2001年4月29日(土)惟信高校での例会の記録です。  

 科学技術振興事業団でサイエンスチャンネルプロデュサーをしている水上慶文さんが来られ、今企画進行中の
「サイエンス君の5分間実験」について説明をされました。
 インターネット端末が各教室に配備されることに備え、授業で使える映像教材を鋭意作成中とのこと。
 どんな教材が必要か、ビデオをみての意見などメールを下さいとのことでした。
  E-mail: ymizukam@jst.go.jp


 サイエンス君の1場面
 (力の分解(斜面での例))

定電流回路とコンデンサー
(前田さん)
 
 定電流回路でコンデンサーに電荷を蓄えます。電流計で定電流であることを確認できます。
 時間に比例してコンデンサー両端の電圧が増加することが確かめられます。
 Q=I x t=C x V
 
(シーヴイ作品でした)

裏側

表側(上が電流計、下の緑色がコンデンサー)

コンデンサーマイク
(前田さん)

 コンデンサーマイクのニューバージョンです。
 下図のように3枚の金属板の両側の金属板に電圧をかけ、中央の金属板と上の金属板の間で、信号を取り出します。上はアルミ箔を使い、音でよく振動するように工夫します。ラジカセで録音すると明瞭な音が記録できます。

固定してある金属板

一番上のアルミ箔

ペーパークラフト-ピサの斜塔
(前田さん)

 キャノンのホームページから設計図をダウンロードできるそうです。アクロバットリーダーが必要。
 ガリレオの話をするときに、机においてあるだけで話の真実味が増す効果があるかもしれません

    http://bj.canon.co.jp/japan/papercraft/
 

吉本キューブ
(清水さん)
下のピラミッドのような基本単位をたくさんうまくつなげてやります。右の写真のような様々な形に変形します。形の妙ですね。






作用反作用の例
(川田さん)

 作用反作用がよくわからないという生徒への説明の一例。
左の錘は棒を上げよう(左回転しよう)としている。右の錘は棒を下げよう(左回転しよう)とする。
2つの棒が接する点で力が働き、両方の棒がとまる、というわけです。
 作用反作用は一度ならっただけでは理解しにくい概念です。わかりやすい実例とうまい説明を研究する必要があるかもしれません。

ファイマンタービンその後
(山岡さん、杉本さん、飯田さん、奥谷さん)

 前回の山岡さんのファイマンタービンの実験を受けて、4人の方がさらに追及をしました。こんどは回転容器を大型化。容器の下から掃除機で空気を吸い込むと、空気の流れと反対方向に勢いよく回ります。空気の流れが定常流だと、内部の圧力は1気圧より小さく、腕(出っ張った部分)の反対側から1気圧で押されるためだという結論に。
 ただ、空気流が定常流ではない場合、強い吸引により渦ができるような場合は、ややこしいことが起き、圧力は不定になるようだという推測もだされました。それは、今後の研究課題に。

 奥谷さんが、フィルムケースでミニ化。ドライヤーの吹き出し口と吸い込み口を利用して、一台で吸引と吹き出しを実現。装置の小型化かつ可搬性をそなえました。

いずれも下から掃除機で吸うとよく回る

ドライヤー1台で2役

誘電体を使ったフランクリンモーター
(奥谷さん)

 写真のようにプロペラの両端に電極を近づけ、高電圧をかけるとあら不思議。プロペラが回りだします。プロペラに金属がないけれど、これはフランクリンモーターです。プラスチックの表面が、高電圧に対して、導体ではないが電荷をためる性質を持つとき回るようです。
 NHKの「何でも実験室」で紹介されていた実験の追試です。

偏光
(奥谷さん)

 偏光板の間にポリプロピレンのシートを入れることで様々な色が出ます。ポリプロピレンは方向性のある分子であるためで、シートの厚さや向きを変化させることで色づきが変わってきます。
 セロテープでも同じことができます。
 切り紙にポリプロピレンのシートを上手に張ると、偏光板にはさむだけでカラーの絵に変わります。
 小学生は特に喜ぶんじゃないかな。
(えっ! 高校生のほうが喜ぶって?・・・・) 

エイムズの部屋
(戸田さん)

 ピンホールカメラを使ってエイムズの部屋をのぞきました。
 エイムズの部屋とは下図のような部屋です。いびつな構造ですが、カメラを通してみると向こう側の壁が水平に見えます。


視点に位置にピンホールカメラを置いて映像を見る。

日本宇宙少年団からのお知らせ
 日本宇宙少年団名古屋支部の森田さんがこられて、これからの青少年の科学する心を育てるための教材づくりの協力を呼びかけていかれました。

名古屋市科学館からのお知らせ(山田さん)
 6月23日(土)、24日(日)の2日間、名古屋市科学館では、応用物理学会と協力して、プラズマをテーマに
実験や工作の催し物を開催する予定です。
 皆さん、ふるってご参加ください。


熱についてのまとめと考察
(飯田さん)

 「気体に仕事をするということは分子運動をそろえる作業だ」
とのテーマのもと、かなりの量の論文を提出。あまりに多すぎてその場では読めないので皆さん勉強しましょうということで今回はおしまい。ファイマンタービンのところでも、分子運動のイメージでの説明が求められました。熱や圧力の分野では、わかっている法則に頼りきって豊かなイメージをつくる作業を怠っているかもしれません。


衝突における力積 (林さん)

 弾性衝突と非弾性衝突との差をとことん追求。
 向こう側のオレンジ色の台車が手前の台車に衝突します。手前の台車の白い四角のものはコイル。上の矢印のある木の下に磁石がとりつけられており、衝突の際の動きを電磁誘導で捕まえます。
 オシロスコープの上側は生の測定値のグラフ、下側は測定値を微分回路に通したグラフです。
 台車にばね定数の大きなばね(非弾性に近い)をとりつけて衝突させると、山形のピークが上がり、山の幅が狭くなります。つまり、瞬間的に大きな力が発生するが、持続時間は短く、力積としては弾性衝突より小さくなる、ということでした。
(オシロスコープの映像↓)


針金テープレコーダー(ワイヤーレコーダー)
(林さん)

 テープレコーダーの原型(!?)。図のようなヘッドを使い、ピアノ線を音声信号で長さに垂直方向に磁化し、それを再度同じヘッドで読みとろうというもの。ヘッドはスチール缶を図のように切って、それにコイルを巻いて作りました。
 ピアノ線を適当な速さでヘッドの間を滑らせると確かに音が聞こえます。こんなものに音が記録できるなんて、実物見なければ信じられませんね。


  (ヘッドにワイヤーが通っています。)


「龍神」の本当の原因
(臼井さん、山岡さん)

 水を張った皿にろうそくを立て、上からコップをかぶせると、コップに水が入ってくるという現象(これを龍神というそうです)の原因を探る実験です。
 臼井さんは水を張った容器の中に電熱器を置き、その上に紙を置き、ガラスの容器をかぶせてからスイッチを入れます。紙が燃えたあと水面はどうなるでしょう。
 山岡さんは、同じことをろうそくで行いました。マッチの頭を使っての自動点火。あらかじめ容器をかぶせておき、点火します。ろうそくが燃え、容器内の酸素がなくなって火が消えたあと水面はどうなるでしょう。
 いずれも水面は上昇しませんでした。つまり紙やろうそくが燃え、酸素が二酸化炭素や水に変わって水に溶け込んだりすることが、水面が上昇する原因ではないということです。
 では何が!。
 空気の温度変化というのが正しいようです。

マッチの頭を使った自動点火装置

ペットボトル楽器
(杉本さん)
 ペットボトルに、写真のように自転車の空気入れの部分をとりつけ
容器内の圧力を、空気入れでコントロールしようとういうアイデア。
圧力をいろいろ変えることで、いろんな高さの音を出せます。
 いろいろな形の容器がありますが、コカコーラの容器が一番いい音がするよう
です。

断熱圧縮と断熱膨張の体感
(鈴木さん)

 瓶型アルミ缶を使って、空気の、断熱圧縮では温度があがり、断熱膨張の際は温度が下がる、ということを体で実感しようというもの。
 容器に空気を入れていくと暖かくなり、栓が飛んで空気が吹き出すと冷たく感じるわけです。
金属は熱伝導性がよいので、容器を握っているだけで温度変化を感じることができます。


ゴム手袋の温度変化
(鈴木さん)

 ゴムを唇にあてたまま急に引くと暖かく感じます。
 伸ばしたゴムを唇にあてたまま、急に戻すと今度は冷たく感じます。ゴムの分子の配列が変化するためといわれていますが、見ただけではわかりません。うまい説明の仕方がないでしょうか。

イギリスの物理教科書の紹介
(加藤さん)

 イギリスの15,6歳用の教科書です。図や絵が豊富で厚手です。日本の教科書なら、参考などで説明されるようなことが、教科書の本文にきちんと書かれているそうです。
 科学は世界共通なのですから、外国でどんな内容をどのように教えているかということを知っておくのも、必要かもしれません。世界中の理科教師が互いに、どんな内容をどのように教えたらよいか議論できる日がきっとやってくるでしょう。

ダイオードの性質についての質問 (堀田さん)
  発光ダイオードを50個程度直列につないだ両端に100Vをかけると、ダイオードは発光します。
 交流でも直流でも発光します。途中のいくつかのダイオードに並列にゼネコン(モーター)をつなぐと、
 直流ではゼネコン(モーター)が回るのに、交流のときは回らない。なぜだろうか。という質問。
  いろいろ案が出ましたが、次回、実物で確認してみようということになりました。


子供のエピソード記憶にうったえる実験 (久保田さん)
 子供のころの思い出、びっくりした経験、こういったことはよく覚えていることがあります。このような記憶をエピソード
記憶といいます。自分が中学校の授業で行った実験がどのくらい生徒にインパクトを与えていたかを調べてみました。
  <化学分野>
  アンモニアの噴水実験
  水素の爆発
  水素で作ったシャボン玉の燃焼実験
  気体の発生(水素、酸素、二酸化炭素)  
  <物理分野>
  真空状態で目覚ましの音が聞こえなくなる実験
  オシロスコープを使った音の表現
 
   などが記憶に残っている上位でした。はでな化学分野のほうが記憶に残る率が高いといえます。


ニューコメンの熱機関の実測データ (井階さん)

 前回に発表したニューコメンの蒸気機関の模型の熱効率を調べました。熱分野の定量実験は難しいのですが、
そんな困難を難なくクリアーして測定。
 熱効率は約10の−5乗のオーダーでした。


僕らの鉱石ラジオ−紹介
(井階さん)

 筑摩書房の本です。原理から実際の作成まで誰にでもわかりやすくかいてあり、学校図書館にぜひ一冊置いておきたい本です。

α線を見る (林さん)
 ナイトスコープをつかい、α線が蛍光物質にあたったときの光を見よう、というわけです。かのラザフォードも原理的にはこのような方法でα線を観測したはずです。
 下の写真の容器の中にα線源があり、蛍光物質をぬったおおいをしてあります。α線が蛍光物質にあたったときのかすかな光をナイトビジョンで見るわけです。
 部屋を真っ暗にしてようやく見える程度。星の瞬きのように見えます。