例会速報 2007/10/21 県立港北高校
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授業研究:波の授業 黒瀬さんの発表
「波の性質」についての授業報告が行われた。話題は2つあり、 1つは項目の順番を昨年と変更した(y-tグラフと波の式を後ろに回した)こと、もう1つはホイヘンスの原理の扱い方についてである。ホイヘンスの原理の扱いについて、参加者からは次のような意見が出た。
・ホイヘンスの原理は、回折を説明するのに重要だと思う。
・反射の説明に、ホイヘンスの原理は使わない。当たり前だよね、で済ませている。
・素元波は実在するのか?
・素元波で屈折を説明する時には、入射側にも素元波を書く。
・反射や屈折の説明時には、素元波も含め、波面の色を時間で変えて書くようにしている。
屈折波 宮崎さんの発表
港北高校では、最新の水波投影装置(中村理科 FRT-2000N)を購入した。ストロボ装置同期波源で屈折や反射がくっきりと見られる優れものだ。くっきり見えるようになって、逆に謎が発生。写真は屈折用に浅くするためのアクリル板を真ん中に置いた状態だが、アクリル板の部分に干渉模様が見える。これはどこから発生するものなのか。アクリル板の鋭角の先端が原因?斜めの辺からの屈折波が、左側の縦の境界で全反射した自分自身の反射波と干渉しているようにも見える。例会でひとしきり議論したが、詳細はまだよくわからない。
超伝導体によるピン止め効果 水野さんの発表
今年の文化祭で、神奈川学園理化部は「磁気」をテーマに研究発表した。その中で超伝導も扱った。水野さんが例会で紹介してくれたのは、文化祭で発表した超伝導体によるピン止め効果の実演である。
使ったネオジム磁石は10mm*10mm*2mm(1個100円、ネオマグで購入)を546個で、N極S極N極と3個セットにして、アルミの基板(2000mm*30mm*2mm)に182個ずつ縦に両面テープで貼り付け、さらに上からセロテープで覆った。超伝導体は、当初イットリウム系のものを自作することを考えたが、その後調べていくと、イットリウム系では期待するようなピン止め効果は得られないことが判明し、日本科学未来館で超伝導体を新日鐵から購入していると聞き、文化祭当日は新日鐵から借りたもので実験した。例会でも、この超伝導体(ジスプロシウム、バリウム、銅、酸素)をで実演が行われた。
最初液体窒素で超伝導体を冷やすとき、軌道のネオジム磁石と同じものを9個正方形状に並べ、その上に超伝導体を置く。充分冷えてから超伝導体を取り出し、いったんネオジム磁石の軌道上で超伝導体を押さえつけてから手を離すとピン止め効果により浮き上がる。
ブラックライト 小河原さんの発表
昨年12月の中村理科例会で、ブラックライト実験を紹介してくれた小河原さんが、追加で取り組んだ実験を披露してくれた。
日焼け止めクリーム3種類をスライドグラスに塗って色変わりTシャツを使って比較してみると、PA+(SPF20)とPA++(SPF32)では違いがわからないものの、PA+++(SPF50)はよく紫外線をカットしているようだ(主として、PAはUVA、SPFはUVBの防御レベルを示す数値)。また、UVゴルフボールなどというものもあり、こういう紫外線の存在を思い出させてくれる屋外用品は、今後増えるかもしれない。
そして、この日のメインはポータブルブラックライトの販売だ。理科教材会社で1890円のところ、何と500円での販売で、あっという間に完売した。中国製ではあるが、交換用4W灯(東芝製)が945円で販売されていることを考えても、破格の値段だろう。
夕焼けモデル 鈴木さんの発表
鈴木さんは半年くらい前から、牛乳などの水溶液でなく手軽に夕焼けのモデルとなるものを探してきた。きっかけは香港土産の携帯ストラップだった。しかし、それは1個300円ほどで、きれいではあるが価格的に生徒数人に一つ見せるわけにはいかない。何かよいものはないかと気にかけていたところ、夏の科教協愛知大会の物理分科会の場で、兵庫物理サークルの森本雄一さんから耳寄りの情報をいただいた。
グルーガン(ホットボンド)のグルースティック(透明のもの)がよいというのだ。実際に試してみると、見事に夕焼けと空の青を見せることができる。あくまでモデルだが、本来色のないものが光を当てると場所により青になったり橙色になったりするのは、面白い現象だ。ちなみに、ダイソーでは48本入りを315円で売っている。これなら一人に1本持たせて各自で見ることができる。光源の方が高価だが。
熱気球の体積 喜多さんの発表
おなじみのごみ袋を使う熱気球の実験。浮上したときの内部の温度を測って理論値と比べるとかなりのへだたりがあるのが気になっていた喜多さんは、研究の末、その原因にたどり着いた。それは、体積の値を袋の表示値にしていたことだという。45リットルのごみ袋を熱気球として使用するとき、その体積は約70リットルになる。45リットルの値は口を結んだときの値なのだ。70の値を入れて計算すると実測値と近い値になるという。
写真左のごみ袋はいろいろなところで買い求めた45リットルのもの。この中で厚さ0.015mmの袋の重さは一枚あたり12.3〜14.9gwである。この重さならば、確実に上げることができるという。
四角形の重心 車田さんの発表
物理的に四角形の重心を求めるには、四角形を異なる2点で吊るし、各点からおろした鉛直線の交点をとればよい。よく知られた方法だ。数学的に作図で求めるには次のようにする。
まず1本の対角線Aで四角形を2分し、それぞれの三角形の重心を求め、2つの三角形の重心同士を線分で結ぶ。四角形の重心はその線分上にある。次に別の対角線Bで2分してできた各三角形の重心を同士を線分で結ぶ。四角形の重心はこれら2本の線分の交点となる。
下の写真は赤と青で二組の重心を結ぶ線分を作図して求めた四角形の重心に爪楊枝を刺して、こまとして回して重心であることを確認させたもの。四角形の重心コマは三角形の重心コマより人気があり、生徒は自分で作ったコマを大事そうに持ち帰っていたという。
hugin 車田さんの発表
パノラマ写真をつくる「hugin」というフリーソフトの紹介。写真は車田さんが修学旅行で五稜郭タワーから撮った6枚の写真の合成パノラマ写真である。
下記よりダウンロードでき、同所にインストールからの丁寧な解説がある。
http://www007.upp.so-net.ne.jp/fisher555/Hugin.html
霧箱と機内持ち込み手荷物の話 車田さんの発表
車田さんは修学旅行先で簡易霧箱の実験を行った。その材料のドライアイスを飛行機内に持ち込めたという珍しい報告。
ドライアイスは生鮮食料品等を冷却するために使用するものに限り1人2.5kgまで機内持ち込みができるようだ。ドライアイスは小さな蓋つき発泡スチロールの容器に入れ、エタノールは小さな容器に20ml入れて持ち込んだ。内側にはラシャ紙を敷き詰めておいたそうだ。アルコールをラシャ紙の淵に染み込ませ、サランラップをかぶせてペンライトをかざしながら観察したが、放射線の飛跡は観察できなかったという。利用した航空機はANA。手荷物の制限については下記URLを参照のこと。http://www.ana.co.jp/dom/checkin/rules/dangerous_goods.html
光のエネルギー 石井さんの発表
発光ダイオードは電気エネルギーを光のエネルギーに変えるが、光を当てると、逆に光のエネルギーを電気エネルギーに変えて太陽電池のような働きをする。これを石井さんお得意の3段アンプで確かめた。さらに、普通のダイオードも何らかの形で光と相互作用をするのではないかと思った石井さんは、透明なツェナーダイオードに光をあてると、やはり発電していることがわかった。半透明なシリコンダイオードでも同様だ。
では、というので、金属ケースのダイオードに穴をあけて光を当てるとこれも発電した。とすれば、<ダブルのダイオード>であるトランジスターも同様であるに違いない。写真のようにパワートランジスターの金属のケースを壊して光と当てると、予想通り起電力の発生が確かめられた。赤外線でも作動した。黒いプラスチックでモールドされている普通のトランジスターも、外装を丁寧に壊して光を当てると、3段アンプのLEDが点灯する。黒いモールドは光雑音を防ぐためだったのだ。金属ケースも放熱と遮光を兼ねている。
次の実験には3個のLEDが使われている。入力の発電器としてのLED1、これに光を当てる光源としてのLED2、チェッカーとしてのアンプのLED3(赤)だ。赤のLED1が電灯の白色光(LED2相当)に感応して発電し、アンプで増幅されてLED3が点灯する、といのが上の実験だった。
ところが、青のLED1を使うと、赤いLED2の光では、LED3は光らない。エネルギーの小さい赤の光では、エネルギーの大きな青のLEDを発電させられないのだ。エネルギーギャップの大きさが光の色と関係していることを端的に示す実験だ。LED2の代わりに、TVのリモートセンサーの赤外線を使っても、強い光の代表と思われる赤のレーザー光を当てても駄目。緑のLED1でも同様だった。光子のエネルギーは光の強さではなく色(振動数)によって決まるのである。
ダイス・スタッキング 越さんの発表
子どもの頃から試みていた「ダイススタッキング」を最近会得した越さんは例会で技を披露してくれた。ダイススタッキングは数個のダイスをカップですくい取り、積み重ねる技。一見、難しそうに見えるが、適当な道具がそろえば、意外と簡単にできる。ダイスは、角に丸みの無いもの。カップはなるべく内径が一定のもの(寸胴)。カップの高さは、ダイスを積み上げたときの高さプラス1cm程度がよい。
ダイスをすくい上げる事ができるようになれば、意外と簡単に積み上げられる。カップの下端を持ち、底の部分を振る事によって、ダイスの慣性により、カップの上端(底面)に寄り、自然と積み重なった状態になる。振っている間、ガタつく音がしなければうまく積み重なっている。あとは、カップを鉛直に立てた状態で、スッと止めれば、ダイスの慣性により、カップの壁に寄り掛かるように積み重なったままの状態で静止する。最後に、カップを水平に少しずらし、ダイスから離してカップを上げる。
写真のダイスとカップのセットは、ジャッグリングショップ ナランハで販売(1995円と少々高い)。下記の動画のカップは、分かりやすいように、透明なプラカップを使用。ダイスは東急ハンズで色々なサイズの物が手に入る。詳しいやりかたは、こちら。さらに、色々な技が見られる動画はこちら。
●越さんの妙技1(AVIファイル5.5MB)
●越さんの妙技2(AVIファイル3.1MB)
物理教師がよく出会う問題2 右近さんの発表
壁に立てかけた棒が受ける力を求める問題は,力のモーメントの例題として典型的なものだ。床から受ける力のx,y成分と,壁から受ける力のx,y成分を求めるとすれば,未知数は全部で4つである。しかしx,y方向のつりあいの条件式,力のモーメントのつり合いの条件式を書き下すと,条件式は3つしかない。これでは連立方程式が解けない。そこで普通,教科書や問題集では,棒は壁からは摩擦力を受けないとして,壁から受ける力をx成分のみとしている。もちろんこうすれば答えることができるが,ここで疑問がわく。そもそも壁に摩擦力が働かない,とするのは非現実的で、単に問題を解けるようにするための仮定に過ぎない。それではこうした場合,棒が受ける力は原理的に計算することができない,ということだろうか。
実は右の写真のような簡単な問題も、棒を剛体と考えると解くことができない。
例会で右近さんは,棒を剛体とする限り,この問題を原理的に解くことができないこと,棒を弾性体として扱わなければならないことを例示し,棒が受ける力を求めるための一つの考え方を紹介してくれた。弾性体の棒を仮定すれば、妥当な条件の下で解を得ることができる。
二次会 新横浜駅前「はなの舞」にて
11人が参加してカンパーイ。実りの秋、食欲の秋、学問の秋、最高の季節に乾杯!カルムシさんもおめでと〜。
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