例会速報 2015/10/18 電気通信大学
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授業研究:力学的エネルギー 小沢さんの発表
(左)「エネルギーとは何かやってくれそうな可能性である」と、くだけた説明をして、ゴムチューブを見せる。伸びていないゴムチューブは「何もやってくれない」が、2人でおもいきり伸ばしてピンと張ると、「何かやってくれそう」になる。独特な緊張感とともに、教室が盛り上がる。こうして、弾性力による位置エネルギーのイメージづくりをする。
(右)「仕事をされるとエネルギーが増える」ことを、手回し発電機が仕事をされて、電気エネルギーが増える例で示す。「バッテリー」の中身は1Fコンデンサーで、このあと、モータでおもりを持ち上げる様子を見せる。
(左)ストローでマッチ棒を吹き矢のように飛ばす実験。長さの異なるストローを同時に口にくわえて行うと、長いストローのほうがマッチ棒が遠くに飛ぶ。ストロー内でマッチ棒が受ける力が同じだとすると、される仕事はストローの長さに比例する。
(右)「傾きの大きいレールと小さいレールで、同じ高さから小球を転がすと、最下点ではどちらが速いか?」という問いに、意外と生徒は間違える。討論のあと、黒板で演示する。写真の装置には、同じ高さのところにシールが貼ってあり、そこで小球を離す。(速さは、レールの端から水平投射されたあとの飛距離で比べる。)
写真左のような2種類のコースで、「スタート(左端)で小球を離すと、ゴール(右端)するのはどちらが早い?」と聞くと、「速い?」と勘違いして、「同じ」と答える生徒が続出。実験してみると遠回りの方が「早い」。「急がば回れだね」と言って、生徒の頭の中をかき回す。
右は力学的エネルギー保存の法則を振り子で確かめる実験。定量的に調べるにはビースピが最適である。
振り子の糸を運動の途中にカッターで切って、おもりを射方投射させる実験。(例会ではおもりとして単1乾電池を使用。)「もとの高さまで上がるか?」と問うと、「上がる」という意見が必ず出るが、最高点で速度がゼロではないことに気付く生徒も出てくる。討論のあと、黒板で演示する。
共振三題 石川さんの発表
はるばる富山から参加の石川さんは、いつものように自作の実験装置で演示しながら、本質を突いた解説をしてくれた。
最初は共振実験装置。逆相直列につないだ左右のスピーカーで横棒を駆動する。発振器からアンプ経由で正弦波を送り込むと、18Hzで長い棒が(写真左)、36Hzで短い棒が(写真右)共振して大きく振れる。地震と建物の共振などの説明に使える。動画(movファイル6.3MB)はここ。
左は強制振動観測装置。低周波発振器とアンプで直流モーターを駆動して震動源としている。左向きの力が加わったとき赤、右向きの力の時青のLEDが点灯する。固有振動数15.3Hz以下では振幅が小さく、赤が左、青が右で光る。外力が変位と同位相だということだ。固有振動数に一致すると振幅は最大となり、赤青共に中央付近で光る。つまり力の位相が90°ずれている。このとき外力は効率よく仕事をするが、復元力には寄与しない。固有振動数以上では、再び振幅が小さくなり、赤は右、青が左で光り逆位相となっていることがわかる。動画(movファイル4.8MB)はここ。
右の写真は中央を緩く固定したばね。一方をはじくと、他方にもエネルギーが伝達され、交互に振幅が大きくなる。ハイスピード撮影動画(movファイル14.0MB)はここ。この現象は、ばねの左右の部分が山谷で振動するモードと、山山で振動するモードの重ね合わせと理解できる。この振動の往復の周期は、実はこれら2つの状態の「うなり」の周期なのである。
石川さんは、このことを連成振り子を使ってわかりやすく説明してくれた。連成振り子も左右逆相と左右同相の2つの振動モードがあって微妙に振動数が異なる。一般の振動状態はこの2つの状態の重ね合わせであり、2つの振り子が振動のエネルギーをやりとりするように見える周期は、2つのモードの「うなり」の周期なのだ。
量子力学でも2状態系の状態間遷移では同じようなことが起こっていると解釈できる。やりとりされる電磁波のエネルギーはhνの差となるが、プランク定数を除いて考えればそれは「うなり」の振動数に相当する。
ふしぎなMagnet実験 広瀬さんの発表
かつて磁性材料関係の技術職にあって磁石の豊富な在庫を持っている広瀬さんは、強力なネオジム磁石を使った珍しい実験を披露してくれた。下の写真はネオジム磁石を敷き詰めたレーンをグラファイトのチップが反磁性で浮上して動くディスプレイ。磁石はわずかに溝を作るように微妙に傾けて取り付けてあり、さらに両端にわずかにひねりがつけてあって、行きと帰りで別のレーンを通るようになっている。中央で熱帯魚用のエアーポンプから空気を水平に吹き出してグラファイトの運動体を駆動している。動画(movファイル2.7MB)はここ。
ほぼ垂直な板の上に、ネオジム磁石を敷き詰めて折れ線のレーンが作られている。上部の斜面上の目印のところから一円玉や十円玉を滑らせると、磁石のレーンに沿ってコインが落ちずにゆっくりと滑り動く。電磁誘導の渦電流による制動がかかっているのだ。レーンから外れそうで外れない、鉛直な部分より緩斜面の部分の方が速いなど、一つ一つの動きが意外だ。実は鉛直部分は磁石はNS交互に並んでいるのに対し、緩斜面の部分は同極が進行方向に並んでいるので横方向の運動に対しては渦電流が生じないのだ。十円玉は青銅なので抵抗率も密度も大きく、アルミの一円玉より落ち方が速い。動画(movファイル14.6MB)はここ。
2014年12月例会でナリカの渡辺さんが「ネット動画ネタ」として紹介してくれた「世界一簡単な構造で作られた電車」の追試。電池の両極につけるキャップに工夫をしてコイルに引っかからないようにし、より滑らかな動きを実現している。動画(movファイル3.8MB)はここ。なお、ネタ元からはVer.2の動画が公開されている。
市販のおもちゃを自作してみたもの。ネオジム磁石を鉄の釘ではさむようにしてコマの軸にしている。コマの動きにタイミングを合わせてレールの傾きを変えてやれば、コマはレールの上下を往復運動する。
「気柱共鳴を利用した8音楽器」の製作 古谷さんの発表
塩ビ製の水道管の底に硬質塩ビ板を貼り付けた閉管を8本並べたパンフルートのような自作楽器。音程(管の長さ)はフリーソフの「ソフトチューナー」の音階表示(写真左)を利用して決めた。楽器として利用しやすくするために管の間隔を調整した3タイプが紹介された。古谷さんによると、製作目的は、授業の中で生徒一人ひとりに「My 気柱共鳴装置」を準備し、生徒自身に体感させることである。チューニングがイマイチで例会では「音痴な楽器」と辛口の評があったので、古谷さんは音程の精度を上げ、リベンジしたいと意気込んでいる。
霜田式光三原色混合器 車田里奈さんの発表
光の三原色を体験できるこの装置は車田さんが科学の祭典(小金井大会)に出展していた「自然科学に親しむ会」のブースで発見した。あの霜田光一先生の考案だという。
木製の土台に穴を開け、そこに三色のLEDを三角形になるように配置してある。その土台の上に絶妙な大きさの穴を開けた遮光板が置かれている。これを中央に置けば三色がどれも遮られずにピンポン球を照らし白色に見える(写真左)。遮光板の窓の位置を移動させれば、赤、緑、青の光量を自在に調節することができるので様々な色が作れる。黒い紙筒をかぶせると明るい場所でも光が見易く、ピンポン玉で散乱混合をさせれ斜め方向からも見やすく複数人が同時に見て楽しめる。動画(movファイル3.5MB)はここ。
BotsNew 越さんの発表
「BOTSNEW」はスマホ用の箱型立体視メガネで、これにスマホをセットすると、手軽に視界360度の3D映像の世界に「没入」できる。ネットで2000円程度で入手できるが、簡易タイプの「ハコスコ」は1000円程度。映像は、ジェットコースター、プラネタリウムオーロラ編、カーレースなどがある。アプリとしては、同名のBOTSNEWの他、ハコスコ、DIVRなどがある。
逆さメガネ再び 越さんの発表
越さんは最近「ごろ寝メガネ」を入手した。プリズムを用いたメガネで、直立した状態だと、真下が見える。つまり寝た状態で、テレビや本を見られるというものだ。ネットで1000円程度で入手できる。
写真は逆さメガネ。2002年の7月例会で越さんが発表したものだが、関連で再び紹介があった。厚紙でフレームを作りポリカミラーを取り付けると、簡単な逆さメガネができる。このメガネをかけると上下が反転して見えるので、写真右のように片手で積み木をすると、非常に難しくなる。
物理教育6月号掲載記事 成見さんの発表
成見さんは自作のすっ飛びボールについて、2014年12月の日本サイエンスコミュニケーション協会年会、2015年4月の神奈川の理科教育を考える集いにてポスター発表をしてきた。その後追実験を行い、論文としてまとめ「自作すっとびボールが高く飛ぶ時と飛ばない時の理由」と題し、物理教育学会誌6月号に掲載された。
スーパーボール同士、スーパーボールとビーズの反発係数を測定したことと、剛体モデルとしてだけでなく弾性体としても衝突を考察したことが新たな点である。ビーズがうまく跳ね上がる時、つまり連続衝突が行われるときの条件として、落下途中でボール間に適度なすきまができていることが確認できた。成見さんは、その様子をハイスピードカメラで撮影することができた点も満足している。今後、ビーズが剛体であるがゆえの利点などさらに考察を深めていきたいと考えている。
文化祭報告 水野さんの発表
水野さんは9月に開かれた神奈川学園の文化祭で、理化部が「音」をテーマに研究発表した様子をパワーポイントで紹介してくれた。
会場の実験室入口には塩ビパイプと散水ホースで作った2種類の伝声管を設置し、先ずお客様に音を楽しんでもらい、中に入ったら手作りピタゴラ装置の映像を見て頂く。その後は音の三要素を実験を交えて説明し、共振、耳の構造、発声の模型、声の波紋、手作り楽器、超音波、指向性スピーカー、遮音壁等々、音に関わることをお客様にその場で体験を通して楽しみながら学んでもらおうと展示した。
以下、水野さんから関係各位への謝辞。
「この展示に際して、YPCで発表されたり、科教協で購入した実験道具をいくつも使わせて頂きました。改めて感謝申し上げます。また株式会社静科、日本音響研究所、NTTコミュニケーション科学基礎研究所、静岡科学館、浜松科学館など、数カ所の施設を部員と一緒に見学し、発表の参考にさせて頂きました。お陰様で企画賞を受賞しました。」
龍勢祭 車田浩道さんの発表
10/11、車田さんは小沢さん、越さんと一緒に龍勢祭りへ行ってきた。このお祭りは江戸時代から続いている椋神社の大祭で龍勢と呼ばれる農民ロケットを空高く打ち上げて奉納している。例会では帰りに立ち寄った「道の駅龍勢会館」の展示室で流されていた動画(写真右)が紹介された。この動画は龍勢にカメラを搭載して撮影されたもので、打ち上げから着地までを見ることができる。動画を観るとモデルロケットように重心を中心に回転運動をしながら打ち上がっているのが良くわかる。H-ⅡAロケットなどの姿勢制御は凄いなと改めて感じた。この動画はYouTubeでも観ることができる。
iPhoneアプリ「VR JUMP」 車田浩道さんの発表
前掲の越さんの発表に続きスマホ用アプリの紹介。このアプリはスマホ用箱型立体視メガネを持っていなくても楽しむことができる。スマホの加速度センサーを使って楽しむアプリで、スマホを持って画面を見ながらジャンプをすればスマホの映像も上昇するので空高く飛んでいく気分や落下する気分を味わうことができる。さらに飛んでいる時にスマホを上下左右に動かすとその方向を見ることもできる。ジャンプをする前に地面をよく見るとドローンのような影が映っている。ドローンで撮影した全天周動画らしい。
このアプリには様々な映像が入っているが、今回は「Aso Jump」と「Hiyoshi Jump」が紹介された。「Aso Jump」には噴煙が上がる様子が映っていて、ジャンプをしている時は噴煙がもくもくと上がり、落下する時は噴煙が吸い込まれているように見える。上昇する時に撮影を行い、落下する時はを映像を逆再生していることが分かる。「Hiyoshi
Jump」はYPCの例会でもお世話になっている慶應日吉キャンパスで撮影されている。見慣れた光景が俯瞰できた。
無接点充電器 竹内さんの発表
例会終了間際の慌ただしい紹介となったが、竹内さんが見せてくれたのは家庭用コードレスホンのコードレス充電機構。シャーシを一部切断して中身が見えるようにしてある。充電器と受話器の双方にコイルが見える。振動磁場を経由して電磁誘導でエネルギーを伝えている。通電すると緑のLEDが光るように改造してあった。
二次会 調布駅前天神通り「海南記」にて
13人が参加してカンパーイ!電通大が会場の時はいつもお世話になる中華料理屋さんで円卓を囲む。写真ではたまたま手前の席に年配の方々が集まっているが、YPCの年齢層は幅広い。ちゃんと若手もいるのである。学生無料の特典もあるので、若手の方も安心して二次会にも参加してほしい。
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