例会速報 2003/03/15 県立湘南台高等学校


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マイクロレーサー 加藤さんの発表
 長さ6〜7cmの小さなラジコンバイクである。コントローラーがチャージャーを兼ねていて、左の写真のようにとりつけて充電する。左右のボタンでハンドルを切ることができ、本物のバイクにはできない後退というワザも可能。電波の到達距離は5m程度だが、操縦性能は思ったよりよい。充電時間がずいぶん短いので、大容量コンデンサーを電源にしているのかもという声もあった。
 

中学の授業実践報告 平松さんの発表
 毎回恒例の授業報告。平松さんは「中学理科」の1分野の授業目次・実験一覧と、「光とそのはたらき」の授業プリントを題材として紹介し、中学理科の内容がいかに削減されているのか、という問題を提起した。

 平松さんは実験を軸に授業を組み立てているが、「新課程の中学理科では、新しい知識や法則性を導き出す内容がほぼ皆無ではないか」という疑問を禁じ得ない。平松さんの勤務校では中学受験で理科が課されており、「帰国子女2 科目受験」と「内部進学者」をのぞいた大多数の生徒は、それなりの知識量を持っている(しかも中1だから未だ風化していない)こともあり、特にその思いが強い。
 例会の席でも、「何を教えるべきか」「どういった組み立てにすべきか」という点を中心に、有意義な意見交換が行われた。

期末テストの問題から 小沢さんの発表
 授業実践の報告は定期テストを持ってくるだけでもよい討論材料になる。何を教えるかというコンセプトや、生徒がまちがえやすいポイントが明らかになるからだ。

 電気量の異なる二つの電荷がおよぼし合うクーロン力を問う問題で、それぞれの電荷にはたらく力を図示させたところ、長さの違う矢印を描いた生徒がかなりいた、という報告は示唆的だった。「大きな電荷は大きな力を受ける」、「大きな電荷からは大きな力を受ける」、はいずれも正しいが、そのどちらかの理解が欠落している場合が少なからずあるということだ。

氷酢酸 山本の発表
 純粋な酢酸の融点は17℃である。純度の高い酢酸は冬場は凍ってしまうので氷酢酸と呼ばれる。実際には静置すると過冷却状態となり融点以下でも凍らないことが多い。花岡さんは冬場に氷酢酸のビンに駒込ピペットをつっこんだところ、瞬時に凍って抜けなくなった経験があるそうだ。

 さて、酢酸の氷はご覧のように底に沈む。ほとんどの物質は固体の方が密度が高いということを知っている人には当たり前の現象なのだが、水の氷を見慣れている生徒には素朴な感動がある。水の方が特殊なのだということを示す教材として見せたいが、実は室温で固液共存する手頃な透明物質はそれほど多くない。

 演示の時には、冷凍室などで全氷結させたあと、ビンごと湯煎して半分ぐらい融かし、中の氷が自由に動く状態にして教室に持っていく。

ハブダイナモ 喜多さんの発表
 喜多さんが自転車の車軸に内蔵する発電機「ハブダイナモ」を初めて紹介してくれたのは、99年3月の例会だった。今回は車田さん提供の新型ハブダイナモの分解だ。前のはハウジングがはめ込みで大きな金槌の一撃で分解できたが、これは同じ方法では分解できず、結局金鋸で切るという荒療治に出た。基本的な構造は同じなので、なんとネジ込み型だった。製品名はSHIMANO NEXUS HB-NX20で、出力は6V 2.4W。
 

 ケースの壁面が多極着磁されている。中村理科の磁界観察シートで見るとその様子がよくわかる。上の回転子のヨークが磁束線をコイル内に導くのだ。喜多さんの解説を聞くみんなの目は真剣そのもの。

 

超常現象アンケート 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんは反科学と戦うジャパンスケプティックスの会員だ。同会がこのほど「超常現象に関する意識調査」を行うことになった。生徒用と、教員用がある。質問項目には意識編と行動編があり、前者では

血液型で性格を判断することが可能である・人は死んでも霊魂が残る・未来のことを予知できる人がいる・・・

などの質問項目があり、後者では

神社やお寺でお守りを買う・テレビの超能力特集番組を見る・相性などの占いをする・・・

などが問われる。これを、年齢、性別、校種別に統計しようという試みだ。結果が楽しみである。協力できる人は鈴木さんまで連絡をとろう。

熱力学の授業〜これからの科学教育 井上さんの発表
 井上さん自身が科学教育学会で発表し、学会誌にも掲載された「新しい社会に適応しうる物理教育の方向性」という授業研究の紹介。以下はその要旨。

 高校生と大学生が持っている環境問題に関する認識を明らかにした上で、既存の教科書に記述されている不可逆変化を中心とした熱力学第二法則について、環境問題との関連を強く意識した熱力学の授業を高等学校三年生に対して実施することを試み、彼らの環境問題に対する幅広い興味関心を大いに喚起することに成功した。
 科学技術の進歩的変化は、多くの市民がそれを認知しているか否かとは別に、食品や医療、環境やエネルギーなど、われわれの極めて身近な日常生活の中に、すでに深く浸透してきている。科学技術にまつわるすべての事柄に対して、科学的根拠に基づく適切な判断力を養成することは、新しい科学教育カリキュラムの重大な責務であるといえる。同様に物理教育についても、この重大な責務を果たさなければならないことは自明である。したがって、これからの新しい社会においては、科学技術に頼ることに対する自己責任の原則を確立すべく、生きていくために必要かつ十分な scientific literacy を自ら獲得していくことに力点を置いた、日常生活の思考的基盤を与え得る物理教育が必要であると考えられよう。

光るアンテナ大安売り 喜多さんの即売会
 喜多さんはある日、秋葉原に買出しにいった。お決まりのコースで、秋月によって、千石電商によって・・千石から出たとき、隣の店〔これも千石だが〕の店先に「光るアンテナ」が無造作に投げ込まれていた。値段のシールには\50,\80となっている。少なくとも一年前にはどんなに安くても\1500はしていたものである。これは買いだと簡単に手に出来るものをゲット。   新規に掘り出し物で出たとして、\500の値札がついていても必要ならば買ってしまうものである。

 YPCでは格安の掘り出し物を見つけたときは、迷わず大量購入して例会で分け合うことになっている。このジャンクが電波実験用として飛ぶように売れたことは言うまでもない。

ペーパークラフト波動モデル 右近さんの発表
 2002年12月例会でパーパークラフトメカニズムを総合的な学習に取り入れた実践を発表した右近さんは、波動モデル実験器の詳しい設計図を公開してくれた。かむが水平板を持ち上げて単振動をさせるためにはカムはどんな形状でなければならないのだろう。接点が水平にずれるので複雑な形になるかと思いきや、計算してみると偏心した円形のカムでよいことがわかった。この単純な結論は意外である。
 

エッグ・タイマー(ゆで具合測定器) 大谷さんの発表
 ゆでタマゴをつくる時、ゆで具合を、色の変化で知らせる料理器具。水の中にタマゴと一緒に入れてゆでると、半熟、中間、かたゆでの順にまわりの黒い部分が多くなっていき、ゆで具合が視覚的にわかる。

 タマゴとほぼ同じ大きさ、形のプラスチックでできていて、温度により色が変化する液晶が入っているようだ。外側から温度が上がり、液晶が、赤から黒に変わる。プラスチックの熱伝導率が小さいことをうまく利用している。

 お値段は、日本、英国ともに約\1000。アメリカ製なので、米国では、もっと安いはず。メーカー名: Burton Plastics社

ブンブン イルカさんの代理発表(山本)
 山口県のイルカさんこと手嶋さんから送っていただいた実験器具or遊具。太い針金の輪にゴムバンドを写真のようにかけ、グリップを持って頭の上で水平に振り回す。すると凧のうなりのようにブンブンという大きな音が聞こえてくる。輪ゴムのかけ方をわずかに変えるだけで、音が大きく変化して面白い。たくさん用意してうまく調節すると楽器として使えるかもしれない。
 音の原因は、風の向きに直角に張られた平たいゴムが、フラッタリングを起こすためらしい。二本の振動数が近ければうなりを生じ、うまく整数比になると和音として聞こえる。グリップには100円ショップの縄跳びが使えそうだ。
 

岩石の密度 山本の発表
 花崗岩、グラニュライト、玄武岩の一辺10cmの立方体標本。武蔵工大講師の萩谷宏さんから分けていただいた特注品である。地学で火成岩の組成と密度について授業するときの実験教材だ。同じ大きさにそろえてあるので、手で持った感触で密度の違いがわかる。体積がちょうど1000cm3なので、はかりに載せてkg単位で数値を読めば、そのままg/cm3単位の密度の数値が得られる。花崗岩で2.6、玄武岩で2.9ぐらいになる。10cm四角の升を用意して水と比べるとさらに効果的だろう。

 

二次会 湘南台駅前「つぼ八」にて
 本年度最後の例会となった。14名が参加してカンパーイ!鳥取からはるばる参加してくれた花岡さんを囲んで話が盛り上がる。そろそろ異動の時期。新しい職場に移る人はこれから引っ越しで忙しくなる。
 


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