例会速報 2013/01/20 神奈川学園


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授業研究:電磁誘導に関する生徒発表の授業 市江さんの発表
 市江さんは、中高一貫中学2年生(4クラス各11班)の電磁誘導の単元で、金属パイプ中の磁石の落下運動について生徒発表形式の授業を行った。事前にレンツの法則について、演示実験を交えて詳しい解説を行い、さらに簡単な問題演習ののち、以下の課題を提示した。「銅やアルミニウムは磁石につかない金属である。これらの金属でできたパイプの中で、磁石を落とすとどのように落ちるか。また、その原理を詳しく説明せよ。」
 生徒は4人1組で話し合い、班の考えを発表用のA4紙にまとめ、書画カメラとプロジェクターを用いて発表した。教卓には実験道具を用意し、いつでも生徒達自身で現象が確認できるようにした。
 発表の中で生徒のさまざまな思考過程が表面化でき、質疑応答の中でその誤りが改められる場面もあった。例えば、磁石の下側にのみ注目する班が多い中、上側についても説明する班が現れ、説明を試みるも磁界の向きに誤りがあり、他の生徒に指摘され訂正する中で、磁界が弱まる場合について考察を深めることができた。その反面、事前の授業でかなり詳しく解説をしていてもなかなか生徒に定着しない現実も目の当たりにした。
 

 左の写真は、神奈川学園の水野さん作の演示装置。リング状ネオジム磁石に銅、アルミ、真鍮のパイプを通してあり、それぞれで磁石の落ちる速さの違いが一目で観察できる。今回市江さんが用いた、パイプの中でネオジム磁石を落とすタイプは、上から覗かないと観察ができないが、生徒には考察しやすいだろう。
 まだ考える材料が揃っていない中学生にとって、磁界と力の関係を考えることは非常に難しい。中学生には極力抽象的な話は避け、直接実験を通して観察、認知できるものに重点をおいて学習させる必要がある。そのような配慮からだろうか、右の板書写真中央の図のような電流が磁界から受ける力の向きの説明(マクスウェルの応力)は、2つ前の教科書には記載があったが、1つ前の教科書からはなくなった。
 現行の教科書ではレンツの法則が発展で扱われているが、認知が困難な磁界について中学生に深く考えさせるのは、極力避けるべきだと思う。この学習では磁石がつくる磁界と誘導電流がつくる磁界を明確に区別する必要があり、暗に磁界についての深い考察が求められる。このジレンマの中で、「落下する磁石の下側で、磁石がつくる磁界と誘導電流がつくる磁界が弱め合うと、なぜ反発するのか。」という生徒の疑問に対して、市江さんが授業の最後に苦肉の策で答えたのが板書の左の図である。例会ではこの説明に批判が集中した。ファラデーの磁力線の性質について言及すべきという意見や、2つの磁界の強め合い、弱め合いに言及せず、誘導電流がつくる磁界から磁石が力を受けるという説明で十分という指摘もあった。
 中学生や高校生に磁界についてどこまで深く学ばせるのかという問題について、引き続き例会の場で議論を重ねて行きたい。
 

月の重力体験機 水野さんの発表
 会場校神奈川学園の昨年の文化祭で理化部は「星・宇宙」をテーマに研究発表した。そのとき水野さんが部員と一緒に作ったのがこの「月の重力体験機」だ。文化祭前から、滑車を使って自分自身を持ち上げる装置は作ってあったが、それは滑車2台でロープ4本だった。つまり体重の約1/4の力で引けば持ち上げられた。月の重力は地球上のおよそ1/6だから、滑車4台にしてロープ6本で人をつり上げるようにしたものがこれである。
 椅子に座った人は1本のロープを引いて自分自身を引き上げる。ばねばかりで引く力を測ってみると、かなり誤差があるものの、確かに椅子に乗った人の体重の約1/6になった。理化部の名物器具の一つだそうだ。
 

コーラで分子量測定 山本の発表
 故山本進一先生(元都立戸山高)の1999年東レ理科教育賞論文に紹介されている実験の追試である。コーラなどの炭酸飲料から発生する二酸化炭素の分子量測定を行う。
 まず、静置した500mLのコーラのふたをあけ、発生気体を受け止めるためのポリ袋(中の空気は十分に追い出しておく)を取り付けて全体の重量W1を測る。次に容器を激しく振って二酸化炭素を発生させ、器壁をたたくなどして発生気体をポリ袋に移す。この際、コーラの液も吹き上げるが気にしない。気体の発生がおさまってから液を容器に戻せばよい。こうしてポリ袋が二酸化炭素でふくらんだ状態(写真左)で重量W2を測ると、空気による浮力の分だけ軽くなっている。最後に、ふたをゆるめてポリ袋の中の気体をよく追い出してから重量W3を測ると逃げた二酸化炭素の分だけW1より軽くなっている(写真右)。
 

 以上の測定から、空気の平均分子量を29、求める二酸化炭素の分子量をMとすると、
(W1-W2):(W1-W3)=29:M
が成り立つので、測定値からMを知ることができる。山本進一先生の論文では、真値44に対し、生徒実験でも42~46ぐらいの値が得られるということだった。例会では46.8が得られた。
 大変手軽な上に、身近な材料で楽しく実験できるのがよい。状態方程式を使わないので、気体の分子量の精密測定と言うよりは、空気にも質量があり浮力を生じることや、気体の種類により「重さ」に違いがあることなどを実感させることに使うのもよさそうだ。その意味では、小中学校でもお薦めできる実験である。
 PETボトルの中味を「希硫酸と亜鉛」「オキシフルと酸化マンガン(Ⅳ)」「水とバブ」などに変えると同じ装置で他の気体の測定も可能だろう。

 発表者の山本が改良したのはただ一点、気体を受け止めるしかけだけ。山本進一先生はマイティパックとゴム栓をゴム管で結んで使用していたが、この部分を安価なポリ袋(例えばダイソーの保存ポリ袋(中)35×25cm60枚入り105円)とし、使い捨てにした。アダプターはPETボトルキャップ2個をセメダインスーパーXで接着し、ドリルやリーマで8mm程度の穴を貫通させて作る。簡単な装置で、後始末も楽である。

ランダムモアレ 加藤俊さんの発表
 黒いシートを白い紙に重ねると、何やら大きな文字が浮かび上がる。「a」と読める。黒いシートを斜めにずらしていくと、「a」の影の大きさやピッチが変わる。
 

 黒いシートには規則正しく配列した小さな穴があいている。白い紙には黒いシートの小さな穴とほぼ同じピッチ、同じ配列で無数の「a」の文字が印刷されている。穴からのぞく「a」の文字の部分が、すこしずつ規則正しくずれていくことにより、文字形のモアレパターンが生じるのだ。音の「うなり」と似た現象だ。
 

ソーラークッカー 加藤俊さんの発表
 ちょっと変わったガラスの筒状の太陽熱調理器。容器は二重真空構造で断熱され、遠赤外線は通さないが近赤外線は通す干渉フィルターが施されている。太陽熱は外から入ってくるが、中からの熱放射は閉じこめる仕組みだ。金属のフードはパラボラになっていて集光の役割をはたす。日なたに置いておくだけで中のものが調理できるという。残念ながらガラスが破損していたが、実際に実験してみたかった。
 

多層球 加藤俊さんの発表
 中国伝統の工芸品。多重の球体が入れ子になっていて中で自由に動く。かぶせたり接着したりして作るのではなく、一つのブロックから削りこんで作る。中から外へと彫り上げていくのだそうだ。台湾の故宮博物院には象牙の21層からなる精密な多層球が宝物として収蔵されている。これは3層構造のシンプルなもの。素材が何でできているのかは聞き損ねた。

クラクションホーン 車田さんと古谷さんの発表
 紡績業で使う糸巻きの芯を利用した楽器。吹くと車のクラクションのような音がする。紙筒を二重にしてゴム風船でふたをしたような構造だ。吹き穴はオカリナのように外筒の側面についている。空気が二重の筒の外側からゴムを振動させながら内側の筒に逃げる。
 

 この笛の考案者は水野宏也先生(岐阜県恵那市の小学校教諭)。A・SO・BO!プロジェクトというボランティア団体に所属し、原体験教育研究会のウェブマスターでもあり、http://www.proto-ex.com/というサイトを日本科学協会に依頼されて作っておられる。

 紡績用の糸巻きの芯は入手しにくいため、神奈川理科サークルの古谷さんはペットボトルを利用して同じような構造の楽器を作成した。ペットボトルの底を切り取り、「拡大君」の用紙の芯を適当な長さに切断して中に入れる。ペットボトルの材質については、ある程度堅めのものを使うとよい。ペットボトルの材質によっては音の高低に変化をつけられる。音の大きさや高さはゴム膜の張りでかなり違う。気柱共鳴ではないらしく、筒の長さはあまり影響がない。ゴムを張る側は内側の筒を外側のペットボトルより若干長くするのが製作のコツだ。この内外の筒の長さの違い、筒の口径、ゴムの張り具合をうまく調節すると音階が作れるのではないだろうか。
 

全反射を応用した遊び 佐々木さんの発表
 NHKの特番「2355・0655 年越しをご一緒にスペシャル」で放送された、全反射を応用した遊びの紹介。用意するのは、透明なビニールのケースとその中にちょうど収まるサイズの紙、そして水を入れたコップ。
 まずは番組内で爆笑問題が行った事例。ビニールには「++」、紙には「田中」と書いておき、紙をビニールにセットして、水を入れたコップに入れる。斜め上から見ると「++」しか見えないが、引き上げると(またはコップの横から見ると)「田中」が現れる。紙には全部、ビニールには一部を書き、ぴったり重ねれば良いわけだ。
 

 次に、もう少し遊びの要素を入れて、ビニールに熊、紙に虎を描いてみた。しまじろう(ベネッセ)の絵を子供のために描いていたときに感じたが、熊と虎の顔はイラストではわずかな違いだ。
 

 最後に、ビニールに魚のホネ、紙に魚(身、ヒレあり)を描いてみた。生物の解剖図や機械の内部構造のイラストを、もう少しリアルに描いてもいいかもしれない。アイデア次第でいろいろと遊べるネタで、科学部などのワークショップのネタにはちょうどよさそうだ。
 

ELMOのQBiC 佐々木さんの発表
 書画カメラのELMOが発売したカメラ「QBiC」の紹介。多目的カメラ、フィールドカメラ、ウェアラブルカメラ、スポーツカメラ、アクションカメラなど、様々な呼び方がされ、米国のGoPro社が圧倒的なシェアを握っているジャンルのカメラだ。このジャンルのカメラは、ヘルメットや自転車のハンドル、サーフボードなどに固定して撮影するスタイルが主流のため、ファインダーや液晶モニターがついていないのが普通。従来は別売りの液晶モニターを装着する以外には、画角は「勘」頼みであったが、最近のモデルはいずれもWiFiを介してスマホで確認できる。後発の日本製として、JVCケンウッド、SONYに続き、ELMOが参入した。
 

 ELMOの特徴・売りとしては、
①レンズメーカーならではの歪みの少ない自然な広角映像(135°または185°)
②業務用監視カメラ並みの高感度(最低被写体照度は月明かり程度の2.5ルクス)
③WiFiによるリモート操作でリアルタイムに動画・静止画を記録(専用アプリの設定も簡単)
などに加え、7m防水、LED照明、GPS、インターバル撮影機能がある。
 国産3社の室内撮影を比較をする機会があったが、ELMOの映像が最もキレイ、バッテリー持続は最長でスマホ設定も簡単であった。3社の中では、やや大きく重いのが難点だが、単体での防水機能などからすればやむを得ないところか。理科分野でも、観察用カメラとして活躍しそうだ。
 詳しい情報はここ→http://www.elmoqbic.com/feature/

スターリングエンジン 池上さんの発表
 池上さんは大人の科学でもおなじみのCDをフライホイールにしたスターリングエンジンを完全自作した。熱湯を入れたマグカップの上にふたのように置くだけで、ピストンが往復運動し、CDが回り始める。動画(movファイル1.4MB)はここ
 

 すごいのは、これがキットではなく、クランクやシリンダーに至るまで、ほとんどのパーツが手作りされていることだ。回転部には全て小さなベアリングが装着されおり、一つ一つのパーツにこだわりが見られる。匠の技ともいうべき芸術的な仕上がりに、「さすがは元技術者」と、参加者からは感嘆の声があがった。
 

授業用映像・弦の振動 水上さんの発表
 水上さんの授業用動画シリーズ、今回は弦の振動がテーマだ。黒板にスピーカー(ナリカのバイブレーター29000円)と「コマ+滑車」を磁石で貼りつける。良く見えるように蛍光黄色で太目の測量用糸を弦として用いた。なお、糸が上に振れるときに「コマ」から浮いてしまうのを防ぐために、コマを少し高くした。授業ではなるべく実物を見せながら学習するが、問題演習等で必要に応じて映像を見せている。
 

 (m倍振動数fm)=(基本振動数f1)×m を確認する映像。150Hzで振動させると3倍振動になるように弦の長さが調節されており、振動数を30Hzから170Hzまで10Hzずつ上げていく。50Hzで基本振動(写真上左)、100Hzで2倍振動(写真上右)、150Hzで3倍振動(写真左)、それ以外の振動数では弦に定常波が生じないことを確認できる。

 1個のおもりで張力を与えられて4倍振動している弦→おもりを4個にすると、同じ振動数で2倍振動モードになる。張力が4倍→波の速さが2倍→v=fλで振動数一定なら波長が2倍というわけだ。


 同様に、4個のおもりで3倍振動している弦→おもりを9個にすると2倍振動モードになる。張力が増すと腹の数が減ることを体験させたり、弦を伝わる波の速さが弦の張力Sの平方根に比例することに気付かせるのに利用する。

 スピーカーが弦と垂直に振動して4倍振動になっている→振動数と弦の長さを変えずにスピーカーの振動方向を弦と平行にすると(写真左)、腹の数が半分になり2倍振動モードになる。


マイスナー効果の実験 田野倉さんの発表
 YBCO型高温超伝導体によるマイスナー効果の演示。白い円錐体の底の部分に超伝導体が取り付けられている。液体窒素中でよく冷やした後、円錐後とつまみ上げて、大型ネオジム磁石の上に押しつけるようにして、指先で円錐をひねると、空中に浮遊しながら円錐が回転する。
 

研究室を飛び出したロボットたち 高橋さんの発表
 日本科学未来館でボランティアをしている高橋さんは、2012年11月11日(日)につくば市で開かれた、自律型移動ロボットの公開走行実験「つくばチャレンジ」に出場した。つくばチャレンジは、自ら考え行動するロボット(自律ロボット)が、実際に人が生活する街の中で、速度を競うのではなく、『安全かつ確実に動く』ことを目指す技術チャレンジだ。ルールは①ロボットの速度は4km/h以下、②約1kmのコースを2時間以内で回る、③外部からの補助を受けずに走行する、である。
 

 課題コースはTXつくば駅周辺。つくばエキスポセンター~つくば中央公園内の遊歩道~つくば駅前プラザ(ペデストリアンデッキ)を周回~エレベータにて1Fに降下~つくばセンターの屋内商店街の廊下を周回した後~1Fの屋外広場に出て~緩やかな狭いスロープを登りゴールする、1.4km強の区間。一般の歩行者が楽しそうに見守る中で、のんびりとトライアルが行われる。未来のロボットと人との共存の姿なのかもしれない。今年のつくばチャレンジも同時期に実施予定。課題は「指定された服装をしている人を探す」だそうだ。
 

立体カメラ 竹内さんの発表
 竹内さんが企業の研究所にいたころ研究していた立体カメラの技術が、次々に民生品として実現し、市場に出つつある。これはなぜかライバル会社の製品だが、立体カメラがコンパクトデジカメとして世に出ている。
 

中高生の科学部活動振興プログラム 長嶋さんの募集案内
 JSTが実施する中高生の科学部活動振興プログラムでは、中学校、高等学校等の科学部が行う調査、研究、発表等に関する活動に対して、3年間の継続的な経費支援を行っている。長嶋さんはその担当だ。
 このたび、同プログラムの平成25年度の活動募集が開始された。支援額は最大年間50万円(高等学校の場合)で、活動費が足りなくてできなかったことが、できるようになる。「科学部活動を活発にしたいと考えている先生方は、応募を是非ご検討ください。」と長嶋さんは呼びかける。

 募集締切は2013年2月15日(金) 正午まで。詳細は、下記Webサイトへ。
http://rikai.jst.go.jp/kagakubu/kikan

二次会 横浜駅前「はなたれ横浜鶴屋町店」にて
 18人が参加してカンパーイ!。今日は37人もの人が例会に参加してくれた。時間切れで残念ながら見送った発表がいくつもあった。この時期としては珍しいし、神奈川学園会場の例会としても過去最高の人数だ。初参加の方も何人もいてうれしかった。その半数がこうして二次会にも集まるからすごい。二次会でも科学談義は尽きなかった。


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