例会速報 2012/12/16 ナリカ


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授業研究:交流の授業 武捨さんの発表
 武捨さんが2学期に行った理系高3の「交流」の単元の授業報告である。授業は基本的には教室で行っており、実験器具はワゴンに載せていき、ビデオカメラで教室のテレビモニタに映しながら進めていく。
 

 授業は低周波発振器とイージーセンスを用いた実験を軸に展開した。イージーセンスなどのデジタル機器の利点は、低周波発振器の操作がリアルタイムでグラフに反映されることや、グラフの定量的な検証を簡単に行うことができることだ。写真は抵抗に加えた電圧(赤)と流れる電流(青)のグラフ。それらの積を直ちに計算して電力のグラフ(緑)を示すことができる。

 武捨さんはさらに、グラフを演示する前に豆電球をの光り方を予想させることで、各素子のはたらきを定性的に理解させるようにした。低周波発振器のダイヤルを回すと、周波数表示の変化とともに豆電球の明るさが変化し、電流の変化が視覚的・直観的に捉えられる。写真はコンデンサーの交流応答の実験。周波数を増すと電流が明るくともるので、コンデンサーのリアクタンスが小さくなったことがわかる。電流と電圧の位相は90°ずれており、電流が正の間、極板間電圧が増えている。

 こちらはコイル。周波数が増えると電球が暗くなることで、コイルリアクタンスが増えていることがわかる。

 抵抗、コンデンサ、コイルの交流回路における特性の基本を学習した後、RLC直列回路やLC並列回路、電気振動などを扱い交流回路の理解を深める。ここでも電球を使って、電流の大小を視覚的に示す。右はコイルの鉄心の効果を演示しているところ。

 左は振動回路の演示実験。コイルとコンデンサーを並列につないだ部分には電流が流れているのに、回路全体の電流はほとんどゼロになり、左の電球は消えている。不思議な現実を目の当たりに示すことができる。また電気振動では、従来オシロスコープを用いて電圧変化の演示がされてきたが、電流センサを用いれば、電流の時間変化のグラフ(右)も示すことができる。

ネオピア電子ブロック講習会 大箭さんからのお願い
 2010年10月の例会で国内販売開始の紹介をしたネオピア電子ブロックシリーズの取扱元、株式会社丸越では、同シリーズのネオスクールネオスクールJrの普及を図るため、子ども向けの講習会の開催を企画している。ついては、小中学生にやさしく電子回路の組み方を教えてくれる講師を募集している。学生も可とのこと。ご連絡は株式会社丸越へ(http://www.kk-marukoshi.com/)。
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電流による発熱の実験 山本による宮田さんの代理発表
 ナリカの中学生用電流による発熱実験器(カタログNo.B10-5751)を用いた中学校では定番の実験の実践報告である。発熱体2Ω、4Ω、6Ω各4本とスチロールカップ12個がセットになっている。宮田さんは温度計として秋月電子の小型温度計モジュールDE-20W(通販コードM-01745)\500を使用している。応答も早く、数字を直読できるのでお薦めである。
 しかし実際に実験室で実験を行うと、電圧計・電流計での測定から求めた消費電力より、水温測定から求めた水が得た熱量は3割方少なめになる。これは熱の散逸によるよりも、実験室の直流電源のリップル(整流・平滑回路の能力不足による出力の小刻みな変動)の影響が大きいだろうと考えられる。生徒用の電圧計・電流計はリップルがあると高めの測定値を示してしまうということだ。

雪の標本 海後さんの発表
 海後さんは、YPCでもおなじみの高橋信夫さんが翻訳・出版したMad Science(http://www.amazon.co.jp/dp/4873114543)の本の中で、瞬間接着剤(シアノアクリレート)で雪の結晶を型どる実験に興味を持ち、追試してみた。ところがカバーガラスを被せなかったことで実験に失敗してしまったのだが、垂らした接着剤から離れた場所の結晶が、結晶構造を残して透明に樹脂化して残ることを発見した。雪や霜の結晶を型どりではなくて、そのままの形で樹脂化した標本として永久保存出来るのは初めてではないかと思う。失敗は成功の母だ。

 海後さんが後日調べて見つけた画像では、本の中の方法だと結晶が真っ白になってしまうようだという。海後さんが見つけた方法でも蒸発したり白化したりで、安定して結晶を透明に残す方法がなかなか見つからないそうだ。この記事に興味を持った人の追試にも期待する。

全日本製造業コマ大戦 海後さんの発表
 横浜の中小製造業グループ「心技隊」が昨年2月に始めた大人のベーゴマ大会のようなイベント「日本製造業コマ大戦」に、海後さんも勤務先とYPCの名前を借りて2月8日の大田区場所に参加する予定だ。
 海後さんはルールの曖昧さが気になるところだというが、回転軸に対してφ20mm以下の手作りのコマなら何でもアリというところが面白いのでいろいろ自作してみた。
 写真右は最高で7分も回る真ちゅう製のコマ。軸に工夫が施してあるが今のところは秘密。回転数を知りたくて、回転物に反射シールを貼って計測する非接触型のレーザー回転計を購入した(3千円~)。実際に計測してみると、回し始めの時点で毎分5千回転を超えているというから驚きだ。

 左の写真は海後さんのパーツ箱。自作した数々のコマが格納されている。赤丸がついているコマは斜めの軸を持つ非対称ゴマ。面白い動きをする。ハイスピード撮影動画(movファイル6.2MB)はここ
 右は屋久島のコマに似ているが、ゆで卵を回すとなぜ立つのかという問題から「コロンブスのタマゴマ」と名前付けた。これも真ちゅう製で50gあり、コマ大戦のコマとしては重い方だ。昨年の大会参加チームのコマを見ると、直径の制限内で重くすると低重心のコマの方が安定するというのが常識となっているようだが、YPCメンバーとしては、物理形状によっては重心が高い方が安定して回るという事を大会で証明したいと思っている。

 左の写真は「ツインコマ」。φ20mm弱の鋼球を2個接着した64gの非常に重いコマ。ハイスピード撮影動画(movファイル6.9MB)はここ。相手のコマを簡単に蹴散らす最強のコマとして考えたが、「ただ接着しただけなので手作りとは言えないし、なによりも大人げ無いのでボツのアイデアですね。」と海後さんは語る。
 海後さんは他にもいろいろなコマを考えて自作しているが、大会後のYPC例会で紹介してもらえるのが楽しみだ。海後さんの戦績に期待しよう。
 コマ大戦では製造業だけでなく、ものづくりに興味のある学生チームの参加も歓迎している(自前のコマでなくてもOK)ので、ぜひ今年の地方予選には若い人達も参加してほしい。

土肥さんの実験紹介 土肥さんの発表
 広島からはるばる土肥健二さんが特別参加し、楽しい実験の数々を一挙に披露してくれた。写真左はラスベガスで買った電動コマにヒントを得たというフライングディスクを改造した大型コマ。手でぶら下げて角運動量がたっぷりついたところで床に置いて回す。
 写真右はピックアップコイルをネオジム磁石でたたくようにしてLEDを光らせる「たたいて電磁誘導」。動画(movファイル1.2MB)はここ
 

 百均の扇風機のプロペラの変わりに磁石をとりつけ高速回転させる。これをつるしたアルミ缶に近づけると、非磁性体のアルミ缶が回転し始める。名づけて「100円扇風機で渦電流」。動画(movファイル2.6MB)はここ
 写真右は張力を制御するだけで音程を変える一弦のギター。共鳴板は百均のスチレンボード。見事な演奏に匠の技を見た。「簡易テンションギター」の動画(movファイル3.1MB)はここ
 

 写真左は百均の茶碗を店で一々たたいて音程に合うものを買い集め、並べて演奏する「ジングルベルの茶碗・エリーゼのための茶碗」。番号通りにたたくとちゃんとメロディーになる。
 写真右は「ミニペーパージャイロ発射装置」。動画(movファイル1.9MB)はここ

 「もっこり三兄弟の人生」。アルミ缶に風船をかぶせただけのしかけだが、熱湯をかけるとユーモラスな動きをする。このエンターテイメント性が土肥さんの実験の真骨頂だ。

 同じく、アルミ缶にお湯をかけるとキューピーが勢いよくオシッコを飛ばし、その勢いで羽根車を回して発電、その電流で電子オルゴールの「ハッピバースデイ」が演奏される「小便小僧がお湯で発電ハッピバー」。会場は笑い声にあふれる。動画(movファイル2.5MB)はここ

視点を変えて物理を楽しもう 石川さんの発表
 岐阜物理サークルの石川幸一さんも特別参加してくれた。石川さんは昨年「視点を変えて物理を楽しもう」という、岐阜物理での長年の活動を集大成する本(写真左)出版した。物理教員はぜひ座右に置きたい本だ。
 右の写真は2012年11月発行の岐阜物理サークルニュースNo.271の石川さんの記事で取り上げているトロイダルコイルのモデル。ソレノイドを円形に閉じたトロイダルコイルでは磁束がほとんど外部に漏れないので、二次コイルで磁場の変動をピックアップできなくなるが、写真のようにトロイダルコイル内の磁束が貫通するような二次コイルなら誘導起電力が発生する。この場合、二次コイルの導線を切る磁束はないのだが電磁誘導は起こるのである。

透明スピーカー 車田さんの発表
 車田さんは日本科学未来館の実験プログラム「導電性プラスチックを作ろう~透明スピーカーへの応用~」に参加し、コイル、磁石を使わないスピーカーを作った。ピエゾフィルムという圧力を加えると電圧が生じるフィルムに、逆に電圧を加えることによってフィルムが伸び縮みして空気を振動させ、スピーカーになるという仕組みだ。白川先生がノーベル賞を受賞した「導電性プラスチック・ポリピロール膜」をフィルム両面に加工し電極としている。電圧をかけるために両面の外枠に銅箔テープを貼り、膜の保護のためにポリ袋に入れている。フィルムは長辺の方向に伸び縮みするので、平面にしたときは空気はほとんど振動しない。湾曲させることでフィルムが前後に振動し音が聞こえる。動画(movファイル4.2MB)はここ
実験では「KFピエゾフィルム」を使った。秋月電子でも別のピエゾフィルムを扱っている。

物理実験機材講習会の報告 舩田さんの発表
 舩田さんはかんたんにできる物理実験・工作の普及に努めている。10月に行った千葉県の教員対象の講習会の内容の報告があった。
 紹介した実験の主な内容は、小型高圧電源装置による電気実験、くるくるモーター、偏光ステンドグラス、ブラックウォール、ホワイトウォール、分光筒、逆立ち独楽など。

 偏光シートに使われるヨウ素の生産日本一は千葉県だ。舩田さんはその千葉県に住んでいるので、偏光シート工作を広めている。まずはスタンダードなブラックウォール(左の写真の奥と手前)。縦偏光シートと横偏光シートを並べて留め四角い筒状にすると中央に黒い壁が現れる。
 さらに今回洒落で白黒が反転しているホワイトウォールを作ってみた(右の写真)。どのようにして作ったのか考えてみよう。


力のモーメントと平行2力の合成 水上さんの発表
 剛体の節は、生徒には理解しにくいようで、教え込みになりやすい。水上さんは、体験を通して学べるような黒板実験とその映像を紹介してくれた。いずれも演示実験の後、書き込み式スクリーンに投影した映像を静止させて必要な要素を書き込んでいく、おなじみの水上流で展開する。

 ①(左)「力のモーメントM=FL」の公式を学ぶ際の映像。『力のモーメントM=FLにより、この剛体は反時計回りに回り出す』ことを確認してかから映像を進め、その通りになることを見せる。
 ②(右)『平行で同じ向きの2力の合力は大きさが2力の和、作用点は2力の大きさの逆比に内分する点』であることを学ぶための演示実験と映像。鉛直方向の力(棒に働く重力と棒を支える糸の張力)の合力は0になるので、水平方向の糸の張力のつりあいだけを考えれば良よい。

 ③『平行で逆向きの2力の合力は大きさが2力の和、その作用点は2力の大きさの逆比に外分する点』であることを学ぶための演示実験と映像。

 ②と③の授業展開は、「(実験)棒の2か所に糸を掛けて、『棒をまっすぐにするにはどこに何個のおもりを掛けて引けば良い?』」⇒生徒を指名し、答え通りにおもりを掛ける(棒がまっすぐになれば正解)⇒「規則性は?」(教えなくても生徒は上の規則性を体験的に見つけ出す)⇒映像を静止させて必要な要素を書き込みながら教科書を読んで理由を説明する。⇒教科書の公式が自分たちで見つけた規則性と同じであることを確認する。

ケアンズ皆既日食 伊藤さんの発表
 伊藤さんは11月14日のケアンズ皆既日食を見に行ってきた。左は現地のテレビ画面。右は魚眼レンズで捉えたシャドウバンドが迫ってくる様子。太陽は水平線から昇ったばかりで最後の輝きを見せている。伊藤さんは照度計や温度計も持参して日食中の変化を記録した。写真のように雲が去来してデータが乱れたが、興味深い観測結果が得られた。

半影月食と月の大きさ 伊藤さんの発表
 11月28日は満月で半影月食があった。肉眼ではほとんどわからないぐらいの減光だが、写真に撮ると左上が暗くなっているのがわかる。月から見れば地球による部分日食が起こっていることになる。ところでこのときの月は軌道の遠地点に近く、かなり小さく見えていた。5月6日のスーパームーンのときの写真と重ねてみるとその大きさの違いがよくわかる(写真右)。

子ども向けの磁石工作 池上さんの発表
 大手電機メーカーの技術者を勇退された池上さんは、科学ボランティアで子どもの工作を指導している。写真は磁石とホルマル線と電池一個で作るモーターの工作。工作の完成度が高く、スイッチまで銅線で工作している。特にモーターの回転子がユニーク。左のモーターは折れ線が回転する。右のモーターはフェライト磁石の回転により下の界磁コイルの電流を断続している。いずれも奇抜なアイデアだ。

 ハート型の銅線が回転する単極モーター。アルカリ電池をフェライト磁石の上に逆さに立てただけ。部品点数を極力減らした設計だがよく回る。

二次会 御徒町駅前「おかってや」にて
 22人が参加してカンパーイ!。ナリカでの例会は毎年盛会だ。例会本体には今年最多の50人の参加があった。二次会も忘年会にふさわしいこの盛り上がり。来年は景気も教育もよくなりますように。


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