例会速報 2006/11/11 慶應義塾高校


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授業研究:オープンキャンパスでの浮力の授業 水野さんの発表
 水野さんの勤務校で、来年春に受験を考えている小学校6年生を主な対象に行った「浮力」の授業をDVDで披露してもらい、批評会を行った。

写真左:新しい玉子は水に沈むが、何年も冷蔵庫内に保管した古い玉子は浮く。水分が抜けて内部が空洞になっているからである。

写真下左:水銀には鉄球も浮く

写真下右:科学部の生徒による熱気球の実験披露
 
以下は水野さん自身によるコメント。

 授業時間30分という制約がある上、「浮力」自体がやや難しいテーマであり、説明も小学生には難しい表現が所々にあった。例会参加のみなさんからは、以下のような貴重なアドバイスを頂いた。これらのアドバイスも参考に、次回はもう少し工夫をして臨みたい。

「説明が多すぎだから、図をパワーポイントにして使うと、もう少しわかりやすくなったのではないか」
「参加者と一緒に実験を楽しむ、工作したものを持ち帰るなど、もっと楽しめるようにしたらどうか」
「物体を水に沈めると、沈めた体積分の水の重さが浮力になることを、その場で実験で示したら、もっと理解が得られたのではないか」
「『水の浮力』という表現を使っているが『水から物体が受ける力=浮力』『水からの浮力』という表現の方が正確ではないか」
「水銀は劇薬だということを明確に説明すべき」
「水銀を参加者に回すときには、ガラスビンではなく、割れない容器にするとか、水銀中に手を入れるときには、ゴム手袋を使うなど配慮が必要だろう」
「水銀を使った後は、すぐに密閉容器にもどすべきだろう」
「水槽内で演示するときは、参加者がそこに注目できるように、水槽の反対側には何も置かない方がよかった」

イグ・ノーベル賞2006物理学賞 佐藤さんの発表
 「乾燥スパゲティを曲げると,2つに折れるのではなく大抵破片が3つ以上になる(2ヶ所以上で折れる)」現象についての考察が本年度「イグ・ノーベル賞」を受賞した。
 実際やってみると2つに折れることも多いが(^^;)何度もやっていると、時々長い破片・短い破片・長い破片、のように真ん中に小さな破片ができる。おそばや讃岐うどんでも同様での結果が得られた。論文(Phys. Rev. Lett. 95, 095505 (2005)によると、1ヶ所目が折れると、折れた場所から波(折れた時の曲率より大きな曲率になるような振幅を持つ波)が生じ、振幅が最も大きい波と反射波が重なるところで2ヶ所目が折れる…の繰り返しのようだ。
 

かんたん紙スプーンブーメラン 佐藤さんの紹介
 今年の科教協全国大会お楽しみ広場にて、北海道の長谷川先生より教えて頂いたというブーメラン工作。ヨーグルトなどについてくる紙スプーンをホチキスでとめるだけで簡単に高性能ブーメランが作れる。翼のひねり具合、そり具合を変えることで飛距離・回転・上昇しやすが変わる。翼をゆるやかに凸部を作るように曲げると上手く飛ぶようだ。
 飛ばすときは翼の一端をつまみ、手首を大きく曲げて回転を与えるようにする。調整の仕方、飛ばし方等様々な工夫ができ、奥が深い。紙スプーンはや、シンギで購入できるそうだ。シンギの製品は、プラスチックの使い捨て食器を扱っているパッケージプラザでも売られている。
 長谷川先生のオリジナルブーメランは、紙スプーンブーメランだけでなく発砲トレイブーメラン、木製ブーメランと続く。
 

「ネコ回るシステム」の探究 喜多さんの発表
 10月例会で越さんが発表した回転台の上のネコが回転するオルゴール、簡単に分解できないようなので、以前、徳永さんが紹介してくれたものと、同じものを喜多さんが持ってきてくれた。それは、小樽オルゴール堂で購入したミラクルオルゴール。
 三つの磁石のうち、中央の磁石の磁極は両端のものは逆の極性、即ち、回転する八角の底に付いている磁極と同極である。Sさんが真ん中の磁石を外そうよと喜多さんに進言。若干の躊躇が喜多さんの顔に顕れるが、そこはYPC精神、直ちに固定してある爪の部分をペンチで緩める。
 
 結果的に、中央の磁石がない状態でも同じような動きが生じた。また、ペットボトルのキャップに小さなリング磁石を入れても、ある程度の回転が生じた。回転台との摩擦で少し力が加わるだけで八角柱の回転子は傾きが生じ、回転磁極によって引かれる力と回転台との摩擦力が同一直線上から外れ、モーメントを生んでいるようだ。どうやら回転子のわずかな傾きがポイントらしい。中央に磁石があれば、最初から傾きが生じ、直ちに回転し始める。中央の磁石は動き始めから確実な回転をさせるために補助的にはたらいているといえそうだ。

エアロソアラ 越さんの発表
 質量わずか3.5gの赤外線リモコン室内用飛行機エアロソアラが、タカラトミーより発売されている。超小型モーターの回転数を変えることにより上昇、下降。コイルと磁石によりラダーを動かし、左右旋回。このコイルと磁石を利用し、充電完了時の音を出している。電源として小型大容量のコンデンサーが機体先端部に内蔵されている。回転半径3mと教室内で飛ばす事ができ、一般的な飛行機の話や赤外線の利用例として授業に取り入れる事ができる。また、パッケージには、東大工学部の鈴木慎二先生のコメントが書かれている。
 
 モーターやラダー駆動機構は強力なネオジム磁石が開発されたことによりここまで小型軽量化できた。大容量コンデンサーも含め、おもちゃながら技術の粋が尽くされている。例会の会場内をふわりふわりと飛翔する姿に歓声が上がった。

キューステア(Q-STEER) 越さんの発表
 今年10月にタカラトミーより発売されたQステアは、赤外線リモコンのチョロQ。大きさはゼンマイのものと同じだが多少重い。滑りやすい床で、急停止時に前輪を左右に切れば、後輪がロックしているのでスピンターンができる。本体後部にコインを挟めばウイリー走行をする。専用リモコン以外でも、ソフトをダウンロードすれば携帯電話(機種の制限あり)の赤外線通信を利用して操縦できる。自動操縦のダンスモードが面白い。赤外線リモコンなので、発光部を本体に向けておく必要がある。人気商品に付き、現在品薄状態。

 

ピンポンキャノン 小河原さんの発表
 2004年のAAPT夏季大会で見た、大気圧でピンポン玉を加速させる実験を、日本で手に入る材料を使って、小河原さんが再現した。
 まず、3 mのアクリルパイプを用意し、中の片側にピンポン玉を入れてから幅広の両端をセロテープでふさぐ。そして、真空ポンプで中の空気を抜き、ピンポン玉に近い方のセロテープを鋭利なもので突き破る。すると、大気圧による100 N強の力で、3 mもの距離にわたって加速されたピンポン球の終端速度はなんと300 m/s近くになり、ピンポン玉が空き缶を打ち抜いてしまう………
 
はずだったが、例会ではなぜか終端速度が100m/s程度にとどまり、貫通にまでは至らなかった。とはいえ、大音響と共に目にもとまらぬ速さで空き缶を衝撃するピンポン球はなかなかの迫力。
 いろいろ試行錯誤の末、ピンポン玉とパイプ内径の差が1 mm程度のとき、予備実験ではきちんと成功したとのこと。詳細は、次号YPCニュースの記事を参照しよう。

厚高ー左手の法則 水上さんの発表
 写真のとおり,磁束線を横切る導体棒に生じる誘導起電力の正負を手軽に判断する方法である。「導体棒を手で押す」と考える。何人かの生徒が「これ,使えますね」と声をかけてくれたという。なかなか評判のようだ。

弦の振動 水上さんの発表
 黄色い水糸を付けたスピーカーを,低周波発振器ソフト+オーディオアンプで駆動し,写真右のように黒板に貼り付けて,n倍振動数のとき腹の数がn個になることを演示する。おもりの個数を変えて、弦を伝わる波の速さが張力の平方根に比例することを半定量的に示すこともできる。写真左はスピーカーを弦と平行に振動させた場合で,同じ振動数でも腹の数が半分になる。
 

MP3プレーヤーで気柱共鳴 鈴木亮太郎さんの発表
 鈴木さんは1月例会で山本が紹介した「気柱共鳴実験の音源」の発表を参考に、最近安価になってきたmp3プレーヤーを音源にする方法を生徒実験として実践した。
 具体的にはフリーソフトwavegane にてwavファイルを生成し、それを Windows Media Player で wma ファイルに変換(mp3でも可)、mp3プレーヤー(Novac社 MP301, 128MB内蔵メモリ7月時点で実売約2,400円)に記録する。安いので班の数分用意できる。付属のイヤホンを音源として生徒実験を行い、おおむね良好な結果を得た。各班の音源の振動数はすべて変え、測定結果により当てさせる方式をとったところ好評だった。
 

Heart Warmer 100円ショップ版 佐藤さんの発表
 1996年2月例会の山本の発表「使い捨てないカイロ」、2004年1月例会の山本の発表「Heart Warmer」の100円ショップ版。酢酸ナトリウムの過飽和水溶液(室温では過冷却状態で液体のまま)が、金属板のトリガーを折り曲げるとその衝撃で核を生じ、一気に結晶化され凝固熱が発生する。湯煎で結晶を溶かせば何度でも使える。
 「なんども使えるふしぎなカイロ ECO WARMER」という名前でキャン☆ドゥに出ていた。ハート型とうさぎ型がある。手のひらに収まるくらいの大きさで(100円分の大きさ?)、約30分暖かさ(約40度)が持続する。自作もできるが、百円なら作るより安い。写真右はトリガーから結晶化が広がっている様子。
 

文化祭でホバークラフト製作 車田さんの発表
 三浦高校のささりんどう祭(文化祭の名称)のために機械科の先生が授業を通して作成した生徒作品。以前、例会で越さんが発表した、文化祭でのホバークラフ製作資料等を参考に、掃除機のモーターを主力エンジンとした一人乗り(体重60Kg)のものを製作した。浮上実験からノウハウを積み上げたが、カウリングはベニアを湾曲させて曲面を綺麗に加工したところは、さすがは工業科と評判が高かった。機械工作は御手のものだ。浮上は比較的簡単だったようだが推進には産業用扇風機のファンを使うなど苦労の跡がうかがえる。
 

ソコロフ論文の解説 宮崎さんの発表
 宮崎さんは、京都女子高の笠潤平先生による和訳をもとにオレゴン大学のソコロフとタフト大学のソーントンの論文「力と運動の概念評価問題(ニュートン力学の学習評価)」について、自校の生徒のデータ分析も示しながら、要点を解説してくれた。

ネプ理科 越さんの発表
 10月から、ネプチューンが進行役をする科学番組「ネプ理科」(TBS、火曜深夜0時から0時35分)が始まった。100気圧までの加圧実験をやっていたが、カップヌードルの容器が、圧力が高まるにしたがって徐々に小さくなって行く様子が面白かった。その他にも、リンゴ、タマゴなどの加圧実験を行っていた。生タマゴが割れないのは意外。
 

  また、モスキート音の実験もやっていた。一般的に17000Hz程度のモスキート音は、ある年齢以上の者には聞き取りにくいという。モスキート音発生装置が今年のイグ・ノーベル平和賞を受賞したが、これを利用した若者向けの携帯電話の着信音が、今、欧米で流行している。番組では、スタッフ20数人が年齢順に横1列に並び、17000Hzの音が何歳くらいまで聞こえるかを実験していた(実験では33才まで聞こえていたが、個人差もあるという)。普段の教室では、様々な年齢層を揃える事は難しいため、これも貴重な映像といえる。

 深夜番組のため、少々下品な点もあるが、番組では毎週興味深い実験が行われている。

二次会 日吉駅前浜銀通り「龍行酒家」にて
 15名が集まって、カンパーイ!。なじみの中華料理屋で物理と教育を語る。二次会だけ現れる人もいて、みんな楽しみにしている集いだ。好きな物理を楽しみ、仲間と語らうことがストレスの解消にもなる。さあ、明日からもガンバロー。


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