例会速報 2015/03/15 関東学院中学校・高等学校


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授業研究:中学の「音」 武捨さんの発表
 中高一貫校の中学1年生で実施した音の授業報告。2014年2月に報告した授業プランの修正版である。
 1時間目は音源について、「音を出している物体は振動していることを理解させる」ことをねらいとした。ギター、スピーカー、音叉が振動していることを観察させた。
 2時間目は音の三要素について、「ものには決まった振動数があり、その振動数は振幅によって変わらないことを理解させる、音の高さは振動数、大き さは振幅によってきまることを理解させる」ことをねらいとした。ギターの弦の振動やスピーカーで出力した低周波発振器の音を、ハイスピードカメラで撮影した映像やセンサ(オシロスコープ)で観察させた。
 

 3時間目は媒質について、「音源の振動が、まわりの空気、水、固体などに次々と伝わっていくことを理解させる」ことをねらいとした。
真空鐘に音源を入れる、スリンキーで振動を伝える、水に音源を入れる、糸電話、針金電話など、いろいろな媒質で振動が伝わる様子を観察させた。
 

 4、5時間目は音速について、「音源の振動は時間をかけて耳に伝わることを理解させる、音が進む速さは媒質が同じであれば、振動数や振幅によらず 変わらないことを理解させる」ことをねらいとした。30m程度の距離に生徒を立たせて、音が聞こえたら手を挙げさせる実験、振動数が異なる音源について、音センサを用いてそれぞれの音速を求める実験を行った。
 例会では、共振や共鳴についても扱うべきではないか、振幅や振動数の導入に鉛直ばね振り子を用いることで生徒は混乱しないか、モノコードの実験は 行わないのか、ひとが音を知覚することを詳しく説明してはどうか、真空鐘で音が聞こえないのは本当に空気がないからではなく、ガラス壁で反射してしまうからなので、扱うべきではないのではないか、などの意見が出された。
 

親子ごま製作に関しての考察 古谷さんの発表
 前回例会で紹介があった「親子ごま」の親独楽の構造についての考察。親独楽の条件として、(1)安定的に、(2)長時間の回転すること、が要求される。そこで、ほぼ同じ重量の、独楽A(CDを4枚重ねにした独楽)、独楽B(外周に太めの針金を接着した独楽(写真左))をそれぞれ回転させて、それらの倒れるまでの回転の持続時間を比べてみた。
 結果は右の表のとおりで、独楽Bの方が平均して回転時間が長い、という数字が出た。慣性モーメント大の方が有利という理屈がそのまま結果となったようだ。
 

自撮り棒と魚眼コンバージョンレンズ 古谷さんの発表
 海外からの旅行者に人気の自撮り棒。古谷さんはさっそく購入し、スマホを取り付けて撮影してみた。Androidタイプはイヤホンシャックにプラグを差し込み、手元スイッチで撮影ができる。アプリをインストールしなければいけないが、あると便利。
 右の写真はスマホにクリップで取り付けるタイプのレンズ三種(広角、接写、魚眼)。安価(1500円程度)であらゆるタイプのスマホに取り付けられるのがいい。
 

おもちゃ 成見さんの発表
 成見さんは、春休みに友人からの声掛けで、人生初・子供科学教室をすることになった。そこで紹介するおもちゃの一つとして「ふしぎBOX」を試作。YPC例会参加者からのアドバイスを受け、改良版(写真)が無事完成した。
 坂道に一か所だけマグネットをつけてあり(取り外し可能)、マグネットがないと2つのボールはともに左の出口から出てくる。片方のプラスチックボールの内部には小さなマグネットが入っており、坂道にマグネットをつけると、そのボールだけ右の出口から出てくる。電通大のごみ箱・アルミ缶とスチール缶の選別機からアイデアを得たという。
 

ステンレスボトルでシャカシャカ 鈴木健夫さんの発表
 仕事と熱の関係を示す演示実験として「ステンレスボトルでシャカシャカ」というのがある。ステンレスの魔法瓶に水を入れて、シャカシャカと振るという仕事をすることで、水にエネルギーを与え、温度上昇することを示す。鈴木さんはそれを定量化しようと試みた。
 使用したステンレスボトルの熱容量は、熱湯を入れて測定すると140J/K、ステンレスの比熱とボトルの質量の推測値からは約100J/Kでオーダーはあっているので前者を採用する。ボトルに水100gを入れ、激しく振るのではなく、ゆっくりひっくり返す動作を繰り返す。1回ひっくり返すと、水の高さの分の位置エネルギーが与えられ熱に代わるとみなす。
 

 1000回ボトルをひっくり返す動作を行った場合の水の温度上昇を、ボトルの熱容量も考慮に入れて計算すると、0.5Kとなる。例会で実際に1000回行った結果が右の写真。3つの温度計の測定でそれぞれ、2K、0K、1.5Kという結果である。結論から言うと、温度計の誤差が大きいのと、ステンレスボトルを触っていることによる熱の流入などから、定量的に行うのはほとんど無理だ、という結果だった。つまり、この実験はあくまで、仕事が熱に代わり温度が上がる、ということを定性的に示すしかなく、定量的にやるには、誤差が大きく無理がある、ということだ。このようにだめなものを確認することも大事である。例会でボトルを振っていただいたみなさん、お疲れ様!
 

物理基礎の水流アナロジー 宮崎さんの発表
 人は往々にして習った通りにしか教えられない。いや本当は何を習ったのだろうか。また、自分の教え方以外の教え方を認めたがらない。何の科学的根拠もなく従来の教え方を肯定したがる。宮崎さんは、今、日本の高校で行えるアクティブラーニングのプランニングに参加している。その中で、中学の教科書の中での水流アナロジーについて調査がされ、高校物理基礎の教科書については宮崎さんがまとめた。以前の教科書では扱っていない社もあったが、現行の教科書はすべてが水流アナロジーを登場させている。
 しかも、宮崎さんが学んだときの教科書にあった、管の水路モデルだけでなく、開水路のモデルまで何の説明もなく登場している。開水路での流水の流れる速さは単純なものでないのは、水理学を学んだ方には既知の事であるが、教科書執筆者があえてこれを持ち出した意図がわからない、図だけで何を伝えようとしているのだろうか。もしかすると、しっかりと調べることなく、なんとなくのイメージで載せたのかと勘ぐりたくもなる、と宮崎さんは訴える。
 

 「ともかく、執筆をされる方は、アナロジーの限界について書かれた本や論文の数本は読んでいただきたい。」と、宮崎さんは教科書での扱い方のまとめと、アナロジー関連の書籍2冊、水流アナロジー関連論文2編を例会で紹介してくれた。画面の図だけで判断せず、まずは論文を読んで論文執筆者の本意をつかんだ上で議論してほしいと、宮崎さんは述べている。
 

授業ノート(案) 武捨さんの発表
 武捨さんは、生徒のノートを回収返却する手間や、手元に記録を残すこと、生徒に自己評価をさせること、などを考え、来年度は生徒に毎回1枚ずつノート代わりの プリントを配付することを検討している。特に、生徒に自己評価させることについて、例会では様々な意見が出された。

SONYのHDR-MV1 武捨さんの発表
 ソニーから発売されている音楽を記録することに特化したビデオカメラ(ミュージックビデオレコーダー)。120°の広角レンズが搭載されているので、教室の角に置けば、教室全体を写すことができる。また、高音質で録音できるステレオマイクが搭載されているので、発表する生徒の声も比較的明瞭に録音することができる。まさに、授業記録に最適なビデオカメラである。クラスの合唱の記録などにもおすすめ。
 

カメラ リコー THETA 益田さんの発表
 魚眼レンズ2つを搭載し、360度撮影可能なカメラ。カメラ内で画像をつなぎ合わせてくれる。カメラにはモニターがついておらず、スマートホンなどで閲覧する。また、スマートホンにて遠隔操作も可能。
 

 取り込んだ画像はこんなふうになる。上下左右前後360°をシームレスにつなぎ合わせた全方位パノラマで、ビューワーの操作で任意の方向を画面の中心に持ってくることができる。面白いカメラだが、さて何に使おうか。使い方募集!

西條敏美さんの「授業 虹の科学」 山本の書籍紹介
 西條敏美さんの新刊本の紹介。
「授業 虹の科学」太郎次郎社エディタス (2015/2/9刊)税別1800円、ISBN-10: 4811807790

 「光の原理から人工虹のつくり方まで」の副題のとおり、中高生レベルの光の屈折の話から説き起こして、波動光学の議論まで、虹の理論を詳しく解説すると共に、虹に関する実験の数々も紹介している。
 タイトルに「授業」と書いてあることからもわかるように、著者の高校教諭としての授業実践を踏まえて読者に授業をするようなトーンで書かれており、読みやすい。虹についての授業の組立の参考になる授業計画や、虹に関する入試問題まで集録するという念の入れようで、とにかく虹に関する情報の全てが収められていると言ってよい。おすすめの一冊である。
 なお、カバーの虹の色の順が逆なのはデザイナーさんのセンスだろうが、著者としては残念だったに違いない。

のぞきからくり絵本 益田さんの発表
 アコーディオンの蛇腹のようになった絵本。右の写真のように引き伸ばして、表紙ののぞき穴からのぞき込むようにして鑑賞する。
 

 パリにある回廊で囲まれた庭園「パレ・ロワイヤル」の風景。遠近法に実際の奥行きが加わって、ものすごく立体感が得られる。写真ではお伝えできないのが残念。
 お値段は2700円とやや高め。

波のエネルギーはどこにあるのか 鈴木亨さんの発表
 高校物理では取り扱わないが、弦を横波が伝わるとき、「変位0の部分が大きく伸びていて弾性力のエネルギーがたまる」という説明があり、大学初年級の教科書の多くが踏襲している。ちょっと考えると奇妙な説明で、海外の学術誌ではおかしいのではないかと指摘がある。
 

 各瞬間の運動エネルギーについては、山や谷の部分は0、変位0の部分で最大であることはわかる。さて、位置エネルギーの方はどうだろう。第1の立場は弦が伸びることによって「弾性力のエネルギー」として蓄えられるというもの、もう一つの立場は張力のy成分に対してする仕事が位置エネルギーになるというものだ。
 

 定常波では、腹・節のエネルギー分布はどうなっているのだろうか。
 詳しくは5月発行の「物理教育通信」(APEJ:物理教育研究会)に報告予定とのこと。未入会の方はぜひ入会してこの続きを読もう。

エネルギー教育 市原さんの発表
 市原さんは、高校入試期間中の学習課題として環境家計簿の作成を宿題としている。CO2の量を計算させるわけではないが、電気代とガス代から、家庭のエネルギー消費量を計算させ、日本の人口が全て同じ度合いで消費したら、発電所がどれくらい必要かを見積もらせる。多くの生徒は、自分がエネルギーを使いすぎているという感想を書く。原子力発電所の個数も見積もらせるため、数が少ない原子力発電所が有効である、と結論づける生徒もいるが、放射線の影響を学ぶ授業の後では意見が変わる。物事には良い面・悪い面があり、一概に断定できることばかりではないことを学ぶ。

超高感度カメラ 佐々木さんの発表
 佐々木さんは昨年8月の合宿例会でも同じく超高感度カメラ「Canon C500改」を紹介してくれたが、こちらは若田宇宙飛行士がISSで使ったモノと同じ仕様の改造品で、最高感度はISO160,000だった。
 今回紹介された超高感度カメラ「SONY α7S」は、量販店でも普通に入手できるもの。なんと最高感度はISO409,600。けた違いのスペックをもち、35㎜フルサイズセンサーで4K動画収録も可能。感度重視と引き換えに有効画素数は1,220万と控え目だが、4Kでも800万程度なので全く問題ない。
 そして、このカメラの能力をさらに引き出しているのが、50㎜/f0.95という規格外の明るさの中国製レンズ。電気を消してのデモ撮影っでは、部屋全体の明るさに対して液晶画面が白トビするほど明るく見える。少なくとも、肉眼で見えるものは余裕をもってカラー動画撮影が可能だ。さすがに完全な暗所は無理だが、肉眼で見えないものも、ある程度ノイズを覚悟すれば撮影できる。
 「空の写真家・武田康男先生には、このセットでふたご座流星群の見事な動画を撮っていただいた。現在は新江ノ島水族館の研究員さんに、深海生物の動画撮影をお願いしている。これから自然科学分野で、超高感度ならではの動画をどんどん撮影していきたい。」と期待を込めて佐々木さんは抱負を語った。
 

中高生の科学研究実践活動推進プログラム 竹内さんの紹介
 JSTの新しい教育支援プログラムが4月からスタートする。昨年度まで実施されていた科学部活動支援プログラムは募集を終了し、中高生の科学研究の質の向上と、教員の指導力向上をめざすプログラムに切り替えられた。「部」でなくても応募できるようになる。本年度の応募締切は4月20日。詳しくはこちらへ→http://www.jst.go.jp/cpse/jissen/kikan/index.html
 

二次会 黄金町駅前「華の舞」にて
 16名が参加してカンパーイ!京急のガード下のいつものお店でお疲れさん会。まだ成績処理等で多忙な時期だが、新年度に向けてエネルギーをチャージしよう。また、新しい仲間が加わってくれることも期待して・・・


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