例会速報 2005/02/20 慶応義塾高校
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授業研究:ふだんのただの授業 鈴木さんの発表
鈴木さんは、前任校でビデオ撮りをして自らの授業を検討してきた。現任校ではなかなか機会をつかめなかったが、とにかくふだんの授業を撮ることから再開しようと考えた。サークルで見てもらうためと思えば、重い足も踏み出せる。同僚に撮影を頼み、ふだんのただの授業を撮ってもらった。
例会では、このビデオを見ながら検討会を行ったが、発問の仕方や演示の見せ方などに、「ここならこう見せるべき、どうし
てこれを見せないのか」など、鋭い指摘が続出した。「恥をしのんで」と鈴木さんは言うが、授業改善につながる勇気あるレポートだった。以下、鈴木さん自身の反省の弁。
「例会の出席者からの鋭い指摘に対し、準備時間の少なさ、忙しさを言い訳にしてしまう自分がいて、反省してしまう。研究授業ではなく人に見せるためでもない授業は、こんなものだという情けない状況を露呈してしまった。これではいけないとあらためて痛感した。毎日の授業を大事にすることの重要性を再確認した。授業実践レポートは、レポーターが一番得をする、といつも言ってきた。鈴木が恥ずかしげもなくこんな授業を見せたのだから、みなさんもどんどん見せて欲しいと思う。」
Wave Spectra 徳永さんの発表
音声信号をFFT(高速フーリエ変換)して、リアルタイムにその周波数成分を表示するフリーソフト。
http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/index.html
から無料でダウンロードできる。周波数成分をポインターで指すと数値が表示されるので、演示で使うと簡単に数値を示すことができて便利。おんさに錘をつけたときの振動数の変化や、「うなり」の振動数の成分がわかる。写真はおんさを鳴らしたときのオシロスコープウィンドウ(上段)と、FFTウィンドウ(下段)。
LC共振回路 山田さんの発表
ファンクションジェネレータは出力インピーダンスが高く、負荷により波形がゆがみにくいので、電気回路の演示に優れた性能を発揮する。
今回山田さんが見せてくれたのは、コイルのリアクタンスによる電流・電圧の位相変化と、LC振動回路の動作である。下右のオシロスコープ画面では減衰振動の過渡的応答がはっきりととらえられている。入力した矩形波の周波数は400Hz程度である。
アルミ板による光電効果の実験 宮崎さんと平野さんの発表
「はく検電器を使った光電効果の実験では,よく磨いた亜鉛板を用いる」と教科書には書いてある。これは亜鉛の仕事関数が小さいため,光電子が飛び出しやすいからだ。
「殺菌灯ならできるだろうけど、普通の紫外線灯では・・」との声の中、市販の光電効果実験器のランプを当てると、負に帯電させたはくは閉じていった。アルミ板(アルミホイルでも可),銅板,ステンレス板でも光電効果が観察できる。
そこで「一円玉でもできるのでは?」とスポンジたわしで良く磨いて実験すると、1枚ではあまり変化がなく、2枚以上なら紫外線灯でも光電効果の確認ができた。身近な金属でも光電効果が確認できるということだ。
また,光源の出す紫外線の振動数が十分大きければ,頭部に金属板をのせなくても、はく検電器だけでも光電効果が起こることがわかった(写真下左)。ブラックライト(UVB)を用いた場合(下右)は,亜鉛板とアルミ板はOKだが,銅板やステンレス板および検電器だけはだめだった。
もう一つおまけで、右近さんが紹介してくれた実験。箔検電気につないだ金属板に紫外線を当て、飛び出した光電子を、ラップで剥離帯電させたアルミ缶(正に帯電)で吸い取るようにすると、検電器の箔は次第に開いていく。
紙箔検電器 山本による湯口さんの代理発表
例会前日に麻布高校で開かれた埼玉のよせなべ物理サークルで、湯口さんが見せてくれた実験の伝達講習を行った。
発泡トレーの上においた空き缶の側面に適当な大きさの紙片を、二本の木綿糸をヒンジのようにしてはりつける。接着はセロテープでよいが、糸の部分がしなやかに曲がることがポイントだ。ティッシュなどでこすった塩ビ管を、プルタブに近づけると写真のように紙片が浮き上がる。紙の箔検電器というわけだ。これなら生徒めいめいに道具を持たせて実験させることができる。
なお、塩ビ管を近づけただけでは紙箔は開かない。こすりつけるようにして缶に電荷を与える必要がある。また発泡トレーがないと電荷はリークしてしまう。
穴あき花挿し・ふれあい水槽 鈴木さんによる野呂さんの代理発表
青森の野呂茂樹先生からの紹介である。水族館で壁にあいた穴から手を突っ込んで魚をさわれる「ふれあい水槽」というものがあるのをご存じだろうか。小鳥用の給水器と同じ原理だ。穴より上方を気密にすることで、穴より上部の水圧は1気圧以下となり、穴のところでちょうど大気圧とつりあって水はあふれない。
写真のようにペットボトルの一部を切って中に押し込むことで簡単に「ミニふれあい水槽」を作ることができる。野呂さんによる資料は次号YPCニュースに掲載するのでご覧いただきたい。
どこどこ?セブンと立体視 越さんの発表
越さんは3Dプラネタリウムでおなじみの金沢のヒゲキタさんから教わったという、立体視を用いたまちがい探しのやり方を披露してくれた。
まちがい探しの2枚の写真や絵を交差法によって同時に見る。すると、違う箇所だけがちらついて見え、すぐに見つかる。「どこどこ?セブン」(自由国民社1365円、シリーズ1〜4、1が一番難しい)は写真版の難易度の高い間違い探しだが、一般的な絵のまちがい探しでもこの方法は使える。「どこどこ?セブン」のような写真の間違い探しは、文化祭などの画としても使えそうである。
この方法は、天文学の世界ではずっと前から新天体の捜索に応用されていた。時間をずらして同じ領域を写した2枚の写真乾板を、コンパレータという装置で同時または交互に見ることにより、彗星・小惑星や新星を検出するのである。YPC-MLでも朝日さんが紹介していた方法だ。
立方体の浮上姿勢 古川さん、加藤俊さん、坂本さんの発表
前回の例会で紹介された立方体の浮上姿勢は興味深い現象で、YPCでも複数の人たちがそれぞれの得意な手段でのアプローチを試みている。
加藤俊さんはグリセリンと砂糖の溶液にアクリルを浮かせる実験を再現してくれた。アクリルキューブをあらかじめコップのそこにつけておき上から液を注ぐとブロックは浮上しない。あとから入れた同じブロックはちゃんと浮く。下からの圧力がないと浮力が得られないということの実証だ。
古川さんは計算で、密度0.5を境に安定姿勢が変わりそうだという結果を得た。密度0.5ちょうどは不定になるという結論だったが、別の計算結果も示されて、さらに宿題となった。
坂本さんは、お得意のプログラミングでアプローチ。シミュレーションモデルを作成してコンピュータ上で実験をやってみた。5×5=25点の質点からなる正方形という、かなり簡略化をした単純なモデルだが、画面で見る限りその運動にはかなりリアリティがあり、現象の本質を押さえていると思われる。シミュレーションでも、実際の実験と同じように密度 0.2と0.8を境に水平状態になった。0.75などでは、左右2つの安定状態があり、0.5では1つの安定状態になるという。坂本さんはJavaAppletで動作するモデルをhttp://www.vlab.jp/のサンプルリンク(サンプル1)で公開してくれているので、興味のある方は実際に試してみるとよい。
ガチャピョンマグネット 加藤俊さんの発表
前回の二次会で加藤さんが一部の人に見せていた飛び出すキティちゃん。下に鉄があると中の磁石が動いててこ仕掛けでキティちゃん持ち上げるらしい。加藤さんはナイフの上においたキティちゃんが、念力で顔を出すようにみえる演出を紹介してくれた。
多面体ユニット 加藤俊さんの発表
百円ショップ「ダイソー」のおもちゃコーナーにあったというおもちゃ。チョロQのようなレーシングカーとセットになったコースの組み立てユニットなのだが、辺の長さの等しい正方形と正三角形がそれぞれ6枚ずつ入っていて、多面体を組み立ててあそぶのに使えそうだ。
アインシュタインのカレンダー 市江さんの発表
今年は「奇跡の年」から百年を記念して「国際物理年」、アインシュタインが主役の年だ。そのアインシュタインのスナップを集めたカレンダーがAvalanche Publishing
から出版されている。物理実験室のアクセサリーにいかがだろう。YPCでは市江さんの斡旋で共同購入が決まった。
インタラクティブアート 竹内さんの発表
竹内さんがビデオで取材し、紹介してくれたのは、広島市大のインタラクティブアート展。エクスプロラトリアム的な、観客の働きかけによって変化するアートが多数展示されている。写真は観客が手を差し出すと蝶が花から花へ飛び回る作品。
放射温度計 渡辺さんの発表
東急ハンズで放射温度計が3,000円で販売されていたという紹介である。放射温度計は、測定がすばやくでき、ちょっと温度を測りたいときに便利である。以前に、例会で紹介されたものとは異なるデザインだ。現在、同じような価格で何種類か出ているらしい。
ゾルとゲル 渡辺さんの発表
渡辺さんは、振動などの物理的状況により、ゾルになったりゲルになったり、両方の性質を持った現象の見られるものを対比的に紹介してくれた。
左の写真の右側は、スメクタイトという溶液。モンモリロナイトという粘土鉱物の粉末を水に溶かし、3%の溶液を作ると、振ればゾル、止めればゲルという現象を見ることができる。これをチキソトロピーという。身近には、ケチャップ、マヨネーズなどで体験できる。
左の写真の左側は、片栗粉である。片栗粉10gに水を8mlくらい入れると、ゆっくり動かせば液体、速く動かすと固体のような状態になる。これをダイラタンシーという。こちらは右の写真のように指を入れてさわってみると手触りがおもしろい。
岩波の「科学」のアインシュタイン特集 徳永さんの発表
2005年は「世界物理年」で、アインシュタインの三部作が発表された「奇跡の年」から百年目にあたる。その特集が2月号と3月号で組まれている。記事「特集 アインシュタイン奇跡の年から100年 世界物理年 (上)」1580円。3月号は現在発売中。
二次会 日吉駅前浜銀通り「龍行酒家」にて
17人が参加してカンパーイ!日吉といえばこのお店。人数の直前変更など無理がきき、格安の料金で一定の量を食べられるので、YPCにはうってつけのお店。紹興酒「女児紅」がうまい。飲み会の席でも妙なことをするので、よく店員ににらまれるYPCだが、ここは常連なので笑って見過ごしてくれる(^^)。
さて、二次会の席でも、持ち込みネタの発表は続く。左は加藤さんのアイテム。フラーレンのようなボールが入れ子になった構造だが、継ぎ目が見あたらない。まるで透かし彫りの工芸品のようだが、どうやって作ったのだろう。
右は越さんが持ち込んだ「泡マグ」。図形や文字の形に泡が浮き出てくる陶器製のビールグラス。底に図形や文字の形に上薬が塗られていないザラザラな部分があり、少しビールを注ぎ静かに放置すると、その図形や文字の形に泡が現れる。細かい凹凸が発泡の核になることを利用している。ハート形の他に、「愛」、「泡」などの漢字もある。東急ハンズなどで1890円は少々高め。
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