例会速報 2007/09/22 電気通信大学


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授業研究:生徒小実験で組み立てる光の学習 鈴木健夫さんの発表
 鈴木さんは科教協愛知大会にレポートしたものを例会で発表した。主旨は、授業の中に、生徒一人一人や数人に一人程度で行なう実験をできるだけ取り入れよう、というものだ。
 これまでのYPCや科教協で得た蓄積から、演示実験は豊富に行なってきているが、見るだけで生徒の主体的な活動にならない。一方、生徒実験はじっくりとデータを取ったり確認させたりするのにはよいが、1時間丸々取られてしまう。そこで、演示実験的なもののうち生徒個々でできるものを多くしようという提案である。
 

 昨年の科教協神奈川大会では、これまでの実験のリストを提示した。今年も内容的には同趣旨だったが、それを具体化しようと考え、光の単元での小実験を実際に参加者にやってもらうことも含めて具体的に提示した。また、このレポートをまとめるにあたり、生徒に昨年から今年にかけての実験について印象に残っているかどうかをアンケートで集計した。それを見ると、意外に当たり前と思えるようなものが好評であることがわかる。「消える×印(実際は『見えてくる×印』)」や「レンズとスクリーンで外の景色を映す」や「シャボン玉の色を観察」「赤い羽根で回折格子」などが生徒の支持を得ている。
 この例会では、実際にやる実験としてはほとんどYPC例会でのおなじみのものなので、「シャボン玉の色の観察」を参加者に行なってもらった。過去のYPC例会で水上さんがプラコップを使ってシャボン膜を見る実践を紹介されているが、球形のシャボンの方が身近でよいと考えて、黒い板の上にシャボン玉を半球状に乗せるという方法を取っている。準備は、黒い下敷きや黒いプラスチック板を15センチ四方の四角に切り人数分用意。あとはストローを配りシャボン液(洗剤を薄めればよい)を紙コップなどに入れて回して各自で吹かせる。これだけの用意だ。それでも、じっくりとシャボン玉を観察したことはないので、みんな喜んで見入っている。ストローはもったいないので洗って再利用する。
 なお、レポートに先立ち、仮説実験授業や到達目標学習課題方式のようなじっくりと考え討論していくような実践ができにくい現場の状況を、近年の管理強化の数々を挙げて話題にした。

なんでも電池 石井さんの発表
 電池の学習では、より多くの電流を取り出すことに工夫が必要だが、石井さんはここでは、アンプで電流増幅することで、学習の重点を起電力すなわち「電気が起きるかどうか」に置くことにした。
 

 トランジスタの三段アンプにバイアスを設けて、入力端子につないだ発電装置が、ほんの僅かでも発電していれば,LEDが点灯するようにした。こうなると、電池の溶液は、水道水でも、植物の葉でも、人間の皮膚でも、要するに水気のあるものなら何でもいいことになる。そこで、その辺にある金属を、手当たり次第、手に持つだけで、 酸化還元電位の順序が解る。右の写真は洗濯ばさみに二種の金属をはりつけた起電力チェッカー。

 ケシゴム付き鉛筆は炭素電極と鉄電極で木をはさんだものと考えればよい。木は水分を含んでわずかに電流を流すので、立派に電解質の役割を果たし、鉛筆がそのまま電池になる。
 また、習字の紙に、例えば「電」という字を書くと、かんむりとつくりの部分はそれぞれひとつながりになっているので、それぞれ炭素電極の役目を果たす。乾電池のプラス極を前者に、マイナス極を後者に触れると、水分が電気分解されて、前者は酸素、後者は水素で「充電」されるので、その後で、この字をアンプの入力につなぐとLEDが点灯して、燃料電池ができていることが解る。紙の湿気が溶液の役割を果たしているが、乾燥している時には紙に息を吹きかけて湿らせるとよい。この容量は10pF程度なので、相当のコンデンサーを充電・放電させると、燃料電池とコンデンサーの違いがわかる。
 このほか、ファックス原紙の裏紙も、炭素を「金属」として扱う面白みがある。
 

 溶媒は水分に限らない。融解したガラスでもOKだ。ガラス棒に銅と鉄の針金を巻いて、その間をバーナーで熱して溶かすと起電力が観測される。ガラスの通電はやったことがあるが、電池にするのは初めて見た。炎自身もプラズマで通電できるから電池の媒質の役割を果たす。さらには、同種の金属を炎の違う部分に差し入れても、酸化炎、還元炎という炎プラズマの状態の違いを反映して起電力が発生する。電子はあらゆる場面でやりとりされていることがわかる。何とも驚きの実験シリーズだった。

A Tour of the CRYOSPHERE 山本のビデオ紹介
 A Tour of the CRYOSPHERE 〜the Earth’s Frozen Assets〜
 雪氷圏(寒冷圏)の旅    〜地球の凍れる資産〜
 地球の気候システムにおいて両極地方の雪氷がはたす役割と、地球温暖化の傾向を示す観測事実を、多数の地球観測衛星のデータを結合してCGで多角的に示したNASA制作のビデオクリップ。なかなかの意欲作だと思う。

 以下のサイトからダウンロードできる。(720×480サイズのMPEG-2データでファイルサイズは323 MB)
http://svs.gsfc.nasa.gov/vis/a000000/a003100/a003181/index.html

 各画面にキャプションが入ったものと、さらに詳しい英語ナレーション付きの映像とがある。

回転舞踏会 石井さんの発表
  DAKARAのおまけの「回転舞踏会」は、昔から知られている形式のもので、鏡の前でダンサーが踊るという玩具の応用である。越さんが06年10月例会で紹介した「ネコ回るシステム」のオルゴールと似た原理だが、こちらは磁石の反発力を利用している。石井さんは越さんから紹介されて、早速遊んでみた。その観察結果の報告。
 (1) ローターのブタさんに、棒磁石の磁極を近づけると、くっついたりするが、短い棒磁石を斜めに近づけてみたところ、回転した。反発で回した方が具合がよい。
 (2)壊してみると、ステイター(冷蔵庫)の方は磁極が斜め上下に、ローター(ブタさん)の方は磁極が鉛直に、磁石が埋めこまれている。両方とも、磁極は下がN極だった。
 (3)時計皿やプラスプーンに、上下NSの磁石を貼りつけてローターにした。短い棒磁石を斜めに近づけると回る。U型磁石がよいようだ。
 (4)ダンサーのブタさんの姿勢で、慣性モーメントの大きさが異なるので、回転に特徴が出るようだ。


 

3D MIRASCOPE 竹内さんの即売会
 2枚の放物面鏡を合わせ鏡にして上部の穴に立体像を浮かび上がらせるおなじみのおもちゃ。「ミラージュ」などの商品名でも売られていて、かつてYPCで個人輸入共同購入したこともあった。国内では¥2500を下ることはなかったと思うが、この賞品は直径20cmほどで\1260だという。実験室のアクセサリーにぜひお一つどうぞ。
 

減圧キャノンミニ 小河原さんの発表
 ピンポンキャノンを、日本で入手可能な材料で実現してくれた小河原さんが、今度は生徒実験も可能な縮小版を開発した。使うのは、テルモ製30 mlのプラスチックシリンジ、6号のコルク栓、発泡スチロール板である。
 まず、シリンジの両端をカットして、発射口のほうを紙やすりで滑らかに削る。次に、硬いタイプの発泡スチロール板を、発射口より少し大きめにカットすれば完成である。コルク栓の径の大きいほうを発射口と反対にして中に入れ、中の空気を抜いて筒を発泡スチロール板に押しつける。発泡スチロール板が少しへこむと、結構な密閉が保たれ、真空グリスも不要だそうだ。このあたりがポイントらしく、薄いゴム板ではなかなか成功しなかったとのこと。
 発射の際は、コルク栓が発射口から一番遠いピストン側に位置する必要があるため、打ち出し角度は床と60度くらいが成功しやすいらしい。ピストンを一気に引き抜くのも大切かもしれない。大量生産の結果、1組300円での販売も行われた。
 減圧して発射するおもちゃ鉄砲の発表はおそらくこれが日本初、ひょっとすると世界初かもしれない。成功したときの音は、「パン!」と何とも小気味よい。

 

ボイルの実験 徳永さんの発表
 徳永眞由美さんのボイルの実験装置は01年8月例会で発表頒布されたYPCでは定評のある実験器具である。炭酸飲料用PETボトルを耐圧容器として使うが、圧力計がついているので、定量的な実験も容易にできる。右の写真の継ぎ手部分はそれぞれ簡単につけはずしができ、パーツの組み合わせを変えて多様な実験に対応できる。
 

 たとえば2セットをコックでつないで連通容器とすれば、高校の物理・化学でよく例題に登場する実験を定量的に演示できる。ガスカートリッジアダプターを使えば圧力計でカートリッジ内の気体の残量を調べることもできる。パーツの一部は徳永さんのご実家の町工場で作った手作り品である。

加古里子の絵本・他 益田さんの紹介
 「福音館かがくのほん」シリーズの1冊、「宇宙」の紹介。著者本人の緻密な絵がすばらしいが、絵に添えてある「数値」にこだわりを感じる。授業のネタにすることは、難しいこもしれないが、理科室や教室に1冊あってもよい本だ。このほかにも、「海」「地球」がある。
 益田さんからはこのほか、埼玉のサークル、「よせなべ物理サークル」の例会(会場:学芸大学附属高校)の報告があった。今年度で定年を迎えられる、金城先生の物理実験を見学、体験する内容だった。金城先生のお手製の機材を用いた、数々の実験を体験し、おみやげに、学芸大の授業で使用している実験書を頂いたそうだ。
 

はじめてのスターリングエンジン 越さんの紹介
 越さんは、茨城県立中央高校の小林義行先生が書かれた「はじめてのスターリングエンジン」(誠文堂新光社1890円、ISBN978-4-416-80739-2)を紹介した。小林先生が今までに開発してきたスターリングエンジンのうち、「コショウ缶ジャンピングローラー」、「熱音響カー」、「ダイヤフラム式低温度差エンジン」について、作り方のノウハウが細かく丁寧に解説されている。
小林先生のHPにも多くのスターリングエンジンが紹介されている。


電通大発明クラブ 竹内さんの発表
 電通大では、会社を定年したOBなどがボランティアで地元の子供達を集め、「発明クラブ」を開催している。大変人気が高く、抽選で参加者を選抜するほどだという。写真は鉱石ラジオのループアンテナを作っているところ。

林研究室見学 林先生の紹介
 例会後、会場と同じ棟にある林茂雄教授の研究室を見学させていただいた。林研究室では超音波を用いたさまざまな実験を行っている。強い超音波によって生じる真空気泡「超音波キャビテーション」や超音波によって励起されて起こる発光現象「ソノルミネッセンス」など興味深い研究が行われている。林研究室のWebページはここ林先生自身のWebサイトもある。
 

80周年記念ミュージアムの展示 竹内さんの発表
 電通大正門近く、守衛所裏の建物80周年記念会館の2階は、大学生の手作り作品や竹内さんの面白実験グッズを集めた展示場になっている。ここだけでも何時間も遊べそうだが、今回は時間がなく、駆け足で場所の確認をするだけにとどまった。残念!

二次会 調布駅前天神通り「もつやき処 い志井」にて
 炭火焼きの煙が充満する店内でカンパーイ!小さな店の片隅に、20人もよく入ったもんだ。他のお客さんごめんなさい。


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