例会速報 2015/09/20 株式会社ナリカ


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ナリカの新社屋お披露目 渡辺さんの説明
 今回の会場は久し振りに株式会社ナリカ。8月に完成したばかりの新社屋のお披露目とお祝いも兼ねた例会だ。旧社屋と同じ敷地に建った新ビルは明るいしゃれたデザイン。一階のショップも通りに面して開放的。ショーウィンドウのスケルトンがちょっと人目を引く。二階は実験室などの研修スペース。今回は人数も多いのでパーティションを取り払って3部屋分ぶち抜きで使用している。
 

 実験卓も丸みを帯びたデザインでなかなかおしゃれ。もちろんガス・水道完備。天井から伸びているロボットアームのようなものはダクトで、個々の実験卓に設置されている。上からかぶせるようにして使う。日本ではまだ珍しいが、海外ではよく見かけるのだとか。
 

 実験室の隅には緊急用シャワー・洗顔器も設置されている。万一の薬品事故の際はここでただちに大量の水をかぶることができる。ホワイトボードの扉を開けると裏にはアクティブボード。天井の液晶プロジェクターは短焦点型で人の影が映り込まない。これら全ての設備がそのまま商品見本で、実験室設備のショールームといったところ。細かなところまで行き届いた設計に、一同感動した。
 

授業研究:物理基礎の「波動」 小沢さんの発表
 小沢さんは物理基礎の波動分野について、20時間中最初の12時間について報告してくれた。「内容はぎりぎりまで絞る。教材は豊かに。」という原則を意識し、扱う内容を「独立性」と「重ね合わせの原理」に絞り、現象を豊富に見せた。授業の方法は、発問して、考えを書かせて、話し合わせる「課題方式」が中心である。
 水面に浮かべたコルク片が広がる波紋とともに移動していかないことを示すことや(写真左)、波紋どうしがすり抜けていくこと(写真右)は、話だけで済ませがちだが、投影装置で実際に見せて印象づける。
 

 「おんさにおもりを付けると音の高さはどうなるか?」と問うと、振動する部分が短くなるから高くなるとか、ミュートと同じで、高さは変わらないなどの答えが出てくる(写真左)。教師にとっては結果が自明なことでも、生徒は様々な考えをもっていることが、話し合いの授業から見えてくる。
 波長について説明した後に、それが現象と関連する例として、雨樋の「楽器」を見せる。ドレミファソラシドの音階の波長と同じ長さに、雨樋をホームセンターで切ってもらった。管口をスリッパでたたくと、ドレミファソラシドと鳴る(写真右)。
 

 長いプラスチックバネの両側から同じ周期の波を送ると定常波ができる(写真左)。おもちゃのギターの音をスペクトラムアナライザーのソフト(WaveSpectra→http://efu.jp.net/soft/ws/ws.html)で表示させ、倍振動について説明する(写真右)。
 

 超音波距離計を天井に向けて、端を閉じていない紙筒を通して測ると(写真左)、測れるのは「天井までの距離」か「筒の長さ」かと問う。常識的には前者だが、やってみると後者になる。開口端でも音波が反射することがわかる。それに関連し、開管の共鳴の例として「くるくる回すと音が鳴るパイプ」(写真右)を見せる。
 

 気柱共鳴の実験の前には、振動モーターを糸で吊したもの(写真左)を各班に渡し、糸をつまむ位置がちょうどよいときだけ定常波ができることをすべての生徒に体験させて、共鳴のイメージづくりをさせる。気柱共鳴の実験には、自作の低周波発振器(写真右)を使う。高い音(約800Hz)と低い音(約500Hz)の2種類が出るようにしてあり、「高い音は低い音よりも波長が短い」と知識としては分かっていることを、この実験で、自分たちの手で確かめさせる。
 

 干渉の単元では、物理基礎の範囲を超えるが、光の干渉も扱う。墨を塗ったスライドガラスにカッターで2本筋を入れて作った複スリット(写真左)を渡し、レーザー光が干渉する様子(写真右)を班ごとに確かめさせる。これまでの授業の積み重ねと、観察した現象によって、光も波と考えざるを得ないと、生徒を追い込むのがねらいである。
 

調光実験器のキット化 山本の発表
 水野さんが、4月の「神奈川の理科教育を考える集い」や、2015年5月のYPC例会で光の三原色の説明に使用していた三原色調光実験器を、SCNの徳永さんの依頼によりキット化し、8/3にSCN主催の製作会を行った。水野さんが科教協全国大会で入手したというフルカラーRGBLEDを用いた調光器がモデルだが、キット化に当たり、回路を簡素化すると共に、コストダウンをはかった(1セット500円、電池別)。加えてRGBそれぞれに指先で回せる半固定抵抗を入れて、各色の明るさを連続的に調節できるようにし、中間色の無段階調光を可能にした点が改良点である。左の写真がキットの内容、右が完成品。製作会ではハンダ付け初心者でも約1時間で完成することができた。詳しくは「三原色調光実験器製作マニュアル」をご覧いただきたい。
 

 シャーシを用いず、厚いスポンジ両面テープで、回路基板のハンダ面と電池ボックスを接着し、一体化と回路保護を兼ねたのも工夫の一つだ。
 一方、説明の際に用いる色素液(プリンタ用のシアン、マゼンタ、イエローの交換インクを水で薄めたもの)を、ビーカーではなくドレッシングボトルに半分入れて実験するのも生徒実験用の改良点である。誤ってこぼす事故を防止できるだけでなく、容器を傾けることで液体の部分の厚みを連続的に変化させることができ、濃度調節と同じ効果が手軽に得られる。
 

黒板演示用回路のキット化 山本の発表
 2015年5月のYPC例会および科教協大阪大会のYPCナイターで途中経過を発表してきた「黒板演示用回路」の開発がほぼ完成し、標準セットをキット化した。こちらは、8月19日に藤沢市教文センターの小中学校教員向け夏季講座で、参加の先生方にモニター工作をしていただいた。製作時間は1セット一時間半程度だった。モニターの先生方のご意見を反映してさらに若干の改良を加えたのが下のキット内容だ。
 写真の左側から順に、6V電源ユニット、抵抗ユニット(100Ω)、豆電球ユニット(二種)、コンデンサーユニット、LEDユニット、ジョイントユニット、そして導線ユニットである。これらの製作材料をセットにしてキット化した。詳しくは「黒板演示用回路キット製作マニュアル」をご覧いただきたい。
 

 各ユニットには磁石がついている。これらをスチール黒板上にマグネットバーを貼り付ける要領で重ねながら置いていくと、自然に接点が重なり電気的接触ができて回路が作られていく。教科書の回路図通りのイメージで、実際に動作する回路が生徒の目の前で組み立てられる。左は並列回路、右は直列回路の標準組み立て例。定性的に演示するなら豆電球ユニットを使用し、定量的な測定を行うなら抵抗ユニットを使用するとよい。超小型2線式電圧計や電流計測用プローブを使用した測定の実際については、2015年5月のYPC例会の記事を参照してほしい。今回の例会発表資料はここ
 

 下の写真左はコンデンサーの充放電でLEDを光らせる実験の回路。切り替えスイッチ部分はジョイントユニットを転用し、マグネットピンをつまみとして使用している。小学校理科の教材にコンデンサーが取り入れられたので、これらのパーツも標準セットに入れてみた。右の写真は標準セットには含まれないその他のオプション。上から、4.5V電源ユニット、太陽電池ユニット、プッシュスイッチユニット(左)、ブザーユニット(左)である。下段右側は容量の異なるコンデンサーだ。任意のパーツを自作で増やすことができる。
 

ピンホールと単スリットの直接観察法 海後さんの発表
 2015年6月例会で発表した、ピンホールにレーザー光を当てて投影した同心円(エアリーパターン)が乱れていたのは、ピンホールの穴あけ加工の精度の問題ではなく、レーザーポインター内部の部品の精度が低かった事が別なレーザーポインターを使ってみて判明した。レーザー光が「きれい」なら、きれいなエアリーパターンが観察できる(写真左)。投影に際しては、ピンホールにホコリが少し付いただけでも同心円が乱れるので帯電防止などの工夫が必要である。
 思考実験では、壁に当てたレーザー光をピンホールや単スリット越しに覗いてみても、散乱光なので干渉せず光点しか見えないと考えてしまうが、実際には散乱光も可干渉であって干渉縞が見える(写真右)。同じようにして、照射しているレーザーポインターの射出口を斜め方向から覗いて見ても干渉縞が見えるのは、空気中の分子にレーザー光が当たって発生した散乱光によると考えられる。これも可干渉光源になる。
 

 海後さんは、これらの実験をまとめて出来る観察器を試作した。遮光された筒に単スリットやピンホール、回折格子などを カードにして挿せば、干渉縞やスペクトル、ピンホール効果など様々な実験観察ができる。
 

リング磁石フラフープ効果 夏目さんの発表
 初参加の夏目さんが演示して見せてくれたのは、細い鉄の棒を軸に大小二個のフェライトリング磁石が回転する装置。やや大きめの下の磁石を指で強くはじいて回転させると、下の磁石は降下していくが、上の磁石はやがて螺旋を描きながら鉄棒をよじ登っていく。動画(movファイル3.4MB)はここ。下の磁石が失う位置エネルギーの一部が、上の磁石の位置エネルギーに変換される過程が力学的に興味深い。上の磁石が上昇しつつあるときは、両磁石の運動は一種の共鳴状態にあり、その位相は90°ずれているのだという。
 

 上の磁石が位置エネルギーを獲得していく様がフラフープを回すときの運動に似ていることから、夏目さんはこの現象を「リング磁石フラフープ効果」と名付けた。夏目さんはこの現象の詳細な考察を、今年9月の物理学会で発表した。「大学の物理教育」Vol.15、No.2にも論文を載せている。夏目さんはこの原理は「ガリガリトンボ」にも通じるものと考えている。
 

静電気とダイオードの順・逆方向 市原さんの発表
 市原さんは、ダイオードの整流作用を確認する実験として、箔検電器の天板に触れてみることを試してみた。箔検電器を正に帯電しておき、ダイオードを通してアースすれば、ダイオードの向きによっては箔が閉じないこともあるのでは?というアイディアを聞いたからだ。しかし数千Vにもなりうる箔検電器では、ダイオードの降伏電圧を簡単に超えてしまい、どちらの向きだろうと箔は閉じてしまう。ついでに、ミノムシクリップではさんだダイオードでも箔は閉じてしまう(写真右)。ミノムシやビニルコードの絶縁物(塩化ビニル)は静電気レベルの電圧の元では絶縁性は十分でない。
 

 この報告をしたら、ナリカにある耐電圧が高いダイオード(写真右)を渡辺さんが貸してくださった。そのダイオードを使うと、見事に整流作用がわかる演示実験を行うことができた。ダイオードの「逆方向」にあたるときは、リードを触れても箔は閉じない(写真右)。これで、この検電器は正に帯電しているということがわかる。
 

浪華二十八橋知慧渡 加藤俊さんの発表
 パズル好きの加藤俊さんが紹介してくれたのは、江戸時代の和算書にある一筆書きのパズル。大阪の東横堀川や道頓堀川にかけられた28の橋をもれなく一回だけ渡って元の場所に戻る道筋を探せというお題だ。ヨーロッパでは「ケーニヒスベルグの橋」という7つの橋を渡る同様のパズルが有名だ。いずれも、オイラーが証明した「一筆書き不可能」のパターンだが、実はちょっとずるい解決策がある。それはここには書かないでおこう。

食品サンプル 加藤俊さんの発表
 よく飲食店などの店頭見本として飾られている食品サンプルを実際に作らせてくれるイベントがある。これは参加した加藤さんのお手製。シリコーン樹脂などでできているらしいが、実によくできている。ネットで調べてみると、体験させてもらえる店はけっこうあるようだ。

【体験】食品サンプル作りができるお店まとめ《全国版》
http://matome.naver.jp/odai/2137250179465665101

これはハマる!関東で「食品サンプル作り」が体験出来るお店まとめ
http://find-travel.jp/article/389

沖縄の科学民具 伊藤さんの発表
 沖縄を徘徊中に見かけたという科学っぽい民具の紹介。伊藤さんは、現地なら安いか?多種多様なものが見られるか?を期待して、見かけるたびにチェックしている。
(左)指ハブ200円 宮古島 池間大橋そばのパーキング内民芸店にて。「ハブユビ」と書かれていた。WEBショップモノよりは安いか。
(右)バランスとんぼ1500~1800円 沖縄本島北部やんばる 道の駅ゆいゆい国頭にて。沖縄民具なのか不明だが、皆様おなじみのやつ。べらぼうに高かったもよう。
 

 教訓茶碗2160円、2700円 那覇空港出発ロビー土産店にて。この他石垣島などでもチェックしているが、水野さんが小田原の店経由で購入した価格と大して変わらず。現地まで買い出しに行く必要なし。サイホントップが少し多様で、一般的にはシーサーが多いのだが、ハブのものを見つけた(写真右)。また、サイホンを茶碗側面に埋め込んだタイプもあり、完全に埋没しているので、また岩石カッターで断面を探ってもらいたいものだ(他人頼みww)。非破壊でも可能なら1つ買ってくるのだけど。
 

トトロのコーヒーカップ 越さんの発表
 越さんは文化祭のクラス発表で生徒たちと、今流行の「コーヒーカップ」を製作した。
動画はこちら。https://youtu.be/6vVG9I6dyEU 
 4mの単管パイプ(工事現場で足場を組むのに使用する直径50mm程度の鉄パイプ)を正方形に組み、その頂点付近に台車を固定する。それぞれの台車の上に自転する正方形のカップを載せる。カップ中央の丸テーブル(下の台車に固定されている)を回転させると、カップは逆回りに自転する。更に、各辺の中央に鉛直に立てた1mのパイプを4人で押すことにより、全体が公転する。中央には実物大のトトロを載せた。文化祭で最近流行のコーヒーカップやジェットコースターなど人が乗れる構造物を製作する際には、充分な強度が必要であり、安全面に注意を払わなければならない。

DVDの透過型回折格子 越さんの発表
 越さんが2015年8月例会で紹介した、DVDとフルカラーイルミネーションLEDを組み合せたディスプレイを改めて動画で紹介する。動画(movファイル3.8MB)はここ
 

確認プリント 金子さんの発表
 会場で配られたのは、金子さんが学部生の頃に作ったという物理の確認プリント。大学の物理や数学の講義で一度は勉強した覚えのある事項が100項目並んでいる。さてあなたは今、何問答えられますかと問われて、会場は静まりかえった。恥ずかしながら、日頃使わない知識はこれほどにも忘却の彼方にかすんでしまうものか。実に愕然とする。生徒のことは言えないかも。
 以下、金子さんからのコメントを紹介する。
 「脳みその棚卸というか、1年に何回かは『知識を全て書き出す』といった作業をしてみても良いのではないかと思います。生徒の学力に危機感を覚える前に、自分の学力に危機感を覚える昨今です。」

逗葉高校公開授業 西村さんからの連絡
 西村さんから10月8日の逗葉高校公開授業のお知らせがあった。昨年度から同校社会科の秋山先生と二人で、クリッカーのような聴衆応答システムを活用した授業改善の取り組みをしており、今回で3回目の公開授業である。昨年はYPCからも多くの先生方に参加してもらい、盛り上げてもらったので、今回も是非にとのお願いだった。公開授業の成果は、また例会で報告したいとのこと。

二次会 御徒町駅前「まつうら」にて
 20人が参加してカンパーイ!株式会社ナリカの新社屋完成おめでとう!これからも末永いご繁栄を!そして、今夜はさらにおめでたいサプライズが!常連メンバーのKさん、ご結婚おめでと~!右はそのお祝いプチケーキ。末永くお幸せに!
 


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