例会速報 2004/01/10 県立港北高校


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授業報告:定期テストの話題から 平野さんの発表
 今月の授業報告のレポーターは平野さん。今回は定期テストの出題内容を話題に授業展開上どんな点を強調しているかを討論した。以下、平野さん自身のコメント。

 一学期の期末テストを題材に,定期テストの問題の出題趣旨についての討議を行った。2年物理TB(選択)は,水平投射・斜方投射,運動方程式を使った簡単な計算問題の範囲で,教科担当による出題傾向の違いについてのまとめを発表した。3年物理TB(選択)は,光の分野での近似方法の取り扱い方を中心に授業展開のしかたについて討議した。参加者各人の授業スタイルに違いがあることは,誰しも予想はしていたものの,その違いの大きさを再確認しあった。

 なお、平野さんは授業の活性化を図るためにいろいろユニークな工夫をしていることも話題となり、いずれ日を改めてそのレポートもしてもらうことになっている。乞うご期待。

ガウス加速器 右近さんの発表
 アメリカのAAPTによる物理教育の雑誌、The PHYSICS TEACHER ,January 2004 ,Vol.42 , No.1に面白い衝突球の実験記事が掲載されていたので、右近さんはさっそく追試してみた。直径10mmの球形ネオジム磁石1個(金色)と,同じ直径の鋼球2個(銀色)を、ネオジム球・鋼球・鋼球の順で直線のレール上に並べ、ネオジム球の側から、もう1つの鋼球を衝突させると、反対側から鋼球が猛烈な速さで飛び出す。例会での実験を見ていたメンバーからは一斉に「ええ〜!?」というどよめきの声が上がった。
 入射させる球はゆっくりでも、飛び出す球は猛スピードになるので、衝突球の実験の先入観があると、ちょっと見は不思議に感じるが、磁石による位置エネルギーを考慮すれば、エネルギーも運動量もちゃんと保存されている。後者は、後に残った3個のかたまりが後方に反跳を受けることから確認できる。
 右近さんが、さっそく新年早々の物理の授業で取り入れてみたところ、生徒の反応もよく、充実した授業展開となったそうだ。生徒は運動量保存の法則とエネルギー保存の法則をとても印象的な形で再確認することとなったという。うーん、磁石は面白い!これはさっそくいただきだ。
 

 同様の実験は、円柱形のネオジム磁石を使っても行うことができた。もちろん、意外性を演出して教育効果を高めるためには、右近さんがやったように同じ直径の球形磁石と鋼球を用いるのがよい。

 また,球形磁石は南北方向のレール斜面では止まってしまうが,東西方向のレール斜面では転がる面白い性質があることもわかった。磁石の極が地磁気によって力を受けてしまうためだ。写真は傾いた南北のレールの上で静止しているネオジム球。

 10mmのネオジム球形磁石は3個1700円である.東急ハンズなどで手に入る.商品名は「ネオジボール」。

音スペクトルアナライザ 益田さんの発表
 昨年12月の「科学ボランティア研究会(通称:科ボ研)」で北海道の菅原陽さんが発表されたものを、益田さんが紹介してくれた。実際に子供が作ることを想定して考えられた実験器具である。
 曲がるストローに5mmずつ等間隔に穴をあけ、ほうきの先毛の部分を振動子として10数本差し込んである。菅原さんはこれを「音アンテナ」と呼んでいる。アンテナはプラコップの口にポリ袋の振動膜を張り、そこにガムテープでとめる。コップをメガホンのようにして大声を出す。振動子の長さを適当に調整すると、外部からの音に共振した振動子が揺れる。

 オリジナルはコップの拡声器で振動を大きくする工作だったが、PC用のスピーカーを用いてさらに大きく振動するようにしたところ、振動も大きくなり観察しやすくなった。デジカメでスローシャッターを切った右下の写真で、その様子がよくわかる。音の変化に応じて、振動するエレメントが移り変わり、視覚的にも面白い。


 

レビトロン・ゼロ 水野さんの発表
 これは、以前U−CASという名前で販売されていた磁気浮上コマの改良版だ。「理科の部屋」で後藤さんが紹介されていたのを見て、早速購入してみたという。U−CASに比べて、コマ(ネオジム磁石使用)の浮上する高さが高く(ステージから約5cmの高さで回る)、デザインも洗練されている。またステージ(厚みのあるドーナツ状のフェライト磁石使用)の調整も三脚の部分に調整ねじが付いており、以前のくさび方式に比べ、だいぶ楽になっている。しかし、コマの重さの調整は実演する場所によって微調整が必要で、ステージの調整もコツがいる。例会では時間的余裕がなく、安定して浮上させることはできなかったのが残念。中学の力学分野の「離れて働く力」「力の釣り合い」(重力と磁力のつりあい)の項目で使えそうだ。
 レビトロン・ゼロは下記のURLで3980円で購入できる。
株式会社テンヨーのユニークトイ&ホビーのコーナーhttp://www.tenyo.co.jp/toyhobby/zero/top.html

YPCの関連記事「U-CASの物理」

 

アセチレンランプ(カーバイドランプ) 水野さんの発表
 12月例会で、平松さんが紹介したアセチレンランプは、真鍮製のもので、かつて縁日の夜店でよく見かけたランプとは形が違っていた。値段も29800円とちょっと高めだった。
 水野さんは、平松さんに紹介されたインターネットの「楽天市場」のサイトを開いてみたところ、なつかしい形のアセチレンランプが売られていたので、カーバイドと一緒に2台を早速購入した。夜店で見た方(右)は4650円、反射型は3980円だったという。
 上から滴下する水の量の調節だけで炎の勢いが調節で、水を止めればやがて消える。新しいカーバイドなら、蝋燭とは比べものにならないくらいの明るさになる。カーバイドタンクに5〜7分目で約8時間は燃える。
 授業では化学の有機分野でカーバイドの水との反応でアセチレンガスが発生し、それが燃焼して二酸化炭素と水になるということで扱える。化学反応式を作らせるのもいいだろう。やはり実物を見せたいものだ。
 ちなみにカーバイドは、同じサイトで1kg1280円、500g680円で売られている。お求めは下記へ。

 http://www.rakuten.co.jp/tuzukiya/467912/467917/469811/

Heart Warmer 山本の発表
 ハート形の水枕状の物体。外側はピンクのポリエチレンで、内部に何やら液体が入っている。液体の中に沈んでいる小判型のステンレス板。これがトリガーである。

 さて、このトリガーを袋の外から折り曲げるようにすると、そこから内部の液体の結晶化が始まり、下の写真のように見る見る放射状に結晶が成長し、ついには全体が真っ白になって固まる。そして全体が熱くなる。つまりこれはカイロなのだ。

 内部の液体は酢酸ナトリウムの飽和水溶液。90度程度で湯煎すると、結晶はとけて透明になる。室温に冷やしても過冷却状態となって液体のままである。トリガーの衝撃で不安定を生じると、それが核となって結晶が成長し、全体に波及する。この際、凝固熱が発生するのである。

 お値段は¥580。本当にハートが熱くなります。バレンタインデーのプレゼントにいかが?

関連記事:使い捨てないカイロ

 

無重力実験ビデオ 車田さんの紹介
 車田さんからNHK東北で放送された地域限定のニュース番組の紹介があった。ダイヤモンドエアサービス社の無重量実験フライトに当時中学生の3人が搭乗して実験をした。日本マイクログラビティ学会が無重量でこんなことをしてみたいという実験を小学生に募集し、毛利さんの目にとまった実験が実現したのだそうだ。
 興味深いのは、無重量で雑巾を絞ると水がスライムのように手にまとわりつき、しかも水の冷たさを感じないという体験談である。無重量では熱対流が起こらないためだろうか。実際に体験してみたいものだ。
 右のシーンは、無重量状態でのペットボトル内の水の挙動を比較する実験。まるで液体ヘリウムの超流動現象のように壁づたいに水が上っていく。内側をテフロン加工してあるものは水をはじくので途中までしか水が上らない。「濡れ」の効果が顕著に出るのだ。
 

ライトフライヤー1号とカラス型飛行機 越さんの発表
 1903年のライト兄弟の初飛行から100年目の昨年、西日本航空クラブの前田さんが中心となってライトフライヤー1号の復元機が製作された。写真左は朝日新聞社で展示されていた復元機(越さん撮影)。エンジンを除いては、当時の素材をできるだけ用い、金具は鋳造、し、翼の布の縫合に用いたミシンは、当時アメリカで使用されていたものを取り寄せるなどのこだわりよう。燃料タンクは銅製の筒で、容量はわずか1リットル程度、複葉を支える支柱の上の方に取り付けられていた。
 越さんは、これに刺激されて東急ハンズで買ったライトフライヤーの模型飛行機(グライダー、300円)を作った。本体の重心は、前方の水平翼も複葉であり揚力を発生するためか主翼よりも前方にあり、実際に飛ばしてみると、安定した滑空を見せた。尚、ハンズでは、本物と同じでプロペラが2機、ゴム動力の模型飛行機が売られていたが、こちらは7000円!
 


 さらに越さんは、同時期に日本で動力飛行機の製作に挑戦していた二宮忠八の「カラス型飛行器」の模型(東急ハンズなどで800円)も作った。忠八は、カラスが餌を採りに滑空してきたときの翼の形をよく観察し、それをモデルにゴム動力飛行機を製作したという。斜め下に広げた尾羽型の尾翼と後部のプロペラが特徴である。後部プロペラは、奇しくもライトフライヤーと同様だ。これは、目の前でプロペラが高速で回転することへの恐怖心があったためなのかもしれない。
 当時、軍の協力など条件が整えば、ライト兄弟をしのいで、二宮忠八の飛行機が世界初の動力飛行の栄誉に輝いた可能性もあったという。

輪ゴムのバックスピン(その2) 越さんの発表
 12月例会で越さんが大道芸人から仕入れてきたネタだが、幅広の輪ゴムなど道具をととのえて、伝達講習会が開かれた。左の写真のようにゴムを指に引っかけ、下側を強く張ってゴム鉄砲のように床面すれすれに打ち出す。すると輪ゴムは飛んだ先からバックスピンして手元に戻ってくる。いうほどやさしくはないが、練習すれば誰にでもできるという。参加者は熱心に修行に取り組んでいた。
 

220円望遠鏡 徳永さんの発表
 おそらく最も安価な望遠鏡キットだろう。凸レンズ\100、凹レンズ\60、鏡筒型紙\60で合計\220でできるガリレイ式望遠鏡のキットだ。
大和科学教材研究所のデジタルカタログに載っているが、販売は各地の代理店を通してほしいということなので、県東部なら富士教材(044−733−3281)などに注文すればよい。
 

伸縮矢印 徳永さんの発表
 力の合力や分力を説明する際の演示教具。大きくて白い矢印が自由に伸縮する。しかも黒板に貼りつく。これはグッドアイデアだ。
 

 しかけはこうだ。配線用のコードカバーを一組にしている。スライドさせて伸ばすわけだ。都合のよいことに粘着テープがついているから、ゴム磁石をはりつける。長いものと、その半分ぐらいの短いものと、二種類用意すると便利だという。

火吹き 宮崎さんの発表
 宮崎さんは、マジックで使われる特殊成分の灯油?を入手。「火吹き」に挑戦した。細かい霧を勢いよく吹くのはなかなかコツがいるようだ。身体で勢いをつけるように吹き出す、吹いた後はすぐに身を引く、吐いた息をすぐに吸わない、などノウハウがいろいろある。危険なので知識のない人はまねしないこと。以下、宮崎さん自身のコメント。

 以前から、チャレンジしたいと思っていた、火ふきをやってみました。燃料を持歩くことも、ほかの学校を汚すのもいやだったので(飛び散った灯油?を拭き取っても、部屋は灯油臭くなります)、昨年6月に港北が例会の会場になったときに、披露しようと思っていましたが、時間がなく今回になりました。いつも怪気炎を上げている私ですが、本当の怪気炎をあげることができました。

きれいな分子模型 大谷さんの発表
 12月の例会でも紹介のあったクリスマスツリーの飾り球(もちろん百円ショップ)を利用した分子模型。今回は中学校の授業に使っているという実物が披露された。色とりどりで金属光沢があり美しい。生徒の注目をひくのによさそうだ。
 もとの球にはとりつけ金具が一つしかついていないが、穴をあけて別の球からはずした金具をさしこめば簡単に増設できるので、3個、4個の「結合の手」も作れる。炭素原子の金具は四面体配置でとりつけた方がよいという改善意見もあった。

消える妖精 山本の代理発表
 12月の湘南台科学お楽しみ広場で、車田さんのブースで子供にやらせたパズルである。元図には14人の妖精がいる。

 上の二枚を左右入れ替えると(写真下左)妖精は15人に増える。上は元に戻して、下の二枚を入れ替えると(写真下右)今度は妖精が13人になってしまう。

 おもしろ科学たんけん工房の柴田さんは、このトリックを子供にもわかりやすい形で絵解きした。詳しくは次号YPCニュースの記事を参照されたい。

 

二次会 大倉山駅前「たる平大倉山店」にて
 14人が参加してカンパーイ。たっぷり科学を楽しんだ後のビールはうまい。

 火吹きをした宮崎さんは、「舌がおかしい」と言っていた。やはりあまり身体によいものではなさそうだ。鈴木さんはルービックキューブを一瞬でそろえるマジックを披露して喝采を浴びた。マジック業界のルールに従い、ここでの種明かしは差し控える。


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