例会速報 2006/10/22 慶應義塾高校


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授業研究:物理Iの力学 小沢さんの発表
 今回は小沢さんの授業研究。2年生の物理T、運動方程式までの力学の授業の報告があった。
 小沢さんは、課題を出して、たっぷり時間をとってノートに考えを書かせ、意見を交換して実験で決着をつけるという、到達目標・学習課題方式で行っている。この方式では、生徒が考えるに値するような課題を適切に配列することが最重要なので、例会ではその観点で意見交換した。
 「体重計の上で、急にしゃがみ込みはじめたとき、体重計の指す値はどうなるか?」という課題は意外性があっておもしろいが、生徒が獲得している認識の段階を踏まえると、少し飛躍があるのではないかなど、活発な意見が交わされた。

弦の振動(演示用) 水上さんの発表
 黒板上に直径4oほどのゴム管を張って,長さ1.2m程度の弦を作り,基本振動,2倍振動・・・の形を提示する。駒を端からn分の1の節になる位置にセットして弾けば弦はn倍振動になる。駆動装置はなく、指で弾くだけなので教室に手軽に持ち込むことができ、大型なので教室の後ろからでも良く見える。
 

コンデンサーの電気量保存 水上さんの発表
 コンデンサーで,スイッチ切り替えの際に電気量Qが保存される事を黒板上で演示する。誤差は1%未満。コツは下記の2点。

(1)容量Cは電気容量計で測定する。
(2)1000μF以上のコンデンサー(テスター電圧計の内部抵抗は10MΩ以上のため,10秒経過しても測定電流による端子電圧変化は1mV以下)

 なおメーターはビデオカメラ+テレビで表示。データはエクセルを300%ズームでプロジェクターに投影して直ちに計算結果を示している。


 

バランス 水野さんの発表
 この夏、水野さんが家族旅行で宿泊したホテルの特設展示会場で見つけたという商品。
『CARLMERTENS(カールメルテンス)の【balance】(バランス)タンブラー 』。ステンレス製で中空の二重構造になっているらしく、比較的軽い。内側の凹部が偏心していて、テーブルの上に置くと、中に何も入れない状態では写真のように傾いて静止する。


 徐々に液体を入れていくと・・・
 途中八分目ほど入ったところで、やおらまっすぐに立つ。液体を注ぐことによって重心が移動するのだが、その変化がけっこう劇的に起こる。実用的には、容器が傾いていれば、お酒などが空だということがわかる。

 底は球面だが、写真のように液体を満たして水平になった状態は、かなり安定感があってそれほどぐらぐらしない。ネットでも販売されているが、6,000円はちと高いか。


米国の理科教材会社紹介 小河原さんの発表
 2月例会で紹介のあった、小河原さんお気に入りの理科教材会社Educational Innovationsは、日本にはないタイプの、おもちゃのような商品の品揃えが豊富な会社だったが、米国にももちろん日本のような理科教材会社もある。それが、例えば今回紹介してくれたArbor Scientificなどである。ドップラーボールは、カバーがないものの$15だった。ブームワッカーは、日本名ドレミパイプで検索すれば、\3200円程度(1オクターブ下がるふたは別売り\1000)でネット購入できるとのこと。カタログを見るのは楽しいが、送料が気になるところ。
 

ネコ回るシステム 越さんの発表
 越さんは、河口湖オルゴールの森で購入したオルゴールを紹介した。回転台の上でネコが台の回転とは逆周りに公転しながら、結構速く自転もする。台の下側で磁石が台とは逆周りに回っていて、それに引きずられてネコが公転するのだが、その際、ネコが受ける摩擦力と磁気力が偶力をなして自転するらしい。

 写真下はビジュアルシートで磁界を観察しているところ。写真でもはっきりせず、分解していないので確証はないが、ネコ内の磁石はリング状のもののほうが良く自転すると思われる。なお、回転台内の周辺部を動いている磁石はS、回転台の中心部はN、猫はN極の極性を示した。ちなみに、オルゴールの曲はジブリの「いつも何度でも」。

 河口湖オルゴールの森は、機械仕掛けのアンティークオルゴールや自動演奏のオルガンなど、そのメカニズムを見るだけでも面白い。

 

ケン玉の物理 越さんの発表
 越さんは、自称けん玉道初段。授業でも、糸につるされた物体の授業で、やおらけん玉を取り出し、糸の張力T、重力mg、などど説明している。また、円すい振り子の説明では、けん玉を持つ右手を高く挙げ、自分が回りながら玉を見ると、玉に遠心力が働いたように見える、などと生徒を惹きつける。
 けん玉の技には物理の法則が使われている。
・止めけんは、玉を回転させると、角運動量保存則により、穴の向きが変わらないので、けんを差し易い。
・居合いけん(止めけんの応用で、玉は静止させ、けんを一気に玉の下に移動させ、ほとんど玉が落下しないうちにけんに差す)では慣性の法則。
・振りけんで、玉の穴が手前側に向いてくることを物理的に説明すると次のようになる。振り子を振るように玉を手前から振り、一番遠くなったあたりで、糸をツンと手前に引くと、その後糸は弛む。はじめ振り子のように振ったときの玉の自転の角運動量は糸が緩んでも保存し、自然に穴が手前側に向いてくる。また、ツンと引いたことにより、玉の重心運動は、手前に向かう斜方投射となり、戻ってくる。穴がこちらを向いたタイミングでけんで受け止めればよい。
 例会で披露された越さんの妙技の動画はここ。けん玉の技などについては、NKK(日本けん玉協会)のHPが参考になる。このHPには、技の動画がある。また、日本一(世界一)のけん玉パフォーマー、伊藤佑介さんのHPはこちら

 バンダイのハイパーヨーヨーが流行っていた頃、それに対抗してタカラ(現在のタカラトミー)が売り出した「デジケン」、こちらは、玉をけんに差したり、皿にのせるとドラム音が鳴る。また、ラップのリズムにのってけん玉をすることが出来る機能付き。デジケンミニもある。どちらも現在では入手困難だ。詳しい解説はここ

新パスポート 車田さんの発表
 外務省は2006年3月20日から新しいタイプのパスポートの申請受付を開始した。このパスポート(IC旅券)には、これまで以上に偽変造が難しくなるよう様々な工夫が施されている。一番の特徴はIC(集積回路)を搭載し、国籍や名前、生年月日など旅券面の身分事項のほか、所持人の顔写真を電磁的に記録していることだ。
 車田さんはこの夏休みに関東学院高校ハワイ島理科研修旅行に同行の際、IC旅券を作った。成田空港のJALのカウンターでは、IC旅券のシステムはまだ導入されていなかったという。
 ところで、旅行先で同室だったYPCの神谷さんが、たまたま(いつも)持っていたブラックライトを当てたところ写真の右に自分の写真が浮かび上がった。外務省のHPではこの蛍光写真のことは公表されていない。
 それにしても「いつもブラックライトを持ち歩いている」なんて・・・(^^;)

折りたたみ式竹とんぼ製品版 小河原さんの発表
 娘の友達が持っていたので、ついつい米国のスーパーで買ってしまったという、竹とんぼ類似のおもちゃ。ひもを引いて回転させると、遠心力で羽が広がり、ライトが点灯する。本体が大きい割に、結構上のほうまで飛んでいた。値段は$12程度とのこと。
 

米国土産頒布第3弾 小河原さんの無料配布
 米国で研究会に参加した際、教科書会社からもらった物理の教科書が、お土産として無料配布された。日本の教科書、参考書、問題集が一緒になったような立派なハードカバーで、なんと質量は1.8 kgほど。米国では、小学生からバックパックで、重い教科書を持ち歩くそうである。じゃんけん争奪戦に勝利した3名が、この重いお土産をゲットした。
 

物理の概念評価 宮崎さんの発表
 先月、宮崎さんが紹介した物理概念の評価問題をご自身の勤務校で行った結果が示された。
 2年と3年では結果に違いがあり、放物運動を学習する前と後での違いかと思われるが、詳しい分析はまだされていない。各校でのデータが集まると、授業の違いの差が出てくるかもしれない。

 これからデータをお送りいただける方は、「私の今回の資料のように、生徒が各問いになんと答えたか選択肢の記号を並べた形でエクセルファイルでいただけるとありがたいです。ご協力をお願いします。」とのこと。

電電宮 小沢さんの発表
 数研出版が学校に配布している「サイエンスネット」という数ページの小冊子を見て、京都嵐山に電電明神を祭る電電宮という隠れた理系スポットがあることを知った。それによると、「電電明神とは、陰陽融合による光源の祖神として、古来崇められてきた神であって、今日の言葉でいうなら電気電波の祖神と言うことができる。」のだそうである。この記事はネット上でも見られる。(「電気学の先駆者たち」西條敏美)
 小沢さんは、ちょうど関西方面に出かける機会があったので取材に立ち寄った。渡月橋に近い法輪寺の中にある。境内にはヘルツ(左)とエジソン(右)のレリーフも祀られている。中央の多宝塔は電電塔というのだそうだ。
 

 お土産に「電気・電波のまもり神」のお守りも買ってきた。売り場では、祈祷も受け付けているようで、「○○証券取引所システム安定稼働祈願」のような切実な願い事も貼ってあったそうだ。

電池の寿命 山本の発表
 「同じ豆電球に、電池を1個つないだときと、2個つないだときとで、電池はどちらが長持ちするの?」小学生にそう問われたら、あなたはどう答えるだろうか。2個並列なら明らかに長持ちしそうだと直感するが、直列ならどうだろう。
 仮に、電球ではなくオームの法則に従う抵抗に、理想的な(内部抵抗0,起電力一定)の電池をつないだとすると、2個直列なら電圧2倍で電流も2倍、消費電力は4倍だから電池寿命は半分となる。ただし電池は1個あたり等しいエネルギーを供給するものと考える。
 現実の電球は非オーム抵抗である。例えば2個直列で電圧2倍に対し、√2倍の電流が流れたと考えよう。この場合消費電力は2√2倍で、電池寿命は1本の時の7割ぐらいという計算だ。やはり直列の方が寿命が短いようだ。
 さらに、現実の電池(内部抵抗あり、起電力が時間と共に低下)を用いて、電球が「光っている」時間を比べたらどうだろう。けっこういい勝負なのではないか。逆に直列の方が長く光るかも・・・。この問題は奥の深いよい探究課題になりそうだ。ぜひ実験してみてほしい。

二次会 日吉駅前「わらわら」にて
 12名が集まって、カンパーイ!物理と教育を語りながら夜は更けていく。その後さらにカラオケボックスで「音波研究」にいそしむ一団もあったと聞く・・・(^^)。


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