2000年9月23日(土)惟信高校での例会の記録です。

 9月中旬,東海地方を襲った豪雨は,私達のメンバーの学校にも大きな被害をもたらしました。
防災は,自然現象の予測,被害予測をもとにした事前準備,が必要です。科学は,まさにその予測の
根拠となるものです。
 しかし,実際には予測に基づいた行動がいつでも取れるわけではありません。政治的な問題,経済
的な問題がからんでくるからです。
 今回の例会では,この水害についての報告もありました。
 災害は忘れた頃にやってくる,という名言があります。平常時に非常時を考えることのできる,合理的な
問題解決のできる,科学的な思考ができる,そうゆう市民になる必要があるのかもしれませんね。


回転する炎
(清水さん)
 球形プラスチックの中にろうそくを
いれ火をつけます。
 そのまま回転します。炎の形はど
うなりますか。
 ろうそくを容器の中で燃やすので,
回転による周りの空気の影響を受
けずにすみます。
 次に,容器をそのまま真上に放り投げます。
 今度は,炎はどうなりますか。
静電気極性判定器
(清水さん)
 千葉の三門さんの追試です。摩擦電気を近づけると,赤か緑のダイオードが光り,
極性がわかるようになっています。

車輪を使ったバンデグラーフ
(臼井さん)
 プラスチックのホイールをもつタイヤを利用して右の
写真のようなバンデグラーフ発電機をつくりました。ゴム
ベルトをつかうという固定観念を打ち破る秀作です。
 右下のハンドルを回すことで発電。
 例会の日は雨で湿度が高かったので,電気のたまり具合
がいまひとつ。
 バケツがよくない。とがった場所が多いから先端放電して
しまう,という声もあり。バケツよりなべがいいのではという声も。
ほとんど廃品(失礼!)をつかって作ることに意義ありとの声も。
 実験道具は,その性能も必要ですが,どのようにつくられて
いるか,というような視点も,教育にはひつようですね。

通電チェッカー
(臼井さん)
 導通していればブーと鳴り,断線していれば,そのさきでは鳴らないという道具。
写真のACコードは,色が見にくいですが左方で断線しています。この道具の先を
コードに沿わしていくと,断線しているところまでは鳴りつづける。
 テスターでは,断線していることは調べられますが,どこで断線しているかはわか
りません。1000円ぐらいとのことです。1本あったら便利ですね。
 ところで,この道具は何を調べて断線個所を発見するのでしょう。
 電場の変化を調べているのでは,という考えが出されましたが,結論は?。
 説明書にも詳しいことは書いてありません。仕組みがわからないと何となく
気持ちが悪いのですが,断線を調べるだけだからまあいいか?!?

弾性非弾性
(林さん)
 前々から問題になっていた非弾性球の性質(ゆっくり力を加えるとゴムのような弾性を持ち,急な
力を加えると硬くなる)を持つ不思議なかたまり(写真の桃色の物体)をつくりあげました。
 ゆっくり押すと,おもちのように柔らかく,頭でたたくとかなり痛い(硬い!)。
 いったいどうやってつくったの?
 これが驚き!。なんと,スポンジに水飴をしみこませたもの。それをラップでくるみ乾燥を防ぐ。
 水飴の粘性により,急な変形をしにくくなっていて,スポンジの弾性でゆっくりもとの形に戻ってい
く。2つのものが実にうまく組み合わされています。
 

 参考:島津の非弾性ボールについての説明
 材料は高分子化合物の一種で,ポリノルボルネンと呼ばれるプラスチック。合成ゴムにこの新素材
を混ぜ,油を吸収させて反発係数の非常に小さいゴムをつくり,球状にしたものです。弾性ゴム球は
通常の合成ゴムを非弾性ゴム球と同一に成形。

1時間でつくる水ロケット
(林さん)
 ペットボトル3本とゴム栓,ビニールチューブ,自転車用タイヤ空気入れ口(空気入れをとりつける所にある部品),アルミ管
という材料で,1時間の授業で生徒に製作させる水ロケットを紹介。
発射台までついている。
 皆で作り,打ち上げ競争をやれば,盛り上がること確実
 生憎の雨で,発射実験は行なえませんでしたが,30mは上がるとのこと。
 

水柱
(山岡さん)
 水を入れた2つの容器を向かい合わせに上下に隙間を
空けて置きます。右の写真の中身は水。真中部分は隙間
があいています。
だから,紙を通り抜けさせることもできます。
 表面張力が,水がでてくるのを防いでいます。
 どれだけ隙間の幅を広げられるか。試して見ませんか。

コップ蓄音機
(船橋さん)
 学研の手作り実験のひとつ。 エジソン式コップ
蓄音機。
 プラスチックコップの表面に,紙コップで受けた
音の振動を針で記録。モーターにより位置をずら
していくようになっており,長時間(?)の録音再生
ができるようになっています。
 1つ3500円。原理剥き出しの製品です。
 最近の生徒は,CDだとかDVDだとかしか知らな
いので,かえって興味をもつかもしれません。

 詳しくは学研のホームページで。
    http://kids.gakken.co.jp/

赤外線放射温度計
(船橋さん)
 温度を測りたいものに向けるだけで,そのものの温度が簡単
に測れます。対象物の発する赤外線の強度分布から中心温度
を推定していると思われます。
 右の写真のように,炎の温度も測定できます。家庭では,肉の
焼け具合を表面温度で測るなんてこともできます。
 
 高校生には,仕組みはブラックボックスですが,測定している
ものが温度ですから,わかりやすく、十分使いこなせるでしょう。
 発光物体の色と温度の関係なども直接教室で確認できるか
もしれません。
 
 ところで,この温度計を空に向けると,何の温度を測ることに
なると思いますか? 考えてみてください。

 購入先:(株)メイトウ
 0561−62−8800 
 値段:9000円ぐらい

波のモデル
(川田さん)
 よせなべ物理サークル石井さんの
作品をつくってみました。黒い玉の位
置(波の言葉で位相)をずらした円筒
を回転させると,正弦波が進んでいく
ように見えます。

鎖の重さ
(川田さん)
 100gの鎖を台ばかりの上でたらし,下端を台ばかりにつけます。
そして,手を離して落下させます。
 このとき,台ばかりの目盛りは最高いくらを指すか?
 
 入試問題にも出されたことがあるそうですが,正しく予測できますか。

赤外線観測装置
(伊藤昇さん)
 写真のよう,アルミで包んだコーン型の中心に,
ダイオードをつけて,発生電圧で赤外線の強さを
測定する仕組。
 

放射線の危険性
(井階さん)
 放射線を出す鉱物はたくさんありますが,右の写真
は井階さんが手に入れた4種の鉱石です。γ線を測定
すると,かなりたくさん出ていました。
 金属の容器に入れるくらいでは全く遮蔽できませんで
した。
 γ線のエネルギーによっても違いますが,1cmの厚
さの鉛の壁でやっと半減させられるそうです。コンクリート
の壁なら10mの厚さが必要とのこと。
 
 放射性物質飛散事故では,ヨウ素が甲状腺に取り込ま
れやすいので,放射性ヨウ素を吸収する前に,ヨウ化カリ
ウムを飲むのがよいとのこと。一人一日2錠。オレンジ色
の1枚に2錠ずつ10日分のヨウ化カリウム錠が入ってい
ます。
 チェルノブイリ
の近くでは,放射性物質が原因になって
いると思われるガンの発症率が大変高いそうです。一人
一人がいろいろな災害に備える必要はあるのですが,放
射線事故にも備える必要もありそうですね。

放射性物質飛散事故に備えて
一家に一箱必要?!

東海豪雨水害について

若宮商業の被害
(戸田さん)
 勤務する若宮商業の水害被害についてビデオで報告。
右の写真はそのカットです。校舎の1階とグランドが完
全に水没していることがわかります。学校前の街も水没
しています。


 1階の各教室は,施設教材が使用不能になり,元のよ
うになるには,費用の面でも、時間の面でもかなりかか
りそう。

 理科室には,化学薬品,放射性物質等があります。
これらの物が2次被害を出さないようにする義務が
あります。この視点で,被害後の愛知県の対応につ
いて疑問が指摘されました。
 
東海豪雨について
(飯田さん)
 地形図を利用して,今回の水害被害地区が,河川敷
地区であることを示しました。
 名古屋南部,北部もともに河川敷地区が宅地化され
ており,周りの川の堤防を高くして水害に備えていました。
 ところが皮肉なことに,一度浸水すると,かえって水が
引かない,排水を捨てるところがない状態になります。
 
 排水ポンプの燃料タンクが水につかって使えないとい
うおそまつもありましたが,考えられる災害に対応する
のは行政の責任であり,今回の被害が,災害が起きた後
の処理についても,適切な行動が求められることを教え
てくれました。


 

  河川敷地区が水害に対して弱いということはわかっていたはずです。しかし,それにもかかわらず,宅地化を容認し,水の遊休地を
削っていくような政策を推し進めたのは政治です。
 堤防を高くしていけば,天井川になっていき,万が一の際の被害は大きくなっていきます。危険な地区は宅地化を認めない,というよ
うな政策が必要かもしれません。
  しかし,それには経済的な問題もからんできます。国土の狭い日本では替わるべき土地がないということもあります。
  どんな解決策を採るか,国民の叡智が求められているのかもしれませんね。