例会速報 2003/02/15 川崎市青少年科学館


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公開授業での授業研究 鈴木さんの発表
 YPCの例会では、理科教育の原点を取り戻すべく、冒頭に授業研究を取り上げることにしている。去る1/10に行われた鈴木さんの公開授業には県内外から多数の見学者があった。仕事と仕事率の単元で、生徒実験を織りまぜての授業展開は逐一VTRで記録され、放課後の研究会で検討された。
 やはり、生徒の活動を入れるのが重要であること、もっと生徒の反応をつかむ工夫が必要、実験の事前準備を放課後などで生徒にやらせたらどうか、仕事率は力学で、電力は電気の分野で、と切り離すのではなく、連続して話すのがよい・・・など、例会の席でもVTRを見ながら活発な意見交換が行われた。
 

電気をスプーンですくう 山本の発表
 AdvancingPhysicsASに載っていたSensing単元の演示実験群の紹介と追試。日本の教程で言えば、静電気の単元にあたる。
 用意するものは直流高圧電源とクーロンメーター、それに絶縁棒をつけたスプーンなどと絶縁糸で吊した軽い導体球。まず、高圧電源に接続した正負の電極から、絶縁棒つきスプーンで「電荷をすくって」クーロンメーターに運んでみせる。電荷が移動可能なものだと言うことを示す演示である。電源電圧が一定なら「スプーン一杯」の電荷はいつも同じ量になり、クーロンメーターには運んだ回数に比例する電荷がたまっていく。
 この場合のスプーンは単なる孤立導体であり、スプーンである必要はない。穴があいていようと、スプーンを逆さに使おうと、電荷を運ぶのに支障はない。糸に吊した導体球でも同じことができる。

 次に、糸で吊した導体球を、二つの電極版の間に入れる。電源はYPC特製小型高圧電源を使用したので、極板間の電圧は12000Vである。
 導体球は陽極に触れるとはじかれて陰極に向かい、陰極で電子を受け取ると再びはじかれて陽極に引かれる。こうして導体球は自動的に両極間を激しく往復運動する。電荷のshuttlingである。鋭敏な電流計があれば、このときの電流を確認ができるとAPには書いてあるが、100μAの電流計ではちょっとつらい。

 最後に、導体球の役割を自由電荷の運動に置きかえる。炎はプラズマである。炎の中の正負の電荷がそれぞれ逆符号の電極に向かって運動すれば上と同じことが起こっていると言える。電極板ではさんだロウソクの炎はご覧のように横に細長く伸び、電荷が電界にそって流れるのが観察できる。炭素イオンは陽イオンなので陰極に引かれ、陰極のみがすすで黒く汚れる。
 この一連の実験により、静電気→電荷の移動→電流という関連性を理解させることができる。

Kineti Card 水野さんの発表
 青山の「からくりミュージアム」で入手したアイテム。格子模様のシートを動かすとジャガーが走っているように見える。子供の絵本などでも見かけるからくりだが、結構精密にできていて動きが滑らか。

3Dイメージング 水野さんの発表
 同じく「からくりミュージアム」で入手。だれでも見えるレンズビュワーつき立体絵はがき12枚組。立体浮世絵がなかなか面白い。

マジックカラー 水野さんの発表
 これも「からくりミュージアム」アイテム。周りを黄色のタイル模様で囲んだ赤色のタイル模様と、周りを青色のタイル模様で囲んだ赤色のタイル模様が違う色に見える。この現象は錯視といわれるもの。目から入った情報を脳が間違って判断してしまうことから起こる。穴あきの黒い表紙をかぶせてまわりのタイルを隠すと、実は同じ色だったことがわかる。
 

モーフィング 水野さんの発表
 渦巻き円盤を回して、それを15秒ほど見てから、自分の手をみると手の表面がグラグラ動いて見える。これも錯視。過去の例会ですでに紹介済みだが、何度見ても面白い。視覚はだまされやすいのだ。

 「からくりミュージアム」HPのURLは以下の通り。
 http://www5d.biglobe.ne.jp/~karakuri/

天空の城ラピュタと空想科学の機械達展 越さんの発表
  「三鷹の森 ジブリ美術館」にて、「天空の城ラピュタと空想科学の機械達展」が開催中である。
ラピュタの背景になった19世紀後半、SF、空想科学小説の祖、ジュール・ヴェルヌが活躍していたころの小説家たちが考えた空想の空飛ぶ機械などが展示されている。他にも、スラッグ峡谷のジオラマ、潜水艦カンブリア号の模型、羽ばたき飛行機アルシオーネの実物大模型など、ジブリファンならずとも、科学や機械が好きな人ならワクワクするような展示だ。

 ジブリ美術館のホームページは下記URLへ。
http://www.ghibli-museum.jp/index.html

スターリングエンジン・ジャンピングミニ 越さんの発表
 越さんは、11月の科教協関東ブロック大会(水戸)で刺激を受け、土浦工業高校の理科研究部の小林義行先生が作られたスターリングエンジンをもとに、針金とストローを用い、さらに簡単に作れるように改良をこころみた。
 
 フリーピストン型、シリンダは試験管、ディスプレーサーとしてスチールウールを用いる基本設計は小林先生のものと同じである。ハンドバーナーで試験管の上部を熱すると、1分間ほど振動を続け、数メートル動く。このタイプは動力の伝達の機械部分がないので簡単に作れる。
 
 詳しくは以下のページを。色々なタイプが作られていて、見るだけでも面白い。

小林義行先生のWebページ:http://members.jcom.home.ne.jp/kobysh/
土浦工業高校理科研究部のページ:http://members.jcom.home.ne.jp/rikaken/

放射性人間になった話 山本の発表
 「ガリウムシンチ」と呼ばれる医学検査を受ける機会があった。半減期3.26日の放射性元素ガリウム67(67Ga)をトレーサーとして静脈注射し、3日後に造影検査を受ける。67Gaが体内で放つγ線または特性X線をキャッチして画像化する。これをシンチグラムという。下の写真はその撮影に使用されるシンチカメラ(ガンマカメラとも言う)である。左は全身撮影用で、センサ部が上下にあり、ベッドを挟み込むようにして移動しながら撮影する。右は特定部位の撮影用。丸い部分がセンサである。

 さて、67Gaを投与されて「放射性人間」になるのはめったにないチャンスだ。自分の体を線源として、GMカウンターを使っていろいろな測定をこころみた。左は使用したGMカウンターで、標準線源としてユークセン石を測定しているところ。相対値でバックグラウンド10〜20に対し、ユークセン石は至近距離で5000ぐらいのカウントを示す。
 医師の話では胸部X線撮影より被曝量は少ないということだったが、67Ga投与直後に身体が発していたγ線は、10000カウントを楽に越えていた。バックグラウンドの約1000倍という線量には驚いたが、身体への影響は特になかったようだ。
 測定を続けると、線量は3.26日という半減期に従って公式通りに減少していく。距離依存性などでも興味深い結果が得られた。
 詳しくは、次号YPCニュースで報告する。

英国科学教育協会年会の報告 大谷さんの発表
 お正月に英国科学教育協会の年会に参加してきた大谷さんの報告第二弾。パビリオンでもらった教材カタログの中にこんな電気回路の実験キットがあった。
チューターキット・エレクトロニクス・システム ユニットS10(Limrose Electronics 社)価格:60ポンド(約12000円)
15cm×20cmくらいで、厚み4cmくらいの箱型。 ランプの他、ブザー、LED(赤、緑)、モーター、抵抗、可変抵抗、トランジスタなど、教科書にでてくる回路素子や測定器が一つにパッケージされていて、ボード上で配線するだけですぐに教科書通りの測定ができる。
 わが国でも、教科書と実験教材を密にリンクさせることにもっと努力が払われるべきだと思う。


新・観察実験大事典「化学編」 堀さんの発表
 東京書籍の同名の本の映像版で、DVD7枚組みのソフトがまもなく発売される。内容は下記の通り。

(1)基礎操作、物質の状態、物質の溶解
(2)物質の構造、化学変化、気体の性質
(3)化合と分解、イオン
(4)酸とアルカリ、金属、非金属
(5)有機物質
(6)環境、資料
(7)生活と化学

 項目数は7巻合わせて240、実験数は1000近くある。各ディスクには動画3時間相当と実験道具リスト、薬品情報などの文字情報が載っている。圧倒的な情報量で全分野を網羅した実験動画集の決定版とも言える映像ソフトである。

 現在編集作業は最終段階を迎えており、発売は東京書籍の教材代理店を通じ、まず3月に(3)〜(5)が先行発売され、4月に(6)(7)、5月に(1)(2)が発売される予定。

アルソミトラ 加藤さんの発表
 山梨県立科学館が子供向けの実験教室で使用した教材である。薄い発泡材の梱包シートを型の通り切り抜き、おもりのシールを貼ると、アルソミトラのタネの模型や鳥型グライダーが簡単に作れる。

二次会 向ヶ丘遊園駅前「つぼ八」にて
 12名が参加しておつかれさん。今回の例会会場は初めての場所だった。こうして、いろいろな会場をジプシーして見て歩くのも例会の楽しみの一つだ。さて、この次はどこを開拓しようか。


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