例会速報 2008/05/18 慶応義塾高校


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授業研究:理科総合Aで気体の性質 小沢さんの発表
 小沢さんは理科総合A(高1)の授業ビデオを報告してくれた。気体の法則をマクロな視点と、ミクロな視点でとらえることをねらった授業だ。本来理総Aには「気体の法則」の単元はないから、「仕事と熱」および「物質の変化」に関連した発展学習ということになる。
 今回は講義形式の授業だが、おしっこ人形でシャルルの法則を導入したり、マグデブルク球のような実験で圧力の意味を確認してからボイルの法則につなげたり、演示実験を取り入れて進めていた。例会では、絶対温度の説明の仕方や、説明が中心となる授業の中での効果的な演示実験の手法について、意見交換した。
 

力の分解・合成と変形三角定規 水上さんの発表
 水上さんは、得意の木工で、三辺の比が3:4:5および5:12:13の三角定規(写真左)を作った。力の分解や合成の概念を直観的に理解でき、計算のときに分数だけで良く√が不要なため計算が苦手な生徒にもわかりやすい。
 写真右は力の分解の演示に使用しているところ。糸の張力0.1g〔N〕の力の鉛直方成分が0.1g sinθ=0.1 g×3/5=60g重になるが、上皿はかり上の物体の質量は500g,秤の指示値は440gであり、計算通りだ。

 下は力のつり合いの演示。これまでは「糸の作る三角形が3:4:5になる」ことを提示していた。これからは三角定規をあて,「糸が水平となす角θとすると,sinθ=0.6,cosθ=0.8なので,・・・」のように授業を進めるという。20cmごとに紅白に塗り分けた棒も効果的だ。とことん視覚化にこだわる水上さんらしいアイテムだ。
 

 左は傾角θの斜面上に置かれた物体が斜面を垂直に押す力がmgcosθであることの演示。何も載せない秤をtanθ=5/12だけ傾けると−30gを示し,500gの物体を乗せると,それよりmcosθ=500×12/13g≒462gだけ増加し,針は432gを示す。

家電の電流 喜多さんの発表
 喜多さんは朝日新聞3月29日の記事に触発されて、家電の電流を調べてみた。家電につながれている導線の2箇所の間の電圧をオシロスコープで測定したものである。導線をそのまま直列の抵抗とみて電位降下を測定し、オームの法則から電流波形と見なすわけだ。横軸の一目盛は5msである。
 下はヘアドライヤーの弱のときの波形。縦軸一目盛0.2V。
 

 次に扇風機の弱のときの波形。縦軸一目盛10mV。このように使う家電の種類により電流波形が変わる。
 

 そして、下は掃除機の弱のときの波形である。縦軸一目盛0.2V。ドライヤー・扇風機は強にするときれいなサインカーブになるが、掃除機は強にしても波形はほとんど変化しない。東電ではこのような電流波形から使用家電の種類を割り出し、例えば地震で倒壊した家屋内で直前に人が生活していたかどうかを判定し、災害救助に役立てることができないか研究しているという。

Space Spin KOMA 喜多さんの即売会
 喜多さんは前々回の港北例会の二次会で披露した電磁誘導イルミネーション付き永久コマを仕入れて希望者に即売してくれた。ネット上で調べると、大体2千円前後が相場だが、秋月電気の前のアキバオーでは、1100円。喜多さんは例会の前日に買出しに行って手に持てるだけ購入してきたという。

浮宙儀の分解 山本の発表
 2008年1月例会で紹介した、何の支えもなく空中浮遊する地球儀「浮宙儀(うちゅうぎ)」(発売元:テンヨー)を分解してみた。地球儀の部分は赤道から二つの半球に分けられる。南極の裏側にリング磁石が仕込まれているらしい。金属板で覆って接着剤で固めてあるため詳しい構造は不明。
 

 しかし、磁界観察用のビジュアルシートを当ててみると、リング磁石の輪の中にさらに強力な円形磁石があることがわかる。おそらくネオジム磁石だろう。南極にパチンコ玉をのせてみるとちょうど南極点のあたりで静止することからも、中心磁石の存在が裏付けられる。
 

 台座の方は3本のタッピングネジをはずすと簡単にドーム状の蓋がはずせる。中身はご覧の通りけっこう複雑だ。基本は大型のリング磁石で、地球儀のリング磁石との同極の反発力で重力とつり合わせるが、それだけでは安定条件は得られない。写真で白く写っている一対の円形と、銀色の一対の長方形は永久磁石である。どうやらこれでポテンシャルの谷間を作っているらしい。中央に近い銀色の二重円一対は電磁石で下側の緑色の制御基板につながっている。そして円の中心にある緑色の円形は4本のコードが伸びていることからホール素子と推定できる。これで地球儀の南極の磁気を感じてフィードバックをかけているのだろう。最終的に一次元の制御に持ち込んでいるようだ。右下側にネオジム磁石のかけらが接着してあるのが手作り感をただよわせている。磁場の微妙な調整を行った跡なのだろう。
 

 南半球だけをむき出しの台座上に浮かばせてみた。ちょっと異様な光景である。軽くなった分だけ1cmほど浮遊ポイントが上昇しているのがわかる。全球の時よりずっと不安定で、浮かばせるのはかなり難しかった。

GMカウンター 石井さんの発表
 石井さんは、千葉の三門正吾さんの一連のGM管の実験を追試し、改良した。
 まず、放電管の製作。底を切り捨てた紙カップに、 上部を切り捨てたプラカップを重ねる。紙カップが円筒電極(陰極)になる。紙カップの外側にゼムクリップをセロテープで貼りつけておく。
 次に、ビニル線から素線(0.18φ)の1本を取り出して、 中央から2つに折ってプラカップの底から中央あたりまで刺し、 外側はゼムクリップにはんだづけして、 プラカップの底にセロテープで貼りつける。 これが中心電極(陽極)だ。それぞれのゼムクリップの間に耐圧2.5kV、 容量が4.7nF のコンデンサーをはんだづけする。放電管にブタンガスを入れて、 ポリエチレンシートで蓋をしてできあがり。
 発電棒は、外径13mmの長い塩ビパイプと、外径26mmの短い塩ビパイプを重ねて作る。 電極にクリップつきの導線をつける。発電棒を200〜300回しごいて、摩擦電気でコンデンサーに電荷を蓄えて準備完了。
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 測定は放電管の口近くに、 放射線源と、 短波放送で音声周波数帯を外すように「チューニング」したラジオを置く。ある電圧でラジオがコツコツと鳴り出すので、 コンデンサーから導線を外す。
 線源は、カリ肥料を使用する。 カリウム40は半減期は42億年で、 存在比は0.0117%。 特に線源を用いなくても、 自然放射能で計数管は鳴る。

 上右のように、3段アンプにつなぐと、 LEDの点滅でカウントできる。左のように万歩計を使ってデジタルGMカウンターとすることもできる。

 例会での実験で、後半、 計数管がうまく作動しなくなったのは、 時間の経過で湿度が上がったためと考えられる。 石井さんが後日自宅で放電管の周囲(特に放電管を保持した緑色のプラスチックの部分)をヘアドライアーで乾燥させたところ、 普通に作動したそうだ。

超簡単プルプルアニマル 越さんの発表
 越さんは以前2007年11月例会で、簡単な振動カー・ブラシロボを紹介してくれたが、今回さらにお手軽なバージョンを開発した。
 ダイソーのポケット扇風機のプロペラにダブルクリップを挟んだだけで、偏心モーターとして使える。これは、神奈川の古谷さんのアイデアだ。ただし、回転中にクリップが外れてしまう事があるので、楊枝などを折った物をプロペラに巻き付け、セロテープで固定し、その上からクリップを挟むとよい。また、硬い物が高速回転するので、触らないように注意が必要である。
 下はアヒルのような形の百円扇風機。シールなどで目を付けると、かわいらしい。足の部分は500mlのペットボトルの側面を板状に切り、「フ」の字型に折り曲げ、底面に両面テープで貼り付けた。この扇風機は、首の部分が左右に回り、前方に倒す事もできるので、上下方向の振動と水平方向の振動の2タイプの振動源として使える。ただし、去年のモデルなので、現在在庫があるかどうかは不明。
 振動カーは足の曲げ具合、重心の位置、おもりの重さなどを微妙に調節することにより、運動性能が変わり、結構奥が深く面白い。

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晴雨予報計 小河原さんの発表
 小河原さんが、最近購入した「晴雨予報グラス」を紹介してくれた。湾曲した管の上の部分だけに穴があいていて、管の水位によって気圧変化を視認できる装置だ。ガラス製で1260円とのことだが、ネットで調べても、売り切れになっている店が多いらしい。欲しい方は、早めにゲットしたほうがよさそうだ。
 気温変化によっても、球の上部に閉じ込められた空気が膨張、収縮するため、管の水位は変化する。球部分を手で温めると、あっという間に管の水位は上昇する。むしろシャルルの法則の演示にちょうどいいという声もあった。

EXILIM EX-F1での高速撮影 益田さんの発表
 前回例会でも紹介したこのカメラは、300コマ/秒、600コマ/秒、1200コマ/秒の動画を撮影することができる。今回益田さんは、300コマ/秒で、落体の様子を撮影した。再生では、画面での1秒が、実際の0.1秒ほどになる。つまり時間を10倍に引き延ばせるということだ。
 益田さんは授業で、水平投射と自由落下を撮影し、鉛直方向の運動が同じであることを演示しまた。「撮影方法にまだまだ工夫の余地がありますが、今後もいろいろな運動を撮影してみようと思います。」とは益田さんの言。
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昭和のロケット屋さん 車田さんの書籍紹介
 ロケット・宇宙関連に興味のある人はご存じの、新宿ロフトプラスワンのトークイベント「ロケットまつり」の今までの10数回の内容が凝縮された本。今だから話せる真実、歴史の誤解をときほぐしつつ、軽妙な語り口で戦後日本の生き生きとした宇宙開発の様子が伝わってくる。Amazonなどの本の紹介では、この本にDVDが付属されていることは記されていないが、「ロケットまつり」のトークイベントの模様とペンシルロケットの当時の貴重な映像が盛りだくさんにDVDに納められている。ます。例会では時間がなくてDVDの紹介ができなくて残念。

宇宙切手 車田さんの即売会
 「日本天文学会創立100周年記念切手」が今年3月21日に発行されまた。高杉さんの買占めの指令に従い、車田さんは25シート仕入れて、例会で即売してくれた。1シート800円(80円切手10枚)。
 背景画とシート1段目の太陽系の図は宇宙画で有名な岩崎一彰氏の作品。当然、06年に見直された太陽系の惑星の定義を反映し、冥王星を消す修正がされたそうだ。2段目にはX線天文衛星すざく、3段目には小惑星探査機はやぶさ、4段目にはすばる望遠鏡、5段目には野辺山45m電波望遠鏡と、世界的な成果を上げた日本の観測装置がデザインされている。
 すざくはJAXA提供のイラスト、はやぶさは池下彰裕さんのイラスト、すばると野辺山は国立天文台提供の実写が用いられている。そのまま額に入れて飾れる一品だ。

二次会 日吉駅前浜銀通り龍行酒家にて
 20名が参加して、カンパーイ!例会は初めて参加という人でも気楽に参加できる恒例の二次会だ。この日は神奈川県新採用の先生や学生さんも参加してくれた。学生は二次会会費無料の特典もある。現在の常連には、かつてそうして育てられた人もいるのである。


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