例会速報 2009/05/17 多摩大学附属聖ヶ丘中学・高等学校


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授業研究:中学の電気回路 益田さんの発表
 中学2年「電気」の単元の報告である。オームの法則から計算に向かうことをせずに、回路での「抵抗の効果」を実験で確かめることをメインに授業を行った。授業後の定期試験の結果からみると、まずまずの成功であったと思うが、授業内容そのものの疑問や、実験において生徒が内容を把握してくれないことなどが課題という報告だった。
 例会の席での議論の中で、実験を通して現象を確認する場合、その結果をクラスで共有すること。実験事実をクラス全体で確認する演示方法など、有効なアドバイスがあった。
 教科書の順番などにも疑問を感じるが、目で見ることができない電気について、実感を伴う授業を中学段階でどのように行うか議論できた。


マッチ棒ロケット 車田さんの発表
 マッチ棒ロケットの歴史はかなり長いらしい。Web 検索するとさまざまな情報が得られる。ここでは、「マッチ棒自身を加工せず、マッチ棒1本の火薬の発火を利用して飛ばす飛翔体」をマッチ棒ロケットと定義して話を進める。薬部をアルミホイルで包んで燃焼室およびノズルとするタイプが一般的だ。
 右の写真は、従来型である。マッチの薬部をロケットの先端とし、薬部のすぐ下に針で噴射口をあける。このタイプは成功率10〜20%で歩留まりが悪い。アルミホイルでの薬部の包み加減や噴射口の開け方に微妙なコツがいる。
 

 下の写真が車田さんが改良したYPCバージョンのマッチ棒ロケットである。マッチ棒の薬部をゼムクリップを加工したランチャーの先と共にアルミホイルで包んでしまい、ゼムクリップが抜けた穴をそのまま噴射口にする。隙間ができないようにしっかりと周りを固める。
 上の写真と逆に軸を先にして飛ぶが、それも本物のロケットっぽい。これなら方向も定めやすく初心者でも90%以上の成功率が得られる。飛距離も4〜5mで煙の飛跡と火薬の香りが残り、ミニモデルロケットの気分がが味わえる。飛翔の動画はここ。ただし、火のついたマッチが飛ぶので、火災には十分気をつけて、自己責任で実験をすること。大量に束ねたり、薬部のみを集めることは大変危険なのでやってはいけない。
 

AM波(雑音) 田代さんの発表
 田代さんは、トランスのコアに太めのホルマル線を巻いて、1.5Vでもすごく強い電磁石になる装置を科教協の大会で手に入れた。2つのLEDの極性を反対に抱き合わせたものをそのコイルに並列でつなぎ、そこに手回し発電機の電圧を加える。発電機をゆっくり回すと、発電機の+とLEDの+につないだ方は点かずに、LEDの−につないだ方が点く。発電機を速く回して電圧を上げると両方のLEDが点く。実はこれは発電機の整流子とブラシの関係で電流が断続するからである。
 

 電池でやると電流を絶った瞬間、コイルの自己誘導のため今までの電流と同じ向きの電流を高圧で一瞬流すので反対向きのLEDが点く。「コイルには、電流が流れているとすぐには止まらない性質がある」ことを示す簡単な実験である。
 右は秋葉原で買ったというゲルマラジオ。このバリコンとコイル(バーアンテナ)のLC回路に電池をつないで断続すると、電圧を加えた瞬間や切った瞬間に高周波ができ、一瞬で減衰する。AMラジオのバーアンテナとこの電波発射装置のバーアンテナの向きをそれえておくと、装置に電池をつなぐ瞬間と切る瞬間にラジオがボコッと音を出す。このことよりゲルマラジオが電波の発信装置になっているのがわかる。

 ダイソーで買ったLED12個を点滅させるイルミネーションをこの電波発射装置に直列に入れると、LEDの点滅とラジオのボコッボコッという音が一致するのが楽しめる。
 究極の断続装置、クリップモーターを装置を直列にして回転させると、バリバリバリッとAM波を出し続ける。 どの方法でも発射装置のバリコンの位置によってラジオで受信したりしなかったするので、周波数の定まった電波である。

クインケ管の演示 水上さんの発表
 水上さんは、2000年5月例会で紹介した手作りのクインケ管を改良した。改良点は(1)黒板上の演示用とすることで説明しやすくした。(2)音源をブザーから発振器+スピーカーにし、問題と同じ波長に設定できるようにした。(3)マイクとオシロスコープで音の大小を視覚化した。(極大極小が分かりやすくなった)、である。
 発振器とオシロスコープはいつもの通り,「理科ねっとわーく」の「はつね」と「しんくろう」を使っている。
 

 下の箱がスピーカーの入った密閉音源、上の穴にマイクを近づける。上の写真が左右の経路差がなく音が強め合う場合、下の写真が半波長の奇数倍の経路差を生じて弱め合う場合である。

 下の写真は水上さん手作りのクインケ管の原理説明教具だ。生徒も「スライド部分をλ/4引き出す毎に右側の経路がλ/2長くなり,出口の重なりが同位相(音大)→逆位相(音小)あるいは逆位相(音大)→同位相(音小)と交互に変化する」ことを一目瞭然に理解する。

屈折による浮き上がり効果 水上さんの発表
 真上から見るとき,水中の深さhにあるコインが「屈折による浮き上がり」で深さh/nに見えることを示す演示実験である。二つのコインを机上(左)と高さ5cmの台(右)に置けば,台上の方が大きく見える。
 

 左のコインの上に20cmの深さに水を入れたPETボトルを置く。水の屈折率は約4/3なので,水面下20cmにあるコインは深さ20÷(4/3)=15cmの位置に浮き上がって見え、5cmの台上にあるコインと同じ大きさに見える。授業ではビデオカメラで拡大して提示している。

光源装置の紹介 水上さんの発表
 光源装置(ケニスLG)で光線を作り、凹レンズ7や凸レンズで屈折する様子を演示している。授業では装置とビデオカメラに黒布をかぶせ,ミニ暗室を作って提示する。この光源装置は明るく、光束も広がらず、スグレモノだ。
 

 こちらは臨界角の演示である。手製の「分度器」に半円レンズを貼り付けると入射角と屈折角を1°刻みで正確に測定できる。左は入射角が臨界角より小さいとき。反射光もかすかに見えている。右は臨界角寸前。屈折光はほぼ境界面に沿って進み、反射光が強さを増す。

 入射角が臨界角をわずかに越えた状態。全反射が起きている。この器具で測定した屈折率n=1.5から求めた臨界角約42°と写真の角度がみごとに一致している。

EX-F1映像で教えるドップラー効果 水上さんの発表
 造波器を水槽の縁にのせてゆっくり動かし、OHPでスクリーンに投影した像を、EX-F1で秒間300コマで撮影する。スローモーション映像では波源の移動と波面が拡がる様子がよく分かる。また,任意の位置で止めることもでき、公式を説明しやすくなった。右側の写真のように黒板に直接投影し、チョークで山と谷を描いてみるのも面白そうだ。次の例会ではこの映像を使った別の説明法を紹介してくれるそうだ。
 

メカ・ラビットの走り方 越さんの発表
 タミヤのロボクラフトシリーズのメカラビットは、両足キックタイプで、本物のウサギのようなユニークな走り方をする。後ろ足は楕円運動、前足は往復運動をする。後ろ足は滑り止めのグリップパーツが付いていて、接地面を後方に蹴ったあとの上下動により、跳ねている間に後ろ足を前に戻す。前足には車輪がついているので、後方に蹴るときに多少滑ってしまう。
 EX−F1によりスローモーションで見ると、前足だけが接地している時には、体が前めりになり、後脚が浮き上がる。その間に後脚を前に戻す。反対に、後ろ脚だけが接地している時には後ろのめりになり、前脚が浮き上がる。その間に、前足を前の方に戻している。前脚、後脚の動きは絶妙なタイミングで繰り返されていて、動的な走り方をするこのメカラビットは、シリーズの中で最速である。
 

 また、会場校の物理室の後ろに展示してあった楽しそうな数々の科学おもちゃの中に、同じロボクラフトシリーズのメカカンガルーもあった。これも独特の動き方をして面白い。

ソーラースパークライター 益田さんの発表
 手のひらサイズの凹面鏡の焦点で火種に火を付ける。焦点のフォークは携帯時は折りたためる。例会当日は太陽がなく実演できなかったが、晴天なら色紙を焦がすことができるという。鏡面が小さいので驚くほどの効果は期待できないが、キャンプなどの隠しアイテムにいかが?
 

FASTCAMデモムービー 山本の紹介
 FASTCAMシリーズは株式会社フォトロンが供給している工業用超高速ビデオカメラである。最高速1,302,000fpsという機種もある。ちなみに気になるお値段は数百万円〜1千万円ぐらい。
 それらのカメラで撮影したとっておきのデモムービー集DVDを披露した。DVDの配付はすでに終わっているが、コンテンツは同社のWebページの「未体験映像の世界」http://www.photron.co.jp/mitaiken/index.htmlで見ることができる。

二次会 永山駅前「新撰組」にて
 7名が参加してカンパーイ。今日の二次会はちょっと寂しい。例会参加者も少なめだった。みんな学校が忙しいのかな?先週、「神奈川の理科教育を考える集い」で集まったばかりだからかな?それでも、この夏の科教協全国大会や科学の祭典の話などで盛り上がった。


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