2002年2月9日(土)名古屋大学での例会の記録です。

 2002年最初の例会は、名古屋大学の理学部で福井康雄教授の話を聴きました。
 福井教授の専門は電波天文学で、星と銀河の起源を解き明かそうと研究されています。
 南米チリに移設された電波望遠鏡「なんてん」をつかって、南半球の電波観測を行い、重要
な観測成果をなしとげています。
 星間分子雲の話だけでなく、「なんてん」移設にあたっての面白い話もきかせていただきました。


                             (講演終了後参加者全員で記念写真)


 福井先生の講義の概略
 
宇宙空間にある分子ガス雲の中の水素分子は、分子が対称性を持ち観測には困難が多い。同じ分子ガス雲に含まれるCO(一酸化炭素)分子は、水素分子の1万分の1程度の存在量(銀河系)であるが、波長2.6mm付近の電波を出すため観測できる。このCOの電波で水素分子の量を推測している。
 太陽系に近い分子ガス雲を電波望遠鏡を使って広い範囲で探査することで、星が生まれる所は、水素分子の密度の高いところであることが確認できている。
 観測範囲を広げることで、様々な時期の星の姿が見えてくるので、それらから星の進化の流れをより詳しく理解できるようになってくる。
 今後、さらに分解能が高い電波望遠鏡で探査することができれば、恒星だけでなく、恒星系内部の様子も見ることができるようになるかもしれない。
 


ドップラー効果の感じ方
前田さん)
 救急車の音などでドップラー効果を感じるとき、ピーポー、ピーポーと2音が聞こえます。その間隔が変化して聞こえるので音の高さが変化しているように感じるのではとの主張。うなり音を出す音源をつくり、スピーカーを動かしてみました。
 確かにうなりの間隔が変化しているようにも聞こえますが、きちんと計測してみるとどうでしょうか・・・・。
 音の間隔ではなく高さがちゃんと変化して聞こえるよ、との声もあり、どうも主張の内容がぐらついてきました・・・・

超音波を使った波の実験
(奥谷さん)
  超音波発信機と受信機の利用方法です。左が発信機、右が受信機です。受信しながら、2台を相対運動させると、ドップラー効果による音の高さの変化を聞くことができます。ただ、聞こえるのは超音波を周波数変換して可聴音にしているのだということに留意する必要があります。
 下の写真は、発信機を2つにして干渉を確認しようとしたものです。40cmぐらい離れた位置で受信機を少しずつうごかすと、位置によって音の大きさが変わります。
 実験中に、伊藤さんがアドバイスをくれました。送信機と受信機を、右の写真のように上向きにして、少し上で紙などを動かしてやると、音の変化がきこえます。これは、コウモリが虫を見つける仕組みそのものです。こうもりは、この音を聞いて、虫の種類などを聞き分けているそうです。生き物ってすごい能力を持っているんですね。

マックスウェルのこま簡易版
(山本さん)
 山本さん得意のマックスウェルのこま。今回はその簡易版です。ラウンドケースと竹串をつかって簡単につくれます。ゴルフのティーなどの上で回してやれば、歳差運動をしないこまのできあがり。針金などを軸に当ててやると、軸がその周囲を回りだします。これなら生徒実験にも使えそうです。

錯視第2弾
(山岡さん)
 同位置に並べると平行に見える角材が、右の写真のように模様をずらすと、何と並行ではなく、ゆがんだように見えます。見る角度や距離のよってゆがみ方が異なりますが、頭では平行とわかっているのに目では違って見える、不思議ですね。
 こちらは同じ向きの模様だと、線が平行に見えますが(細長い同形の厚紙)、1枚おきに反対向きにすると、傾いた線が見えます。

電気パン−更なる工夫
(飯田さん)
 金属極板を使う電気パンは、電気分解などの反応で有害イオンが生成される可能性が否定できない、ということで、金属を使わずに電気パンを作ろうという工夫です。
 電極は備長炭。そのままでは中央部が焼けるが周囲がうまく焼けないので、中央部に瓶を置いて、これならどうだという装置。ここで初実験。
 う〜ん。これでも均一には焼けません。もう一工夫必要なようです。

ダイオードの問題
(清水さん)
 前にも紹介されました、ダイオードを使ったマジック。直列につないであるようにみえるので、スイッチを切ると2つの電球は消えそうに思えますが、じつはダイオードを入れてあるので、片方の電球しか消えません。
 2000年7月16日の例会の電球の不思議も見てください。

熱電子はガラスを通る?
(林さん)
 電球をアルミ箔でくるんで点灯し、そのアルミはくをアースすると、アースした線に電流が流れるという実験。電球のフィラメントから出た熱電子が、ガラスを本当に超えてくるのか?という疑問が出されたため、確認実験。
 たしかにアルミ箔はアース(0V)に対して負電位になっています。電子がアルミ箔にたまり、アースに流れていくと考えるしかないようです。

スターリングエンジン
(林さん)
 林さんが知り合いから手に入れたもの。ドイツ製のスターリングエンジンです。ろうそくで暖めるだけで、勢いよく動きます。非常に早く動くので、本当に熱の移動で動いているのだろうか疑問に思えるほどです。
 値段が約3万円ぐらいだとか。ちょっと高級すぎる値段ですね。ちなみに大きさは横が15cmぐらいです。

錯視図形
(戸田さん)
 前回、山岡さんの飛び出して見える窪んだ立方体の表面の模様をかえて、
より効果をだしました。



イメージインテンシファイヤーを使った光子の干渉実験

(林さん、杉本さん)
 光子1個の入力を感知して、それを増幅して見られるイメージインテンシファイヤー(映像増幅装置)で、ヤングの干渉実験を、光子レベルで確認してみようという、意欲的な実験。
 左がそのイメージインテンシファイヤー。右は発光ダイオードとスリットをいれた容器。実験は、装置を暗幕で覆い、部屋を暗くして行います。

                                 実験は暗幕で覆って行います。イメージインテンシファイヤーに余分な光子がはいらないように注意します
 発光ダイオードの発光量とスリット幅を調節して、イメージインテンシファイヤーに到達する光子の量を1秒に数個から数十個に調節します。
 光子が到達すると、つながれたモニター画面に点々と光子の位置が映ります。新たに到達した光子の位置を画面上に加えていくと、干渉模様がやがてあらわれてきます。
 1個1個の光子の到達位置は予測できないが、多数の光子の到達位置の分布は予測可能である、という量子効果が、まさに目前で現れたわけです。
 下左は単スリットの場合で、下右は複スリットの場合です。