時間がかかるのが玉に瑕。

 ややしばらく観察しなければなりません。
 
 紫外線といっても波長の幅は広く、エネルギーの差も大きい。この紫外線照射装置は254nmの波長の紫外線を照射します。
 同じ紫外線でも、もっと長波長の紫外線では、アルミ箔からの光電効果は観測できません。光子のエネルギーを理解する教材としても使えそうな気がします。
   254nmの紫外線照射で光電効果が観測できます。   長波長の紫外線では光電効果は見られません。
 奥村さんが持っていた、箔検電器を負に帯電させるための器具に注目が集まりました。

 調べてみると名前は「イオン放電装置」
 対象物に向かって本体のレバーを押すとプラス、レバーを離すとマイナスに帯電させることができます。中村理科では「帯電」という名で¥3810で販売されています。
 
 どんな仕組みになっているのだろうと分解の誘惑に駆られましたが、奥村さんの拒否にあい、各自が手に入れて研究することに・・・・・。
 

 震災復興ボランティアツアー2 (井階さん  
 
先週、再度の震災復興東北ボランティアツアーに参加しました。
 今回は、牡鹿半島先端の漁村に行き、漁師の方々の作業小屋の再建に協力しました。
 
 地震の際には、半島先端が大きく崩れて地盤沈下も激しかったようです。いまでも、魚港の一部は海水で覆われます。
 家族を避難させた後、船で沖に出て津波をやり過ごしたそうです。港に帰るまで十日ほど沖で過ごさざるを得なかったようです。漂流物でスクリューなどをやられて、泣く泣く放棄した船もあったとのこと。話が生生しいですね。

  

 <参考>震災復興ボランティアツアー(井階さん)
   
 港の岸壁が沈降しており、満潮時には海水が押し寄せます。
 干潮になって海水が引くと、魚が取り残されることもあります。

 
 ボランティア皆の一日半の作業で、作業小屋をなんとか作りあげました。 


 漁師さんたちから、地震の日の出来事を聞かせてもらいました。
 

 本の紹介 (山岡さん  
 学術図書出版社から発刊された「基礎物理学」(原 康夫著 ¥2200)です。

 編集の方から、愛知物理サークルのホームページの写真(杉本さんの発表の静電気実験)を使わせてほしい、という要請があったので応諾したところ、献本という形で送っていただきました。
 大学の教科書も、カラー写真が豊富できれいになったものだと驚かされます。

 私達の研究が、学生諸君の学習のお役に立てれば、これにすぐる喜びはありません。
  

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